フロイトの夢理論 その67
テキストはフロイトの『夢判断・上』(平成23年四版・日本教文社刊)です。引用も特に断り書きのないかぎり、本書からです。
☆小児期の不潔は、夢の中ではしばしば金銭上の吝嗇(りんしょく)によって代用される。
「別の婦人患者の次のような夢。《彼女は広い部屋にいる。部屋の中には、整形外科の手術室を思わせるような、いろんな器械が並んでいる。私は時間がないので、他の五人の患者と一緒に治療を受けねばならない旨を聞かされる。しかし彼女はそれを厭がって、彼女のために指定されたベッド――あるいはなにかベッドのようなもの――に寝ようとしない。彼女は部屋の片隅に突っ立って、私が、いやそれは本当でない、というまで待っている。ほかの患者たちはそういう彼女を笑い、『馬鹿ね、あなたは』という》――それ同時に、《彼女はなんだか自分が小さな四角なものをたくさん作っているような気がする》
この夢内容の前半部は、治療と私への感情転移に結びついている。後半部は、幼時の体験場面への暗示を含んでいる。ベッドが出てきて、これら二つの部分を接合しているのである。整形外科の手術室は、私が彼女に治療期間の長さと性質とを整形外科の治療と比較して話してやったことに基づく。治療の初めに、私は当分の間あなたのためにかかりきる時間がないが、少し経ったら毎日一時間はたっぷり割いてあげられるだろうと言っておいた。このことがヒステリーになりがちな子供の主要な性格特色である、彼女の心内の古い感受性を刺激したのであった。こういう子供たちは愛情に飢えている。この婦人患者は六人兄妹の末娘(だから、ほかの五人の患者と一緒に)、それだからお父さんっ子であったが、それにもかかわらず父親が自分に対してまだ時間も注意もあまり捧げてくれないと思っていたようである。――私が、いやそれは本当でない、と言うまで彼女が待っているということに、次のようないわれがある。つまり、仕立屋の小僧が彼女に一着の服を持ってきた。彼女はその小僧に代金を渡した。それから夫に向かって、あの小僧さんがお金を落したら、もう一度支払わなくちゃならないかしら、と聞いた。夫は彼女をからかうつもりで、むろうそうさ、と答えた(夢内容中のからかい)。そこで彼女は同じことを何度もきいた。そして、夫がしまいに、それは本当ではない、と言ってくれるのを待ったのである。こうして夢の潜在内容として、もし私が彼女のために二倍の時間を割くなら、彼女はひょっとして二倍の代金を支払わねばならぬのではあるまいかという考え、けちというか、汚らしいというか、そんな考えが出来上がってきたのだ(小児期の不潔は、夢の中ではしばしば金銭上の吝嗇(りんしょく)によって代用される。汚らしいという言葉が両者の架け橋をなしている)。この『汚らしい』という言葉が夢の中で、私が言うまで待つ云々というすべての言葉によって書き換えられているとすると、片隅に突っ立っているとベッドに寝ようとしないとは、彼女がベッドを汚くした幼年期の一情景の要素としてそれにうまく合致する。彼女は寝小便をした罰として部屋の片隅に立たされ、こんなことをするともうパパはお前を可愛がってやらないとか、兄さんや姉さんたちから笑われますよ、と脅かされたのである。小さな四角なものは、彼女の小さな姪に関係がある。この姪は、どこからどう足しても十五になるように、九つの四角の中へ数を書き入れる仕方を彼女に示して見せたのである。」(237~239頁)
☆Comment
フロイトの患者である女性の夢の分析です。何が大人になった人の心の不安を増大させるのでしょうか。フロイトの理解によれば、それは前世の業ではありません。幼児期の体験に原因があるのです。それは現在では乳児期、さらに胎児期までさかのぼって、体験の刻印が、人の心に刻まれているという人間理解です。
小児期の不潔は、夢の中ではしばしば金銭上の吝嗇(りんしょく)によって代用される、というのは面白い指摘です。人はなぜケチになるのでしょうか。その分析が展開されれば面白いです。このあとの「夢判断」の記述に期待します。
(この項つづく)
源氏物語の登場人物の性格》その134
(国民の文学3源氏物語上 与謝野晶子訳 河出書房新社 昭和39年刊より引用)
☆『源氏物語』の性格描写
○老女の典侍への源氏の返歌
「笹分けば人や咎めんいつとなく
駒馴らすめる森の木隠れ」(141頁)
☆辞書・事典から
分け=分けること
咎めん=とがめること。なじること
いつとなく=常に。始終。
駒=馬。特に牡の馬。
馴らす=獣や鳥が人になれるようにする
訳=笹を分けて私が入ったならば、どこかの男に咎められるだろう。森の木隠れに始終、牡の馬の飼いならしている貴方のことだから。
☆Comment
源氏の嫌味はきついですね。そんなに傷めつけるなら、情事を交さなければよかったのではないか、とさえ思えてきます。
(この項つづく)
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