鬼の副長「待たせたな」/『新選組!! 土方歳三 最期の一日』 | (不肖)大河ドラマ批評家「一大河」の批評レポート

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海外ドラマより、韓流ドラマより、もっと面白いドラマがある。
日本でもっとも歴史あるドラマ、それが「大河ドラマ」である!
不肖・大河ドラマ批評家「一大河」が、古今の大河ドラマのレビューを
つづっていきます。

鬼の副長「待たせたな」/『新選組!! 土方歳三 最期の一日』


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タイトル:『新選組!! 土方歳三 最期の一日』
放送:2006年(平成18年)
視聴率:9.8%
オススメ:★★★★☆


【キャスト】
土方歳三(陸軍奉行並)/山本耕史
榎本武揚(総裁)/片岡愛之助
大鳥圭介(陸軍奉行)/吹越満
島田魁(新選組頭取)/照英
相馬主計/小橋賢児
尾関雅次郎/熊面鯉
山野八十八/鳥羽潤
蟻通勘/:山崎樹範
市村鉄之助/池松壮亮
武蔵野楼女将/南野陽子
永井尚志(箱館奉行)/佐藤B作



「これは死ぬための戦いではない。これから俺達は、生きるために戦うんだ」
(土方歳三)




【あらすじ】
1869年(明治2年)5月10日夜、土方歳三と新選組は
薩長連合軍への夜襲に成功していた。



一方、箱館政府総裁・榎本武揚と陸軍奉行・大鳥圭介は
決戦を明日に控え、重臣たちと最後の盃を交わしていた。



この会合にて総裁・榎本は、
「箱館政府は明日、新政府軍に降伏する」
と宣言する。



降伏の計画が進んでいることを知らぬ土方は、
小姓の市村鉄之助を呼び出し、箱館から脱出し、
遺品を多摩へ届けよと命ずる。



土方は、明日の戦を己の死に場所と決めていた。



【レビュー】
2004年末、三谷幸喜氏が脚本を手がけた第43作『新選組!』
高い評価を得、その幕を閉じます。



最終回は局長・近藤勇の斬首で締めくくられ、その後の新選組、
とくに土方歳三が戦地を転々とし、五稜郭で死を迎えるまでの
エピソード
が描かれることはありませんでした。



そのような経緯もあって、番組終了から視聴者からの続編希望の電話が
NHKに殺到し、大河ドラマとしては異例の、スペシャルドラマという
かたちでの続編の制作が決定しました。



しかし、制作は順調にはいかなかったんですね。



なぜなら、

近藤勇死後の新選組の転戦は、それだけでも大河ドラマが
一本作れるほどの激動の一年であり、90分のスペシャルドラマ枠に
収めるのは困難という判断が下された
からです。



結果、「土方が箱館戦争で戦死したその日を描く」という、本編の
「ドラマ一回分で一日の出来事を描く」と同じ手法が採用されました。



そして、
2006年の元日、お正月スペシャルドラマとして
『新選組!! 土方歳三 最期の一日』は放送されました。



この作品の見どころは、
ともすれば歴史の影に隠れがちな、敗軍・幕府軍。
彼らにも無邪気な子供のような夢があり、その夢に命を捧げた侍がいた。




それを、劇作家・三谷幸喜氏が「対話劇」で描いた点です。



例えば、

登場人物の心情心理が対話のなかで変わっていくところ。
箱館戦争そのものよりも、開戦前夜の人間ドラマにウエイトを置いていること。



派手なチャンバラこそありませんが、土方、榎本、大鳥の三人が、
はじめは反発し合いながらも次第にお互いを認め、最後は手を携え合って、
生きるための戦いに赴く。




そのさまを、3人の名優が演技と台詞で魅せてくれます。



もちろん、美化されているところはあります。



でもですね、

一大河は、山本耕史氏、片岡愛之助氏、そして吹越満氏の演技を見て、
幕臣3人が本当にこういう志で戦っていたら、先人は偉大だな、同じ日本人として
誇らしいなと心底、思いました。




本作においても、榎本はいったん降伏を考えますが、新選組として
最後の最後まで戦い抜くと誓った土方の言葉と、生き抜くための
作戦が、榎本の心を動かします。



最後の最後まで、あきらめない。



一昨年の『龍馬伝』では、攘夷派の視点から幕末を描かれましたが、
佐幕派の人々も、方法は思想は違えど根っこの根っこは、この国を
外敵から守りたい、この国を独立させたい、
であったのです。



このような志を持った人々によって国は開かれ、近代国家日本が誕生したことを
改めて考えさせられます。



教科書の字面だけを追うのではなく、もっともっと掘り下げて、
幕末・明治という激動の時代を駆け抜けた人々の思いに触れること。




それこそが、歴史を学ぶ意義というものです。



『龍馬伝』の武田鉄矢氏演じる勝麟太郎の台詞、
「こっちから見るのと、こっちから見るのとでは、物事はまるで違ったものに見える」



大河ドラマでは数少ない、敗軍・幕府軍側から幕末・維新を捉えた本作。
本作を観ることで、また違った歴史の見方が養われ、「視野の広い歴史観」が
醸成されていきますよ。

ぜひ、ご覧になってみてください。



コメントをお寄せください。
「『新選組!』『新選組!!』を観ていた方は、どのような感想をお持ちですか?」
「維新志士より旧幕府軍・新選組が好きなのはなぜですか?」


お待ちしております。



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