11月1日(土)
先月もまた、マンガを除けば26冊と、たくさん読むことができました。
勝因は、あまり天気がよろしくなかったこと(お散歩できない)と、野球のクライマックスシリーズ及び日本シリーズのおかげで、家族サービスから解放されたことの2点です。
雪が積もったら定期を買うので、却ってお散歩時間が増えることになり、家族サービスの時間も戻ってくるので、今月からはまた20冊前後に落ち着くかもしれません。
そうそう、東京と静岡にも行くしね。
★5つは6冊。
『きもの』は、純粋に面白かったのです。
現代ではちょっと硬めの文章なのに、主人公の少女の感じ方、おばあさんの思い、大正時代の人々の暮らしぶりが、すっと理解できて何のストレスもありませんでした。
『録音された誘拐』は、普通なら聞こえない音が聞こえる探偵と、状況を把握する力が尋常じゃない探偵事務所長の力が掛け合わされたときの、圧倒的な事件解決力。
爽快。
『君のクイズ』
読んでいる間、一流のクイズプレーヤーの頭のうちを自分のもののように感じ、すごく楽しかった。
私がなぜクイズが好きか、なぜ競技クイズのプレーヤーにはなれなかったのか、自然と納得させられた。
『与楽の飯』
奈良時代に大仏を作ることの意味、庶民の暮らし、官僚とは…が、すんなりと頭に入ってくる。
限られた食材で作られる食事が、なんとも美味しそう。
味噌も醤油もない時代なのに。
『青瓜不動』は、なぜ★5つをつけたのか、今となってはちょっと不明。
多分、富次郎の覚悟にぐっと来たのだと思う。
好きなこと、極めたいことがあっても、才能が伴うとは限らない。
どこかで見切りをつけるのが成長なのかもしれないけれど、富次郎には未練がましく絵の道を進んで欲しい。
『黛家の兄弟』
最近は江戸庶民の暮らしを書いた時代小説が多い中で、正統派とも言える、武士を主人公とした、お家を守る為の闘いを描いた小説。
主人公がストイックなのはさておき、作者も相当ストイックなのではないかと思われる。
背筋をピンと伸ばして読みたい本。
番外編として、マンガだけど『地球へ…』は本当に読めてよかった。
懐かしい×面白い=最高。
10月の読書メーター
読んだ本の数:29
読んだページ数:9405
ナイス数:1072
別れの季節 お勝手のあん (ハルキ文庫 し 4-11)の感想
別れの季節は、多分おやすを大人にする。自分で決めて自分で行動しなければならないことが増える。時代はますますきな臭くなり、おやすの知人たちが会津や京都や長崎に散らばっている状況で、誰がどのように時代の波を浴びてしまうのか心配でならない。小夜の息子については、情け容赦のない設定に心が痛む。今の時代でも、口さがない人がどれだけひどいことを言うかと思うのに、当時の迷信深い人たちなら、悪意なく小夜を傷つける言葉を吐くだろうことは想像に難くない。だから小夜たちの決断に間違いはないはずだ。おやす、寂しくなるね。★★★★☆
読了日:10月02日 著者:柴田 よしき
三体0 球状閃電 (ハヤカワ文庫SF)の感想
『三体』に比べて圧倒的に若書きで詰め込み過ぎなのが気になってしょうがなかった。出だしは面白かったんよ。14歳の誕生日に、目の前で両親が球電によって灰にされた陳は人一倍死を怖れながら、球電に魅せられ、物理学徒となる。ところが軍属の美女・林雲と出会ったところから、急速に物語は加速していく。実験して、分析して、何年もかかりそうな過程はさっくり端折って、何千もの球電を捕獲って、全然現実的じゃない。プロットが足りなすぎる。第一部だけを丁寧に書き込んでくれれば良かったのに。残念。★★★★☆
読了日:10月03日 著者:劉 慈欣
コメンテーターの感想
数年ぶりに読んだ、伊良部先生シリーズ。ずいぶん薄くなったような気がして少し寂しかったのですが、相変わらず面白かったです。コロナ禍でリアルな人間関係を築けないケースもあり、たった数年前のことなのにのど元過ぎればすっかり過去なことに、ちょっとショックを受けたりもして。伊良部先生は子どものように無邪気でずる賢くて、先入観を持たない。精神科医として当たり前と言えば言えるけど、患者としてはそれが一番ありがたい。だって自分が一番自分のことを否定しているから。★★★★☆
読了日:10月05日 著者:奥田 英朗
地球(テラ)へ(愛蔵版)(1)の感想
隣の市の図書館でこの本を見つけて狂喜乱舞。ずっと読み返したいと思っていたから。迷わず借りてきました。(市民じゃないのにすみません)ストーリーとしてはやっぱり第一部が圧巻の面白さ。地球に焦がれる人類とミュウ。決して共存することができない理由は最後まで読めばわかるけど、納得感はあまりない。多分AIの柔軟な情報の受け入れや判断を見ているから、硬直したコンピュータの判断の押し付けに違和感なのだ。そしてほぼ手書きの絵の精密さには脱帽。でも当時はこれが当たり前だったんだよなあ。
読了日:10月05日 著者:竹宮恵子
幸菌スプレー (文春文庫 む 12-12)の感想
読んだ人が幸せに「ウフフ」と笑って読めるように『幸菌スプレー』というタイトル。というわけで怖い話はなく、ほのぼのしたり、時にじんわり泣けてきたりする話が多かったのだが、さほど心に残るわけでもなく…。忘れてはならないのは、うっかり納戸に閉じ込められて出られなくなったムロイさんが、トイレの我慢が限界に来た時に、靴の空き箱に猫トイレ用の砂を入れて用を済ませたというエピソード。災害時用の携帯トイレは用意してあるけれど、猫用の砂の方が買うのも処分も簡単な気がする。調べてないけど。★★★★☆
読了日:10月06日 著者:室井 滋
プリンセス・ダイアリー ピンクのドレス篇の感想
アメリカの高校生にとって、とても重要なイベントであるプロム。卒業を迎える生徒のためのダンスパーティ。これにミアは、出たくてたまらない。もちろんマイケルに誘ってもらって。ところがまたまたマイケルからのアピールがまったくなくて、やきもき。今までのパターン通り、うまい具合に物事はおさまるんだけど、今回は、夏休みにジェノヴィアで2ヶ月過ごさなければならないと主張するパパに、マイケルの言った一言がすごい。さすがのパパもぐうの音が出なかった。★★★★☆
読了日:10月07日 著者:メグ・キャボット
QED ~flumen~ ホームズの真実 (講談社ノベルス タS- 39)の感想
またしてもシャーロキアンの集まりで事件が…。今回は意識不明の重体だったのだが、一か所だけ「亡くなって」になっていたのが気になった。メアリという女性がなんという作品に出ているとか、事件と事件の間にホームズが何をしていたとか、細かなデータを並べ立ててはいるけれど、あまり面白くはなかったな。事件を解決するために唐突にスミレと紫と源氏物語について語りだす崇にも、違和感しかない。同時収録のパーフェクトガイドブックも、特に目新しいものはなく…。書き下ろしの『二次会はカル・デ・サック』については…。★★★★☆
読了日:10月08日 著者:高田 崇史
きもの (新潮文庫)の感想
るつ子は、姉ふたり兄ひとりの4人兄妹の末っ子。美貌自慢で自己中な長女、要領のよい次女のおさがりばかり着せられ、いつも貧乏くじを引かされる。そんなるつ子の女学生時代から結婚するまでの物語。それなりにドラマはある。母の死、姉たちの結婚、関東大震災。でも、この小説の面白さは、るつ子が感じ、考えることに尽きる。女性としてのたしなみ、家事や裁縫の手順、人付き合いの心得などを答えてくれるのが祖母。昔からの習わしには意味がある。人の心には妙がある。そういうことを理論立てて話してくれる祖母は、るつ子にとって大きな支えだ。★★★☆
読了日:10月09日 著者:幸田 文
魔法の国ザンス(16) ナーダ王女の憂鬱の感想
これはアニメ化か映画化かのノベライズなのでしょうか。一応ザンスの世界を舞台にしているとはいえ、今までの流れとは少し違って、マンダニアの少年少女がザンスの世界を冒険の舞台として旅をする話。今までのメンバーが出てはいるけど、テイストが違う。でもやっぱり、この世界観はアニメと親和性があると思う。今までのキャラクターの背景をいったんリセットして、単純に人間がザンスの世界で冒険の旅をする話にして、導入部にするのは、あり。★★★★☆
読了日:10月11日 著者:ピアズ・アンソニイ
首取物語の感想
記憶を無くした少年と記憶と首以外の体のパーツを無くした武士(?)の旅。空腹を満たすためなら他人の命を奪うことも躊躇しない、すさんだ心を持つ少年・トサが、旅をするうちに少しずつ人の心を取り戻していく。なぜこの二人が旅をするのか?なぜ記憶や体を失ったのか?幸せになりたくない人なんていないのに、善と悪とはたやすく入れ替わることができるのだ。だって善も悪も人の都合で作られたものだから。最後について書きたいのだけど、それを書くのはネタバレになるし、読んだ人とどこかで語り合いたい。★★★★☆
読了日:10月12日 著者:西條奈加
録音された誘拐の感想
誘拐されたのは、大野探偵事務所の所長。事件を解決に導くのは、そこに所属する探偵山口美々香。彼女は常人離れした聴力の持ち主で…。ところがどうも今回の美々香は精彩を欠く。最初から、うさん臭い人はいた。この人が犯人じゃないかと、誘導されるかのように腑に落ちる人物が。しかし簡単すぎないか?作中でその線が否定され、さて犯人は誰で、誘拐の目的は何かと考え直す。いや、裏の裏は表じゃなく、裏の裏は別の裏かも…。誘拐の犯人は、シリーズ化されたらきっと再び出てくるだろう。明智小五郎に対する怪人二十面相のように。★★★★★
読了日:10月13日 著者:阿津川 辰海
君のクイズ (朝日文庫)の感想
私は無類のクイズ好きで、しかも脳内思考だだ洩れ小説(ソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィチの一日』や一連のニコルソン・ベイカーの作品など)が好きなので、ドンピシャで好きな小説を書いてもらったような気して、とても嬉しい。まるでクイズ中の脳内をトレースしたような作品で、一瞬のうちにクイズプレーヤーはこのように考えているのかというのがよくわかる。そしてそれは、競技クイズのプレーヤーが、いかに私のようなお茶の間クイズプレーヤーとはかけ離れた存在であるかを、思い知らせることでもあった。★★★★★
読了日:10月14日 著者:小川 哲
「ない仕事」の作り方 (文春文庫 み 23-6)の感想
人が目をとめないものに目をつけ、面白がることにより新たなブームを作る天才・みうらじゅん。離れた位相の概念を組み合わせて新しいものを作る、組み合わせたもののうち片方はネガティブな語感のものにする、などのテクニックもあるが、肝心なのはまず自分が面白いと信じることと、それを続けることなのだ。就活時に面接官を接待するつもりで面接を受けた、というのは大切な心構えだと思う。心にもない「よいしょ」ではなく、相手を少し持ち上げながらこちらの要求をのませるわけだから。ともにいい仕事をしましょう!と。★★★★☆
読了日:10月15日 著者:みうらじゅん
与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記 (光文社文庫 さ 35-1 光文社時代小説文庫)の感想
タイトルの「与楽(楽を与える)」とは慈を表しているらしい。抜苦与楽と四字熟語で使われることが多い、仏教由来の言葉である。いわゆる「奈良の大仏」を建立するために全国から集められた仕丁(しちょう・現場の作業員)の一人、真楯(またて)が語り手となる。奈良時代は身分社会なので、貴族、平民、そして奴婢も多く出てくる。そして大仏建立という国家事業のため、通常の身分の上下の他に縦割りの役職による軋轢もある。そんな中での「与楽」=「慈」とは?大仏建立は誰のため?大仏建立が人々に与えたものとは?★★★★★
読了日:10月16日 著者:澤田 瞳子
青瓜不動 三島屋変調百物語九之続の感想
百物語とはいえ、人に仇なすのは『自在の筆』くらいで、他の3編は懸命に生きる人を支えるような妖。だから、読後感は悪くない。で、さあ、『自在の筆』よ。自分の力を最大限に引き出してくれる絵筆。しかしその筆は人の血を欲するのである。素直で優しい富次郎は、その筆の力を見聞きして「もう二度と描かない」と思い定める。けれども、百物語を聞きながら、富次郎はやっぱり絵を描きたいと思うのだ。人の心を持つ化身たちの笑みと涙、その尊さ、その優しさを描きたい、と。描きゃあいいじゃん、と私は思うが、次巻では如何に?★★★★★
読了日:10月17日 著者:宮部 みゆき
マナーはいらない 小説の書きかた講座の感想
小説家になりたいわけでも、趣味で小説を書いているわけでもないのに、つい買ってしまった三浦しをんの本。でも読んでよかった。才能があるからと言って努力をしないわけじゃないんだ。というか、多分才能があるからこそ、自己に恃む部分が多くなる分、書くことの苦しみが増すんだなあって。三浦しをんといえば、自由にのびのび書いてあるような作風なので驚いたのだが、ちゃんと構想・構成をしっかり作り上げてから作品を書いているのだ。手書きのノートの写しを見て、当たり前だが、行き当たりばったりで書いているわけではないのだなあ…と。★★★★☆
読了日:10月18日 著者:三浦 しをん
松本ぷりっつの夫婦漫才旅 ときどき3姉妹 NO密さんぽ編 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)の感想
松本ぷりっつさんの『うちの3姉妹』シリーズが大好きでよく読んでいたのに、うっかりしてたらこんな本が出てた。隣の市の図書館で見つけて、すぐ借りてきた。小学校に入ったばかりだった長女が大学生、赤ちゃんだった3女は中2ですと!時の流れは恐るべきものです。とはいえこの本のメインは夫婦旅。コロナ禍の散歩や旅行は苦労も多かったと思うのですが、相変わらず楽しそうな夫婦で、散歩でも旅行でもよく食べてらっしゃいます。私も来年のお散歩は、交通費をかけてでも遠くの町を歩いて見よう。今年はそろそろ雪が降るので閉店ガラガラ。
読了日:10月18日 著者:松本ぷりっつ
プリンセス・ダイアリー 悩める見習いプリンセス篇の感想
相変わらず悩み多きミア。特筆すべきは急に降ってわいた生徒会長選挙。リリーが勝手に推薦して、宿敵ラナと選挙戦を争うことになる。しかし、選挙当日、口先だけの美味しい公約を述べるラナに対して、学校とは、生徒会とはどうあるべきかと、真摯に自分の考えを述べ、生徒たちから拍手で受け入れられた時、ミアはもうリリーにそれを譲る気はなくなっていた。これは、プリンセスとしても大きな成長ではないですか。あとはミアの母親。妊娠中から思っていたけど、あまりにも自己管理ができなすぎ。アメリカの母親ってそういう感じ?文化の違い?★★★★☆
読了日:10月19日 著者:メグ・キャボット
QED ~flumen~ 月夜見 (講談社文庫 た 88-48)の感想
QEDシリーズの外伝的なflumenなのでしょうがないのかもしれないけれど、ミステリとしての出来は今一つ。謎多き月読命の謎を解くというのが、この作品のテーマであることはわかる。でも、殺人の動機がそのようなものならば、もっと周囲の人から変人扱いを受けているはずだよ。そしてエピローグの前の自殺と、エピローグでの自殺。「あんたたち、何したかったのよ!」と思ってしまった。特に前の方の自殺ね。事件的になんの意味もない行動。奈々と崇を入院させるために自殺したんですな、彼女は。…作者、どうした?★★★★☆
読了日:10月20日 著者:高田 崇史
いのちのハ-ドル: 「1リットルの涙」母の手記 (幻冬舎文庫 き 13-2)の感想
難病であるほど、闘病記を読むのはつらい。そしてそれは本人の手記ではなく、看護する側のものだとしても。脊髄小脳変性症という運動機能が消失していき、最後医は呼吸運動の停止か衰弱による合併症のため、多くの場合死亡する。未だ原因も治療法もわかっていない病。自分も子どもがあるので、苦しんでいる子どもに何もしてあげられないじれったさはよくわかる。ましてや、最終的には死に至る長い長い闘病であることを考えると、著者の判断や行動には頭が下がる。生きることを最後まであきらめさせなかったことが素晴らしい。★★★★☆
読了日:10月21日 著者:木藤 潮香
芽むしり仔撃ち (1958年)の感想
学生時代の友人が、卒論代わりに大江健三郎の書誌を作った。「難しいけど、好きなんだよね。特に『芽むしり 仔撃ち』が」との返事に、「めむしりこうち」という音が意味するところが分からず、当惑した。後に漢字表記を見て、間引きの話か、と思った。感化院(昔の少年院)の少年たちが、集団疎開のために山奥の村に連れてこられる。生き残るための間引きではなく、自分たちと違うものを排除する間引き。視野狭窄で排他的な村人たちのおぞましさ。生き延びるために村人たちにしたがう子どもたちと、ただ一人したがわず追放された語り手の少年。★★★★☆
読了日:10月23日 著者:大江 健三郎
塞王の楯 上 (集英社文庫)の感想
最強の楯(石垣)と至高の矛(銃)作りの二つの集団。どちらも最高のものを作ることによって、戦のない世の中を作れると思っている。一瞬、銃で「戦のない世」を作るって何だ?と思ったけれど、これが高じると核抑止論になるんだね。上巻で匡介は、大津城の石垣の補強を頼まれ、大津城を完全な水城にするのだが、下巻の舞台はここではないのだろう。大津城主・京極高次がなかなかいいキャラクターで楽しかったので、残念。『のぼうの城』ののぼう様や『とっぴんぱらりの風太郎』のひさご様みたいな感じ。下巻にはもう出てこないのかなあ。★★★★☆
読了日:10月24日 著者:今村 翔吾
海をあげる (単行本)の感想
ノンフィクション=ルポルタージュというわけではないとは思うが、始めの一編で最初の夫との離婚の話で、一体何を読まされているのかと混乱した。そして、彼女の多用する「○○してあげる、あげた」という表現。他意はないのかもしれない。ただの文章上の癖なのかもしれない。でも、どうしても上からものを言っているように見えてしまう。その後、沖縄の海洋汚染や基地問題などにも触れているのだけれど、あくまでもこれはエッセイ。エッセイはノンフィクションなのか問題。もやもや。★★★★☆
読了日:10月26日 著者:上間 陽子
黛家の兄弟の感想
神山藩で代々筆頭家老を務めてきた黛家。長男は家を継ぐとして、次男より先に三男が、大目付を務める黒沢家に婿にと求められる。筆頭家老の座を虎視眈々と狙う次席家老。行き場のない次男。凡庸な藩主。一応、この事件はこういうことなのだろうなあ、こういう風に決着するといいなあ、などと思いながら読んでいるのだけど、そして途中までは確かにそのとおりに話が進んでいたはずなんだけど、最後の方はほとんど、怒涛の展開に翻弄されました。「よき政とは、なんだと思う」「だれも死なずにすむ、ということでござろう」。面白うございました。★★★★★
読了日:10月27日 著者:砂原 浩太朗
GOSICK ―ゴシック― (角川文庫)の感想
あれ?シリーズものの第一作だというのに、過去作の影がちらつくぞ?と思ったら、過去に短篇が発表されていたということだった。今作は、占い師が殺された事件を解決したお礼に、ヴィクトリカと久城が、ひょんなことから大型客船に乗り込んだことにより、新たな事件に巻き込まれる話。子どもたちをさらって、限られたスペースに閉じ込める。互いに殺し合うのを見物するために。今回は、10年前に行われた子どもたちの殺し合いと同じシチュエーションで大人たちが閉じ込められる。これは10年前の復讐か?犯人は誰で、10年前の目的は何なのか?★★★★☆
読了日:10月28日 著者:桜庭 一樹
まいまいつぶろの感想
歴史上あまり取り上げられることのない、徳川第九代将軍・家重。口がまわらず、半身がマヒしているため正座ができず、字を書くこともできず、武士の頂点たる征夷大将軍になることなど不可能と思われていた。第一章を読み終えた時点で号泣でした。まだ16歳ながらに家重を守り抜こうとする忠光の無私の覚悟に泣けてしまった。けれど、その後がちょっと…。メインは支える忠光なのか、支えられる家重なのか、時々で揺らいでいるのが気になった。各老中たちの書き分けも弱い。とはいえ、混乱しがちな徳川9代、10代の関係がわかってよかった。★★★★☆
読了日:10月29日 著者:村木 嵐
松本ぷりっつの夫婦漫才旅 ときどき3姉妹 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)の感想
一番上のお姉ちゃんが、美大生というのにも驚いたけれど、おっぺけぶりも健在で癒されるというか、吹いたわ。浅草、秩父、館山は行ったことがあるので、懐かしく読んだ。やっぱり行ったことあるところは、読んでいても思入れが違うよね。そして世の中にはまだまだ美味しいものがあることを知る。
読了日:10月29日 著者:松本ぷりっつ
楽園の楽園 (単行本)の感想
立て続けに起こる大規模事故や天災。それらは「天災及び事故、犯罪の予見と予防に関する基軸」なるアルゴリズムを基にした、略称『天軸』と呼ばれる人工知能の暴走が原因と考えられた。五十九彦(ごじゅくひこ)、三瑚嬢(さんごじょう)、蝶八隗(ちょうはっかい)の3人は、その開発者の所在を探す旅に出た。デビュー作『オーデュポンの祈り』を思い出す。案山子の優午。作家デビュー25年の記念作品なのだそうだ。だから、デビューからぶれていない伊坂幸太郎のテーマが前面に出ているのか。とはいえこれは、あんまり万人向けではない。★★★★☆
読了日:10月30日 著者:伊坂 幸太郎
アンと愛情の感想
『和菓子のアン』シリーズの第三弾。今回のアンちゃんは空回りが多かったように思いました。特に今回、ずっとアンちゃんを支えてくれた店長との別れについて、自分の気持ちに振り回され、周りを見る余裕がなかったのはらしくないなあ、と。あんまり周囲にネガティブオーラを出す子じゃなかったような気がします。前回、乙女すぎてこじらせ男子になるのではないかと心配だった立花さんは、こじらせずに何とか頑張っていて、Good。前作の文庫化記念に書かれた『豆大福』が良かったです。★★★★☆
読了日:10月31日 著者:坂木司
読書メーター
先月もまた、マンガを除けば26冊と、たくさん読むことができました。
勝因は、あまり天気がよろしくなかったこと(お散歩できない)と、野球のクライマックスシリーズ及び日本シリーズのおかげで、家族サービスから解放されたことの2点です。
雪が積もったら定期を買うので、却ってお散歩時間が増えることになり、家族サービスの時間も戻ってくるので、今月からはまた20冊前後に落ち着くかもしれません。
そうそう、東京と静岡にも行くしね。
★5つは6冊。
『きもの』は、純粋に面白かったのです。
現代ではちょっと硬めの文章なのに、主人公の少女の感じ方、おばあさんの思い、大正時代の人々の暮らしぶりが、すっと理解できて何のストレスもありませんでした。
『録音された誘拐』は、普通なら聞こえない音が聞こえる探偵と、状況を把握する力が尋常じゃない探偵事務所長の力が掛け合わされたときの、圧倒的な事件解決力。
爽快。
『君のクイズ』
読んでいる間、一流のクイズプレーヤーの頭のうちを自分のもののように感じ、すごく楽しかった。
私がなぜクイズが好きか、なぜ競技クイズのプレーヤーにはなれなかったのか、自然と納得させられた。
『与楽の飯』
奈良時代に大仏を作ることの意味、庶民の暮らし、官僚とは…が、すんなりと頭に入ってくる。
限られた食材で作られる食事が、なんとも美味しそう。
味噌も醤油もない時代なのに。
『青瓜不動』は、なぜ★5つをつけたのか、今となってはちょっと不明。
多分、富次郎の覚悟にぐっと来たのだと思う。
好きなこと、極めたいことがあっても、才能が伴うとは限らない。
どこかで見切りをつけるのが成長なのかもしれないけれど、富次郎には未練がましく絵の道を進んで欲しい。
『黛家の兄弟』
最近は江戸庶民の暮らしを書いた時代小説が多い中で、正統派とも言える、武士を主人公とした、お家を守る為の闘いを描いた小説。
主人公がストイックなのはさておき、作者も相当ストイックなのではないかと思われる。
背筋をピンと伸ばして読みたい本。
番外編として、マンガだけど『地球へ…』は本当に読めてよかった。
懐かしい×面白い=最高。
10月の読書メーター
読んだ本の数:29
読んだページ数:9405
ナイス数:1072
別れの季節 お勝手のあん (ハルキ文庫 し 4-11)の感想別れの季節は、多分おやすを大人にする。自分で決めて自分で行動しなければならないことが増える。時代はますますきな臭くなり、おやすの知人たちが会津や京都や長崎に散らばっている状況で、誰がどのように時代の波を浴びてしまうのか心配でならない。小夜の息子については、情け容赦のない設定に心が痛む。今の時代でも、口さがない人がどれだけひどいことを言うかと思うのに、当時の迷信深い人たちなら、悪意なく小夜を傷つける言葉を吐くだろうことは想像に難くない。だから小夜たちの決断に間違いはないはずだ。おやす、寂しくなるね。★★★★☆
読了日:10月02日 著者:柴田 よしき
三体0 球状閃電 (ハヤカワ文庫SF)の感想『三体』に比べて圧倒的に若書きで詰め込み過ぎなのが気になってしょうがなかった。出だしは面白かったんよ。14歳の誕生日に、目の前で両親が球電によって灰にされた陳は人一倍死を怖れながら、球電に魅せられ、物理学徒となる。ところが軍属の美女・林雲と出会ったところから、急速に物語は加速していく。実験して、分析して、何年もかかりそうな過程はさっくり端折って、何千もの球電を捕獲って、全然現実的じゃない。プロットが足りなすぎる。第一部だけを丁寧に書き込んでくれれば良かったのに。残念。★★★★☆
読了日:10月03日 著者:劉 慈欣
コメンテーターの感想数年ぶりに読んだ、伊良部先生シリーズ。ずいぶん薄くなったような気がして少し寂しかったのですが、相変わらず面白かったです。コロナ禍でリアルな人間関係を築けないケースもあり、たった数年前のことなのにのど元過ぎればすっかり過去なことに、ちょっとショックを受けたりもして。伊良部先生は子どものように無邪気でずる賢くて、先入観を持たない。精神科医として当たり前と言えば言えるけど、患者としてはそれが一番ありがたい。だって自分が一番自分のことを否定しているから。★★★★☆
読了日:10月05日 著者:奥田 英朗
地球(テラ)へ(愛蔵版)(1)の感想隣の市の図書館でこの本を見つけて狂喜乱舞。ずっと読み返したいと思っていたから。迷わず借りてきました。(市民じゃないのにすみません)ストーリーとしてはやっぱり第一部が圧巻の面白さ。地球に焦がれる人類とミュウ。決して共存することができない理由は最後まで読めばわかるけど、納得感はあまりない。多分AIの柔軟な情報の受け入れや判断を見ているから、硬直したコンピュータの判断の押し付けに違和感なのだ。そしてほぼ手書きの絵の精密さには脱帽。でも当時はこれが当たり前だったんだよなあ。
読了日:10月05日 著者:竹宮恵子
幸菌スプレー (文春文庫 む 12-12)の感想読んだ人が幸せに「ウフフ」と笑って読めるように『幸菌スプレー』というタイトル。というわけで怖い話はなく、ほのぼのしたり、時にじんわり泣けてきたりする話が多かったのだが、さほど心に残るわけでもなく…。忘れてはならないのは、うっかり納戸に閉じ込められて出られなくなったムロイさんが、トイレの我慢が限界に来た時に、靴の空き箱に猫トイレ用の砂を入れて用を済ませたというエピソード。災害時用の携帯トイレは用意してあるけれど、猫用の砂の方が買うのも処分も簡単な気がする。調べてないけど。★★★★☆
読了日:10月06日 著者:室井 滋
プリンセス・ダイアリー ピンクのドレス篇の感想アメリカの高校生にとって、とても重要なイベントであるプロム。卒業を迎える生徒のためのダンスパーティ。これにミアは、出たくてたまらない。もちろんマイケルに誘ってもらって。ところがまたまたマイケルからのアピールがまったくなくて、やきもき。今までのパターン通り、うまい具合に物事はおさまるんだけど、今回は、夏休みにジェノヴィアで2ヶ月過ごさなければならないと主張するパパに、マイケルの言った一言がすごい。さすがのパパもぐうの音が出なかった。★★★★☆
読了日:10月07日 著者:メグ・キャボット
QED ~flumen~ ホームズの真実 (講談社ノベルス タS- 39)の感想またしてもシャーロキアンの集まりで事件が…。今回は意識不明の重体だったのだが、一か所だけ「亡くなって」になっていたのが気になった。メアリという女性がなんという作品に出ているとか、事件と事件の間にホームズが何をしていたとか、細かなデータを並べ立ててはいるけれど、あまり面白くはなかったな。事件を解決するために唐突にスミレと紫と源氏物語について語りだす崇にも、違和感しかない。同時収録のパーフェクトガイドブックも、特に目新しいものはなく…。書き下ろしの『二次会はカル・デ・サック』については…。★★★★☆
読了日:10月08日 著者:高田 崇史
きもの (新潮文庫)の感想るつ子は、姉ふたり兄ひとりの4人兄妹の末っ子。美貌自慢で自己中な長女、要領のよい次女のおさがりばかり着せられ、いつも貧乏くじを引かされる。そんなるつ子の女学生時代から結婚するまでの物語。それなりにドラマはある。母の死、姉たちの結婚、関東大震災。でも、この小説の面白さは、るつ子が感じ、考えることに尽きる。女性としてのたしなみ、家事や裁縫の手順、人付き合いの心得などを答えてくれるのが祖母。昔からの習わしには意味がある。人の心には妙がある。そういうことを理論立てて話してくれる祖母は、るつ子にとって大きな支えだ。★★★☆
読了日:10月09日 著者:幸田 文
魔法の国ザンス(16) ナーダ王女の憂鬱の感想これはアニメ化か映画化かのノベライズなのでしょうか。一応ザンスの世界を舞台にしているとはいえ、今までの流れとは少し違って、マンダニアの少年少女がザンスの世界を冒険の舞台として旅をする話。今までのメンバーが出てはいるけど、テイストが違う。でもやっぱり、この世界観はアニメと親和性があると思う。今までのキャラクターの背景をいったんリセットして、単純に人間がザンスの世界で冒険の旅をする話にして、導入部にするのは、あり。★★★★☆
読了日:10月11日 著者:ピアズ・アンソニイ
首取物語の感想記憶を無くした少年と記憶と首以外の体のパーツを無くした武士(?)の旅。空腹を満たすためなら他人の命を奪うことも躊躇しない、すさんだ心を持つ少年・トサが、旅をするうちに少しずつ人の心を取り戻していく。なぜこの二人が旅をするのか?なぜ記憶や体を失ったのか?幸せになりたくない人なんていないのに、善と悪とはたやすく入れ替わることができるのだ。だって善も悪も人の都合で作られたものだから。最後について書きたいのだけど、それを書くのはネタバレになるし、読んだ人とどこかで語り合いたい。★★★★☆
読了日:10月12日 著者:西條奈加
録音された誘拐の感想誘拐されたのは、大野探偵事務所の所長。事件を解決に導くのは、そこに所属する探偵山口美々香。彼女は常人離れした聴力の持ち主で…。ところがどうも今回の美々香は精彩を欠く。最初から、うさん臭い人はいた。この人が犯人じゃないかと、誘導されるかのように腑に落ちる人物が。しかし簡単すぎないか?作中でその線が否定され、さて犯人は誰で、誘拐の目的は何かと考え直す。いや、裏の裏は表じゃなく、裏の裏は別の裏かも…。誘拐の犯人は、シリーズ化されたらきっと再び出てくるだろう。明智小五郎に対する怪人二十面相のように。★★★★★
読了日:10月13日 著者:阿津川 辰海
君のクイズ (朝日文庫)の感想私は無類のクイズ好きで、しかも脳内思考だだ洩れ小説(ソルジェニーツィンの『イワン・デニーソヴィチの一日』や一連のニコルソン・ベイカーの作品など)が好きなので、ドンピシャで好きな小説を書いてもらったような気して、とても嬉しい。まるでクイズ中の脳内をトレースしたような作品で、一瞬のうちにクイズプレーヤーはこのように考えているのかというのがよくわかる。そしてそれは、競技クイズのプレーヤーが、いかに私のようなお茶の間クイズプレーヤーとはかけ離れた存在であるかを、思い知らせることでもあった。★★★★★
読了日:10月14日 著者:小川 哲
「ない仕事」の作り方 (文春文庫 み 23-6)の感想人が目をとめないものに目をつけ、面白がることにより新たなブームを作る天才・みうらじゅん。離れた位相の概念を組み合わせて新しいものを作る、組み合わせたもののうち片方はネガティブな語感のものにする、などのテクニックもあるが、肝心なのはまず自分が面白いと信じることと、それを続けることなのだ。就活時に面接官を接待するつもりで面接を受けた、というのは大切な心構えだと思う。心にもない「よいしょ」ではなく、相手を少し持ち上げながらこちらの要求をのませるわけだから。ともにいい仕事をしましょう!と。★★★★☆
読了日:10月15日 著者:みうらじゅん
与楽の飯 東大寺造仏所炊屋私記 (光文社文庫 さ 35-1 光文社時代小説文庫)の感想タイトルの「与楽(楽を与える)」とは慈を表しているらしい。抜苦与楽と四字熟語で使われることが多い、仏教由来の言葉である。いわゆる「奈良の大仏」を建立するために全国から集められた仕丁(しちょう・現場の作業員)の一人、真楯(またて)が語り手となる。奈良時代は身分社会なので、貴族、平民、そして奴婢も多く出てくる。そして大仏建立という国家事業のため、通常の身分の上下の他に縦割りの役職による軋轢もある。そんな中での「与楽」=「慈」とは?大仏建立は誰のため?大仏建立が人々に与えたものとは?★★★★★
読了日:10月16日 著者:澤田 瞳子
青瓜不動 三島屋変調百物語九之続の感想百物語とはいえ、人に仇なすのは『自在の筆』くらいで、他の3編は懸命に生きる人を支えるような妖。だから、読後感は悪くない。で、さあ、『自在の筆』よ。自分の力を最大限に引き出してくれる絵筆。しかしその筆は人の血を欲するのである。素直で優しい富次郎は、その筆の力を見聞きして「もう二度と描かない」と思い定める。けれども、百物語を聞きながら、富次郎はやっぱり絵を描きたいと思うのだ。人の心を持つ化身たちの笑みと涙、その尊さ、その優しさを描きたい、と。描きゃあいいじゃん、と私は思うが、次巻では如何に?★★★★★
読了日:10月17日 著者:宮部 みゆき
マナーはいらない 小説の書きかた講座の感想小説家になりたいわけでも、趣味で小説を書いているわけでもないのに、つい買ってしまった三浦しをんの本。でも読んでよかった。才能があるからと言って努力をしないわけじゃないんだ。というか、多分才能があるからこそ、自己に恃む部分が多くなる分、書くことの苦しみが増すんだなあって。三浦しをんといえば、自由にのびのび書いてあるような作風なので驚いたのだが、ちゃんと構想・構成をしっかり作り上げてから作品を書いているのだ。手書きのノートの写しを見て、当たり前だが、行き当たりばったりで書いているわけではないのだなあ…と。★★★★☆
読了日:10月18日 著者:三浦 しをん
松本ぷりっつの夫婦漫才旅 ときどき3姉妹 NO密さんぽ編 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)の感想松本ぷりっつさんの『うちの3姉妹』シリーズが大好きでよく読んでいたのに、うっかりしてたらこんな本が出てた。隣の市の図書館で見つけて、すぐ借りてきた。小学校に入ったばかりだった長女が大学生、赤ちゃんだった3女は中2ですと!時の流れは恐るべきものです。とはいえこの本のメインは夫婦旅。コロナ禍の散歩や旅行は苦労も多かったと思うのですが、相変わらず楽しそうな夫婦で、散歩でも旅行でもよく食べてらっしゃいます。私も来年のお散歩は、交通費をかけてでも遠くの町を歩いて見よう。今年はそろそろ雪が降るので閉店ガラガラ。
読了日:10月18日 著者:松本ぷりっつ
プリンセス・ダイアリー 悩める見習いプリンセス篇の感想相変わらず悩み多きミア。特筆すべきは急に降ってわいた生徒会長選挙。リリーが勝手に推薦して、宿敵ラナと選挙戦を争うことになる。しかし、選挙当日、口先だけの美味しい公約を述べるラナに対して、学校とは、生徒会とはどうあるべきかと、真摯に自分の考えを述べ、生徒たちから拍手で受け入れられた時、ミアはもうリリーにそれを譲る気はなくなっていた。これは、プリンセスとしても大きな成長ではないですか。あとはミアの母親。妊娠中から思っていたけど、あまりにも自己管理ができなすぎ。アメリカの母親ってそういう感じ?文化の違い?★★★★☆
読了日:10月19日 著者:メグ・キャボット
QED ~flumen~ 月夜見 (講談社文庫 た 88-48)の感想QEDシリーズの外伝的なflumenなのでしょうがないのかもしれないけれど、ミステリとしての出来は今一つ。謎多き月読命の謎を解くというのが、この作品のテーマであることはわかる。でも、殺人の動機がそのようなものならば、もっと周囲の人から変人扱いを受けているはずだよ。そしてエピローグの前の自殺と、エピローグでの自殺。「あんたたち、何したかったのよ!」と思ってしまった。特に前の方の自殺ね。事件的になんの意味もない行動。奈々と崇を入院させるために自殺したんですな、彼女は。…作者、どうした?★★★★☆
読了日:10月20日 著者:高田 崇史
いのちのハ-ドル: 「1リットルの涙」母の手記 (幻冬舎文庫 き 13-2)の感想難病であるほど、闘病記を読むのはつらい。そしてそれは本人の手記ではなく、看護する側のものだとしても。脊髄小脳変性症という運動機能が消失していき、最後医は呼吸運動の停止か衰弱による合併症のため、多くの場合死亡する。未だ原因も治療法もわかっていない病。自分も子どもがあるので、苦しんでいる子どもに何もしてあげられないじれったさはよくわかる。ましてや、最終的には死に至る長い長い闘病であることを考えると、著者の判断や行動には頭が下がる。生きることを最後まであきらめさせなかったことが素晴らしい。★★★★☆
読了日:10月21日 著者:木藤 潮香
芽むしり仔撃ち (1958年)の感想学生時代の友人が、卒論代わりに大江健三郎の書誌を作った。「難しいけど、好きなんだよね。特に『芽むしり 仔撃ち』が」との返事に、「めむしりこうち」という音が意味するところが分からず、当惑した。後に漢字表記を見て、間引きの話か、と思った。感化院(昔の少年院)の少年たちが、集団疎開のために山奥の村に連れてこられる。生き残るための間引きではなく、自分たちと違うものを排除する間引き。視野狭窄で排他的な村人たちのおぞましさ。生き延びるために村人たちにしたがう子どもたちと、ただ一人したがわず追放された語り手の少年。★★★★☆
読了日:10月23日 著者:大江 健三郎
塞王の楯 上 (集英社文庫)の感想最強の楯(石垣)と至高の矛(銃)作りの二つの集団。どちらも最高のものを作ることによって、戦のない世の中を作れると思っている。一瞬、銃で「戦のない世」を作るって何だ?と思ったけれど、これが高じると核抑止論になるんだね。上巻で匡介は、大津城の石垣の補強を頼まれ、大津城を完全な水城にするのだが、下巻の舞台はここではないのだろう。大津城主・京極高次がなかなかいいキャラクターで楽しかったので、残念。『のぼうの城』ののぼう様や『とっぴんぱらりの風太郎』のひさご様みたいな感じ。下巻にはもう出てこないのかなあ。★★★★☆
読了日:10月24日 著者:今村 翔吾
海をあげる (単行本)の感想ノンフィクション=ルポルタージュというわけではないとは思うが、始めの一編で最初の夫との離婚の話で、一体何を読まされているのかと混乱した。そして、彼女の多用する「○○してあげる、あげた」という表現。他意はないのかもしれない。ただの文章上の癖なのかもしれない。でも、どうしても上からものを言っているように見えてしまう。その後、沖縄の海洋汚染や基地問題などにも触れているのだけれど、あくまでもこれはエッセイ。エッセイはノンフィクションなのか問題。もやもや。★★★★☆
読了日:10月26日 著者:上間 陽子
黛家の兄弟の感想神山藩で代々筆頭家老を務めてきた黛家。長男は家を継ぐとして、次男より先に三男が、大目付を務める黒沢家に婿にと求められる。筆頭家老の座を虎視眈々と狙う次席家老。行き場のない次男。凡庸な藩主。一応、この事件はこういうことなのだろうなあ、こういう風に決着するといいなあ、などと思いながら読んでいるのだけど、そして途中までは確かにそのとおりに話が進んでいたはずなんだけど、最後の方はほとんど、怒涛の展開に翻弄されました。「よき政とは、なんだと思う」「だれも死なずにすむ、ということでござろう」。面白うございました。★★★★★
読了日:10月27日 著者:砂原 浩太朗
GOSICK ―ゴシック― (角川文庫)の感想あれ?シリーズものの第一作だというのに、過去作の影がちらつくぞ?と思ったら、過去に短篇が発表されていたということだった。今作は、占い師が殺された事件を解決したお礼に、ヴィクトリカと久城が、ひょんなことから大型客船に乗り込んだことにより、新たな事件に巻き込まれる話。子どもたちをさらって、限られたスペースに閉じ込める。互いに殺し合うのを見物するために。今回は、10年前に行われた子どもたちの殺し合いと同じシチュエーションで大人たちが閉じ込められる。これは10年前の復讐か?犯人は誰で、10年前の目的は何なのか?★★★★☆
読了日:10月28日 著者:桜庭 一樹
まいまいつぶろの感想歴史上あまり取り上げられることのない、徳川第九代将軍・家重。口がまわらず、半身がマヒしているため正座ができず、字を書くこともできず、武士の頂点たる征夷大将軍になることなど不可能と思われていた。第一章を読み終えた時点で号泣でした。まだ16歳ながらに家重を守り抜こうとする忠光の無私の覚悟に泣けてしまった。けれど、その後がちょっと…。メインは支える忠光なのか、支えられる家重なのか、時々で揺らいでいるのが気になった。各老中たちの書き分けも弱い。とはいえ、混乱しがちな徳川9代、10代の関係がわかってよかった。★★★★☆
読了日:10月29日 著者:村木 嵐
松本ぷりっつの夫婦漫才旅 ときどき3姉妹 (メディアファクトリーのコミックエッセイ)の感想一番上のお姉ちゃんが、美大生というのにも驚いたけれど、おっぺけぶりも健在で癒されるというか、吹いたわ。浅草、秩父、館山は行ったことがあるので、懐かしく読んだ。やっぱり行ったことあるところは、読んでいても思入れが違うよね。そして世の中にはまだまだ美味しいものがあることを知る。
読了日:10月29日 著者:松本ぷりっつ
楽園の楽園 (単行本)の感想立て続けに起こる大規模事故や天災。それらは「天災及び事故、犯罪の予見と予防に関する基軸」なるアルゴリズムを基にした、略称『天軸』と呼ばれる人工知能の暴走が原因と考えられた。五十九彦(ごじゅくひこ)、三瑚嬢(さんごじょう)、蝶八隗(ちょうはっかい)の3人は、その開発者の所在を探す旅に出た。デビュー作『オーデュポンの祈り』を思い出す。案山子の優午。作家デビュー25年の記念作品なのだそうだ。だから、デビューからぶれていない伊坂幸太郎のテーマが前面に出ているのか。とはいえこれは、あんまり万人向けではない。★★★★☆
読了日:10月30日 著者:伊坂 幸太郎
アンと愛情の感想『和菓子のアン』シリーズの第三弾。今回のアンちゃんは空回りが多かったように思いました。特に今回、ずっとアンちゃんを支えてくれた店長との別れについて、自分の気持ちに振り回され、周りを見る余裕がなかったのはらしくないなあ、と。あんまり周囲にネガティブオーラを出す子じゃなかったような気がします。前回、乙女すぎてこじらせ男子になるのではないかと心配だった立花さんは、こじらせずに何とか頑張っていて、Good。前作の文庫化記念に書かれた『豆大福』が良かったです。★★★★☆
読了日:10月31日 著者:坂木司
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