3月25日(水)
 
冬よりの

 

 
 
 
 
 
本日の読書:日傘のお兄さん 豊島ミホ

 

カバー裏より

『それは突然だった。保育園の頃、毎日遊んでくれた大好きだったお兄さんが、中学生になった夏美の前に現れた。「追われているんだ。かくまってくれないか」なんとお兄さんはロリコン男としてネット上でマークされていて⁉こうして、夏美とお兄さんのちょっとキケンな逃避行が始まった――。可愛いだけじゃない。女の子のむきだしの想いが胸をしめつける、まぶしく切ない四つの物語。』

目次
・あわになる
・日傘のお兄さん
・すこやかだから
・ハローラジオスター

あとがきによれば、作者の就活前の「人生で最後」の本のつもりだったようです。
売れない作家になどなるつもりはなく、社会に必要とされる企業人になるつもりだったと。
それがどうして作家を続けることになったのかはわかりませんが、この才能をここで終わらせていては惜しいと誰かが強く引き留めてくれたのだと思いたい。

つまりこれは、作者が学生のうちに書いた作品集なわけで、確かに若いなーと思う部分はありながら、彼女にしか書けないであろう何かが、どの作品にも確かにあると思いました。
それが何かと、一言で言えない自分がもどかしいのですが。

『日傘のお兄さん』は、日光を浴びると皮膚に多大なダメージを受けるために、幼い頃から日傘をさすことを義務付けられていたお兄さん(当時中学生)と、保育園児の夏美が10年の時を経て再会し、二人が毎日遊んでいた竹やぶをもう一度目指す、という話です。

今でこそ男性が日傘をさすのも珍しいことではないのかもしれませんが、20年前の男の子が、常に日傘をさしているというのは、いじめや無視が行われていたと容易に想像できます。
そして、大人になったとてその時の痛みが癒えるはずがない、ということも。

先日読んだ朝井リョウの『正欲』を思い出しました。
マイノリティに対するマジョリティの一方的な糾弾。
性だけじゃないんだよ、それは。
けれど『正欲』よりこちらの方が健康的。

この作品集に収録されている4作はどれも、ちょっと他の人と違ってるところを持っている。
それを少し気にはしているし、生きにくいとも思っているけれど、しょうがないとあきらめてもいる。
どうせわかってもらえない、なんて卑屈なことは思わない。

理解してくれているのかはわからないけど、受け入れてくれる人は傍にいる。
お兄さんの辛さは想像しかできないけど、夏美は将来医者になることを決める。
おにいさんちの跡を継ぐために。
そして夏美はその全てを親友に話す。
親友のみっちゃんは「ふうん」と言ったあと「内緒にするね」と笑う。
ああ、いい話だなあと、私は思った。