10月1日(木)
毎年この日になると『10月1日では遅すぎる』という本を思い出して、一年がすぎるのって速いなあと痛感する。
9月もあっという間に過ぎ去って、読んだ本はなんとか20冊。
今月はもう少し読めたらいいと思うけど、ソルジェニーツィンがなんとしても難敵。
★5つは3冊。
『ウォッチメイカー 下』は、シリーズものの途中作品では異例の星5つ。
ライムとウォッチメイカーとの緊迫したやり取りが面白すぎて。
殺してしまった方が楽であろう時でも、不要な殺人は犯さず、目的遂行のために捜査陣を惑わし続ける。
二重三重に仕掛けられたフェイク。
それを見破り追い詰めるライム。
シリーズ随一との評判は伊達ではなかった。
『幽冥の岸』は十二国記の新刊。
既刊本を読み返さなかったのがつくづく悔やまれるけれど、このシリーズで景と戴が核となっている理由に気づくことができた。
陽子と高里要が蓬莱で育ったから、なんだね。
戴国の未来が、泰麒の今後が、信じられる終わり方でした。
これをもって「シリーズ完です」と言われてもしょうがないけど、まだ描き続けてほしいと願っています。
『目でみることば 2』もシリーズの途中作と言えば言える。
なぜ★5つかというと、間違って覚えていた由来の正解を知ることができたから。
知らないことを知るよりも、間違いを是正される方が、感動が深い気がする。
9月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:6511
ナイス数:734
宗主の妃 (ハヤカワ文庫 FT フ 4-2 アヴァロンの霧 2)の感想
タイトルが『宗主の妃』なので、主人公はグウェンフウィファルになる。ところが私はどうしても彼女のことを好きになれない。グウェンフウィファルは自分とキリスト教とランスロットのことしか考えていない。ブリテンに最初に住んでいたのは彼らなのに。あとから来たキリスト教徒が「自分たち以外は全部敵」と言い放つ傲慢。「新たな切り口のアーサー王伝説」と言われている理由がわかった。単純な騎士物語ではなく、ランスロットとグウェンフウィファル、トリスタンとイゾルデの恋愛物語でもなく、宗教を軸にしたアーサー王の物語なのだ、この本は。★★★★☆
読了日:09月02日 著者:マリオン・ジマー ブラッドリー
ウォッチメイカー 下 (文春文庫 テ 11-18)の感想
これは、想像の上を行く展開でした。ライムが追うウォッチメイカーの事件と、サックスが追う腐敗警官の事件。この二つが交差することは予想できましたが、思った以上に正面から交じり合っていました。確かにいつもの展開から考えると、ああなってこうなるよね、と予想してたら、ああなってこうなった後さらにそうなるわけですか!でも、それはまだ本命というわけではなく。サックスの心の痛手も、さっくり解決。ウォッチメイカーについては結局逮捕に至らなかったわけで、この先またライムとかかわることがあるということなんでしょうか。★★★★★
読了日:09月03日 著者:ジェフリー ディーヴァー
薬屋のひとりごと 2 (ヒーロー文庫)の感想
アニメのシーズン1がこの辺りまで。アニメは実に丁寧に作られているというか、この文体があまりにもそっけないので、アニメの方で補完している部分があるくらい。アニメほど小蘭(シャオラン)の出番がないが、実は彼女の存在が結構スムーズな状況説明になっていたのだとわかる。徐々に読者には、壬氏が宦官でないことも、年齢を偽っていることも判ってくる。だから壬氏の命が狙われているということは、その正体は相当高貴な方であることがほのめかされる。アニメや漫画を先に見ていると、すでにヒントは1巻からちりばめられているとわかるが。★★★★☆
読了日:09月04日 著者:日向 夏
目でみることばの感想
これは言葉の写真集である。日常使っている言葉の由来となったものを、写真に撮る。と言っても簡単なことではない。
今どきメジロを飼うような人は減っていて、「目白押し」の写真は撮れなかったそうだ。「勝手」というのが、弓道で矢を持つ方の手の意味で、自由に使える手だから勝手。台所は女性が自由に使える場所だからお勝手と呼ぶようになったというのは初耳。「勝負服」の由来とその理由も初めて知った。面白い。表紙の写真は「ひっぱりだこ」。★★★★☆
読了日:09月06日 著者:おかべ たかし
日曜日は青い蜥蜴の感想
今回、上橋菜穂子の『精霊の守り人』の文庫解説を読んで、膝を打つ思いだった。「モノが違う」。異なる世界を一から構築することは、作家みょうりに尽きるのかもしれないけれど、これは相当に難しいミッションである。ゲームのようにアイテムが用意されていて、好きなように並べればいいというようなものではない。その世界の文化は、歴史は、何をもって特徴とするか、その中で登場人物たちはどう生きるのか。もしかしたらどこかの並行世界に本当にあるかもしれないと思うような臨場感を持った異世界が、上橋菜穂子の書く作品だと思う。★★★★☆
読了日:09月10日 著者:恩田 陸
沈んだ世界 (創元SF文庫) (創元推理文庫 773)の感想
突然太陽の活動が活発になり、地球の気温が急上昇した世界。極地の氷は融け、海水面が数十メートルも上昇し、人類をはじめ地上の生き物たちの生息環境は激変した。その中で、人類はどうなるのか、とか、そういう世界でどう生きていくのか、とか、そういう哲学的な、形而上学的なことを考える小説なのだと思いました。そういうの、嫌いじゃないのですが。60年代の、地球温暖化なんてかけらもなかったころの作品なので、そこに価値はあると思うけど、今のリアルな温暖化の現状を考えると、他人事として作品を楽しむことはできなかった。ごめんね。★★★☆☆
読了日:09月11日 著者:J.G.バラード
ソウル・コレクター 上 (文春文庫)の感想
読んでいて違和感を覚える「シックスティーン」という表記。最初は犯人が16歳の少女たちを狙っているのかと思った。けれど老若男女を問わず、その辺にいる人々を見な一律に「シックスティーン」と脳内で呼んでいる。4桁×4つの数字、つまりそれが「シックスティーン」だと気がついて、ああ、あの番号ねと思ったところから、作者の書きたかった全貌は見えた気がする。単純に読むと「すべてを手に入れたい」犯人は、すべての情報を知り権力を持ちたいあの人に重なるが、そんな簡単でいい?あの人の後ろに巧妙に隠れている人がいるのかしら。★★★★☆
読了日:09月13日 著者:ジェフリー・ディーヴァー
収容所群島〈3〉の感想
3巻目にして、壮絶な、容赦のない収容所の暮らしになれてきました。人の感性って、あっけなく鈍るものだね。けれど、胸の悪くなるような描写が続く中にソルジェニーツィンが要れる鋭い突っ込み、皮肉が読み取れるようになった。人の命がプライスレスで作られた帝国は、あまりに張りぼてではないか。農作物の収穫量は年々落ち、工業最頻の粗悪化は止まらず、優秀な人材から粛清した結果文字も読めないような人たちが管理監督をしている始末。自分はうまくやれるなんて思っている人たちから、足をすくわれていく。そんな楽園の正体。★★★★☆
読了日:09月15日 著者:A.ソルジェニーツィン
幽冥の岸 十二国記 (新潮文庫 お 37-66)の感想
忙しくて振り返り読書をしないまま読んだけど、やっぱり『白銀の墟 玄の月』だけでも読んでおくべきだった。できれば全部読み返したほうがよい。ネタバレなしで感想を書こうとなったら、難しい。だって『十二国記』って、細部にわたってちりばめられたあれやこれやを掘り起こして考察するのが醍醐味なわけで。でも、どの短編も、とてもいいとだけ言っておこう。どんな状況に陥っても、人は生きていかねばならない。自分を救うのは自分。相変わらず冷徹な世界観。でも、読後感はとてもいい、今回は。後を引きません、今回は。★★★★★
読了日:09月17日 著者:小野不由美
薬屋のひとりごと 3 (ヒーロー文庫)の感想
この巻では子翠(シスイ)が猫猫の前に姿を現し、小蘭(シャオラン)を通して仲良くなっていくのだが、この後を知っているからちょいと切ない気も…。それよりも、壬氏の正体が匂わせから確定へ。猫猫はかたくなに知らないままで通そうとしているけれど、本当は気づいているよね。たびたび命を狙われる壬氏は、この巻では銃で狙撃されるのだけど、狩の主催者である子昌(シショウ)が何事もないようにふるまうっていうのがそもそも怪しいじゃろうが。普通捜しに行かないか?なんでお咎めなしなの?楼蘭妃の父だから?忖度がすぎるって。★★★★☆
読了日:09月18日 著者:日向夏
牡鹿王 (ハヤカワ文庫 FT フ 4-3 アヴァロンの霧 3)の感想
グウェンフウィファルよ。こいつはずっと自分は被害者なのね。アーサーの妃でありながらランスロットと結ばれたのは、アーサーがそうしろと言ったから。自分は敬虔なキリスト教なのに、唆したアーサーが悪い。絶対に自分が悪いとは思わない。自分の浅はかさも、浅ましさも、懺悔したから許されたと信じている。いつも自分を棚上げして他人を責め、人と自分を比べては自分を不幸だと嘆く。キリスト教は、宗教は、そんな彼女の心の闇を救う一助にはなっていない。どうしてああも非寛容で独善的なんだろう。★★★★☆
読了日:09月19日 著者:マリオン・ジマー ブラッドリー
目でみることば 2の感想
今回は知ってたつもりで間違えて覚えていた言葉がいくつかあって、勉強になりました。例えば「銀ブラ」。銀座をぶらぶら散歩することがもともとの意味だと思っていましたが、銀座でブラジルコーヒーを飲むことだそうです。「丼勘定」は、職人の腹掛けに付けた物入れのことを「丼」というのですって。知らなかった。表紙の写真は「長い物には巻かれろ」。てっきりぐるぐる巻きにまかれるイメージでしたが、実際にやってみたら、写真のように鼻に腰を下ろす形で巻かれたのではないかと結論になったようです。由来を知るって、楽しいよね。★★★★★
読了日:09月20日 著者:おかべ たかし
月曜日は水玉の犬 (単行本)の感想
私は順番をつけるのが苦手なので、マイベストを作ることができない。それなのに、『○○な本3冊』とお題を出されて3冊を選び出す著者に頭が下がる。私よりはるかに多い読書体験の中から、適切な3冊を選び出す才能。せめてそのくらいは、できるようになりたいものだけれど。ところで、3冊の選からは漏れたけど、「笑い」の3冊の中にコニー・ウィリスの『航路』が入っていたのに驚いた。私にとって『航路』は、タイタニックと脳死の話なので、どこに笑いの要素があったのか、まったくピンとこない。ああ、ここでも読みの浅さが悔やまれる。★★★★☆
読了日:09月22日 著者:恩田 陸

王妃の帰還 新装版 (実業之日本社文庫)の感想
今どきの中学生こんな感じなのかなあと、半信半疑のような気持で読んだ。クラスの中に勝ち組の子がいる、というのはわかる。主人公範子のクラスのトップに君臨していた滝沢さんが、クラスの公開裁判に掛けられ、その座を追われてからの話なのだが。クラスの中で孤立した滝沢さんを、空気の読めない担任の声掛けで範子たちのグループが引き受けることになる。このようなトップの交代と、追われた者に対するクラスメートの攻撃性が怖い。誰も明日は我が身と考えずに、安全地帯から攻撃することに対する無自覚。子どもって大人の背中を見ているんだな。★★★★☆
読了日:09月24日 著者:柚木 麻子
【小説6巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い3」の感想
トロンべ討伐の際、護衛の騎士に傷つけられたにもかかわらず、強大な魔力で土地を癒したマインの姿は、貴族社会に衝撃を与えた。家族を守るため、神殿で冬ごもりをすることになったマインだが、家族と離れた寂しさはぬぐえない。どうしてそんなに家族といることにこだわるのか。神殿で本の読み放題は喜ばしいことのはず。けれど、以前の人生で本を最優先した結果、大切な家族との時間を蔑ろにしてきたことに気づいたマインは、「家族との時間」は決して譲れない大切なもの。本と家族がマインの核なんだとこの巻を読めば理解できる。★★★★☆
読了日:09月25日 著者:香月美夜
ウォー・フィーバー: 戦争熱の感想
なぜ中東では紛争が治まることがないのか。『ウォー・フィーバー』は、その一つの答えなのかもしれない。それにしても、ディストピアの長編小説を書くということは、精神的に相当しんどいと思うのだけど、長年にわたりディストピア小説ばかりを描き続けるというのは、一体どんな気持ちがするのだろう。この短編集の後半に収録されている作品を読むと、空を飛ぶことへの憧憬と、拡大していく空間の中で自我を保つことの不安が繰り返し書かれていて、それは自由を求めながらも孤独に耐えうることのできない我々の姿のようにも思われた。★★★★☆
読了日:09月26日 著者:J.G. バラード
倫敦スコーンの謎 (創元推理文庫)の感想
買ってからずっと寝かせていたので、楽しみすぎて一気に読んでしまった…。一見バラバラな事件が四編、と思ったら、最後の謎が他の謎ともつながっていることに気づき、「しまった、もっとじっくり読むんだった」と後悔しきり。ミステリはね、焦って読んではいけないのよ。小佐内さんの、らしさがよく表れたのは『羅馬ジェラートの謎』かな。『桑港クッキーの謎』と『倫敦スコーンの謎』はなんとなく私でもわかった。私、このシリーズの、小鳩くんのモノローグが好きなんだなあと、しみじみ思った。★★★★☆
読了日:09月27日 著者:米澤穂信
奇妙な花嫁候補: ロンドン謎解き結婚相談所 (創元推理文庫)の感想
上流階級のグウェンと庶民のアイリス、元スパイではあるけれど庶民のアイリスと闇屋(裏社会)のボスのアーチ―、上流階級のグウェンと劇作家のサリー。イギリスは階級社会で、これほどまでに違う階級同士で付き合うって難しいのではないかと思う。とりあえず一人前の社会人として裁判所に認められたグウェンだが、次は親権を取り返さなければならない。そしてベインブリッジ家から独立することを考えているようだけど、今の環境ではダメなのだろうか。親権を取り戻して同居というのが穏当だと思うのだけど。★★★★☆
読了日:09月28日 著者:アリスン・モントクレア
目でみることば 有頂天の感想
まず最初に、シリーズ第三弾にしてサブタイトルが『有頂天』というのは、予想以上に早く次作の出版が決まり有頂天になっている制作陣の心情をあらわしたもので、「有頂天」という言葉の写真が収録されているわけではない。そして、第1集からの懸案事項であった「目白押し」は、撮影のコツはわかったものの、やっぱり撮影は出来ていない。ゆるくて、いいなあ。写真はもちろん「狸寝入り」。英語では「fox sleep(狐寝入り)」だそうです。←知ってた★★★★☆
読了日:09月29日 著者:おかべ たかし
【小説7巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い4」の感想
今回、アニメではさらっとしか触れられていない部分までしっかり書かれていて、いろいろと腑に落ちた。貴族の家に生れながら、もって生まれた魔力量が少なかったことと後ろ盾が弱かったために、幼いうちに神殿に入れられ、貴族となる道を断たれた神殿長という背景が見えたので、なぜあれほどまでにマインを嫌うのかがわかった。ご近所の人たちには、マインは死んだことにする。これだけで、うまくいくのか?と思っていたけれど、ちゃんと近所の人たちとお葬式を行ったんだ。死体ないけど。アルノーが、フランに抱いていた昏い思いとその報い。★★★★☆
読了日:09月30日 著者:香月美夜
読書メーター
毎年この日になると『10月1日では遅すぎる』という本を思い出して、一年がすぎるのって速いなあと痛感する。
9月もあっという間に過ぎ去って、読んだ本はなんとか20冊。
今月はもう少し読めたらいいと思うけど、ソルジェニーツィンがなんとしても難敵。
★5つは3冊。
『ウォッチメイカー 下』は、シリーズものの途中作品では異例の星5つ。
ライムとウォッチメイカーとの緊迫したやり取りが面白すぎて。
殺してしまった方が楽であろう時でも、不要な殺人は犯さず、目的遂行のために捜査陣を惑わし続ける。
二重三重に仕掛けられたフェイク。
それを見破り追い詰めるライム。
シリーズ随一との評判は伊達ではなかった。
『幽冥の岸』は十二国記の新刊。
既刊本を読み返さなかったのがつくづく悔やまれるけれど、このシリーズで景と戴が核となっている理由に気づくことができた。
陽子と高里要が蓬莱で育ったから、なんだね。
戴国の未来が、泰麒の今後が、信じられる終わり方でした。
これをもって「シリーズ完です」と言われてもしょうがないけど、まだ描き続けてほしいと願っています。
『目でみることば 2』もシリーズの途中作と言えば言える。
なぜ★5つかというと、間違って覚えていた由来の正解を知ることができたから。
知らないことを知るよりも、間違いを是正される方が、感動が深い気がする。
9月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:6511
ナイス数:734
宗主の妃 (ハヤカワ文庫 FT フ 4-2 アヴァロンの霧 2)の感想タイトルが『宗主の妃』なので、主人公はグウェンフウィファルになる。ところが私はどうしても彼女のことを好きになれない。グウェンフウィファルは自分とキリスト教とランスロットのことしか考えていない。ブリテンに最初に住んでいたのは彼らなのに。あとから来たキリスト教徒が「自分たち以外は全部敵」と言い放つ傲慢。「新たな切り口のアーサー王伝説」と言われている理由がわかった。単純な騎士物語ではなく、ランスロットとグウェンフウィファル、トリスタンとイゾルデの恋愛物語でもなく、宗教を軸にしたアーサー王の物語なのだ、この本は。★★★★☆
読了日:09月02日 著者:マリオン・ジマー ブラッドリー
ウォッチメイカー 下 (文春文庫 テ 11-18)の感想これは、想像の上を行く展開でした。ライムが追うウォッチメイカーの事件と、サックスが追う腐敗警官の事件。この二つが交差することは予想できましたが、思った以上に正面から交じり合っていました。確かにいつもの展開から考えると、ああなってこうなるよね、と予想してたら、ああなってこうなった後さらにそうなるわけですか!でも、それはまだ本命というわけではなく。サックスの心の痛手も、さっくり解決。ウォッチメイカーについては結局逮捕に至らなかったわけで、この先またライムとかかわることがあるということなんでしょうか。★★★★★
読了日:09月03日 著者:ジェフリー ディーヴァー
薬屋のひとりごと 2 (ヒーロー文庫)の感想アニメのシーズン1がこの辺りまで。アニメは実に丁寧に作られているというか、この文体があまりにもそっけないので、アニメの方で補完している部分があるくらい。アニメほど小蘭(シャオラン)の出番がないが、実は彼女の存在が結構スムーズな状況説明になっていたのだとわかる。徐々に読者には、壬氏が宦官でないことも、年齢を偽っていることも判ってくる。だから壬氏の命が狙われているということは、その正体は相当高貴な方であることがほのめかされる。アニメや漫画を先に見ていると、すでにヒントは1巻からちりばめられているとわかるが。★★★★☆
読了日:09月04日 著者:日向 夏
目でみることばの感想これは言葉の写真集である。日常使っている言葉の由来となったものを、写真に撮る。と言っても簡単なことではない。
今どきメジロを飼うような人は減っていて、「目白押し」の写真は撮れなかったそうだ。「勝手」というのが、弓道で矢を持つ方の手の意味で、自由に使える手だから勝手。台所は女性が自由に使える場所だからお勝手と呼ぶようになったというのは初耳。「勝負服」の由来とその理由も初めて知った。面白い。表紙の写真は「ひっぱりだこ」。★★★★☆
読了日:09月06日 著者:おかべ たかし
日曜日は青い蜥蜴の感想今回、上橋菜穂子の『精霊の守り人』の文庫解説を読んで、膝を打つ思いだった。「モノが違う」。異なる世界を一から構築することは、作家みょうりに尽きるのかもしれないけれど、これは相当に難しいミッションである。ゲームのようにアイテムが用意されていて、好きなように並べればいいというようなものではない。その世界の文化は、歴史は、何をもって特徴とするか、その中で登場人物たちはどう生きるのか。もしかしたらどこかの並行世界に本当にあるかもしれないと思うような臨場感を持った異世界が、上橋菜穂子の書く作品だと思う。★★★★☆
読了日:09月10日 著者:恩田 陸
沈んだ世界 (創元SF文庫) (創元推理文庫 773)の感想突然太陽の活動が活発になり、地球の気温が急上昇した世界。極地の氷は融け、海水面が数十メートルも上昇し、人類をはじめ地上の生き物たちの生息環境は激変した。その中で、人類はどうなるのか、とか、そういう世界でどう生きていくのか、とか、そういう哲学的な、形而上学的なことを考える小説なのだと思いました。そういうの、嫌いじゃないのですが。60年代の、地球温暖化なんてかけらもなかったころの作品なので、そこに価値はあると思うけど、今のリアルな温暖化の現状を考えると、他人事として作品を楽しむことはできなかった。ごめんね。★★★☆☆
読了日:09月11日 著者:J.G.バラード
ソウル・コレクター 上 (文春文庫)の感想読んでいて違和感を覚える「シックスティーン」という表記。最初は犯人が16歳の少女たちを狙っているのかと思った。けれど老若男女を問わず、その辺にいる人々を見な一律に「シックスティーン」と脳内で呼んでいる。4桁×4つの数字、つまりそれが「シックスティーン」だと気がついて、ああ、あの番号ねと思ったところから、作者の書きたかった全貌は見えた気がする。単純に読むと「すべてを手に入れたい」犯人は、すべての情報を知り権力を持ちたいあの人に重なるが、そんな簡単でいい?あの人の後ろに巧妙に隠れている人がいるのかしら。★★★★☆
読了日:09月13日 著者:ジェフリー・ディーヴァー
収容所群島〈3〉の感想3巻目にして、壮絶な、容赦のない収容所の暮らしになれてきました。人の感性って、あっけなく鈍るものだね。けれど、胸の悪くなるような描写が続く中にソルジェニーツィンが要れる鋭い突っ込み、皮肉が読み取れるようになった。人の命がプライスレスで作られた帝国は、あまりに張りぼてではないか。農作物の収穫量は年々落ち、工業最頻の粗悪化は止まらず、優秀な人材から粛清した結果文字も読めないような人たちが管理監督をしている始末。自分はうまくやれるなんて思っている人たちから、足をすくわれていく。そんな楽園の正体。★★★★☆
読了日:09月15日 著者:A.ソルジェニーツィン
幽冥の岸 十二国記 (新潮文庫 お 37-66)の感想忙しくて振り返り読書をしないまま読んだけど、やっぱり『白銀の墟 玄の月』だけでも読んでおくべきだった。できれば全部読み返したほうがよい。ネタバレなしで感想を書こうとなったら、難しい。だって『十二国記』って、細部にわたってちりばめられたあれやこれやを掘り起こして考察するのが醍醐味なわけで。でも、どの短編も、とてもいいとだけ言っておこう。どんな状況に陥っても、人は生きていかねばならない。自分を救うのは自分。相変わらず冷徹な世界観。でも、読後感はとてもいい、今回は。後を引きません、今回は。★★★★★
読了日:09月17日 著者:小野不由美
薬屋のひとりごと 3 (ヒーロー文庫)の感想この巻では子翠(シスイ)が猫猫の前に姿を現し、小蘭(シャオラン)を通して仲良くなっていくのだが、この後を知っているからちょいと切ない気も…。それよりも、壬氏の正体が匂わせから確定へ。猫猫はかたくなに知らないままで通そうとしているけれど、本当は気づいているよね。たびたび命を狙われる壬氏は、この巻では銃で狙撃されるのだけど、狩の主催者である子昌(シショウ)が何事もないようにふるまうっていうのがそもそも怪しいじゃろうが。普通捜しに行かないか?なんでお咎めなしなの?楼蘭妃の父だから?忖度がすぎるって。★★★★☆
読了日:09月18日 著者:日向夏
牡鹿王 (ハヤカワ文庫 FT フ 4-3 アヴァロンの霧 3)の感想グウェンフウィファルよ。こいつはずっと自分は被害者なのね。アーサーの妃でありながらランスロットと結ばれたのは、アーサーがそうしろと言ったから。自分は敬虔なキリスト教なのに、唆したアーサーが悪い。絶対に自分が悪いとは思わない。自分の浅はかさも、浅ましさも、懺悔したから許されたと信じている。いつも自分を棚上げして他人を責め、人と自分を比べては自分を不幸だと嘆く。キリスト教は、宗教は、そんな彼女の心の闇を救う一助にはなっていない。どうしてああも非寛容で独善的なんだろう。★★★★☆
読了日:09月19日 著者:マリオン・ジマー ブラッドリー
目でみることば 2の感想今回は知ってたつもりで間違えて覚えていた言葉がいくつかあって、勉強になりました。例えば「銀ブラ」。銀座をぶらぶら散歩することがもともとの意味だと思っていましたが、銀座でブラジルコーヒーを飲むことだそうです。「丼勘定」は、職人の腹掛けに付けた物入れのことを「丼」というのですって。知らなかった。表紙の写真は「長い物には巻かれろ」。てっきりぐるぐる巻きにまかれるイメージでしたが、実際にやってみたら、写真のように鼻に腰を下ろす形で巻かれたのではないかと結論になったようです。由来を知るって、楽しいよね。★★★★★
読了日:09月20日 著者:おかべ たかし
月曜日は水玉の犬 (単行本)の感想私は順番をつけるのが苦手なので、マイベストを作ることができない。それなのに、『○○な本3冊』とお題を出されて3冊を選び出す著者に頭が下がる。私よりはるかに多い読書体験の中から、適切な3冊を選び出す才能。せめてそのくらいは、できるようになりたいものだけれど。ところで、3冊の選からは漏れたけど、「笑い」の3冊の中にコニー・ウィリスの『航路』が入っていたのに驚いた。私にとって『航路』は、タイタニックと脳死の話なので、どこに笑いの要素があったのか、まったくピンとこない。ああ、ここでも読みの浅さが悔やまれる。★★★★☆
読了日:09月22日 著者:恩田 陸

王妃の帰還 新装版 (実業之日本社文庫)の感想
今どきの中学生こんな感じなのかなあと、半信半疑のような気持で読んだ。クラスの中に勝ち組の子がいる、というのはわかる。主人公範子のクラスのトップに君臨していた滝沢さんが、クラスの公開裁判に掛けられ、その座を追われてからの話なのだが。クラスの中で孤立した滝沢さんを、空気の読めない担任の声掛けで範子たちのグループが引き受けることになる。このようなトップの交代と、追われた者に対するクラスメートの攻撃性が怖い。誰も明日は我が身と考えずに、安全地帯から攻撃することに対する無自覚。子どもって大人の背中を見ているんだな。★★★★☆
読了日:09月24日 著者:柚木 麻子
【小説6巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い3」の感想トロンべ討伐の際、護衛の騎士に傷つけられたにもかかわらず、強大な魔力で土地を癒したマインの姿は、貴族社会に衝撃を与えた。家族を守るため、神殿で冬ごもりをすることになったマインだが、家族と離れた寂しさはぬぐえない。どうしてそんなに家族といることにこだわるのか。神殿で本の読み放題は喜ばしいことのはず。けれど、以前の人生で本を最優先した結果、大切な家族との時間を蔑ろにしてきたことに気づいたマインは、「家族との時間」は決して譲れない大切なもの。本と家族がマインの核なんだとこの巻を読めば理解できる。★★★★☆
読了日:09月25日 著者:香月美夜
ウォー・フィーバー: 戦争熱の感想なぜ中東では紛争が治まることがないのか。『ウォー・フィーバー』は、その一つの答えなのかもしれない。それにしても、ディストピアの長編小説を書くということは、精神的に相当しんどいと思うのだけど、長年にわたりディストピア小説ばかりを描き続けるというのは、一体どんな気持ちがするのだろう。この短編集の後半に収録されている作品を読むと、空を飛ぶことへの憧憬と、拡大していく空間の中で自我を保つことの不安が繰り返し書かれていて、それは自由を求めながらも孤独に耐えうることのできない我々の姿のようにも思われた。★★★★☆
読了日:09月26日 著者:J.G. バラード
倫敦スコーンの謎 (創元推理文庫)の感想買ってからずっと寝かせていたので、楽しみすぎて一気に読んでしまった…。一見バラバラな事件が四編、と思ったら、最後の謎が他の謎ともつながっていることに気づき、「しまった、もっとじっくり読むんだった」と後悔しきり。ミステリはね、焦って読んではいけないのよ。小佐内さんの、らしさがよく表れたのは『羅馬ジェラートの謎』かな。『桑港クッキーの謎』と『倫敦スコーンの謎』はなんとなく私でもわかった。私、このシリーズの、小鳩くんのモノローグが好きなんだなあと、しみじみ思った。★★★★☆
読了日:09月27日 著者:米澤穂信
奇妙な花嫁候補: ロンドン謎解き結婚相談所 (創元推理文庫)の感想上流階級のグウェンと庶民のアイリス、元スパイではあるけれど庶民のアイリスと闇屋(裏社会)のボスのアーチ―、上流階級のグウェンと劇作家のサリー。イギリスは階級社会で、これほどまでに違う階級同士で付き合うって難しいのではないかと思う。とりあえず一人前の社会人として裁判所に認められたグウェンだが、次は親権を取り返さなければならない。そしてベインブリッジ家から独立することを考えているようだけど、今の環境ではダメなのだろうか。親権を取り戻して同居というのが穏当だと思うのだけど。★★★★☆
読了日:09月28日 著者:アリスン・モントクレア
目でみることば 有頂天の感想まず最初に、シリーズ第三弾にしてサブタイトルが『有頂天』というのは、予想以上に早く次作の出版が決まり有頂天になっている制作陣の心情をあらわしたもので、「有頂天」という言葉の写真が収録されているわけではない。そして、第1集からの懸案事項であった「目白押し」は、撮影のコツはわかったものの、やっぱり撮影は出来ていない。ゆるくて、いいなあ。写真はもちろん「狸寝入り」。英語では「fox sleep(狐寝入り)」だそうです。←知ってた★★★★☆
読了日:09月29日 著者:おかべ たかし
【小説7巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第二部「神殿の巫女見習い4」の感想今回、アニメではさらっとしか触れられていない部分までしっかり書かれていて、いろいろと腑に落ちた。貴族の家に生れながら、もって生まれた魔力量が少なかったことと後ろ盾が弱かったために、幼いうちに神殿に入れられ、貴族となる道を断たれた神殿長という背景が見えたので、なぜあれほどまでにマインを嫌うのかがわかった。ご近所の人たちには、マインは死んだことにする。これだけで、うまくいくのか?と思っていたけれど、ちゃんと近所の人たちとお葬式を行ったんだ。死体ないけど。アルノーが、フランに抱いていた昏い思いとその報い。★★★★☆
読了日:09月30日 著者:香月美夜
読書メーター