7月1日(水)

なんということでしょう。
とうとう月の読書数がマンガを除いて20冊を切ってしまいました。(実は、もっとマンガを読んでる)
頑張ればもう少し読めたと思いますが、頑張る気力が湧いてこない。
読書におけるスランプとでも申しましょうか。

しかも、これだけしか読んでいないのに、★5つが7冊もある!
これは過去最高だと思います。
どうした私?

『街道をゆく 2』
古代朝鮮から続く隣国の歴史を、私は驚くほど知らない。
日本とかかわってくる部分だけをとびとびに知っているだけだが、それだけではわからなかった深い深い儒教との係わり。
儒教を盾に常に上に君臨する大国と、儒教のなんたるかも知らず武力の強さを存在価値とする野蛮な国(日本)に挟まれた、中間にある国のもどかしさが”恨”なのかもしれないな、と思ったり。

『うろんな客』
うろんと言いながら、客と言いながら、17年も身近に置いて突き放さぬ関係。
可愛いではないですか。

『ペスト』
最初はノンフィクションであるデフォーの方が読みごたえがあると思ったけれども、フィクションであることの視点、実際には起きていない出来事の意味などを考えると、思いのほか楽しめた。
疫病も戦争も災害なんだな。
しかも人災寄りの。

「両国十五日 Ⅰ』
これは楽しい作品でした。
キャラクターの設定が良いので、冒険小説としても、歴史小説としても、成長者としても恋愛ものとしても優れています。
頼りにはなるが信じ切れない味方ばかりで、実に良いではないですか。

『茶色の朝』
気がつけば後戻りのできない社会にからめとられてしまう恐怖。
声をあげるチャンスはいくらでもあったのに、誰かが言ってくれるはず、自分は忙しいから、さすがに行き過ぎることはないだろう…と黙って従っていた先に待ち受けていたのは…。

『すももの夏』
家族ではない大人と出逢うことで、子どもは大人になっていくのかもしれないなあと思った。
世間にいるのは、よい大人ばかりではない。
そして魅力的な人間はよい人間、とばかりは言えないという事実。
そして苦いけれど大切な思い出もある、ということ。

『虚栄の市 一』
こういう、ちょっとテンポがゆっくりでもったいぶった作品(つまり古い作品)は、わりと好きだ。
少なくとも最近のテンポだけの小説、善人だけの小説、自分の痛みにしか向き合っていないような小説よりずっと好き。
映画『バリーリンドン』の原作もサッカレだったんですね。

今月はちょっと出かけてこようと思っているので、やっぱりあまり読めないかなあ。
でも、数は少なくても、面白く読んではいる。
ただ、無理してペースを上げようと思わないだけで。←もしかして、これが成長?

6月の読書メーター
読んだ本の数:20
読んだページ数:6398
ナイス数:741


星を掬う (中公文庫 ま 55-2)星を掬う (中公文庫 ま 55-2)感想
幼いころに母に捨てられた千鶴は、それが自分を卑下する理由となり、自分を肯定することがどうしてもできない。千鶴が結婚した相手は、モラハラ男。この生活から逃れるため、死ぬしかないと思い詰めていた時に、母の知り合いが「会いたい」と連絡してくる。普通だったら涙の再会。若年性認知症を患っている母は、千鶴のことは見ないふりをしている。千鶴に連絡を取った恵真、家事全般を担当する彩子とともに、母が所有する「さざめきハイツ」に暮らすことに。それぞれに「あたしの人生は、あたしのものだ」の覚悟を持つまでの話。★★★★☆
読了日:06月02日 著者:町田 そのこ

街道をゆく 2 韓のくに紀行 (朝日文庫) (朝日文庫 し 1-58)街道をゆく 2 韓のくに紀行 (朝日文庫) (朝日文庫 し 1-58)感想
この本を読んで、いろいろ判りました。中国も韓国も、日本のことをずっと野蛮国と思って嫌っていたのですね。その証拠が「倭」であり「卑弥呼」という文字。儒教精神が行きわたっている漢民族も韓民族も、人前で上半身裸に褌一丁であぐらをかくなんてのは言語道断。年長者を敬えない、礼儀を知らない倭人は、東アジアにおけるがん細胞のように忌み嫌われ、人として見下されていたそうです。そんな国が、やっぱり長幼の序を無視して上から目線で支配者として君臨していたわけですから、これは屈辱以外の何物でもない。勉強になった一冊です。
読了日:06月03日 著者:司馬 遼太郎

龍臥亭事件龍臥亭事件感想
1000ページ弱のこの本を頑張って読了しましたが、結果から言うと、作者のファン以外は読む必要なし、です。何体にも及ぶグロテスクな死体損壊の部分は、不快感を押し殺して読みましたが、犯人にとって物理的に必要なものではありませんでした。つまり、不要。そして、偶然が作る不可能犯罪は、私が好きな本格ミステリではありません。文章も稚拙というか、同じことについて同じ説明文が何回か出てくるのも、編集者が「くどいです」と言えなかったのでしょうか。人生でほとんど経験したことのない「途中断念」をしようかと思うほどの苦行。★★★☆☆
読了日:06月07日 著者:島田 荘司

百姓貴族(9)通常版 (ウィングス・コミックス・デラックス)百姓貴族(9)通常版 (ウィングス・コミックス・デラックス)感想
発売してすぐに買ったのに、ようやく読めた…。最近読書筋の衰えが甚だしくて。のっけから荒川農園に出没する野生動物の多様さにのけぞる。クマ、シカ、ウサギ、キツネ、アライグマ。あれ?リスは?先日ランチした友達ふたりが、庭に来たリスの写真を撮ってるくらい、札幌でも普通にいるぞ。最後の方に出てた荒川さんの地元の温泉施設は、泊ったことある~。でもって、岩手にある「牛の博物館」行ってみた~い。
読了日:06月07日 著者:荒川 弘

血のごとく赤く: 幻想童話集 (ハヤカワ文庫 FT リ 1-17)血のごとく赤く: 幻想童話集 (ハヤカワ文庫 FT リ 1-17)感想
悪夢のような童話集。『報われた笛吹き』は、ラウールというねずみの神を信仰している村に来た笛吹きが、村の祭りにその笛で感動を与えたにもかかわらず、本当の神よりもラウール神を取った村人たちから「子ども」という存在を奪う話で、これはキリスト教の影響が大きな寓話集なのだなと思ったのだが。きれいな娘の心がきれいとは限らず(多くは邪悪)、闇の公子に見初められた娘は逃げることがかなわない。何なら逃げた先の男がまた…ということもあり、本当に救われない。なのに美しいのだ。文章も挿絵も。それがまた、恐ろしいのだが。★★★★☆
読了日:06月08日 著者:タニス リー

サボテン姫とイグアナ王子サボテン姫とイグアナ王子感想
高校生の頃から清原なつののマンガが好きでした。淡々としたストーリーと絵のタッチですが、どちらにもほんのちょっぴり切なさが含まれていて。それはコメディタッチの作品でも、SFでも、変わることがありません。この本は単行本未収録策を集めた作品集なので、童話のような作品や、トルコ旅行記など様々な種類の作品が収録されていますが、一番好きなのは『さよならにまにあわない』です。主人公のビノが何かを隠しながら帰省するのですが、その何かが透けて見えたときからドキドキが止まりませんでした。切ない。
読了日:06月08日 著者:清原なつの

うろんな客うろんな客感想
「うろん」とは、あやしげな、うさんくさいという意味で、普通は客に使うような言葉ではない。そしてこの客、やりたい放題だ。本を破いたり、かんしゃくを起こして家じゅうのタオルを隠したり。そんな客が、もう17年も居ついているし、いなくなる気配もない。というのに、家族の皆さんは、ちょっと困ったような顔をしているものの、追い出そうとはしていない。さて、「うろんな客」の正体とは。ゴーリーの、ちょっとおどろおどろしいペン画が、なぜかちょっと可愛らしく見えてくる不思議。いつもより毒弱めの、かわいい作品。★★★★★
読了日:06月09日 著者:エドワード・ゴーリー

白い鹿 (ハヤカワ文庫 FT 68)白い鹿 (ハヤカワ文庫 FT 68)感想
人々の神々への信仰が薄れ、しかしまだ魔法が残っている時代の話。この話は、べヴァンとエリドとクインの愛と友情と冒険の物語である。が、少年ジャンプと違ってケルトの神話はスカッと爽やかにはならない。で、結果、誰が姿を消すのかというと…。私はてっきり「白い鹿」が、逆境を跳ね返す切り札なのかと思ったら、途中で死んじゃうし。この続きはいったい誰が主人公になるのだろう。東からくる、彼らにとって代わろうとするものとはキリスト教だから、もしかすると主人公はアイルランドそのものなのかもしれないな。★★★★☆
読了日:06月10日 著者:ナンシー スプリンガー

ペスト (岩波文庫)ペスト (岩波文庫)感想
フィクションである本書の詳細な描写が却って状況を軽く感じさせるように、最初は思えた。が、実際にコロナのパンデミックを経験した後に読んだことで、ペストのために町に閉じ込められてしまったオランの町の人々の閉塞感や、不安や苛立ちなどがまざまざと思いだされて、カミュの創造したオランの人々が、身近に感じられた。ところが解説を読むと、この『ペスト』は、「ナチス」をペストに託して書かれたものなのだという。閉塞感や理不尽で身近な死、圧倒的であり、無力感にさいなまれる日々。これは流行病だけではなく、戦争も同じなのだ、と。★★★★★
読了日:06月13日 著者:カミュ

アヘン王国潜入記 (集英社文庫)アヘン王国潜入記 (集英社文庫)感想
ケシの花畑の中で銃を持ち満面の笑みを見せる若い兵士たち。突っ込みどころ満載の表紙である。「アヘン王国」「潜入記」。突っ込みどころ満載のタイトルである。さすが高野秀行。ちなみにミャンマーは王国ではない。言葉もわからず、生活習慣も全くわからないまま潜入した著者は、そこでケシの種をまき、畑の雑草をむしり、ケシの実からアヘンの汁を取る体験をする。さらに、村人たちと酒を酌み交わし、マラリヤに罹り、シラミに集られ、アヘン中毒にもなる。頭が良くてアクティブでアホな高野秀行が満喫できる、これは著者の背骨と言うべき好著だ。★★★★☆
読了日:06月15日 著者:高野 秀行

石の猿 下 (文春文庫)石の猿 下 (文春文庫)感想
すっかり騙されました。第1作の『ボーン・コレクター』こそ犯人の目星がつかないまま最後の直接対決まで読んでしまったけれど、2作、3作と実行犯の後ろにいる黒幕はわかったので、今回も余裕をかましていたのですが。ゴーストの正体がわかった時の衝撃たるや。しかもそれが引き起こすであろう悲劇をどうやって回避するのかが全然想像できない。でも、私もずっと気にはなっていたのだ。なぜゴーストは、密入国者たち全員を殺すことにこだわるのか。今回はすっかり作者にやられましたな。次作はもっと注意深く、そして先入観を持たずに読もう。★★★★☆
読了日:06月16日 著者:ジェフリー・ディーヴァー

両京十五日 1: 凶兆 (ハヤカワ・ミステリ)両京十五日 1: 凶兆 (ハヤカワ・ミステリ)感想
明の皇太子が、首都である北京から遷都予定地である南京に着いたとき、皇太子・朱瞻基の乗った船が爆発。さらに北京にいる皇帝が危篤と言うことで、急ぎ朱瞻基は北京へ戻る。成り行きで関わった3人の手を借りながら。味方かと思ったら、敵。敵かと思ったら、やっぱり敵。ピンチに次ぐピンチ。しかも味方の3人はそれぞれに難がある。ロードムービー的な波乱万丈の冒険譚であり、だれが何のために皇室を狙っているのかの謎を追うミステリであり、庶民の普段の姿を知ることで皇太子の成長譚にもなっているという、実に一冊で何度も楽しいのである。★★★★★
読了日:06月18日 著者:馬伯庸

図書館には人がいないほうがいい図書館には人がいないほうがいい感想
確かに近年、図書館を運営するのはコスパが悪いという自治体が増えているようですし、それに対する不安や不満もわかります。利用者が多いのがいい図書館とは一概に言えないこともありました(運営を本屋さんに任せた結果、貴重な郷土資を大量廃棄など)。でもやっぱり、図書館には人がいたほうがいいと私は思っています。利用者も専門職である司書も図書館には必要。図書館は知識のアーカイブであるとともに、本と読者の仲介の場でもあるので。私は、私の納める住民税はすべて図書館に使ってください、くらいの気持ちで納税してます。★★★★☆
読了日:06月19日 著者:内田 樹

三十の反撃三十の反撃感想
正規雇用の社員になれないまま三十歳を迎えた主人公のキム・ジヘ。正直言って、反撃というほど大きなものではないちょっとしたうっぷん晴らしを、正義感というお題目付きで行う。そんなことで世の中は変わらないけれど、一人一人が小さな不満を腹の中で発酵させて膨らませていくのではなく、きちんと言葉や態度で表明していけば、そういう人が増えたら、世の中少しは変わるかも。という話なんだと思う。が、「世の中少しは変わるかも」の部分があまり書かれていないので、物語の大半を占める重苦しい気分が、突然反転することに違和感を禁じ得ない。★★★★☆
読了日:06月20日 著者:ソン・ウォンピョン,矢島暁子訳

茶色の朝茶色の朝感想
「茶色以外のペットを飼ってはいけない」という法律ができた。それに反対するような新聞やラジオや本は処分の対象になり、いつしか世の中は、茶色のものばかりで埋め尽くされる。ある日、友人が逮捕される。過去にさかのぼって、茶色ではない犬を飼っていた罪で。そしてある茶色い朝。彼の家の玄関ドアが叩かれる。奥付を見たら、2003年出版の本。冷戦が終わって、西欧諸国が一斉に右傾化し、人種差別主義による排外主義が台頭してきたことに危機感を抱いて書かれた本だそうだ。今読んでも全然古くないどころか、いよいよ危ない気がする。★★★★★
読了日:06月22日 著者:フランク パヴロフ,ヴィンセント ギャロ,藤本 一勇,高橋 哲哉

すももの夏すももの夏感想
長い夏の休みにイギリスからフランスに旅行に来た。しかし着いた早々母が病に倒れ、母親は物語の最後まで入院しているし、16歳の長女ジョスも半ばまでは部屋で寝込んでいるしで、セシルのほか、10歳のヘスター、7歳のウィルマウス、4歳のヴィッキーはホテルで客のような身内のような扱いを受けながら過ごすことになる。こういう場合、心細くて淋しい話か、羽を伸ばしてはじける話かになりやすいが、この話はこの両端の間を揺れながら、進んでいく。そしてこれが、作者の実体験をもとにした作品だというのに驚いた。やばくない?★★★★★
読了日:06月23日 著者:ルーマー ゴッデン

銀の陽 (ハヤカワ文庫 FT 70)銀の陽 (ハヤカワ文庫 FT 70)感想
故郷を持たずさすらう若者アランが山賊に襲われ、命まで取られようという時、彼を助けたのは、同じく故郷を持たずにさすらうハルだった。ふたりは兄弟のように互いを近しく思い、支え支えられして冒険の旅を続ける。ハルはエルフの血をひいていて、人間よりちょっと上の存在であり、伝説的な救世主であるのに対し、アランは全く普通の人で、ハルについて行くだけで精いっぱいの時もあるけれども、黙って並んだり背後を守ったりするのだ。しかも父親の仇の息子。この友情はちょっと胸アツ。友情と冒険と恋愛のどれをとっても、前作より上と思う。★★★★☆
読了日:06月25日 著者:ナンシー スプリンガー

虚栄の市〈第1〉 (1948年) (岩波文庫)虚栄の市〈第1〉 (1948年) (岩波文庫)感想
100年前のイギリスを舞台にした、恋愛下剋上小説(?)売れない画家とフランス人のダンサーの間に生まれた、孤児のレベッカと、豪商の娘として何不自由なく育ったアミーリャ。アミーリャはとても素直で感情豊か、レベッカは頭の回転が速く、リアリスト。こんな二人が親友なのだが…。ところで、古い岩波文庫で読んでいたので、旧字や旧仮名遣いが若干手ごわい。面白かったのが果物饅頭と書いて、タアトと読み仮名がふっていたこと。これ、タルトってことでいいでしょうか。果物饅頭。ぷぷぷ。★★★★★
読了日:06月27日 著者:サッカレー

魔術師 上 (文春文庫)魔術師 上 (文春文庫)感想
二重に鍵をかけていても部屋に入ってくる。手錠をして身柄を拘束しても、するりと抜け出してしまう。そして、ライムの家に忍び込んで部屋に火をつけることさえ難なくできてしまう犯人。これは手ごわい。今回は、実行犯の後ろにいる人はなんとなくわかるんだけど、事件の本来の目的がわからないので、どう関わっているのかがまったく不明。あと、ローランド・ベルが抱えている事件とどこかで交差するはずだよね、物語的に。そして、サーカスもどこかで関わってくるんだろうと思う。ああ、早く真相解明してスッキリしたい。★★★★☆
読了日:06月28日 著者:ジェフリー・ディーヴァー

兄いもうと兄いもうと感想
正岡子規と妹の律との、幼少期からの兄妹愛がテーマの本作。けれども、律視点で書かれているため、お兄ちゃんとしての子規の解像度が低すぎる。律が直接兄のそうした姿を見ていられた時期は、実はそれほど多くない。小説という形で書かれた本作は、律の思いに左右され過ぎていて、正岡子規の姿はあまり見えてこない。でも、一般的な兄いもうとではなく、子規と律をモデルにした小説なのだから、正岡升であり子規でもなければならないはず。評伝があまたある中で小説である意味を考えると、もう少し書きようがあったのではないかと思う。★★★★☆
読了日:06月30日 著者:鳥越 碧


読書メーター