春の夜の夢のごとし/平清盛 第48回「幻の都」 | (不肖)大河ドラマ批評家「一大河」の批評レポート

(不肖)大河ドラマ批評家「一大河」の批評レポート

海外ドラマより、韓流ドラマより、もっと面白いドラマがある。
日本でもっとも歴史あるドラマ、それが「大河ドラマ」である!
不肖・大河ドラマ批評家「一大河」が、古今の大河ドラマのレビューを
つづっていきます。

【登場人物一覧】
http://www9.nhk.or.jp/kiyomori/cast/


【第47回「宿命の敗北」のあらすじ】
http://www9.nhk.or.jp/kiyomori/story/48.html


【今週のひとこと】
「たとえ武士の世と呼べずとも、わしの出会うた身内、敵味方、友、師、
皆の生きた証が、この福原の都なのじゃ」
(平清盛)




【レビュー】
『平清盛』も、今回の「幻の都」で残すところあと3回となりました。
1年って本当に早いですね。



悪名高き?『江 ~姫たちの戦国~』の最終回で、『平清盛』の予告を
見たときの興奮は今でも忘れません。



当時の各国の反応

↓↓↓

$(不肖)大河ドラマ批評家「一大河」の批評レポート



さて、前置きはここまでにしておいて、今回はドラマ終盤にありがちな
「回想シーンの回」でしたね。



よって、書くことあんまりないんじゃないかなーなんて思ったんですが、
良かった点、悪かった点に分けてみると、案外おもしろい批評ができそうかなと。



まず良かった点、いきましょう。



良かった点は、南都焼討ちを嬉々として報告する重衡のシーンですね。



最初見たときは、「とんでもないことをしでかしておいて、なにをこいつは…」
と思ったものですが、2回目に見返した時に「清盛が神輿に放った矢の報い」
考えると、なかなかどうして、皮肉が効いてて面白い。



重衡の報告を聞く清盛の表情が、かつての自分を見ているようでしたね。
清盛だって神輿に矢を放ったときは、父・忠盛や忠正叔父を驚かせたものですが、
同じようなことを、息子の重衡がやってのけているわけですから。



それを端的にあらわす重衡の台詞


「な~に、天もお許しくださりましょう」
「我らが焼いたは仏にあらず!」
「仏を盾に狼藉を働く、不埒者どもにござります!」



あまつさえ、それを抑えられるのは平家のみとのたまわっているわけですから、
「驕れる者」も極みに達したと言わざるをえない。



何の因果か、清盛が神輿に放った矢、「腐りきった世を変える矢」は、
巡り巡って、ふたたび清盛に帰ってきたわけですね。

この、皮肉の聞いた対比は実に面白かった。



それでは、次に悪かった点、というか物足りないと感じた点を見ていきましょう。
悪かった点は2つ。



1つは、宗盛が清盛に環都を進言する場面。



劇中の台詞を拾っていくと、どうやら環都は宗盛ひとりで決断したような
体(てい)になっていましたね(あるいは、盛国が何か吹き込んだように見えなくもないが…)



うーん、清盛の悲願であった福原への遷都をやめよというわけですから、
命がけの進言であるはずなのに、何か切迫感に欠けるなーという印象でした。



前回の忠清の「平家は武門ではござりませぬ」発言のインパクトに比べると、
明らかにトーンダウンしていると感じざるを得ない。



さらに言えば、兄・重盛が清盛と法皇の間で病を抱えるほど思い悩んだあのときの
場面に比べても、説得力に欠ける。



時間と予算がなかったのかもしれませんが、宗盛が追い詰められて、追い詰められて、
ついに環都を進言するという一連のプロセスがほしかった。

回想シーンと自分語りだけじゃ、やっぱり物足りない。



たとえば、幼少の頃に忠正叔父に作ってもらった馬。
第45回「以仁王の令旨」の回で、宗盛の息子が拾ってきてましたね。



あれを今回のお話でもう一度出して、それを宗盛が徹底的に踏み潰すシーンを
入れるとかすると、けっこう面白かったんじゃないのかな、と。



暗君のように見えているようで、実際は内面にコンプレックスを抱えているという
おいしいキャラクター設定なわけですから、そこを最大限に活かさなきゃ。



半端に「以仁王の令旨」でそのシーンを使うくらいなら、宗盛最大の見せ場である
今回の環都の進言のシーンに持ってくればよかったのに…と思わなくもない。



ちなみに、2005年の大河ドラマ『義経』では、鶴見辰吾氏演じる宗盛が、
義経と清盛のキーアイテムである「日輪の落書きをした屏風」を燃やす
という印象記なシーンがあったんですけどね…



もうひとつの悪かった点は、今回ほんとうに興ざめでクレームの電話でも送って
やろうかと思ったんですが…



環都決断の後の宴のシーンで、「現代語訳のテロップが表示されたこと」ですね。

あれはひどい。
映像よりもテロップに目が行ってしまうじゃないですか。



いま大人気の時代劇映画『のぼうの城』だって、田楽踊りのシーンに現代語訳の
テロップなんて出てませんでしたよ?



天下のNHKですから、一部の視聴者にとっては「意味がわかってよい」のかも
しれませんが、中学レベルの古典の知識があれば、あの歌の意味というかニュアンス、
完璧でなくともある程度は理解できると思うんですよね。



清盛の表情なり、挿入されるシーンなりで、いくらでも歌のニュアンスを補足する
ことはできたと思うんですが、そこの努力は怠ったのか…と、残念でならない。



『平清盛』序盤でさんざん「わかりにくい」「難しい」と非難され、いきつく先が
歌に現代語訳のテロップになってしまったのも、まあ、わからいではない。



でもね、和歌や舞のシーンで現代語訳のテロップを出すようになったのは、
まさに『平清盛』からなんですよ。



決して、わかりにくい作品ではないと思うんですが、これって実は視聴者側にも
問題があって、つまりは、視聴者の時代劇リテラシーというか、古典への理解が
低下してるんじゃないかってことなんです。



あまりにも横道に逸れそうなのでこのへんで止めときますが、とにかく制作者は
映像や役者さんの演技で補うとかの努力を惜しまず、視聴者の側も時代劇を観てるんだ
という意識は持っていてもらいたいですね。



さて、残すところあと2回。
次回、第49回「双六が終わるとき」、ご期待ください。



公式サイトのラスト予告の動画はご覧になりましたか?
↓↓↓
http://www9.nhk.or.jp/kiyomori/movie/



クリスマスプレゼントに! NHK大河ドラマ『平清盛』完全版 第壱集



平清盛 完全版 Blu-ray-BOX 第壱集



平清盛 完全版 DVD-BOX 第壱集


最近、劇中で『タルカス』が流れなくなってやや寂しいですね。


平清盛×吉松隆:音楽全仕事 NHK大河ドラマ《平清盛》オリジナル・サウンドトラック

ブログパーツ