社会に出た日の最初の食事を覚えている。

 

もう何十年も前の事だ。

 

 

親が半分たべて

 

私の引っ越し先のアパートに置いていったポンパドールのチェリーデニッシュ。

 

電気もつけずにボソボソ食べた。

 

 

一円の貯金どころが貯金通帳もなしに社会に出たので、実態は笑うほどビンボー。

 

ご飯にクノールのコーンスープをかけたのが唯一のご馳走。

 

ふやけるとドリアと変わんないじゃん。

 

と、思うようにしていた。

 

 

 

昼間は大都会でOLをしながら夜は近所でバイト。

 

居酒屋。

 

居酒屋の前に

 

アパートの目の前のファミレスに面接に行ったけど、落とされたハートブレイクガーン

 

 

 

部屋の窓の前の塀に

 

度々でかい猫が通るのを知って、勝手にごんべーと名付け孤独をいやす。

 

窓をあけて手の伸ばし、毎日小さいおにぎりを置いておき、仲良くなった。

 

 

3年後。そのアパートを引っ越す時だ。

 

どんどん荷物を運べるように、段ボールを置いて玄関ドアを解放しておいたら

 

ごんべーが入ってきたあしあと

 

はじめて部屋に入ってきたわりに全く躊躇がないやつだ。

 

 

唖然として見ていると

 

正座して服を畳む私の太ももにゆっくり乗ってきてそのまま全体重を預けてくる。

 

重くてあたたかくやわらかいごんべー。

 

3年もやり取りしたけど

 

こんなに近くによったのははじめてだな。

 

 

ごんべー、ありがとね。

 

ごんべー、さよならだぞ。

 

 

 

・・・思い出がありすぎて、あれから行くこともなかった関東のある町に

 

偶然、昨日19歳児が行った。

 

勉強を教えてほしいと依頼があったのだ。

 

 

まさかと思って住所を見たら、

 

私がバイトの面接で落とされたあのファミレスの跡地に立つ場所だった。

 

1分位歩いた場所にある、例の住んでたアパートを検索したらなんとまだあった不安

 

 

そうか、私が面接で落ちたあの場所で、娘が数学を教えてきたのか。

 

 

人生はあっという間に一周する。

 

 

 

ごんべーは、あれからどうしただろうか。

 

 

かしこ

 

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