幕府は、貿易による利益を確保することと
合わせ、日本の安全確保のために貿易する相
手国を選別した。島原の乱（寛永１４年・
１６３７年）に加わったポルトガル人（国）
を追放し、東南アジア諸国との往来を禁止
する。朱印船貿易を廃止し、スペインの宣
教師が日本に入国することを阻止。キリスト
教の布教という名目で国に入り込み、占領
するという列強の常套手段を見破ったのは、
利勝の慧眼（けいがん）と言える。
キリスト教は、唯一神を信じることから、
どうしても統制不能に陥ってしまう。完全
な根絶やしは不可能と考え、ポルトガル
排除に踏み切る。キリスト教信者は、
「天国」を信じていることから、死への
恐怖が和らぐため、幕府としては手強い
存在になる。一神教のキリスト教は、
幕府には到底受け入れられるものではなかった。
島原領主のキリシタン有馬晴信は、転封により
島原の地を去る。後任の松倉重政は容赦なく
年貢を取り立て、冷酷な悪政を敷いた。滞納者
を裸のまま蓑を着せ、火を放ち、もがき苦しむ様
子を「蓑踊り」とせせら笑うなど、およそ血の通
った人間とは思えぬ乱暴狼藉を繰り返した。領内の
多くのキリシタンが一揆の旗を揚げ、対岸の天草
に波及したのが「島原の乱」になった。幕府は、
「キリシタンの反逆」という納得しやすい図式に
して弾圧を加えていく。
島原の乱では、一揆側に参加した３分の１に
相当する「仏教徒」約１万人を幕府側に寝
返らせた。体制側にとっては、順応型の仏教徒を
歓迎。幕府軍に加わった剣豪宮本武蔵が「足に石を
ぶつけられて大けがをした」と弱音を上げるほど
元武士のキリシタンたちは頑強に抵抗をしている。
関ヶ原の役から島原の乱までに２３万５千人の牢人
が出たと推定されている。つまり毎年４７００人の
無職者が発生したことになる。（日本の歴史・児玉
幸多著）乱平定後は、本格的な武士「失業」時代に
突入。慶安４年（１６５１）、ついに「由比正雪の乱」
となった。正雪は全国の浪人に呼びかけ、大規模な幕
府転覆を行う計画であったが裏切り者が出て不発に終わる。
江戸時代のキリシタン取り締まりに関する古文書が
（豊後国・現大分県）で約1万点発見された。（
平成26年（2014）１．２９・読売新聞）宗門改帳には、
キリシタンから仏教に改宗した家の葬儀後、きちんと
寺に埋葬されたことを監視したことなどが書かれていた。
寛永18年（１６４１）、オランダ商館を出島に移し、
唐人屋敷を設置。ついに長崎での一括管理体制を整えた。
又、対馬藩には朝鮮、松前藩（北海道）には蝦夷との交
流を担当させた。後世「鎖国」とされる体制が完了する。