15日の自民党各派の会合で、臨時国会を4日間で閉じる政府・与党方針への批判が相次いだ。


 町村派の町村信孝会長は「とんでもない話だ。こんな不誠実、不真面目な内閣はない」と強調。


 伊吹派の伊吹文明会長は「予算委員会で審議しないのは逃げたという印象を与える」と指摘した。

(時事通信、2011/9/15)

野田佳彦首相は15日午前の参院本会議で、鉢呂吉雄前経済産業相が原発事故に絡む不適切な発言で辞任したことについて「任命責任は私にある」と自身の責任を認めた。
(時事通信、2011/9/15)

 野田佳彦首相の資金管理団体が在日本大韓民国民団(民団)関係者ら在日韓国人2人から政治献金を受けていた問題は、民主党に外国人献金が蔓延している実態を改めて浮き彫りにした。外国人参政権導入を「党是」とする民主党に、在日外国人が“資金援助”をしている構図だ。外国勢力による政治への介入の余地を生む外国人献金。専門家は「判明分は氷山の一角ではないか」と危機感を募らせている。

 今年3月、外国人からの献金が発覚して前原誠司外相(当時)が辞任した直後の参院決算委員会。当時、財務相だった野田首相は自身の政治団体に外国人献金はないことを強調した。

 だが、資金管理団体「未来クラブ」(千葉県船橋市)が平成10~15年に、在日韓国人2人から計31万8千円の献金を受領していたことが産経新聞の調べで判明した。うち1人は、民団支部で役員を務めていたことも分かった。

 野田首相自身も21年10月、千葉県で催された「韓日友好イベント」で、政権交代を果たした衆院選について、「千葉民団の皆さんの力強いご支援をいただき、心から御礼申し上げたい」などと謝辞を述べていた。

 野田首相側は献金について、「本人も事務所も知らなかった」と主張。ただ、献金した在日韓国人の1人は産経新聞の取材に、「選挙事務所立ち上げでお会いした」と、顔見知りであることを認めている。

(産経新聞、2011/9/5)

 野田佳彦首相の資金管理団体「未来クラブ」に2001年~03年に、千葉県船橋市の在日外国人が計約16万円を献金していたことが、朝日新聞の調べでわかった。

 未来クラブの政治資金収支報告書によると、船橋市の在日韓国人の会社役員の男性から01~03年の3年間に計15万8千円の個人献金を受けたとの記載がある。

 外国人による献金は政治資金規正法で禁じられている。公訴時効は3年で、すでに過ぎている。

(朝日新聞、2011/9/3)

 「最小不幸社会の実現」を公約した菅直人首相がいよいよ退陣するらしい。最小と不幸という、後ろ向きの標語を二つ掲げた貧乏神のような首相。日大法学部教授の岩井奉信氏は、辞任するというので多くの国民は安堵していると指摘し、語った。「国民もメディアも、菅首相に疲れきっている。ようやく辞めてくれるいま、次の首相に求められるものは癒しでしょうか」


 癒しは万全の体制の下でのみ得られる。内政外交ともに大きく変化しつつあるいま、双方で万全の体制を構築するには、およそすべての分野で菅首相の理念と政策を真っ向から否定しなければならない。一年余、国家の指導者でありながら、国家観なき市民運動家にとどまった首相は、内向きかつ後ろ向きの視点しか示せず、経済活動を縮小させ、国家としての日本の力も引き出し得ず、歴史的な最大不幸を生み出し、ほとほほと国民を疲弊させた。

 にも拘わらず、「やり遂げた気がする」と胸を張るのは、強い自己愛ゆえに己を客観視出来ていない証拠である。自身を相対比出来ない首相は、目を開けていてもすべてに昏いのだ。これでは東日本大震災と原発事故という有事への対処は無論のこと、平時の問題にさえも対処できない。常に言葉が走り、行動が伴わず、自己矛盾に陥る。クリーンな政治を標榜してきた首相の政治資金が黒い闇に包まれているのもその一例である。


 首相の政治資金管理団体草志会から、日本人拉致事件の容疑者の長男が所属する「市民の党」と事実上一体の政治団体「政権交代をめざす市民の会」に、計6250万円もの献金がなされていたことは、過日の小欄でもお伝えした。8月11日の参議院予算委員会で自民党の西田昌司氏が新事実を指摘した。草志会は07年にめざす会に5000万円を寄付したが、一時的に現金が足りなくなり、残金がマイナスになっていたというのだ。寄付は出来ない状況なのに、帳簿上は寄付されたことになっていたわけだ。

 「残高がマイナスになることはあり得ないんですよ。収支報告書の記載は出鱈目でしょ」と西田氏が問うと、首相は無意味にも反問した。「なぜあり得ないんですか」


 西田氏は、07年5月8日に首相の資金団体は357万円余の、また、5月14日には658万円余の残金不足になった一方で、草志会には借入れの記載がないことを指摘した。残金がなく、借入れも起こしていないのに、多額の寄付が出来るはずはない。にも拘わらず、首相はなぜ出来ないのかと尋ねるのだ。


 「好い加減にしなさい」と西田氏がたしなめたのも尤もだ。


 ない袖は振れないのに振ったのは、どこかに隠し金があったのか、それとも帳簿を誤魔化したのか。ずれにしても菅氏の政治資金は灰色だということだ。民主党の政治資金の約85%が国民の税金の政党助成金である以上、この無責任さは許されない。


  同件は不記載の可能性があるとして、岩井教授が指摘した。「菅さんは、献金は党の業務だと説明しました。であるなら党がきちんと支出すればよいのです。そうなっていないのは、党として支出できない性質のカネなんでしょう。非常にスジの悪い資金移動です。民主党として払いにくいので、菅さんの個人の政治団体に資金を迂回させ、そこから支払ったことが疑われます」


 なぜ、こうまでして、北朝鮮や日本人拉致事件と関わり合いの深い政治団体に首相が献金しなければならないのか。めぐみさん拉致から34年、横田早紀江さんは、「神様はこのようなことは決してお許しにならない」と悲痛な想いを語っている。拉致問題解決の最も重い責任を持つ首相が、拉致実行犯の関係者を立候補させる政治勢力に多額の寄付をしていたことに、早紀江さんならずとも、国民全員が怒るのは当然であろう。

 菅氏の巨額献金は民主党の政治資金のさらなる深い闇を明るみに出した。05年には市民の党系の地方議員ら17名が民主党衆院議員の鷲尾英一郎及び小宮山泰子両氏に、申し合わせたように個人献金の上限である150万円を寄付し、鷲尾、小宮山両氏はこれまた判で押したようにその献金の全額に近い2500万円を市民の党に各々献金していたのだ。


 17名の市議は、両氏への寄付の他、市民の党などの政治団体にこの数年間、一貫して100万円前後の寄付をしていたことが官報から明らかだ。鷲尾氏らへの寄付と合わせると、一人一人の市議の寄付は年間500万から600万円となる。

 自民党の古屋圭司氏は、市議の給与とほぼ同等か、それ以上の高額寄付の原資はどこからきたのかと問う。民主党の複数の国会議員も菅首相も、市民の党との深い関係と資金の流れについて説明責任を果たすべきだ。だが都合の悪いことには蓋をする首相が説明責任を果たすことは恐らくないだろう。


 こんな首相が辞任するいま、機能しなかった首相の退陣に安堵するのでなく、国民は能力のない政治家や政党の言葉がどれほど信頼できないかを心に刻み込むのがよい。例えば菅首相が拘った政治主導の確立と官僚主導の排除である。菅首相はどこまで目標を達成できたのか。公務員制度改革の顛末から見えてくるのは、なす術もまく、以前と比較にならない官僚の勝手を許す結果に陥った菅政権の姿だ。

 2年前の8月、民主党の政権奪取が明確になった時点で小欄でこの問題を取り上げ、首相と民主党の天下り禁止のスローガンが、天下りよりも尚問題の多い現役出向の受け入れに変わってしまうと警告した。


 国家公務員法の改正は、安倍政権に遡り、各省庁の大臣官房による天下りの斡旋を禁止した。一方菅首相は定年前の官僚の天下り斡旋は禁止したが、現役出向を許して抜け穴を作った。現役出向の問題点を、公務員改革に詳しい屋山太郎氏が喝破した。「公務員の身分を維持したまま企業に出来るとしたことで、天下り禁止は完全に有名無実化し、役所に不必要な中高年の官僚はいまや大手を振って企業に現役出向し、高給を食めるのです。菅首相は脱官僚と言いながら、逆に完全に官僚の支配下に置かれ、後ろ向きの改悪を受け入れてしまったわけです」

 菅政権の終焉は一日でも早いほうがよいと断ずるゆえんである。いま必要なのは、菅首相の理念と政策のすべてを真っ向から否定し、日本をまともな国にする政治である。


(週刊新潮、櫻井よしこ、2011/8/25より要約 )