平成4年当時といえば、いわゆるいわゆるバブル事件が相次いで表面化し、世間を騒然とさせた時期である。


 その1つが富士銀行(当時)を舞台にした巨額不正融資事件だった。実に総額7000億円もの金が動き、2600億円が未決済になるという、金融史上でも空前のスケールの詐欺事件である。


 すでにその不正融資先の1社だったリゾート開発会社の社長から、鳩山由紀夫はパーティ券を購入してもらったことが判明していたが、その社長が同年1月に有印私文書偽造、詐欺などの容疑で警視庁に逮捕されると、鳩山由紀夫のスキャンダルはいつしか忘れ去られていった。

  しかし、この元社長が刑期を終えて出所し、鳩山由紀夫と会ったのは、彼がすでに民主党代表の座にあった頃だ。その際、鳩山由紀夫は元社長に、「このたびは1人で(刑務所に)行かせて、申し訳ありませんでした」と言って、深々と頭を下げたという。

 元社長によれば、財界人の紹介で鳩山由紀夫と最初に会ったのは昭和63年、鳩山由紀夫が自民党の公認を得て、初当選したした頃だったという。しかし、当初から2人のつき合いは一方的で、鳩山由紀夫の秘書からパーティ券購入要請は執拗だった。結果的に、元社長は200万円、300万円と数回に分けて合計5千万円の裏金を鳩山由紀夫サイトに渡してきたのだ。

 もちろん、元社長も何の見返りも期待せず、ただ野放図に闇献金をしてきたわけではない。当時、北海道で第三セクターのリゾート施設の開発を手がけていた元社長は、鳩山由紀夫の知名度と、クリーンなイメージに期待していたのである。


 確かに、鳩山家のプリンスがその事業を応援してくれたら鬼に金棒。平成2年、リゾートの地鎮祭に鳩山由紀夫は来賓として出席し、30分近いスピーチはしたものの、それ以上の貢献はしてくれなかったという。


 それどころか、鳩山由紀夫は元社長が手がけるリゾート施設工事の着工前に、みずからが親しくしている地元の建設業者をジョイント・ベンチャーに入れてくれ、と要請してきたというのだ。元社長が怒るのも無理もない。

(新潮45、2009/10より要約)