ウィニコット『赤ちゃんはなぜなくの』について――その9
(星和書店2013年11月刊『子どもと家族とまわりの世界(上)赤ちゃんはなぜなくの』猪股丈二訳より。引用は特に断り書きのない限り本書からです。)
☆生まれたばかりの子と母親との親密な関係は子どもの能力の基礎を築く助けとなる。
「母と子は、出生後の両者の条件で大いに変ってきます。両者がお互いに相手がいることを楽しめるようになるまでには、おそらく二、三日かかるでしょう。しかしあなた方の体の調子がよければ、お互いがただちに理解しあえない理由は何らないのです。自分の初めての男の子ときわめて早くから接触した若いお母さんを私は知っています。生まれたその日からお母さんと赤ん坊は、それぞれ食事が終ると、気のきいた婦長さんの取り計らいで母親のベッド際に乳児用ベッドを置きました。すると、しばらくの間、赤ん坊は静かな部屋で目を覚ましていました。母親が赤ん坊の方へ手を差しのべて置くと、生まれて一週間しない赤ん坊は、母親の指を握り始め、母親の方に顔を向けました。この親密な関係は、中断することなく拡がっていきました。このことは、子どもの人格や、私たちが子どもの情緒的発達と呼んでいるものや、遅かれ早かれ子どもが発達途上で遭遇する葛藤やショックに対処する子どもの能力などの基礎を築く助けとなっていると私は信じているのです。」(第二章 あなたの赤ん坊を知ること 21~22頁)
☆Comment
いかに生まれたばかりの子どもと母親との親密な関係が大切であるかをウィニコットは語っています。ここに述べられていることはどんなに強調しても強調しすぎるということにはならない、大切なことだと思います。
(この項つづく)
源氏物語の登場人物の性格》その230
(国民の文学3源氏物語上 与謝野晶子訳 河出書房新社 昭和39年刊より引用)
☆『源氏物語』の性格描写
○藤壺(中宮)が仏勤めに励んでいる所へ源氏が訪れて古歌を口ずさんだ。
「音に聞く松が浦島今日ぞみる
うべ心ある海人は住みけり」(榊・202頁)
☆辞書・事典から
音に聞く=世間によく知られている。音に聞こえた。
松が浦島=松島のこと。宮城県中部、松島丘陵の東部が沈降して形成された松島湾一帯の景勝地。日本三景の一。大高森からの壮観、富山からの麗観、扇谷からの幽観、多聞山からの偉観を松島四大観という。塩竈神社・瑞巌ずいがん寺・五大堂・観瀾亭などがある。まつがうらしま。(歌枕)=和歌に詠まれて有名になった各地の名所・旧跡。
うべ=あとに述べる事柄を,当然だ,なるほどと得心したりするさまを表す。本当に。もっともなことに。なるほど。
心ある=物事の情趣(そのものに接して感じられる、しみじみとした味わい)を解することができる。
海人=魚介をとったり,藻塩を焼いたりするのを業とする者。漁師。古くは海部(あまべ)に属した。あまびと。いさりびと。
訳=音に聞えた松島を今日見ると、ほんとうにしみじみとした味わいを解する漁師の住処である。
☆Comment
春になり、藤壺の住まいは尼君の住居になっていて、訪れた源氏の心を痛ましくしました。そのときに源氏が口ずさんだ古歌です。源氏の歌ではありません。
(この項つづく)
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