8月1日(土)
旅行中ほとんど本が読めなかったわりには、なんとか20冊読めました。
でも、実は読書が進まない理由は旅行よりも、『本好きの下剋上』にあります。
アマプラでシーズン1から通しで見返して、今は2周目(シーズン3の中間くらい)。
どれだけ好きやねん。
3周目はさすがにやめといて、次は『薬屋のひとりごと』を見直す予定。
オリジナルとはいえ映画が公開される12月までには。
あと、大きな声では言えませんが、ネットのマンガも毎日さくさく読んでます。
一日何十時間あっても足りない。
さて、★五つは3作。佳き哉。
『破船』。
しずかに、そして圧倒的な迫力でもって、無知と貧困ゆえの日々の苦しさが迫ってくる。
そうしないと生きていけない村。
けれども言い伝えだけでは漏れ落ちてしまう危機管理。
その後の村がどうなっていったのかも、気になるところです。
『本好きの下剋上』。
今私の生活の、と言えば過言ですが、自由時間の大半がこれに費やされていると言っても過言ではない。
本とアニメだけでも充分時間をとられているけど、冬の手作業のシーンを見ていると刺繍がしたくなってしまって困る。
『分別と多感』。
いいところに嫁に行くのが幸せという世間と、自分らしくありたい娘たちの、オースティン鉄板の物語。
なんとも通俗なんだけど、大好きすぎて滅。
7月の読書メーター
読んだ本の数:22
読んだページ数:5925
ナイス数:707
狐花 葉不見冥府路行 (角川ホラー文庫)の感想
本屋で京極夏彦の本の分厚さにのけぞることは多々あるけれども、本の薄さにのけぞったのは初めてだ。たった250ページとはこれいかに?この作品は、歌舞伎の原作として書かれたものなのだそうだ。そして確かにこの作品は、影や暗闇の効果が目に見えるようで、舞台映えがしそうである。京極堂の曽祖父は、以前『了巷説百物語』にも出てきたが、衣装といい決め台詞といい、まったく京極堂そのもので嬉しくなってしまう。ただ、単に”憑き物落とし”として雇われただけではなく、本筋にしっかりと絡んでいて、彼が出てくるのは物語の必然だった。★★★★☆
読了日:07月02日 著者:京極 夏彦
破船 (新潮文庫)の感想
前浜でささやかな漁をし、浜に流れ着いた貝や海藻を拾い、浜と山の間に小さくある平地でちっぽけな畑を作り、たった十七戸しかない村の生活。村のたった一つの望みは、村のそばで船が座礁することだ。そうしたら、船の積荷を奪い取り、船を解体して木材や釘などを調達でき、運が良ければ米を手にすることもできる。”お船様”はもちろん犯罪だ。しかし、それは村に代々伝わる大切な風習でもある。真面目に、懸命に働いていても、食べていけない。そんな暮らしを丁寧に、ゆっくりと、冷静に書ききった作品。子どもが背負うには重すぎる現実。★★★★★
読了日:07月03日 著者:吉村 昭
【小説1巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘1」の感想
遂に、ついに読み始めました!コミックでもアニメでも何度も見たこの作品の導入部ですが、やっぱり面白い。本が好きで、本に囲まれた生活がしたい、と図書館に就職することが決まっていた女子大生の麗乃(うらの)は、地震で自宅の本棚に押しつぶされて死んだ。…はずなのだが、異世界の、病弱な5歳児としての人生を生きることになる。病弱でもいい、本を読んで過ごせたら…と思ったら、そこは中世のヨーロッパに似た、本など高根の花の世界だった。本がないなら作ればいい、と紙作りから始めるが、すぐに熱を出して倒れる。でも、諦めない。★★★★★
読了日:07月04日 著者:香月美夜
習い事で生まれ変わる42の方法の感想
この著者の中谷彰宏や齋藤孝といった人たちは、物事の本質の上澄みを上手に掬ってキャッチ―なタイトルをつけて本を売る、ことに長けている人たちだと思っていました。が、この本を読んだだけでの感想ですが、キャッチ―なタイトルをつけることに長けているのであって、物事の本質であるかどうかはあまり関係ないのかもしれません。上澄みほどもない、というか。簡単に成果を求めるのではなく、じっくり取り組めばよい。そのうちに結果はついてくるし、何より続けていて楽しいのならそれに越したことはない、というのが、この本の主な内容でした。★★★★☆
読了日:07月05日 著者:中谷 彰宏
ごはんが楽しみの感想
『家が好きな人』がとても良かったので購入しましたが、コミックエッセイでした。直接に食べることだけではなく、食器についてやダイニングテーブルについて、おやつを入れている缶や箸置きのコレクションなど、ご飯にまつわる全般に対しての温かな眼差しと愛情が感じられて、この本もまた、とてもよかったです。
読了日:07月05日 著者:井田 千秋
ワンマン・ショーの感想
いやあ、難しかったです。戯曲で読んでこんなに難しいのなら、舞台で見ていて理解できるかどうか自信ないなあ。登場人物は8人。場所も時系列も細かく分断され、シャッフルされているため、ジグソーパズルを組み立てるように理解しなければならない。しかも、全員が癖ツヨ人間。人間としての厚みは感じられないけれど、世界観を体現するような奥行きはある。ああ、これは、ポール・オースターに似てるなあと思ったら、やっぱり意識して書かれた作品らしい。抽象画のような文章作品。難しい。苦手だ。★★★★☆
読了日:07月06日 著者:倉持 裕
虚栄の市〈第2〉 (1948年) (岩波文庫)の感想
レベッカ(ペギー)が極秘に結婚した相手というのは、クローリ準男爵家の次男であるロードン。二人の結婚を知ってクローリ老嬢は大激怒。レベッカともロードンとも縁を切るという大誤算。アミーリアも、一度は破談になった婚約者のヂョーヂと結婚したことによって、双方の親から縁を切られ、こちらもまた金銭的苦境に追い込まれる。この先運が上昇するのか、それとももっと困窮するのか…。そして着飾ったご婦人と青年将校が踊る『田舎踊り』。戦前の訳なのでね…しょうがないのかもしれないけれど…。さすがにフォークダンスとさせてください。★★★★☆
読了日:07月12日 著者:サッカレ
魔術師 下 (文春文庫 テ 11-14)の感想
「これまでの作品の中で最高の”どんでん返し度”を誇る」と著者が豪語したらしいけど、これ、フェアですかね?たしかにどんでん返しだったけど。それまでに何らかの伏線あった?いい話ではあった。魔術師の師弟コンビだけではなく、ライムとサックスの師弟コンビについても、それぞれの今後を考えさせる。弟子はいつか師の元を離れて自分の足で立たねばならない。そしてその時師は、きちんと弟子を送り出すことができるか。今回は事件の捜査と並行して、サックスの昇進試験があった。で、市警史上トップ3の成績を叩き出すのだが。★★★★☆
読了日:07月14日 著者:ジェフリー ディーヴァー
闇の月 (ハヤカワ文庫 FT 71)の感想
前巻の主人公の一人、アランの息子が今回の主人公。アイルの地に再び活気を取り戻させたアランとハルは、老いてこの地を去っていく者として書かれています。トレヴィンの年齢を考えると、それほど年寄りじゃあないはずなんだが。このシリーズは1も2も、若い男性二人の友情と冒険がメインでしたが、今回トレヴィンは分身のような存在とは対立し、深い愛情をもって導いてくれる存在とははやくに死に別れます。愛する人のことを認めることができずに姿を消したりと、一人で悩み苦しむ時間がとても長くて、読んでいて苦しかったです。★★★★☆
読了日:07月15日 著者:ナンシー スプリンガー
シャーロック・ホームズの凱旋 (単行本)の感想
ホームズが住んでいるのは、寺町通221Bで、もちろんハドソン夫人が大家である。ちなみに京都府警視庁はスコットランドヤードという。のっけからホームズは大スランプで、一年以上事件を解決することができないでいる。正直言って最初の360ページは冗漫だと思い、たいして面白いとも思わなかった。しかし残り100ページで様相は変わる。怒涛の100ページを読んだ後、結局ラストはこれでいいのか、ここは判断が分かれると思うけど、私としてはハドソン夫人だけが最初から最後までずっとホームズを信じて味方でいたことに胸アツでした。★★★★☆
読了日:07月16日 著者:森見 登美彦
目の見えない白鳥さんとアートを見にいくの感想
最近私がアートにハマっているのは、言葉に寄らない感動を得たいと思ったからだ。言語化することによって感動が固定化されてしまわないよう、もっと直感的な感動を!と。しかし、白鳥さんとアートを見に行くと、言語化=固定化にはならないのだ。同じものを見ても「アサリに見える」「いや、セイウチじゃ?」「猫だよね」と言葉で説明しているうちに見え方が変わってくる。これは読書とも似ているなあと思った。ひとりで読んでいる時に感じるものが、何人かと感想を述べあうことで違う面を見せることがある。そうか、言語化=固定化ではないのか。★★★★☆
読了日:07月19日 著者:川内 有緒
虚栄の市〈第3〉 (1948年) (岩波文庫)の感想
アミーリャの夫はさっくり戦死。レベッカの夫は何をしたのか不明だけれど出世した。にもかかわらず、やっぱり自転車操業のような生活。不思議と生活レベルは下がらないが。レベッカとアミーリャのどちらが善人かと言われれば、間違いなくアミーリャの方が善人だ。でも、友だちになりたいか?”御婦人達の方から、例の正義の観念からして、あの女は美しいから、即ち馬鹿であるというような議論が出て来るのである。おう、しかし御婦人方よ!あなた方のうちには顔もまづいし、頭も悪いというような人もあるのはどうしたのでしょう?”辛辣すぎる。★★★★☆
読了日:07月20日 著者:サッカレ
【小説2巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘2」の感想
本編の他に短編が2作。そのうちのマインの両親の結婚秘話。お父さんが押して押して押したのだということは容易に想像はついたよね、言われてみれば。そしてそんなお父さんの一本気な性格って、実はちゃんとマインに受けつがれている。今、マインの体にあるのは麗乃(うらの)の記憶だけど、幼くして亡くなった本来のマインの気質の中に、麗乃と響きあうものがあったのかもしれない。体に残っているマインの感情みたいなものが、少しずつ麗乃と一体化していくというか…。だとしたら、今後のマインの家族愛が、実にしっくりくる。★★★★☆
読了日:07月21日 著者:香月美夜
タンノイのエジンバラ (文春文庫 (な47-2))の感想
ストーリーはさておき、どの作品にも「人とのつきあい方が苦手」な気配を濃厚に感じた。家族をも含む他人の、発する言葉と感情の乖離が、その距離がよくわからないと思っている語り手たち。感情が希薄で、体温が低そうな語り手たちの、世間を見るまなざしの不安。差し伸べていいのかわからず、中途半端に止まってしまう手。そういうあれこれが、まるで私の心の内をのぞかれているような、でも決して不快ではない、不思議な気持ちで読んだ。「人とのつきあい方が苦手」なのは私だけではないと思うと、少し心が緩んでくる。★★★★☆
読了日:07月23日 著者:長嶋 有

12番目のカード 上 (文春文庫 テ 11-15)の感想
博物館でマイクロフィルムを閲覧していた16歳の少女が、襲われる。狙撃犯の狙いは少女・ジェニーヴァだが、彼女が閲覧していたマイクロフィルムが持ち去られたことにより、事件の裏には別の動機があるのではないかとライムたちは考える。私としては、たかだか16歳の少女を執拗に狙う理由が、そのヒントが、この上官に掛かれていなければフェアではないと思うのだけど、一向にそれがわからない。逆に殺し屋のほうの少し悲しい半生などが描かれているんだけど、これが事件のヒントになっているのかなあ。うーん、黒幕は誰なんだろう?★★★★☆
読了日:07月24日 著者:ジェフリー ディーヴァー
朝日新聞政治部の感想
朝日新聞というだけで良くも悪くも思考停止してしまうという風潮が、以前は確かにあったはずなのに、今や新聞は過去の遺物か。しかし、朝日新聞には確かに大きく契約数を減らす転機があった。その一端を担った元朝日新聞の政治部記者が、関係者のすべてを実名で当時の出来事を綴った著書。こういうのは、第三者が書いたほうが公平で読みやすいと思うんだよね。けれどこの本を読んで、自民党をはじめとする政治家たちの、言動の背景にある思惑がわかったような気がする。特に、小泉純一郎から始まる清和会の政治。やりたい放題、理屈は後。★★★★☆
読了日:07月25日 著者:鮫島 浩
街道をゆく 3 陸奥のみち、肥薩のみちほか (朝日文庫) (朝日文庫 し 1-59)の感想
陸奥(八戸~青森)、肥後と薩摩(田原坂~蒲生郷)、河内をゆく。青森は多少土地勘があるので、ルートを脳内の地図でたどりながら読んだが、九州はまったくわからないので、スマホで地図を呼び出して確認しながら読んだ。土地にまつわる因縁というのは、何年、何世代くらいたたないと解消しないのだろう。自分の生まれるはるか前の出来事を恨んだり憎んだりして、それを子孫に伝えていくというのは、殺伐たる思いがするけれど。田原坂も、肥薩の因縁があったから西郷は熊本城にこだわったということがわかった。勉強になる。★★★★☆
読了日:07月26日 著者:司馬 遼太郎
追想五断章 (集英社文庫)の感想
ミステリの部分は、面白かった。可南子の亡き父が関係した未解決事件の真相や、五つの作品に込められた想いを推理しながら読むのは楽しかった。けれども、圧倒的に登場人物が、のっぺらぼうだ。芳光が依頼された物語を見つけることによって、何かを打開するのか、と思ったが特にそんなことはなく。依頼した彼女も、父親が隠していた秘密を知って衝撃を受けたわけでもなく。リドルストーリーの持つ読後のもやもや感を表現したと言われればそうかもしれないけれど、五つの掌編を繋いで一つの長編にしたことに、あまり納得感を得られない読後でした。★★★★☆
読了日:07月27日 著者:米澤 穂信
分別と多感 (ちくま文庫 お 42-6)の感想
直感的で直情的な夫人と次女のマリアン、三女のマーガレットに対し、理性的で自制心に富む長女のエリナー。いつものオースティンの世界。でも、読み始めたら止められない。サマセット・モームだって言っている。「大した事件が起こらないのに、ページを繰らずにはいられない」まさにその通り。エリナーやマリアン以外の人たちは金のない結婚というのを許容できない。エリナーたちの異母兄とその妻が、笑えるくらいに俗物。たくさん出て来る何とか婦人たちも、それぞれ癖ツヨで面白い。読後『『高慢と偏見』殺人事件』を再読したくなりました。★★★★★
読了日:07月28日 著者:ジェイン オースティン
黄泉のツガイ(13) (ガンガンコミックス)の感想
前巻のおわりの壊滅的な負けから、徐々に立ち直ろうとする影森の人々。とはいえ、御館さまの死とジンさんの不明、それから漫画家としての才気が危ぶまれる波久礼先生の腕のけが。ずっと波久礼先生はいい人を装っていて、いつか正体を現すのではないかと思っていたけど、本当にいい人だった。逆にアスマさんは本当にいい人で苦労人なのに、どこまでも胡散臭く見えて不憫。いい兄弟。早くジンさん帰って来い。ユルとアサは、誰にも告げずに二人だけで両親の行方を捜しに沖縄へ向かう。続きは11月!
読了日:07月30日 著者:荒川弘
システム・クラッシュ: マーダーボット・ダイアリー (創元SF文庫)の感想
刊行の間があいているためか、冒頭に『ネットワーク・エフェクト』のあらすじが載っているのがありがたい。相変わらず愚痴とぼやきが止まらない”弊機”の語り口調に笑わされるし、ピンチに次ぐピンチ、など、読んでいて楽しくってしょうがないのだが。今回はちょっと、今までとは違う。ずっと危険にさらされた状況で、弊機の集中力が時々切れる。こんな警備ユニットはあり得ない。なぜ弊機がこのような状態になったのかというと、どうも過去の戦いにおけるトラウマがフラッシュバックしているから、らしい。もうね、弊機、人でいいよ。★★★★☆
読了日:07月30日 著者:マーサ・ウェルズ
黒い獣 (ハヤカワ文庫 FT 75)の感想
最初から、不穏だった。王妃がこっそり迎え入れた赤子。そして王の狂気。冷酷で残虐で、独りよがり。長男・ティレルの恋人を目の前で殺し、彼の恨み、憎しみを一身に受ける。どろどろとした父子関係の中で心を痛めるのが弟のフレインだ。アイルランドを舞台にしているわけではない、今までとは全然作風が違うこの本が、なぜアイルの書の4巻目になるのか。正直言って、私には読み取れなかった。でもね、解説が、表紙画を描いている中山星香さんが解説なの。そして、解説なのにイラストが4枚も入ってるのよぅ。なんか得した気分。★★★★☆
読了日:07月31日 著者:ナンシー スプリンガー
読書メーター
旅行中ほとんど本が読めなかったわりには、なんとか20冊読めました。
でも、実は読書が進まない理由は旅行よりも、『本好きの下剋上』にあります。
アマプラでシーズン1から通しで見返して、今は2周目(シーズン3の中間くらい)。
どれだけ好きやねん。
3周目はさすがにやめといて、次は『薬屋のひとりごと』を見直す予定。
オリジナルとはいえ映画が公開される12月までには。
あと、大きな声では言えませんが、ネットのマンガも毎日さくさく読んでます。
一日何十時間あっても足りない。
さて、★五つは3作。佳き哉。
『破船』。
しずかに、そして圧倒的な迫力でもって、無知と貧困ゆえの日々の苦しさが迫ってくる。
そうしないと生きていけない村。
けれども言い伝えだけでは漏れ落ちてしまう危機管理。
その後の村がどうなっていったのかも、気になるところです。
『本好きの下剋上』。
今私の生活の、と言えば過言ですが、自由時間の大半がこれに費やされていると言っても過言ではない。
本とアニメだけでも充分時間をとられているけど、冬の手作業のシーンを見ていると刺繍がしたくなってしまって困る。
『分別と多感』。
いいところに嫁に行くのが幸せという世間と、自分らしくありたい娘たちの、オースティン鉄板の物語。
なんとも通俗なんだけど、大好きすぎて滅。
7月の読書メーター
読んだ本の数:22
読んだページ数:5925
ナイス数:707
狐花 葉不見冥府路行 (角川ホラー文庫)の感想本屋で京極夏彦の本の分厚さにのけぞることは多々あるけれども、本の薄さにのけぞったのは初めてだ。たった250ページとはこれいかに?この作品は、歌舞伎の原作として書かれたものなのだそうだ。そして確かにこの作品は、影や暗闇の効果が目に見えるようで、舞台映えがしそうである。京極堂の曽祖父は、以前『了巷説百物語』にも出てきたが、衣装といい決め台詞といい、まったく京極堂そのもので嬉しくなってしまう。ただ、単に”憑き物落とし”として雇われただけではなく、本筋にしっかりと絡んでいて、彼が出てくるのは物語の必然だった。★★★★☆
読了日:07月02日 著者:京極 夏彦
破船 (新潮文庫)の感想前浜でささやかな漁をし、浜に流れ着いた貝や海藻を拾い、浜と山の間に小さくある平地でちっぽけな畑を作り、たった十七戸しかない村の生活。村のたった一つの望みは、村のそばで船が座礁することだ。そうしたら、船の積荷を奪い取り、船を解体して木材や釘などを調達でき、運が良ければ米を手にすることもできる。”お船様”はもちろん犯罪だ。しかし、それは村に代々伝わる大切な風習でもある。真面目に、懸命に働いていても、食べていけない。そんな暮らしを丁寧に、ゆっくりと、冷静に書ききった作品。子どもが背負うには重すぎる現実。★★★★★
読了日:07月03日 著者:吉村 昭
【小説1巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘1」の感想遂に、ついに読み始めました!コミックでもアニメでも何度も見たこの作品の導入部ですが、やっぱり面白い。本が好きで、本に囲まれた生活がしたい、と図書館に就職することが決まっていた女子大生の麗乃(うらの)は、地震で自宅の本棚に押しつぶされて死んだ。…はずなのだが、異世界の、病弱な5歳児としての人生を生きることになる。病弱でもいい、本を読んで過ごせたら…と思ったら、そこは中世のヨーロッパに似た、本など高根の花の世界だった。本がないなら作ればいい、と紙作りから始めるが、すぐに熱を出して倒れる。でも、諦めない。★★★★★
読了日:07月04日 著者:香月美夜
習い事で生まれ変わる42の方法の感想この著者の中谷彰宏や齋藤孝といった人たちは、物事の本質の上澄みを上手に掬ってキャッチ―なタイトルをつけて本を売る、ことに長けている人たちだと思っていました。が、この本を読んだだけでの感想ですが、キャッチ―なタイトルをつけることに長けているのであって、物事の本質であるかどうかはあまり関係ないのかもしれません。上澄みほどもない、というか。簡単に成果を求めるのではなく、じっくり取り組めばよい。そのうちに結果はついてくるし、何より続けていて楽しいのならそれに越したことはない、というのが、この本の主な内容でした。★★★★☆
読了日:07月05日 著者:中谷 彰宏
ごはんが楽しみの感想『家が好きな人』がとても良かったので購入しましたが、コミックエッセイでした。直接に食べることだけではなく、食器についてやダイニングテーブルについて、おやつを入れている缶や箸置きのコレクションなど、ご飯にまつわる全般に対しての温かな眼差しと愛情が感じられて、この本もまた、とてもよかったです。
読了日:07月05日 著者:井田 千秋
ワンマン・ショーの感想いやあ、難しかったです。戯曲で読んでこんなに難しいのなら、舞台で見ていて理解できるかどうか自信ないなあ。登場人物は8人。場所も時系列も細かく分断され、シャッフルされているため、ジグソーパズルを組み立てるように理解しなければならない。しかも、全員が癖ツヨ人間。人間としての厚みは感じられないけれど、世界観を体現するような奥行きはある。ああ、これは、ポール・オースターに似てるなあと思ったら、やっぱり意識して書かれた作品らしい。抽象画のような文章作品。難しい。苦手だ。★★★★☆
読了日:07月06日 著者:倉持 裕
虚栄の市〈第2〉 (1948年) (岩波文庫)の感想レベッカ(ペギー)が極秘に結婚した相手というのは、クローリ準男爵家の次男であるロードン。二人の結婚を知ってクローリ老嬢は大激怒。レベッカともロードンとも縁を切るという大誤算。アミーリアも、一度は破談になった婚約者のヂョーヂと結婚したことによって、双方の親から縁を切られ、こちらもまた金銭的苦境に追い込まれる。この先運が上昇するのか、それとももっと困窮するのか…。そして着飾ったご婦人と青年将校が踊る『田舎踊り』。戦前の訳なのでね…しょうがないのかもしれないけれど…。さすがにフォークダンスとさせてください。★★★★☆
読了日:07月12日 著者:サッカレ
魔術師 下 (文春文庫 テ 11-14)の感想「これまでの作品の中で最高の”どんでん返し度”を誇る」と著者が豪語したらしいけど、これ、フェアですかね?たしかにどんでん返しだったけど。それまでに何らかの伏線あった?いい話ではあった。魔術師の師弟コンビだけではなく、ライムとサックスの師弟コンビについても、それぞれの今後を考えさせる。弟子はいつか師の元を離れて自分の足で立たねばならない。そしてその時師は、きちんと弟子を送り出すことができるか。今回は事件の捜査と並行して、サックスの昇進試験があった。で、市警史上トップ3の成績を叩き出すのだが。★★★★☆
読了日:07月14日 著者:ジェフリー ディーヴァー
闇の月 (ハヤカワ文庫 FT 71)の感想前巻の主人公の一人、アランの息子が今回の主人公。アイルの地に再び活気を取り戻させたアランとハルは、老いてこの地を去っていく者として書かれています。トレヴィンの年齢を考えると、それほど年寄りじゃあないはずなんだが。このシリーズは1も2も、若い男性二人の友情と冒険がメインでしたが、今回トレヴィンは分身のような存在とは対立し、深い愛情をもって導いてくれる存在とははやくに死に別れます。愛する人のことを認めることができずに姿を消したりと、一人で悩み苦しむ時間がとても長くて、読んでいて苦しかったです。★★★★☆
読了日:07月15日 著者:ナンシー スプリンガー
シャーロック・ホームズの凱旋 (単行本)の感想ホームズが住んでいるのは、寺町通221Bで、もちろんハドソン夫人が大家である。ちなみに京都府警視庁はスコットランドヤードという。のっけからホームズは大スランプで、一年以上事件を解決することができないでいる。正直言って最初の360ページは冗漫だと思い、たいして面白いとも思わなかった。しかし残り100ページで様相は変わる。怒涛の100ページを読んだ後、結局ラストはこれでいいのか、ここは判断が分かれると思うけど、私としてはハドソン夫人だけが最初から最後までずっとホームズを信じて味方でいたことに胸アツでした。★★★★☆
読了日:07月16日 著者:森見 登美彦
目の見えない白鳥さんとアートを見にいくの感想最近私がアートにハマっているのは、言葉に寄らない感動を得たいと思ったからだ。言語化することによって感動が固定化されてしまわないよう、もっと直感的な感動を!と。しかし、白鳥さんとアートを見に行くと、言語化=固定化にはならないのだ。同じものを見ても「アサリに見える」「いや、セイウチじゃ?」「猫だよね」と言葉で説明しているうちに見え方が変わってくる。これは読書とも似ているなあと思った。ひとりで読んでいる時に感じるものが、何人かと感想を述べあうことで違う面を見せることがある。そうか、言語化=固定化ではないのか。★★★★☆
読了日:07月19日 著者:川内 有緒
虚栄の市〈第3〉 (1948年) (岩波文庫)の感想アミーリャの夫はさっくり戦死。レベッカの夫は何をしたのか不明だけれど出世した。にもかかわらず、やっぱり自転車操業のような生活。不思議と生活レベルは下がらないが。レベッカとアミーリャのどちらが善人かと言われれば、間違いなくアミーリャの方が善人だ。でも、友だちになりたいか?”御婦人達の方から、例の正義の観念からして、あの女は美しいから、即ち馬鹿であるというような議論が出て来るのである。おう、しかし御婦人方よ!あなた方のうちには顔もまづいし、頭も悪いというような人もあるのはどうしたのでしょう?”辛辣すぎる。★★★★☆
読了日:07月20日 著者:サッカレ
【小説2巻】本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第一部「兵士の娘2」の感想本編の他に短編が2作。そのうちのマインの両親の結婚秘話。お父さんが押して押して押したのだということは容易に想像はついたよね、言われてみれば。そしてそんなお父さんの一本気な性格って、実はちゃんとマインに受けつがれている。今、マインの体にあるのは麗乃(うらの)の記憶だけど、幼くして亡くなった本来のマインの気質の中に、麗乃と響きあうものがあったのかもしれない。体に残っているマインの感情みたいなものが、少しずつ麗乃と一体化していくというか…。だとしたら、今後のマインの家族愛が、実にしっくりくる。★★★★☆
読了日:07月21日 著者:香月美夜
タンノイのエジンバラ (文春文庫 (な47-2))の感想ストーリーはさておき、どの作品にも「人とのつきあい方が苦手」な気配を濃厚に感じた。家族をも含む他人の、発する言葉と感情の乖離が、その距離がよくわからないと思っている語り手たち。感情が希薄で、体温が低そうな語り手たちの、世間を見るまなざしの不安。差し伸べていいのかわからず、中途半端に止まってしまう手。そういうあれこれが、まるで私の心の内をのぞかれているような、でも決して不快ではない、不思議な気持ちで読んだ。「人とのつきあい方が苦手」なのは私だけではないと思うと、少し心が緩んでくる。★★★★☆
読了日:07月23日 著者:長嶋 有

12番目のカード 上 (文春文庫 テ 11-15)の感想
博物館でマイクロフィルムを閲覧していた16歳の少女が、襲われる。狙撃犯の狙いは少女・ジェニーヴァだが、彼女が閲覧していたマイクロフィルムが持ち去られたことにより、事件の裏には別の動機があるのではないかとライムたちは考える。私としては、たかだか16歳の少女を執拗に狙う理由が、そのヒントが、この上官に掛かれていなければフェアではないと思うのだけど、一向にそれがわからない。逆に殺し屋のほうの少し悲しい半生などが描かれているんだけど、これが事件のヒントになっているのかなあ。うーん、黒幕は誰なんだろう?★★★★☆
読了日:07月24日 著者:ジェフリー ディーヴァー
朝日新聞政治部の感想朝日新聞というだけで良くも悪くも思考停止してしまうという風潮が、以前は確かにあったはずなのに、今や新聞は過去の遺物か。しかし、朝日新聞には確かに大きく契約数を減らす転機があった。その一端を担った元朝日新聞の政治部記者が、関係者のすべてを実名で当時の出来事を綴った著書。こういうのは、第三者が書いたほうが公平で読みやすいと思うんだよね。けれどこの本を読んで、自民党をはじめとする政治家たちの、言動の背景にある思惑がわかったような気がする。特に、小泉純一郎から始まる清和会の政治。やりたい放題、理屈は後。★★★★☆
読了日:07月25日 著者:鮫島 浩
街道をゆく 3 陸奥のみち、肥薩のみちほか (朝日文庫) (朝日文庫 し 1-59)の感想陸奥(八戸~青森)、肥後と薩摩(田原坂~蒲生郷)、河内をゆく。青森は多少土地勘があるので、ルートを脳内の地図でたどりながら読んだが、九州はまったくわからないので、スマホで地図を呼び出して確認しながら読んだ。土地にまつわる因縁というのは、何年、何世代くらいたたないと解消しないのだろう。自分の生まれるはるか前の出来事を恨んだり憎んだりして、それを子孫に伝えていくというのは、殺伐たる思いがするけれど。田原坂も、肥薩の因縁があったから西郷は熊本城にこだわったということがわかった。勉強になる。★★★★☆
読了日:07月26日 著者:司馬 遼太郎
追想五断章 (集英社文庫)の感想ミステリの部分は、面白かった。可南子の亡き父が関係した未解決事件の真相や、五つの作品に込められた想いを推理しながら読むのは楽しかった。けれども、圧倒的に登場人物が、のっぺらぼうだ。芳光が依頼された物語を見つけることによって、何かを打開するのか、と思ったが特にそんなことはなく。依頼した彼女も、父親が隠していた秘密を知って衝撃を受けたわけでもなく。リドルストーリーの持つ読後のもやもや感を表現したと言われればそうかもしれないけれど、五つの掌編を繋いで一つの長編にしたことに、あまり納得感を得られない読後でした。★★★★☆
読了日:07月27日 著者:米澤 穂信
分別と多感 (ちくま文庫 お 42-6)の感想直感的で直情的な夫人と次女のマリアン、三女のマーガレットに対し、理性的で自制心に富む長女のエリナー。いつものオースティンの世界。でも、読み始めたら止められない。サマセット・モームだって言っている。「大した事件が起こらないのに、ページを繰らずにはいられない」まさにその通り。エリナーやマリアン以外の人たちは金のない結婚というのを許容できない。エリナーたちの異母兄とその妻が、笑えるくらいに俗物。たくさん出て来る何とか婦人たちも、それぞれ癖ツヨで面白い。読後『『高慢と偏見』殺人事件』を再読したくなりました。★★★★★
読了日:07月28日 著者:ジェイン オースティン
黄泉のツガイ(13) (ガンガンコミックス)の感想前巻のおわりの壊滅的な負けから、徐々に立ち直ろうとする影森の人々。とはいえ、御館さまの死とジンさんの不明、それから漫画家としての才気が危ぶまれる波久礼先生の腕のけが。ずっと波久礼先生はいい人を装っていて、いつか正体を現すのではないかと思っていたけど、本当にいい人だった。逆にアスマさんは本当にいい人で苦労人なのに、どこまでも胡散臭く見えて不憫。いい兄弟。早くジンさん帰って来い。ユルとアサは、誰にも告げずに二人だけで両親の行方を捜しに沖縄へ向かう。続きは11月!
読了日:07月30日 著者:荒川弘
システム・クラッシュ: マーダーボット・ダイアリー (創元SF文庫)の感想刊行の間があいているためか、冒頭に『ネットワーク・エフェクト』のあらすじが載っているのがありがたい。相変わらず愚痴とぼやきが止まらない”弊機”の語り口調に笑わされるし、ピンチに次ぐピンチ、など、読んでいて楽しくってしょうがないのだが。今回はちょっと、今までとは違う。ずっと危険にさらされた状況で、弊機の集中力が時々切れる。こんな警備ユニットはあり得ない。なぜ弊機がこのような状態になったのかというと、どうも過去の戦いにおけるトラウマがフラッシュバックしているから、らしい。もうね、弊機、人でいいよ。★★★★☆
読了日:07月30日 著者:マーサ・ウェルズ
黒い獣 (ハヤカワ文庫 FT 75)の感想最初から、不穏だった。王妃がこっそり迎え入れた赤子。そして王の狂気。冷酷で残虐で、独りよがり。長男・ティレルの恋人を目の前で殺し、彼の恨み、憎しみを一身に受ける。どろどろとした父子関係の中で心を痛めるのが弟のフレインだ。アイルランドを舞台にしているわけではない、今までとは全然作風が違うこの本が、なぜアイルの書の4巻目になるのか。正直言って、私には読み取れなかった。でもね、解説が、表紙画を描いている中山星香さんが解説なの。そして、解説なのにイラストが4枚も入ってるのよぅ。なんか得した気分。★★★★☆
読了日:07月31日 著者:ナンシー スプリンガー
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