1月25日の会見で中邑は「こんなレスラー他にいなかったと思います」と語った。
私は2002年8月の中邑のデビュー戦を日本武道館で観戦している。
鳴り物入りで新日本に入団し、安田忠夫戦でデビュー。
当時、正規軍ではなくヒールだった安田相手にデビュー戦を行った時点で既にちょっと普通ではなかった。
普通は道場で一緒に汗を流してくれた先輩の胸を借りる爽やかなデビュー戦が多いのに、厄介な安田相手。今考えるとその後の道を暗示するかのようなマッチメイクだった。
総合格闘技への挑戦。史上最年少IWGP王者。
とにかくアントニオ猪木の期待に応えないといけないという感じで、若い頃からずいぶんと色んなものを背負わされた。
でも、プロレスラーとして総合の経験があるというのは絶対にプラスなキャリアだし、今現在のクネクネしたスタイルも、昔の「総合の経験」が背景にあるからこそ、説得力と奥深さを持つ。
一時期、新日本の人気が低迷し、プロレスから離れてしまい総合格闘技ファンにシフトチェンジしていた知り合いのが「中邑だけは気になる」と語っていたのを思い出す。
それは、やはり「総合の経験」があるからこその「気になる存在」だったようだ。
そして、真猪木軍なる括りにもされた時期もあったが、次第に猪木へのアンチの思いが募っていく。
大阪ドームで急遽変更されたカードで試合をし、更に試合後に猪木の鉄拳制裁を食らった際はもの凄い目つきで猪木を睨みつけていた。
そして、後に「猪木―!」と絶叫し、引退して既に新日本も去っている猪木に対戦を迫るというガチンコな挑戦表明は、一瞬ものすごくワクワクさせてくれた。
そして、スタイルを確立できず悩んだ時期もあったが、クネクネにたどり着いて今現在に至る。
ここ数年、インターコンチのベルトを保持し、誰と防衛戦をやるのか?という部分で本当に楽しませてくれた。
1・4ドームも毎年、中邑絡みのカードが一番の注目だった。
桜庭、棚橋、飯伏、AJ・・・毎年1・4は中邑絡みのカードにワクワクした。
そしてまた、ビッグマッチの入場シーンも見ものだった。
マイケル・ジャクソン風や忍者風などなど・・・中邑でないと様にならない演出だった。
そんなことから私は中邑=グレート・ムタという位置づけで考えていた。
ムタはビッグマッチで誰と戦うのか毎回楽しみだった。
ホーガンだったり、人生だったり、猪木だったり、パワーだったり、ライガーだったり・・・バラエティに富んでいた。
そして、入場シーンも楽しみだった。上からワイヤーで降りてきたり、瞬間移動だったり、コスチュームやペイントの色なども楽しみだった。
そして、独特な試合中の動き・・・
グレート・ムタが醸し出していたものを、中邑真輔は持っているように思う。
となるとだ・・・
噂されているWWEの参戦。
期待せずにはいられない。
アメリカでトップスターになったムタの要素をスッピンの状態で中邑は持っている。
いわゆる「神秘性」というようなものだと思うが、そういう東洋人の神秘的な部分と、エンターテイナーとしての華やかさを持ち合わせていると思う。
だからこそ、WWEから声がかかったのだろうし、日本人として自信を持って送り出せる。
今回の退団のニュースで悲しむ日本のファンも大勢いるだろうし、新日本にとっても大きな損失だとは思うが、過去に日本で最大の団体である新日本プロレスの正真正銘のトップレスラーがWWEに入団したことは初めてであって、世界最大の団体に「欲しい!」と言わせたわけだから、これは本当に素晴らしいことだ。
新日本としても世界に誇れる人材を生んだということだから喜ばしいことだと思う。
野球の世界では日本のトップ選手がメジャーに挑戦するのは当たり前。
それと同じことが今回プロレス界で起こったということだ。
中邑としては新日本が人気が回復した今だからこそ「もう自分がいなくても大丈夫だろう」と思っての決断だっただろう。
今回、AJもいなくなってしまったし、オカダ、棚橋を含めたトップ4のうち2人を失うわけだから損失としては大きいとは思うが、それでも今の新日本なら大丈夫!と思わせるだけの人材は豊富だし、底上げするにも良い機会かもしれない。
果たして、中邑はNXTからなのか1軍からなのかは分からないが、私の個人的な予想では、いわゆるキャラクターを別のものに切り替えることなく、そのままの「中邑真輔」でWWEは迎え入れるような気がしている。
アメリカでの人気も凄いらしいし、大歓迎で迎えられる絵が頭に浮かぶから、楽しみで仕方ない。
またWWEネットワークでいつでも日本で試合を観れる環境があるのも有難い。
ライオンマークを背負って世界で活躍する中邑選手を、これからも応援しよう!
あと2試合、新日本を堪能して、世界に羽ばたいていってほしい!!