フロイトの夢理論 その89

 

 

テキストはフロイトの『夢判断・上』(平成23年四版・日本教文社刊)です。引用も特に断り書きのないかぎり、本書からです。

 

 

 

☆年齢のへだたりが大きいと、年上の女の子は、赤ん坊への母性本能が働く

 

「現在では兄弟姉妹を愛していて、それが死にでもすれば身も世もない悲嘆にくれる多くの人たちも、彼らの無意識界のうちでは昔から兄弟姉妹に対し悪い願望を抱いているのであり、その悪い願望が夢の中に出てきて、自分を実現することができるのである。しかし、殊に興味深いのは、三歳あるいは三歳をすこし出たばかりの幼児が年下の弟妹に対する時の態度である。弟や妹の生まれてくるまでは、その子はただ一人の子だったのであるが、今、鸛(こうのとり)が赤ん坊を連れてきたと聞かされる。その子は新参者をじろじろ眺め廻して、それからきっぱりとこう言う。『また鸛が連れていってしまえばいいのに。』(298~299頁)

「赤ん坊がこれから先ずっといるということは、決して自分の得にならぬと思ったのである。この年頃の子供の嫉妬心は実に強烈で、赤裸々である。あるいは小さな妹がじきまた姿を消してしまって、自分が再び家中の愛情を一人占めするようになった。そこへまた新しい赤ん坊を鸛が連れてきた。その時、この子が、今度の新しい競争相手も前の赤ん坊と同じようになっていなくなり、自分がずっと以前の頃や、それから前の赤ん坊が死んで今度の赤ん坊が生まれてくるまでの間の時のように、同じ幸福が味わえるといいのだがという願望を抱くようになったとしても、これはむりからぬ話ではあるまいか。もちろん、新しく生まれてきた子供に対するその子の態度は、正常な状態では年齢のちがいの結果起ったというそれだけのものにすぎない。年齢のへだたりがかなり大きいと、年上の女の子の心の中には、たよりない赤ん坊に対する母性本能がいち早く働くであろう。」(299~300頁)

 

☆Comment

 

 ぼくは男の兄弟ばかり三人で育ちました。ほとんど毎日のように兄弟喧嘩をしていました。ですから子供のころの兄弟の仲の悪さや、憎しみ合う感情はよくわかります。

 ぼくの妻は兄弟姉妹がおおいのです。末っ子で生まれましたので、長女とは15歳以上も離れていました。それで長女をまるで母親のようにしたって育ちましたし、長女もよく母親代わりになって面倒をみてくれたそうです。

 フロイトの書いていることは、実に的を得ていますね。

 

 

(この項つづく)

 

 

源氏物語の登場人物の性格》その238

 

 

(国民の文学3源氏物語上 与謝野晶子訳 河出書房新社 昭和39年刊より引用)

 

☆『源氏物語』の性格描写

 

○かつて一度だけ情を交した女の源氏への返歌

 

「ほととぎす語らふ声はそれながら

 

あなおぼつかな五月雨の空」(花散里・209頁)

 

☆辞書・事典から

 

あな=ああ

おぼつかな=ぼんやりしている。ようすがはっきりしない。ほのかだ。

五月雨=陰暦五月頃に降る長雨。梅雨。つゆ。さみだれ。

 

訳=ほととぎすの語る声は、源氏の君とわかりますが、今ごろなぜお尋ねくだされたのか、五月雨のそらのようにはっきりしません。

 

☆Comment

 

 それでは人違いでしょうと、源氏の従者の惟光が去るのを、主人の女だけは寂しく思ったのです。

 

 

(この項つづく)

 

 

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