「歩くの無理そうなら、俺が」
そう言いながら、俺の背中と膝裏に手を添える雪名。
『おい待て。思い出した。お前俺が倒れた時、横抱きにして医務室まで運んだって本当か?』
(この自然な仕草からいってほぼ確定だが…)
「はい!!木佐さんめっちゃ軽くてマジビビりましたよ~。」
『歩けるから手をどけろ!!』
こいつは外人か?
軽すぎる…
「本当平気っスか?」
『大丈夫だって!俺はチビだけど男だ。』
「なんか木佐さんて、危ない。」
『あ?』
「うーんなんというか、ほっとけない感じっス。」
『…これでも30のオッサンなんだけど。』
立ち上がりかけたが、やはり腰に鈍痛がはしる。
歳かな…と思っていると、腰に手がまわされる。
「無理しないで下さい。」
『……うん』
支えられてようやく立てた。
『……送る』
「はい」
なんだか淋しい。
一緒に部屋を出て、廊下を歩く。
もう5時をとっくに過ぎているだろう。
人気もなく、静かだった。
だからこんな淋しく感じるんだ。
「木佐さん」
そう言って手が差し出された。
『………』
すんなり手を絡ませる。
雪名の手は温かい。