漫画家を卒業なんてあるのか? | 元漫画屋日記

漫画家を卒業なんてあるのか?

$もうすぐ元漫画屋日記数カ月前に「ここから逃げ出すぞっ!!」とばかりに漫画業界からケツをまくることにした自分なわけですが、その後にかつて自分の漫画を手伝ってくれていたコが

「漫画家を卒業ですか?」

とコメントをくれて、自分は別に漫画を描くのを辞めるつもりがまったくなかったから「別に卒業はしないな~」とコメントへのお礼をしつつ答えたわけですがしばらくしてから

「ある面で精神的に『卒業』する部分はあるのかもなぁ…」

と思うようになりました。どういうことかというと、自分は現役で辞める気になる数年前までは

『紙の上に出来上がるモノこそが自分、今息をして排泄をする生物自体にはなんの価値もない』

という気持ちで、本心でペンの先に自分を込める気持ちで漫画を描いていたのです。

また、自分くらいの能力ではそのくらいの気持ちでないとこの業界で生き残っていけない…と思っていたし、そういう気持ちだからこそ漫画を読んで再生産されてくる新人漫画家や漫画家志望の若い人達とも伍していけるとも信じていたわけです。

この気持ちがあったからこそ描ける漫画があったと思うし、それゆえに目に見えず描けない漫画があるとも思いつつ自分なりの選択でこの気持ちでやっていたわけですが、数年前からそういう気持ちが変わってきました。ピッタリと自身とくっついていた漫画に対して、距離を持つようになってきた。


今はいわゆるプロの漫画家は辞める気になったわけですが、そうやって距離をおくからこそ描ける漫画がかならずあるはず。別に慌てる必要もないけど、こんな風に変化してきている自分がどんな漫画を描こうとするのか、少し楽しみだったりするわけです。

で、こういう気持ちの変化はもしかすると一種の「卒業」かもしれない、と、ちょっと思うわけです。

卒業と言っても、小学校を卒業すれば中学校、中学校から高校、大学とあるわけで、あてはめて考えるなら自分は専門学校を卒業して大学に入学したのかもしれないなー、といった意味での「卒業」なわけです。