「そんなつもりじゃなく」ても、「どんなことでも起こりえる」ことに気付くのは、
いつだって何度だってどきどきさせられます。
「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」は
小気味よいハードボイルな動的世界と静かな気配に満ちた静的世界が
交互に語られ、波に揺られるようにして中に引き込まれます。
動的な世界では、情報戦争に巻き込まれた計算士が
都会のビルから滝の奥の研究室に行くはめになったり、
人を追って青山の地下をばけものをふりほどきながら走り回ったり・・
本人はそんなこと全然望んでいないのに、その人が持つある種の性向が
そういった事態を呼び寄せてしまうというのは
非常に因果なことであり物事の本質的なおかしみなのでしょう。
他方、静的な世界はこの話の私にとってのリアリティです。
この世界が、人を生かし、とりわけ本読みの人間を生きながらえさせると
感じた一作。
- 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)/村上 春樹
- ¥620
- Amazon.co.jp
- 世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)/村上 春樹
- ¥580
- Amazon.co.jp