芹沢俊介の歎異抄逍遥5    その1

 

 

2017年10月4日 愛隣会氷川ホームにて

 

 

☆善人は、この世の真の姿が理解できないまま善行をしても完全には行えないことに気づいていない。

 

○第三章振り返りから第4章へ

悪人正機 善人正機

・歎異抄=悪人正機 歎異抄では使われていない用語。この章では悪人正因。

・正機=正因 機とは対象(人間)。正機は仏の慈悲(=救済)の第一の対象のこと→対語は傍機

悪人という言葉

・自力作善と本願他力(他力本願)

自力―自己の願望を実現するのに主に自己の力を頼ること。

・他力―自己の願望を果たすのに他者の力に全面的に頼ること。

*曇鸞の用法(以下の「自力他力の最初の用例」参照)

*親鸞始祖言うにおいて、他力とは弥陀の本願他力にのみ限定して用いられる。

文体と構成 リズムの停滞感と回心というテーマの割り込み。

「しかれども、自力のこころをひるがえして、他力をたのみたてまつれば、真実報土の往生をとぐるなり。」――この回心をすすめる個所があるため全体の構成、意味の流れとリズムに停滞感。

→リズムのある弁証法的展開が停滞する。

→回心の個所は全体の中で浮いている感じ。後からの挿入か(唯円による)。不要?

→但書きとして位置づける方が落ち着く。回心については第十六章。

 

☆辞典・辞書から

悪人正機=悪人こそまさしく阿弥陀仏の本願に救われる対象であるということ。親鸞の説いた,浄土真宗の根本的な思想。「歎異抄」の「善人なほもちて往生をとぐ,いはんや悪人をや」という言葉に端的に示されている。

善人正機=親鸞はすべての人の本当の姿は悪人だと述べているから、「善人」は、真実の姿が分からず善行を完遂できない身である事に気づくことのできていない「悪人」であるとする。

また自分のやった善行によって往生しようとする行為(自力作善)は、「どんな悪人でも救済する」とされる「阿弥陀仏の本願力」を疑う心であると捉える。

傍機=傍は他の名詞の上に付いて「かたわら」「局外」の意を表す。機は事の起こるきっかけ。機会。機縁。

自力作善=自分の力で宗教上の善を行おうとすること。浄土真宗で誤った態度とされる。

他力本願=〘仏〙 弥陀の本願の力に頼って成仏すること。

曇鸞=中国北魏の僧。浄土五祖の初祖。雁門(山西省)の人。少年時五台山に出家。病気になり長生の法を道教に求め陶弘景から仙経をもらったが、帰路、菩提流支から『観無量寿経』を授けられて仙経を捨て、浄土教に志し、称名念仏して世親の『往生論』の註釈書その他を著述。浄土教を教理的に基礎づけた。大巌寺・玄中寺に住す。(四七六~五四二)

 

☆Comment

 

「しかれども、自力のこころをひるがえして、他力をたのみたてまつれば、真実報土の往生をとぐるなり。」

 

●直訳「歎異抄」 第24回 

引用『現代語 歎異抄』(朝日新聞社2008年7月発行)

(2009年7月13日の殿岡秀秋のブログ・メルマガ、直訳「歎異抄」第24回より転載)

☆       原文第三条 善人なおもて往生をとぐ ――その4

「しかれども、自力のこころをひるがえして、他力をたのみたてまつれば真実報土の往生をとぐるなり。煩悩具足のわれらは、いずれの行にても、生死をはなるることあるべからざるをあわれみたまいて、願をおこしたまう本意、悪人成仏のためなれば、他力をたのみたてまつる悪人、もっとも往生の正因なり」

 

▽語句の意味(辞書から)

しかれども=然れども=〔動詞「しかり」の已然形「しかれ」に、接続助詞「ども」の付いた語。古くは漢文訓読に多く用いられた〕そうではあるけれども。しかしながら。

自力=〔仏〕 自分に備わっている悟りを開く能力。また、自分の修行によって悟りを開こうとすること。〔仏〕 浄土真宗で、他力回向に対し、自分の力でなした善によって自己や他者を救おうとすること。

こころ=(1)人間の精神活動を知・情・意に分けた時、知を除いた情・意をつかさどる能力。喜怒哀楽・快不快・美醜・善悪などを判断し、その人の人格を決定すると考えられるもの。  (2)気持ち。また、その状態。感情。 (3)思慮分別。判断力。

ひるがえす=態度などを急に変える。

他力=〔仏〕 自己の力で悟るのではなく、仏や菩薩の力を借りること。仏・菩薩の加護のこと。多くは浄土教で、衆生(しゆじよう)を極楽へ救済する阿弥陀仏の本願の力のこと。

たのむ=(「恃む」とも書く)依存しうるだけの能力がそれにあると信じる。あてにする。 信じる。信用する。

たてまつる=奉る=他の動詞またはそれに使役や受け身の助動詞の付いたものに付いて、その動作の対象を敬う謙譲表現を作る。…し申し上げる。…して差し上げる。

真実=絶対の真理

報土=報身仏(仏陀となるための因としての行を積み、その報いとしての完全な功徳を備えた仏身である。阿弥陀如来・薬師仏の類。)の住する世界。阿弥陀仏の極楽浄土もその一。

往生=〔仏教〕この世を去って、他の世界に生まれ変わること。特に死後、極楽に往(い)って生まれること。「極楽―」(2)死ぬこと。

とぐる=遂げる=(動ガ下一)[文]ガ下二 と・ぐ (1)したいと思っていたことをやりおえる。成就する。

なり=(助動)(なら・なり(に)・なり・なる・なれ・なれ) 〔格助詞「に」に動詞「あり」の付いた「にあり」の転〕断定の助動詞。体言および活用する語の連体形に接続する。事物や動作・状態などについて説明し断定することを表す。である。だ。

煩悩=〔仏〕  人間の身心の苦しみを生みだす精神のはたらき。肉体や心の欲望、他者への怒り、仮の実在への執着など。「三毒」「九十八随眠」「百八煩悩」「八万四千煩悩」などと分類され、これらを仏道の修行によって消滅させることによって悟りを開く。染(ぜん)。漏。結。暴流(ぼる)。使。塵労。随眠。垢。

具足=身に備えていること。所有すること。

いずれ=どれ。どちら。どっち。

行=〔仏〕〔梵 cary 〕宗教上の実践。悟りを開くための修行・行法。

生死=〔仏〕 生老病死の四苦における始めと終わり。前世の業の結果として生死を繰り返す迷いの世界。輪廻(りんね)。生死輪廻。

はなるる=離れる。大きく違う。

べからざる=不可能の意を表す。…することができない。現代語では、多く「べからざる」の形を用いる

あわれみ=あわれむ気持ち。同情。慈悲。

たまいて=賜う=動作の主体に対する尊敬の意を表す。 …てくださる

願=神仏に願うこと。また、その願い事。

おこし=立て起こすこと

たまう=賜う=動作の主体に対する尊敬の意を表す。 …てくださる

本意=本来の意図や気持ち。本当の考え。真意。

悪人=よくない心をもった人。よくない事をする人。わるもの。

成仏=〔仏〕 煩悩(ぼんのう)を解脱(げだつ)し、悟りを開いて仏となること。得仏。 (2)死んで、この世に執着を残さず仏となること。 (3)死ぬこと。

ため=役に立つこと。利益になること。

なれば=(1)であるから。故に。 (2)問いの句をうけて、答え・解説などを導く語。

正因=仏語。物事の直接的な原因

 

☆       直訳歎異抄 第三条 善人なおもて往生をとぐ ――その4

「しかしながら、自分の修行によって悟りを開こうとする気持ちを急に変えて、自己の力で悟るのではなく、衆生を極楽へ救済する阿弥陀仏の本願の力を信用申し上げれば、絶対の真理による阿弥陀如来の極楽浄土に生まれ変わることができるのだ。肉体や心の欲望、他者への怒り、仮の実在への執着など人間の身心の苦しみを生みだす精神のはたらきを身に備えている私たちは、どちらの修行であっても、生老病死の四苦における始めと終わりや前世の業の結果として生死を繰り返す迷いの世界を離れることができないのを哀れんでくださったのです。願を起こした阿弥陀仏の本来の意図はよくないこころをもって悪い事をする人が煩悩(ぼんのう)を解脱(げだつ)し、悟りを開いて仏となることですので、衆生を極楽へ救済する阿弥陀仏の本願の力を信用申し上げる悪人こそ、もっとも極楽に往(い)って生まれかれる正しい原因なのです。」

 

 

(この項つづく)

 

 

源氏物語の登場人物の性格》その246

 

 

 

(国民の文学3源氏物語上 与謝野晶子訳 河出書房新社 昭和39年刊より引用)

 

☆『源氏物語』の性格描写

 

○源氏の須磨行きを前にした若紫の源氏への返歌

 

「別れても影だにとまるものならば

 

鏡を見てもなぐさめてまし」(須磨・216頁)

 

☆辞書・事典から

 

まし=〔悔恨や希望〕…であればよいのに。…であったならばよかったのに。▽実際とは異なる事態を述べたうえで、そのようにならなかったことの悔恨や、そうあればよいという希望の意を表す。

 

訳=お別れしても影だけでもとどまってくださるならば、その鏡を見て慰めていることもできましょうに。

 

☆Comment

 

 源氏は涙している若紫の優雅な美をみて優れた恋人であるとおもいました。

 源氏物語は若紫(紫の上)を理想の女性として描きます。たぶん紫式部は若紫に自己の気持を投影して描いているのでしょう。源氏がどんなに他の女に気を移しても、自分だけは特別に愛してもらっているというのが若紫の心の位置のような気がします。

 

 

(この項つづく)

 

 

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