令和元年八月二日金曜日
記者発表
囲み取材
出演者インタビュー
記者発表について






囲み取材






ananのインタビュー記事も少し紹介します。
作品について
最後に



シアタークリエ(東京公演)
ケラリーノ・サンドロビッチ 作
鈴木裕美 演出
鈴木杏
ブルゾンちえみ
花乃まりあ
シルビア・グラブ



鈴木杏(千津)
ブルゾンちえみ(市子)
花乃まりあ(愛と萌の二役)
シルビア・グラブ(咲恵)
以下、文中敬称を略します。
尚、この記事は、この作品のプレビューを記したい訳ではなく、ブルゾンちえみファンとして、舞台を見た感想を記す、片寄ったものです。ご了承ください。

まず、驚いたのは、
キャスティング→台本の読み合わせ→配役決定
というやり方。
演劇に詳しくないので、これがどのくらい珍しいことなのかはわからないが、各俳優さんに出演オファーの段階では、配役を決めていなかったと聞いて驚いた。
配役はもちろん演出の鈴木裕美が決める。
記者発表で彼女が語っていたが、キャスティングのオファーの段階で、配役のイメージが全くなかった訳ではない、ただ、俳優さんたちの中には、舞台での声を聞いたことがない人がいるので、声がどう交じるのか、読み合わせで確かめてから配役を決めたかったので、わがままを言ってこういう形をとらせてもらったとのこと。
また、どの人とどの人が組合わさると、しっくり来るのかを見極めたかったというようなことも言っていた。
実際に舞台を観てみると、あれ以外の組み合わせは無いように思えるが、それはそれだけ役作りが成功しているということなのかもしれない。
ここからは、ブルゾンちえみの記者発表での発言を紹介します。



今回、初舞台ということで、最初にお話をいただいたとき、シンプルに嬉しい!ワクワクする!というのが一番最初に来ました。
でも、もう話を聞けば聞くほど、ケラさんの作で、鈴木裕美さんの演出でとか、いろんなことを知れば知るほど、「私でよかったんだろうか?」とか…生まれたての赤ちゃんに、高級料理を食べさせるような、ホントにそのありがたみがお前分かるのか?という状況、すごく贅沢な…初舞台という状況で、すごく贅沢な環境にいさせてもらってるなぁというのをひしひしと感じました。
逆に、今まで何か舞台をやったとか比べるものがない分、考えれば考えるほど至らないところだらけなので、じゃあ逆に知らない分、100%の何も知らないという状態でぶつかっていこうという気持ちで、今は、わくわくという気持ちでしがみついて頑張っていこうという気持ちです。
楽しみに待ってくださっている人の、フローズン・ビーチの出演が決まったときに、この作品のファンだから、ホントに楽しみという声をかけられることが多かったので、こんなに楽しみに待ってくださっている人たちがいるんだから、期待に応えようという気持ちになっています。是非劇場に見に来てください。



ものすごく緊張している。顔ががっちがちなのはご愛敬。
赤ちゃんのくだりは彼女らしいたとえだ。
経験がないことを強みに変える、そういう姿勢も本当に尊敬に値する。観劇を終えてから、このインタビューを振り返ってみると、彼女に対する尊敬の念がいっそう強くなった。

四人の俳優さんだけで取材を受ける。
鈴木杏がブルゾンちえみをいじったりして、楽しい場面も。



市子のキャラクターは、ブルゾンちえみのキャラクターとは全然違うキャラクターなので、舞台を見に来てくださった方々が、まっさらの、35億のフレーズなんて忘れてしまうように、頑張りたい。
初舞台にしては、荷が重くないですか?
「そうですよ!そうなんです!」(笑)



↑このくだり、とても面白いので、是非見てみて下さい。
お笑いの経験が舞台に活きるのか?という質問に、謙遜してなんとなく曖昧に答えていたら、鈴木杏が助け船を出してくれた。
お笑いの舞台では、3人(with Bと)だけでやりきるから、そういう強みを持っていると。
なるほど、確かにそうだ。お笑い芸人は売れるまでは何でも自分でやらなければならない。それが将来の財産になるんだな、とわかる。
考えてみると、ブルゾンちえみ、台詞もすごく多いし、とにかく動き回る、こんな大役をよくやりきったと感心するのをついうっかりしていた。
それは、実際に観劇してみて、全く違和感なく俳優さんとして舞台を勤めあげている彼女の姿が当然のように思えたからだと思う。
そう、まさに「35億」を忘れ、まっさらな、新しい彼女の魅力を発見できたからだ。
そして、こうしてインタビューを見直してみると、いろんなものと戦って、あそこまで持っていったのがよくわかる。特に、荷が重くないか?と問われて、強く肯定していたのが印象的だった。
吉本ばなな先生にも誉められています

「私は性格的に、自分が止まってるんじゃないか、何も成長できていないんじゃないかって思うと、モゾモゾと焦ってしまうタイプ」
と自己分析している。
これを読んだとき、あ、これ、もしかして、天才は努力せずにいられないっていう、例のやつじゃない?と思った。
やっぱりただ者ではなかったな~

21年前の初演が岸田國士戯曲賞を受賞している。
ケラリーノ・サンドロビッチ
映画『自転車泥棒』にインスパイアされて、散文的に始まって、ポエティックに終わる、というものを書きたかった。だから、第3幕は未来の設定になっている。
「釈放」の台詞が現実と合致していないのはそのためだとわかる(筆者)
鈴木裕美
「昔々あるところに、4人の女がいました。と、始まるような話がものすごく大好き」
「ケラさんの本は、リアルとファンタジーのバランスが面白い」
観劇してみて、お二人のおっしゃっている意味がよくわかる。
観劇が答え合わせになった。

少しだけ舞台の様子が観られます
この作品、変な女4人の話、としか言いようがない。
サスペンスコメディでありながら、なんか人間の闇みたいなものも描かれている。だが、どう説明してよいかわからない話。そしてその、説明が困難であることそのものがこの舞台の魅力と言える。
話、というよりは、人間を観るための舞台と言った方がよいかもしれない。
第3幕にいたっては、なんだこれ?と思っていたが、ポエティックに終わる、という意図を聞いて、納得した。リアルとファンタジーのバランスか。うまいこというな。
あのシーンが、このシーンがみたいなことも書きたいのだが、ネタバレもよろしくないのでやめておきます。
でも一つだけ。
一番のお気に入りは、市子と咲恵の二人芝居のシーン。確か、2回ほどあったが、どちらも雰囲気がとても刺激的だったから印象深い。
特に、咲恵がソファーに仰向けになり、必死に自分の運命を市子にただすのに、市子が例の調子で会話が噛み合わないシーンは、市子の底知れぬ冷酷さが伝わってきた。
自分は彼女のファンなので特にそう思うのかもしれないが、ブルゾンちえみのイメージとは、はるか遠い人間像を巧みに演じてることの凄みと、市子の自分本位なキャラクターが同時に伝わってくる、大好きなシーンだ。
1回目を見終わってすぐ、もう一度見たくなって、席を探したら4席だけ空いていた。で、2回目の観劇へ。うん、行ってよかった。2回目も存分に楽しめた。



出演者の皆さん、無事に千秋楽を迎えられることを祈っています。
まだ観ていない方は、是非に。