清盛の賽は投げられた/平清盛 第35回「わが都、福原」 | (不肖)大河ドラマ批評家「一大河」の批評レポート

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不肖・大河ドラマ批評家「一大河」が、古今の大河ドラマのレビューを
つづっていきます。

平清盛 第35回「わが都、福原」レビュー


【平清盛 登場人物/キャスト】

http://www9.nhk.or.jp/kiyomori/cast/index.html




【第35回「わが都、福原」のあらすじ】

http://www9.nhk.or.jp/kiyomori/story/35.html




【今週のひとこと】

それがとてつもないことをしでかす兄を持つ、弟の運命(さだめ)というものじゃ
(平頼盛)




【レビュー】


ボウズ!(明雲)ボウズ!(明雲)ボウズ!(明雲)キャモーン!!



明雲役の腹筋善之介氏は『仮面ライダーW』のサンタちゃん役だよ!
というどうでもいい小ネタから始まる土曜の出勤前だよ!!



明日も仕事だ朝日がまぶしい一大河でございます。



今週末、幕張メッセで開催される東京ゲームショウに出展するための
作業が佳境に入っており、もはや仕事の記憶しか残っていないような
状態であります。



じつは先週より放送が始まった『負けて、勝つ』の録画ぶんもまだ
観ていないのです…



それでは涙を拭いて、『平清盛』第35回「わが都、福原」のレビューを
お送りいたします。



今回のお話を一大河流にひとことでまとめると、
「脚本の素晴らしさは評価に値するが、演出がもう一歩」



まず、今回のエピソードを、第22回「勝利の代償」と
結びつけて観た視聴者も多いことでしょう。



なぜなら

清盛が頼盛に送った言葉はすなわち、保元の乱の折に自らの手で
斬った、叔父・忠正へのメッセージとリンクしているから。



たとえば

「一門を追いやってくださりませ!」と清盛に迫る頼盛に対し、
「父上の目指した世作りにそなたは断じて欠かせぬ」と答えた場面。



これは保元の乱の後、賊に身を貶した忠正に対し、
「叔父上は一門に欠かせぬお人にござります!」と、必死に
忠正を止めた清盛の姿と重なりますね。



さらには、重盛、宗盛らにも明かさなかった福原都構想を
頼盛のみに明かす場面は、保元の乱の後、播磨守に任ぜられ、


「ご存知ではござりましょうが、播磨はそれは豊かな国にござります」

「魚はよう取れ、作物は実り、よき材木、絹、紙も盛んに産しまする」

「何か面白きことができそうな気がしませぬか?」


と、忠正に夢を語ったあの場面とリンクしています。



今思えば、清盛のあのときの言葉は、この福原都構想の伏線だった
わけですよね。



見事な伏線回収に脱帽です。



そして、先代・忠盛に重ねた
「これより先も、口うるそう一門を支えよ」という言葉の意味。



いや、ここでこの台詞を持ってくるとは、視聴者としても
まさに、ぞくぞくするわけです。



つまり

清盛の言葉は、清盛の姿を借りた父・忠盛から子・頼盛への言葉であり、
忠盛・忠正先代の兄弟たちの夢の続きをともにつないでいこうという
子らの意志なのである。



この大いなる伏線回収および、ファンサービス的な台詞回しはじつに
見応えがありましたが、オールOKとは言えないところがひとつ。



頼盛と忠正を重ね合わせるなら、第20回「前夜の決断」にて、
忠正が敵方に着こうとする頼盛を止め、自ら汚れ役を買った
あのシーンの回想を持ってこなきゃあ足りんでしょう!



あるいは、第23回「叔父を斬る」の回で、処刑場に向かう忠正を
見送る頼盛のシーンとか。



何を隠そうわたくし、「前夜の決断」の回こそ、現在までの
『平清盛』の放送回の中でも最高傑作だと思っておりますゆえ、
忠正叔父の回想少なすぎ!そこは個人的にはマイナスかな、と。



もうひとつ、面白い構成だなーと思ったのが、今回のお話自体が
「賀茂川の水」「双六の賽」「山法師」の要素で構成されて
いたことです。




前回の放送で白河法皇に誓った、三不如意を意のままに操って
みせるという言葉の通り、

「賀茂川の水」=「大輪田の泊(海洋運業)」
「双六の賽」=「福原隠居(後白河の台詞を参照)」
「山法師」=「出家(明雲との和解)」


それぞれがつながっているんですね。



そして、それぞれがまだ乗り越えたとは言いがたい、絶妙な
バランスの上に成り立っていること。



視聴者は、清盛が如何にしてこの三不如意を相手に奮闘するか、
そこに注目して観ることで、より後半の展開への面白みが
増すわけです。



じつに挑戦的な脚本的アプローチと言えます。



この三不如意が崩れていくときこそ、『平清盛』における
平家の「春の夜の夢」の終わりのはじまりなのでしょう。



最後に、源氏方にも政子、遮那王と主要メンバーが揃いつつありますね。
なかでもわたしが注目しているのは、杏さん演じる政子※。


※「政子」は鎌倉幕府が成立した後に呼ばれだした名前なので、
幼少期の呼び名は不明。



あの(いい意味での)汚れっぷり、のちに「尼将軍」として後世に
名を残すあたり、源氏勢の中の「清盛的ポジション」にいる人物として
注目しています。



歴史の表舞台に出るきっかけとなる人物を罠でひっかける
ところとか、もろに少年期の清盛らしいのですが…
深読みしすぎか?



それでは、来週は早くも暗雲立ち込める様相を呈している
次回、第36回「巨人の影」に乞うご期待!



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