4月7日(火)

 

解説・あらすじ

李相日監督が「悪人」「怒り」に続いて吉田修一の小説を映画化。任侠の家に生まれながら、歌舞伎役者として芸の道に人生を捧げた男の激動の人生を描いた人間ドラマ。

任侠の一門に生まれた喜久雄は15歳の時に抗争で父を亡くし、天涯孤独となってしまう。喜久雄の天性の才能を見抜いた上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎は彼を引き取り、喜久雄は思いがけず歌舞伎の世界へ飛び込むことに。喜久雄は半二郎の跡取り息子・俊介と兄弟のように育てられ、親友として、ライバルとして互いに高めあい、芸に青春を捧げていく。そんなある日、事故で入院した半二郎が自身の代役に俊介ではなく喜久雄を指名したことから、2人の運命は大きく揺るがされる。

主人公・喜久雄を吉沢亮、喜久雄の生涯のライバルとなる俊介を横浜流星、喜久雄を引き取る歌舞伎役者・半二郎を渡辺謙、半二郎の妻・幸子を寺島しのぶ、喜久雄の恋人・春江を高畑充希が演じた。脚本を「サマー・ウォーズ」の奥寺佐渡子、撮影をカンヌ国際映画祭パルムドール受賞作「アデル、ブルーは熱い色」を手がけたソフィアン・エル・ファニ、美術を「キル・ビル」の種田陽平が担当した。2025年・第78回カンヌ国際映画祭の監督週間部門出品。

2025年6月6日に封切られて大ヒットとなり、同年11月には「踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003年公開、173.5億円)の興行収入を超え、22年ぶりに邦画実写の歴代ナンバーワンの記録を塗り替えた。第49回日本アカデミー賞では最優秀作品賞ほか10部門で最優秀賞を受賞。第98回アカデミー賞では、日本作品で初となるメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた。

 

 

 

 

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映画化が決まった時から、絶対原作を読んで、絶対映画を観ようと思っていましたが、いろいろあってようやく観に行くことができました。

上映が来週の木曜日までと知って、慌てて万障を繰り合わせたしだい。

 

多くの人から「良かったよ~」と聞きましたが、カーッと頭に血が上る感動というのではなく、しみじみと良い映画でしたね。

ほどほどに難しくて、もう一度観たいと思う気持ちがわかりました。

私も、万菊さんが最期に喜久雄を呼んで、何を思ったのか、小説を読んで確認したいと思いました。

 

育ての親である花井半次郎が、自分の代役として実子の俊介ではなく喜久雄を選んだというのは、その時点での実力が喜久雄の方が上だったからというのもあるのでしょうが、俊介に、もっと貪欲に歌舞伎と向き合ってほしいという親としての気持ちがあったのだと思いました。

でも、それがふたりの運命を分けることになってしまったのですが。

 

映画の宣伝のされ方を見て、二人はライバルとして切磋琢磨しながらも、内心は反目し合っているのかと思っていましたが、最後まで二人は親友でしたね。

全然違う生まれと育ちでも、歌舞伎がふたりの間の中心にしっかりとあって、そこがぶれることは生涯なかった、ということですね。

 

とにかく吉沢亮の演技のすばらしさは誰もが認めるところですが(呆然としたときの瞬きのなさに、鳥肌が立ちました)、横浜流星も難しい役どころであり、心情を表現するところはもちろん、足を喪ってからの演技がもう…。

 

それから田中泯の女形っぷり。

踊っている時はもちろん、素顔に戻った時に自然に「おばあさんのようなおじいさん」になっていて、その静かな迫力に圧倒されました。

 

世間がなんと言おうとも、名を継ぐとか国宝となるなんてことよりも何よりも、喜久雄はただただ歌舞伎に魅せられて、「自分」と「歌舞伎」だけの世界にいることが幸せだったんだと思います。

もちろん師匠が最期に呼んだのが、ずっとそばにいた自分ではなく俊介の名だったことにショックを受けたり、芸より血が物をいう歌舞伎の世界に忸怩たる思いはあったはずですが、それよりももっと歌舞伎を舞いたい、上手くなりたいという思いが強かったと思うのです。

 

「お父ちゃん」と駆け寄ってくる娘を見たときの、冷たいまなざし。

俊介に対する温かみとは全然違って、ぞっとしました。

うん、やっぱり演技上手い。

 

駆け込みでも観ることができてよかったわ。