10月1日(水)
今年前半の本が読めなかった時期が嘘のように、旅行に行ったにもかかわらず、先月もまたもりもり読むことができました。
重畳重畳。
今月以降はそこまで読めないと思うけど、読んでも読んでも読書が楽しいのはありがたいことだと思ってます。
たくさん読んだので★5つも6冊と多め。
これまたありがたい。
『推し、燃ゆ』『くるまの娘』
宇佐見りんの小説は、読んでいて決して楽しくはない。
出来れば読みたくないくらい、読んでいる時の自分が苦しい。痛い。
それでも目を逸らすことができないし、また新刊が出たら読んでしまうだろう。
『マイナス50℃の世界』
子ども向けの本なので、なるべく真面目に事実を伝えようとする姿勢がまずある。
それでも、その過酷な生活ぶりを楽しんでいる著者の姿が透けて見える。
「大変だなあ」で終わらせない、その土地に住む人たちへの敬意と彼女らしいユーモアがいい味わいとなっている。
『無人島のふたり』
自分だったらこれほど強く病気に向き合えるだろうか。
これほど優しく家族を思いやる余裕があるだろうか。
これほど最後まで、人としての尊厳を失わず生ききることができるだろうか。
『八月の母』
これもまた読むのが辛い読書となった。
母と子という、他人からはうかがい知ることの難しい、密室の中の関係。
愛情もあるけれど憎しみも生まれてしまう。
血がつながっているために逃れにくい関係でも、ヤバいと思ったら切り捨てることも必要だ。
『ヴェネツィアの宿』
エッセイと随筆。
厳密に言うと同じものなのか、別物なのかは私は知らない。
けれど私の中でこれは絶対的に随筆であり、こういう文章を書ける大人になりたかったのだけどなれなかったことを、突き付けてくる作品。
思わずひれ伏してしまうくらい、この作品に、そして著者に憧れる。
9月の読書メーター
読んだ本の数:28
読んだページ数:7970
ナイス数:910
オルタネートの感想
タイトルの「オルタネート」とは、高校生限定のSNSアプリ。蓉(いるる)は、高校生対象の料理コンテストでのリベンジを目指している。依存症ともいえるくらい「オルタネート」にはまっている凪津(なづ)。家族との絆を信じられない尚志(なおし)は、高校を辞めた時点で「オルタネート」から排除される。この3人の物語が交互に語られているのだが、自信のなさから大切な人を傷つけてしまったり、それでも前に進まねばならないことはわかっていたりと、高校生の心のうちが繊細に丁寧に描かれていて、面白かった。★★★★☆
読了日:09月01日 著者:加藤シゲアキ
キュレーターの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)の感想
職場のクリスマス会でのプレゼントから人の指が出てきた。犯人はどうやってプレゼントをそこに置いたのか、なぜ指を発見させなければならなかったのか、など、一つ一つ謎をクリアして、犯人を逮捕…するのだが。ポーはこの犯人を操っていたと思われる「キュレーター」と呼ばれる人物を追うことになる。そして、真のターゲットを探し出し、警察が保護することになるのだが。ここからがもう怒涛の展開で、一気読み。いや、ちょっと待って、黒幕ったらそんな理由で?狂ってる?いやいや、ちょっと待って、ポー、そんなことしちゃっていいの?★★★★☆
読了日:09月03日 著者:M W クレイヴン
先生、ヒキガエルが目移りしてダンゴムシを食べられません!の感想
今回は、学生さんとの思い出から動物とのエピソードへとつながる話が多かった。先生の指導のたまものか、それとも最初からなのか、ここに登場する学生さんたちは皆、自分が研究したいという対象を明確に持っていて、実験や研究に対する熱量が極めて高いように思う。だからこそ、ユニークな存在として先生の記憶に残っている学生が多いのだろう。小林先生、とうとう鳥取環境大学の理事長であり学長であるという、経営と教育の両方でトップになられて、自身の研究の時間や執筆の時間が持てるのかなあ、と心配になる。ヤギのクルミに黙とう。★★★★☆
読了日:09月04日 著者:小林朋道
僕と先生の感想
日常の謎系ミステリでありながら、ミステリ案内の要素も多少あります。というのも、隼人から二葉に毎度宿題(課題図書)が出されるのですが、日常の謎と絡めて差し出される作品は、ちゃんと基本図書になっていると思います。今回は『怪盗ルビイ』『怪盗ルビイ・マーチンスン』『ブラウン神父の童心』『ポー名作集』『11人いる!』『怪盗紳士リュパン』『大誘拐』『黒蜥蜴』。ポーの作品には怖いものもあるので、それは読まないよう、事前に教えてくれもします。ああ、続きが読みたいが、続きが出る日は来るのだろうか。★★★★☆
読了日:09月05日 著者:坂木 司
あなたが誰かを殺したの感想
毎日いろんな作家の小説を読んでいるけれど、東野圭吾の小説の読みやすさといったら群を抜いている。ちょっと強引な展開もあるけれど、それでも登場人物の行動が、表情が、いきいきと脳内に浮かんでくる。加賀刑事のシリーズなので、当然テーマは家族の在り方だ。常に支配していたがる人、支配される一方の人。その中で子どもは無力な存在なのか。最後まで読むと、それらの関係性が姿を変えている事に気付く。ところで、作中で加賀刑事の顔の彫の深さに言及しているが、シリーズ最初の頃はそんな設定なかったよね。作者が映像に寄せにいってる…。笑★★★★☆
読了日:09月06日 著者:東野 圭吾
八月の御所グラウンドの感想
タイトル作が直木賞受賞作であることは忘れていた。でも読み終わった時「狙いに行ったな」と思った。万城目くんの真面目路線は嫌いではない。もちろんゲハゲハ笑える愉快路線も大好きだが、少し切なくてビターな読後感の真面目路線の読後感は結構癖になる。『とっぴんぱらりの風太郎』なんて、未だにひさご様を思い出したら泣きそうに切なくなるくらい。しかしこの作品、そこまでの感動はなかった。もちろん少し切なくてビターであるこの作品に、じんわりとした感動を覚えはしたけれど。万城目学特有の、そこはかとない可笑しみが絶対的に足りない。★★★★☆
読了日:09月07日 著者:万城目 学
あなたが怖い すっぴん魂 (文春文庫)の感想
今回はほぼ「怖い話」。霊体験だけではなく、強盗や殺人犯やストーカーの話までも。霊体験はもちろん怖いのだけど、人間の行動もなかなかに怖い。夜中に読んでいたら、怖すぎてやめられない。(呪われそうで)結果、読みさし部分に指を挟んだまま寝落ちしたけども。←怖いとは?文庫収録の佐藤愛子との対談が面白かった。佐藤愛子が北海道に別荘を持っていたということにテンションが上がり、霊体験にビビり倒し、彼女の小説『血脈』に俄然興味が。子どもの頃好きだった童謡を多く作詞していたサトウハチローさんが、道楽者の不良青少年だったとは!★★★★☆
読了日:09月08日 著者:室井 滋
QED 出雲神伝説 (講談社ノベルス タS- 28)の感想
出雲には一度行ってみたいと思っていた。もちろん島根の。
まさか奈良や京都に出雲があったとは。古代史の読み解き方がワンパターンなので、さすがに飽きてはきた。紋様については、解釈なんでもありだなと思ったので、はっきり言ってどうでもいい。人間関係も無駄に複雑で、捜査する警察も大変だと思うわ。そして、タタルの初恋の彼女が再び…。同時収録の短篇は、40歳を前にしたタタルと小松崎。出雲大社の遷宮にあわせて書かれたもので、小松崎の結婚生活がちらっと出てくる。タタルと奈々の関係については言及なし。★★★★☆
読了日:09月09日 著者:高田 崇史
推し、燃ゆ (河出文庫)の感想
薄くて文字が大きくて行間の広い本なのに、読むのに時間がかかる。、主人公が目にする世界のことごとくが、こと細かくて、しかも多分精確だ。デビュー作『かか』では、その特異な文体ゆえあまり気にならなかった、選択される語彙の的確さ。その文章の持つ圧倒的な力に気圧されて、読むのに時間がかかる。読み進めるとまた、その圧倒的なまでの自己肯定感の低さというか、生きることに対する不器用さに圧倒される。生きにくい生きにくい生きにくい。声にならない悲鳴のような思いの強さに、デビュー当時の金原ひとみを思い出す。★★★★★
読了日:09月10日 著者:宇佐見 りん
魔法使いの困惑 (ハヤカワ文庫 FT ア 1-14 魔法の国ザンス 14)の感想
この本の9割は、ハンフリーの話です。そう、ハンフリーの半生とは、ビンクから始まったこの物語の、ハンフリー視点の総集編なのでした。これでシリーズ大団円とはなっていないので、次巻以降に期待としましょう。★★★★☆
読了日:09月11日 著者:ピアズ アンソニイ
プリンセス・ダイアリー ときめき初デート篇の感想
1月1日から1月22日までの日記。クリスマスに互いの気持ちを確かめ合ったミアとマイケルだけど、その次の日からミアはジェノヴィアで年末年始を過ごし、国務と社交をこなさなければならなかったため、デートどころか電話のやり取りもままならない日々。ミアとリリーによる、ロマンス小説の教訓リストも愉快。『ジェイン・エア』信念を曲げない者は、必ず勝つ。『高慢と偏見』『風と共に去りぬ』男はうぬぼれた女が好き。『若草物語』必ず原稿は控えを取っておくこと。『赤毛のアン』カラーリング。←そこ?★★★★☆
読了日:09月12日 著者:メグ・キャボット
ありがとう。 (角川文庫)の感想
読み始めて数ページで、よみがえる。鷺沢萠の、小心でありながらとんがった文章の数々。ぼろぼろ涙を流しながら、仁王立ちで世間に立ち向かう彼女の姿。亡くなって20年以上。毎日新しい文章を探して彼女のサイトを覗いていたのは、そんなに昔のことになったのか。何度も何度も生きることの苦しさと、でも、それを越えた先の人生について書いている。終の棲家を探して旅に出る。連れ合いよりも絶対に長生きして、人生を謳歌しているだろう老後を想像している。なのになんで、という気持ちがいまだにぬぐえない。★★★★☆
読了日:09月16日 著者:鷺沢 萠
マイナス50℃の世界の感想
「外の気温はマイナス21度。暑いほどです」という、地球上で一番寒いサハ共和国(当時はヤクート自治共和国)からの手紙。対する彼女の返事がふるっている。「東京は春だというのにまだ肌寒く、今日の気温はプラス21度です」。子ども向けに書かれたということだが、大人でも「そうなんだ!」と思う事柄が多数紹介されている。しかも、本人が実体験したものなので、その説得力たるや。しかし、子ども向けということで少しかしこまっているの文章なのに、椎名誠が寄せた文章の中の彼女がいかにも彼女らしく生き生きしていて、笑ってしまった。★★★★★
読了日:09月17日 著者:米原 万里
鍵のない夢を見るの感想
どれも、日常の中でちょっとボタンを掛け違えば、誰の身にも起きかねない事件。でも、ヒーローになりたくて犯罪を犯すとか、自分の欲望を我慢する、こらえることができない人が犯す犯罪は、許すことはできない。身勝手以外の何物でもない。けれど最後の、子育てに疲れた母親が、ほんの一瞬気を抜いた瞬間に訪れた恐怖。確かにそこにあったはずのベビーカーがない!これを責めることは、私にはできない。一瞬も気を抜けずに気を張って家事に育児に疲弊していく、その疲弊を、たった一人で背負わなければならないワンオペ育児。これは本当にしんどい。★★★★☆
読了日:09月18日 著者:辻村 深月
無人島のふたり:120日以上生きなくちゃ日記 (新潮文庫 や 66-3)の感想
がんと診断された時点でもう手の施しようはなかったという事実にうちのめされる。タバコを吸わず、暴飲暴食もせず、毎年きちんと健康診断を受けていて、なお。余命4カ月。『逃げても逃げても、やがて追いつかれることを知ってはいるけれど、自分から病の中に入っていこうとは決して思わない』と、そう書ける強さを彼女が持っていてよかったと思う。突然の発熱、嘔吐、不眠、倦怠感、赤裸々に書かれるそれらは、どれほど精神的にも身体的にも苦痛をもたらしただろうと思う。けれど彼女は『未来はなくとも本も漫画も面白い』と書いてくれた。★★★★★
読了日:09月19日 著者:山本 文緒
八月の母の感想
苦しくて、何度も本を置き、また手に取りなおした。断片的に語られるエリカの人生で、本当は一体何があったのかは最後まで読んでもわからなかった。子どもたちの父親のことも。そして唐突に現れた上原との関係も。「私にはあんたしかおらんのよ。昔からあんただけが私の希望やった」自分が言われて嫌だったこの言葉を、最後にエリカが陽向(ひなた)に言う。自分の人生は誰にも触らせないという陽向の決意。母という呪い(当人にとっても子どもにとっても)、母という業を正面から書いた作品として、一生私の心に残る作品になると思う。★★★★★
読了日:09月20日 著者:早見 和真
ブルー・ロージス (文春文庫 ビジュアル版 60-47)の感想
原発に警鐘を鳴らす『パエトーン』、ホラーの『化野の…』、昔懐かしザ・少女漫画の『学園のムフフフ』、そして山岸涼子らしい悪意と内省あふれる『星の白き花束の』『ブルー・ロージス』『銀壺・金鎖』を収録。このうち既読は『パエトーン』のみ。ああ、『星の白き花束の』も、人の心を理解しない夏夜の存在はホラーかも。『ブルー・ロージズ』が良い。男に都合のいい女になるために家族にかけられる呪いの言葉というのも怖いけど、それに気づいて一人で立ち上がる主人公が良い。
読了日:09月20日 著者:山岸 凉子
六月のぶりぶりぎっちょうの感想
京都で、出会うはずのない人と出会うシリーズ第二弾。私が気に入ったのは断然『三月の局騒ぎ』の方だ。北白川女子寮マンションの14回生以上と噂される、古参のお局様の正体とは?語り手が、『坊っちゃん』の清が好き、という軽いミスリードにもかかわらず、キヨの正体は割と早くわかる。「想いを伝えることができるのは、この世に生きている者だけ、だから」というキヨの言葉がずっしりと胸に堪える。そして、「私ほど、その篇首(へんしゅ)を知られている者は他に存在しない」という自負。くうぅ、かっこいい!座右の書にしたいくらい好きかも。★★★★☆
読了日:09月21日 著者:万城目 学
墨のゆらめきの感想
起承転結のお手本のような物語構造。いつもの日常のように、このままだらだら続くんだろうなあというところからの急展開。ホテルマンの力(ちから)も、書家の遠田も30半ばのいい大人なのに、二人の会話は妙に微笑ましい。遠田の書く文字は、どんな気持ちが込められて、どんな景色を思い浮かべて書かれているのかがわかる。しかしそれは、遠田の持つ本来の字なのか。変幻自在に書体を変えて文字を書く遠田。自分たちは友人ではないと互いに承知しながら、相手を思いやり、一線を引いたうえで心地のよい関係を築く。そういう関係もいいなと思った。★★★★☆
読了日:09月22日 著者:三浦 しをん
プリンセス・ダイアリー どきどきキャンプ篇の感想
番外編ということで、60ページほどの掌編。春休みのキャンプが舞台。キャンプと言っても、G&T(創意と工夫)のクラスで「ホームレスに住宅を作る会」のボランティア活動をするんですって。ところがこのキャンプ、ガチなのです。初めてテントに泊まったミアは、地面に寝ること、テントから離れた簡易トイレに行かなくてはならないこと、シャワーがろくすっぽ使えないこと、虫が大量にいることなどに衝撃を受ける。そして、金づちを持ったことすらない生徒もいるなか、たった3日で3LDKの家を建てる。なんかアメリカの高校ってすごいな。★★★★☆
読了日:09月23日 著者:メグ・キャボット
朝がくるたび、また君に「恋」をする。 (双葉文庫パステルNOVEL も 22-01)の感想
読書メーターさまからご恵贈いただきました。ありがとうございます。小学生の時、事故で父親を亡くした涼風。自分のひどい言葉が父を死に向かわせたと思い、自分を責め続けている。そして、母親の過干渉もまた、彼女を苦しめる。母親からすれば、夫を亡くした後、娘までも自分から離れてしまうのは耐えられないというところか。しかし、その過干渉の程度は、公的機関に相談しないとだめなのでは?レベル。ところが、最後に事情が分かってみれば、母が涼風を愛していないように見えていた事実がひっくり返り、それが余計に悲しみを募らせる。★★★★☆
読了日:09月24日 著者:望月くらげ,fjsmu
ロケ隊はヒィ~の感想
前巻あたりから書籍化を念頭に置いて、テーマをある程度決めて書いているっぽい。今回は、俳優業の大変な部分を書いたエッセイが多かった。特に、体調管理の過酷さは、俳優陣だけではなくスタッフにも及び、熱があろうと骨折していようと仕事がある限り現場に駆け付けねばならないこと。怖い話も相変わらず収録されてはいるのだけれど、圧倒的に労働環境が怖い。それから、おまけ収録の『女優まる出し辞典』も面白かったです。見えない努力が彼らを輝かせているのですね。★★★★☆
読了日:09月25日 著者:室井 滋
QED 伊勢の曙光 (講談社文庫 た 88-31)の感想
『天照』と『天照大神』の違いなどは、なるほどなーと思ったし、伊勢神宮とほかの神社との違いの多さについても、実際何かあるんだろうなあと思った。まず、伊勢神宮が今の地に置かれたのが、持統天皇(女性天皇であることが大事)の時代であったということ。そして、天皇家の祖神である天照大神が祀られた伊勢神宮を初めて参拝した天皇は、明治天皇であったということ。古典文学を読むと、古来より天皇は伊勢に行幸していたような気がしているんだけど、伊勢神宮には立ち寄っていないというのだ。祖神だというのに?闇が深いぜ日本の歴史。★★★★☆
読了日:09月26日 著者:高田 崇史
ヴェネツィアの宿 (文春文庫 す 8-2)の感想
須賀敦子は14歳の時「たしかに自分はふたりいる」「見ている自分と、それを思い出す自分と」と思ったのだそうだ。若いころ彼女の文章を読んだとき、社会のしがらみから離れて自分の来し方を考えるような年になったら、こんな文章を書けるようになりたい、と思った。しかし今、そんな年齢になってみれば、私にはそんな才能もなければ、振り返ってみれば転換点だったと思えるような経験もなかったのである。そうか、14歳の時にはすでに見ていた景色が違ったのか。全編を通して感じられる静謐。ああ、そういう大人になりたかったのに。★★★★★
読了日:09月27日 著者:須賀 敦子
ゴブリン娘と魔法の杖 (ハヤカワ文庫 FT ア 1-15 魔法の国ザンス 15)の感想
二組の旅の話が交互に語られ、やがて一つに交わるわけなんだけれども、今まで読んできたのでさすがに結末はわかる。このシリーズをディズニーあたりでアニメ化すればいいのにとずっと思っていたのだけど、今回谷山浩子の解説を読んで少し可能性を広げることにした。”どのくらい好きかというとモンティ・パイソンや小津安二郎や諸葛孔明と並べてもいいと思うくらい、つまり最上級に、これ以上ないってくらいに、とにかくめちゃくちゃに好きだ。”モンティ・パイソンか…。じゃあ、実写でもいいね。実写の中にアニメ(またはCG)で、でも。★★★★☆
読了日:09月28日 著者:ピアズ アンソニイ
くるまの娘の感想
傍から見ればかんこの家族は壊れている。些細なことですぐかッとし暴力をふるう父、脳梗塞で倒れて以来自分の感情を持て余すかのように時々爆発する母。家を出て自分の力で生きている兄と、遠くの高校へ通うために家を出ている弟。家族それぞれが傷つけあい、血を流しながらも愛している。かんこは、両親の子どもでありながら、両親を守る存在でもある。親も完全な人間ではない。でもやっぱり、泣きながら子どもにすがってしまうのは違う。だって、親を愛している子どもは、親を守ろうと歯を食いしばってしまうもの。宇佐見りん、天才だな。★★★★★
読了日:09月29日 著者:宇佐見りん
神さまの貨物の感想
子ども向けの本のように小型で薄くて文章も少ないが、書いている内容はとても重い。ナチスのユダヤ人狩りで、妻と双子の赤ん坊とともにどこへとも知れぬ場所へ向かう列車に乗せられた男。貧しい木こりの妻は子どもが欲しかった。だから神に祈った。子どもを授けてくれますように、と。戦争中、ナチスにとってユダヤ人は人ではなかった。人ではないから、心もないのだろうと思われていた。これは昔話ではない。この時に「人ではない」と言われたユダヤ人が、今は他国の人たちを「人ではない」と断じて虐殺する。ねえ、どういう気持ちで?★★★★☆
読了日:09月30日 著者:ジャン=クロード・グランベール
3月のライオン 18 (ヤングアニマルコミックス)の感想
次巻で最終巻になるらしい。物語的にはこの間で終わってもよかったと思う。将棋以外何も持たなかった桐山零が、気づいたから。「あんなに欲しかった わかり合える人(ともだち)は いたじゃんか 最初から ぼくの となりに」でも、気づいたあとも将棋は、勝負は続くのだ。そして島田さん。どんくさいほどお人好しでいい人で、ストイックで、厳しくて淋しくて暖かい人。この人は一生、このスタイルの将棋を指していくんだろうなあ。たった一人で将棋に向き合っていくんだろうなあ。次の扉を開けたいという渇望に身を焦がしながら。
読了日:09月30日 著者:羽海野 チカ
読書メーター
今年前半の本が読めなかった時期が嘘のように、旅行に行ったにもかかわらず、先月もまたもりもり読むことができました。
重畳重畳。
今月以降はそこまで読めないと思うけど、読んでも読んでも読書が楽しいのはありがたいことだと思ってます。
たくさん読んだので★5つも6冊と多め。
これまたありがたい。
『推し、燃ゆ』『くるまの娘』
宇佐見りんの小説は、読んでいて決して楽しくはない。
出来れば読みたくないくらい、読んでいる時の自分が苦しい。痛い。
それでも目を逸らすことができないし、また新刊が出たら読んでしまうだろう。
『マイナス50℃の世界』
子ども向けの本なので、なるべく真面目に事実を伝えようとする姿勢がまずある。
それでも、その過酷な生活ぶりを楽しんでいる著者の姿が透けて見える。
「大変だなあ」で終わらせない、その土地に住む人たちへの敬意と彼女らしいユーモアがいい味わいとなっている。
『無人島のふたり』
自分だったらこれほど強く病気に向き合えるだろうか。
これほど優しく家族を思いやる余裕があるだろうか。
これほど最後まで、人としての尊厳を失わず生ききることができるだろうか。
『八月の母』
これもまた読むのが辛い読書となった。
母と子という、他人からはうかがい知ることの難しい、密室の中の関係。
愛情もあるけれど憎しみも生まれてしまう。
血がつながっているために逃れにくい関係でも、ヤバいと思ったら切り捨てることも必要だ。
『ヴェネツィアの宿』
エッセイと随筆。
厳密に言うと同じものなのか、別物なのかは私は知らない。
けれど私の中でこれは絶対的に随筆であり、こういう文章を書ける大人になりたかったのだけどなれなかったことを、突き付けてくる作品。
思わずひれ伏してしまうくらい、この作品に、そして著者に憧れる。
9月の読書メーター
読んだ本の数:28
読んだページ数:7970
ナイス数:910
オルタネートの感想タイトルの「オルタネート」とは、高校生限定のSNSアプリ。蓉(いるる)は、高校生対象の料理コンテストでのリベンジを目指している。依存症ともいえるくらい「オルタネート」にはまっている凪津(なづ)。家族との絆を信じられない尚志(なおし)は、高校を辞めた時点で「オルタネート」から排除される。この3人の物語が交互に語られているのだが、自信のなさから大切な人を傷つけてしまったり、それでも前に進まねばならないことはわかっていたりと、高校生の心のうちが繊細に丁寧に描かれていて、面白かった。★★★★☆
読了日:09月01日 著者:加藤シゲアキ
キュレーターの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)の感想職場のクリスマス会でのプレゼントから人の指が出てきた。犯人はどうやってプレゼントをそこに置いたのか、なぜ指を発見させなければならなかったのか、など、一つ一つ謎をクリアして、犯人を逮捕…するのだが。ポーはこの犯人を操っていたと思われる「キュレーター」と呼ばれる人物を追うことになる。そして、真のターゲットを探し出し、警察が保護することになるのだが。ここからがもう怒涛の展開で、一気読み。いや、ちょっと待って、黒幕ったらそんな理由で?狂ってる?いやいや、ちょっと待って、ポー、そんなことしちゃっていいの?★★★★☆
読了日:09月03日 著者:M W クレイヴン
先生、ヒキガエルが目移りしてダンゴムシを食べられません!の感想今回は、学生さんとの思い出から動物とのエピソードへとつながる話が多かった。先生の指導のたまものか、それとも最初からなのか、ここに登場する学生さんたちは皆、自分が研究したいという対象を明確に持っていて、実験や研究に対する熱量が極めて高いように思う。だからこそ、ユニークな存在として先生の記憶に残っている学生が多いのだろう。小林先生、とうとう鳥取環境大学の理事長であり学長であるという、経営と教育の両方でトップになられて、自身の研究の時間や執筆の時間が持てるのかなあ、と心配になる。ヤギのクルミに黙とう。★★★★☆
読了日:09月04日 著者:小林朋道
僕と先生の感想日常の謎系ミステリでありながら、ミステリ案内の要素も多少あります。というのも、隼人から二葉に毎度宿題(課題図書)が出されるのですが、日常の謎と絡めて差し出される作品は、ちゃんと基本図書になっていると思います。今回は『怪盗ルビイ』『怪盗ルビイ・マーチンスン』『ブラウン神父の童心』『ポー名作集』『11人いる!』『怪盗紳士リュパン』『大誘拐』『黒蜥蜴』。ポーの作品には怖いものもあるので、それは読まないよう、事前に教えてくれもします。ああ、続きが読みたいが、続きが出る日は来るのだろうか。★★★★☆
読了日:09月05日 著者:坂木 司
あなたが誰かを殺したの感想毎日いろんな作家の小説を読んでいるけれど、東野圭吾の小説の読みやすさといったら群を抜いている。ちょっと強引な展開もあるけれど、それでも登場人物の行動が、表情が、いきいきと脳内に浮かんでくる。加賀刑事のシリーズなので、当然テーマは家族の在り方だ。常に支配していたがる人、支配される一方の人。その中で子どもは無力な存在なのか。最後まで読むと、それらの関係性が姿を変えている事に気付く。ところで、作中で加賀刑事の顔の彫の深さに言及しているが、シリーズ最初の頃はそんな設定なかったよね。作者が映像に寄せにいってる…。笑★★★★☆
読了日:09月06日 著者:東野 圭吾
八月の御所グラウンドの感想タイトル作が直木賞受賞作であることは忘れていた。でも読み終わった時「狙いに行ったな」と思った。万城目くんの真面目路線は嫌いではない。もちろんゲハゲハ笑える愉快路線も大好きだが、少し切なくてビターな読後感の真面目路線の読後感は結構癖になる。『とっぴんぱらりの風太郎』なんて、未だにひさご様を思い出したら泣きそうに切なくなるくらい。しかしこの作品、そこまでの感動はなかった。もちろん少し切なくてビターであるこの作品に、じんわりとした感動を覚えはしたけれど。万城目学特有の、そこはかとない可笑しみが絶対的に足りない。★★★★☆
読了日:09月07日 著者:万城目 学
あなたが怖い すっぴん魂 (文春文庫)の感想今回はほぼ「怖い話」。霊体験だけではなく、強盗や殺人犯やストーカーの話までも。霊体験はもちろん怖いのだけど、人間の行動もなかなかに怖い。夜中に読んでいたら、怖すぎてやめられない。(呪われそうで)結果、読みさし部分に指を挟んだまま寝落ちしたけども。←怖いとは?文庫収録の佐藤愛子との対談が面白かった。佐藤愛子が北海道に別荘を持っていたということにテンションが上がり、霊体験にビビり倒し、彼女の小説『血脈』に俄然興味が。子どもの頃好きだった童謡を多く作詞していたサトウハチローさんが、道楽者の不良青少年だったとは!★★★★☆
読了日:09月08日 著者:室井 滋
QED 出雲神伝説 (講談社ノベルス タS- 28)の感想出雲には一度行ってみたいと思っていた。もちろん島根の。
まさか奈良や京都に出雲があったとは。古代史の読み解き方がワンパターンなので、さすがに飽きてはきた。紋様については、解釈なんでもありだなと思ったので、はっきり言ってどうでもいい。人間関係も無駄に複雑で、捜査する警察も大変だと思うわ。そして、タタルの初恋の彼女が再び…。同時収録の短篇は、40歳を前にしたタタルと小松崎。出雲大社の遷宮にあわせて書かれたもので、小松崎の結婚生活がちらっと出てくる。タタルと奈々の関係については言及なし。★★★★☆
読了日:09月09日 著者:高田 崇史
推し、燃ゆ (河出文庫)の感想薄くて文字が大きくて行間の広い本なのに、読むのに時間がかかる。、主人公が目にする世界のことごとくが、こと細かくて、しかも多分精確だ。デビュー作『かか』では、その特異な文体ゆえあまり気にならなかった、選択される語彙の的確さ。その文章の持つ圧倒的な力に気圧されて、読むのに時間がかかる。読み進めるとまた、その圧倒的なまでの自己肯定感の低さというか、生きることに対する不器用さに圧倒される。生きにくい生きにくい生きにくい。声にならない悲鳴のような思いの強さに、デビュー当時の金原ひとみを思い出す。★★★★★
読了日:09月10日 著者:宇佐見 りん
魔法使いの困惑 (ハヤカワ文庫 FT ア 1-14 魔法の国ザンス 14)の感想この本の9割は、ハンフリーの話です。そう、ハンフリーの半生とは、ビンクから始まったこの物語の、ハンフリー視点の総集編なのでした。これでシリーズ大団円とはなっていないので、次巻以降に期待としましょう。★★★★☆
読了日:09月11日 著者:ピアズ アンソニイ
プリンセス・ダイアリー ときめき初デート篇の感想1月1日から1月22日までの日記。クリスマスに互いの気持ちを確かめ合ったミアとマイケルだけど、その次の日からミアはジェノヴィアで年末年始を過ごし、国務と社交をこなさなければならなかったため、デートどころか電話のやり取りもままならない日々。ミアとリリーによる、ロマンス小説の教訓リストも愉快。『ジェイン・エア』信念を曲げない者は、必ず勝つ。『高慢と偏見』『風と共に去りぬ』男はうぬぼれた女が好き。『若草物語』必ず原稿は控えを取っておくこと。『赤毛のアン』カラーリング。←そこ?★★★★☆
読了日:09月12日 著者:メグ・キャボット
ありがとう。 (角川文庫)の感想読み始めて数ページで、よみがえる。鷺沢萠の、小心でありながらとんがった文章の数々。ぼろぼろ涙を流しながら、仁王立ちで世間に立ち向かう彼女の姿。亡くなって20年以上。毎日新しい文章を探して彼女のサイトを覗いていたのは、そんなに昔のことになったのか。何度も何度も生きることの苦しさと、でも、それを越えた先の人生について書いている。終の棲家を探して旅に出る。連れ合いよりも絶対に長生きして、人生を謳歌しているだろう老後を想像している。なのになんで、という気持ちがいまだにぬぐえない。★★★★☆
読了日:09月16日 著者:鷺沢 萠
マイナス50℃の世界の感想「外の気温はマイナス21度。暑いほどです」という、地球上で一番寒いサハ共和国(当時はヤクート自治共和国)からの手紙。対する彼女の返事がふるっている。「東京は春だというのにまだ肌寒く、今日の気温はプラス21度です」。子ども向けに書かれたということだが、大人でも「そうなんだ!」と思う事柄が多数紹介されている。しかも、本人が実体験したものなので、その説得力たるや。しかし、子ども向けということで少しかしこまっているの文章なのに、椎名誠が寄せた文章の中の彼女がいかにも彼女らしく生き生きしていて、笑ってしまった。★★★★★
読了日:09月17日 著者:米原 万里
鍵のない夢を見るの感想どれも、日常の中でちょっとボタンを掛け違えば、誰の身にも起きかねない事件。でも、ヒーローになりたくて犯罪を犯すとか、自分の欲望を我慢する、こらえることができない人が犯す犯罪は、許すことはできない。身勝手以外の何物でもない。けれど最後の、子育てに疲れた母親が、ほんの一瞬気を抜いた瞬間に訪れた恐怖。確かにそこにあったはずのベビーカーがない!これを責めることは、私にはできない。一瞬も気を抜けずに気を張って家事に育児に疲弊していく、その疲弊を、たった一人で背負わなければならないワンオペ育児。これは本当にしんどい。★★★★☆
読了日:09月18日 著者:辻村 深月
無人島のふたり:120日以上生きなくちゃ日記 (新潮文庫 や 66-3)の感想がんと診断された時点でもう手の施しようはなかったという事実にうちのめされる。タバコを吸わず、暴飲暴食もせず、毎年きちんと健康診断を受けていて、なお。余命4カ月。『逃げても逃げても、やがて追いつかれることを知ってはいるけれど、自分から病の中に入っていこうとは決して思わない』と、そう書ける強さを彼女が持っていてよかったと思う。突然の発熱、嘔吐、不眠、倦怠感、赤裸々に書かれるそれらは、どれほど精神的にも身体的にも苦痛をもたらしただろうと思う。けれど彼女は『未来はなくとも本も漫画も面白い』と書いてくれた。★★★★★
読了日:09月19日 著者:山本 文緒
八月の母の感想苦しくて、何度も本を置き、また手に取りなおした。断片的に語られるエリカの人生で、本当は一体何があったのかは最後まで読んでもわからなかった。子どもたちの父親のことも。そして唐突に現れた上原との関係も。「私にはあんたしかおらんのよ。昔からあんただけが私の希望やった」自分が言われて嫌だったこの言葉を、最後にエリカが陽向(ひなた)に言う。自分の人生は誰にも触らせないという陽向の決意。母という呪い(当人にとっても子どもにとっても)、母という業を正面から書いた作品として、一生私の心に残る作品になると思う。★★★★★
読了日:09月20日 著者:早見 和真
ブルー・ロージス (文春文庫 ビジュアル版 60-47)の感想原発に警鐘を鳴らす『パエトーン』、ホラーの『化野の…』、昔懐かしザ・少女漫画の『学園のムフフフ』、そして山岸涼子らしい悪意と内省あふれる『星の白き花束の』『ブルー・ロージス』『銀壺・金鎖』を収録。このうち既読は『パエトーン』のみ。ああ、『星の白き花束の』も、人の心を理解しない夏夜の存在はホラーかも。『ブルー・ロージズ』が良い。男に都合のいい女になるために家族にかけられる呪いの言葉というのも怖いけど、それに気づいて一人で立ち上がる主人公が良い。
読了日:09月20日 著者:山岸 凉子
六月のぶりぶりぎっちょうの感想京都で、出会うはずのない人と出会うシリーズ第二弾。私が気に入ったのは断然『三月の局騒ぎ』の方だ。北白川女子寮マンションの14回生以上と噂される、古参のお局様の正体とは?語り手が、『坊っちゃん』の清が好き、という軽いミスリードにもかかわらず、キヨの正体は割と早くわかる。「想いを伝えることができるのは、この世に生きている者だけ、だから」というキヨの言葉がずっしりと胸に堪える。そして、「私ほど、その篇首(へんしゅ)を知られている者は他に存在しない」という自負。くうぅ、かっこいい!座右の書にしたいくらい好きかも。★★★★☆
読了日:09月21日 著者:万城目 学
墨のゆらめきの感想起承転結のお手本のような物語構造。いつもの日常のように、このままだらだら続くんだろうなあというところからの急展開。ホテルマンの力(ちから)も、書家の遠田も30半ばのいい大人なのに、二人の会話は妙に微笑ましい。遠田の書く文字は、どんな気持ちが込められて、どんな景色を思い浮かべて書かれているのかがわかる。しかしそれは、遠田の持つ本来の字なのか。変幻自在に書体を変えて文字を書く遠田。自分たちは友人ではないと互いに承知しながら、相手を思いやり、一線を引いたうえで心地のよい関係を築く。そういう関係もいいなと思った。★★★★☆
読了日:09月22日 著者:三浦 しをん
プリンセス・ダイアリー どきどきキャンプ篇の感想番外編ということで、60ページほどの掌編。春休みのキャンプが舞台。キャンプと言っても、G&T(創意と工夫)のクラスで「ホームレスに住宅を作る会」のボランティア活動をするんですって。ところがこのキャンプ、ガチなのです。初めてテントに泊まったミアは、地面に寝ること、テントから離れた簡易トイレに行かなくてはならないこと、シャワーがろくすっぽ使えないこと、虫が大量にいることなどに衝撃を受ける。そして、金づちを持ったことすらない生徒もいるなか、たった3日で3LDKの家を建てる。なんかアメリカの高校ってすごいな。★★★★☆
読了日:09月23日 著者:メグ・キャボット
朝がくるたび、また君に「恋」をする。 (双葉文庫パステルNOVEL も 22-01)の感想読書メーターさまからご恵贈いただきました。ありがとうございます。小学生の時、事故で父親を亡くした涼風。自分のひどい言葉が父を死に向かわせたと思い、自分を責め続けている。そして、母親の過干渉もまた、彼女を苦しめる。母親からすれば、夫を亡くした後、娘までも自分から離れてしまうのは耐えられないというところか。しかし、その過干渉の程度は、公的機関に相談しないとだめなのでは?レベル。ところが、最後に事情が分かってみれば、母が涼風を愛していないように見えていた事実がひっくり返り、それが余計に悲しみを募らせる。★★★★☆
読了日:09月24日 著者:望月くらげ,fjsmu
ロケ隊はヒィ~の感想前巻あたりから書籍化を念頭に置いて、テーマをある程度決めて書いているっぽい。今回は、俳優業の大変な部分を書いたエッセイが多かった。特に、体調管理の過酷さは、俳優陣だけではなくスタッフにも及び、熱があろうと骨折していようと仕事がある限り現場に駆け付けねばならないこと。怖い話も相変わらず収録されてはいるのだけれど、圧倒的に労働環境が怖い。それから、おまけ収録の『女優まる出し辞典』も面白かったです。見えない努力が彼らを輝かせているのですね。★★★★☆
読了日:09月25日 著者:室井 滋
QED 伊勢の曙光 (講談社文庫 た 88-31)の感想『天照』と『天照大神』の違いなどは、なるほどなーと思ったし、伊勢神宮とほかの神社との違いの多さについても、実際何かあるんだろうなあと思った。まず、伊勢神宮が今の地に置かれたのが、持統天皇(女性天皇であることが大事)の時代であったということ。そして、天皇家の祖神である天照大神が祀られた伊勢神宮を初めて参拝した天皇は、明治天皇であったということ。古典文学を読むと、古来より天皇は伊勢に行幸していたような気がしているんだけど、伊勢神宮には立ち寄っていないというのだ。祖神だというのに?闇が深いぜ日本の歴史。★★★★☆
読了日:09月26日 著者:高田 崇史
ヴェネツィアの宿 (文春文庫 す 8-2)の感想須賀敦子は14歳の時「たしかに自分はふたりいる」「見ている自分と、それを思い出す自分と」と思ったのだそうだ。若いころ彼女の文章を読んだとき、社会のしがらみから離れて自分の来し方を考えるような年になったら、こんな文章を書けるようになりたい、と思った。しかし今、そんな年齢になってみれば、私にはそんな才能もなければ、振り返ってみれば転換点だったと思えるような経験もなかったのである。そうか、14歳の時にはすでに見ていた景色が違ったのか。全編を通して感じられる静謐。ああ、そういう大人になりたかったのに。★★★★★
読了日:09月27日 著者:須賀 敦子
ゴブリン娘と魔法の杖 (ハヤカワ文庫 FT ア 1-15 魔法の国ザンス 15)の感想二組の旅の話が交互に語られ、やがて一つに交わるわけなんだけれども、今まで読んできたのでさすがに結末はわかる。このシリーズをディズニーあたりでアニメ化すればいいのにとずっと思っていたのだけど、今回谷山浩子の解説を読んで少し可能性を広げることにした。”どのくらい好きかというとモンティ・パイソンや小津安二郎や諸葛孔明と並べてもいいと思うくらい、つまり最上級に、これ以上ないってくらいに、とにかくめちゃくちゃに好きだ。”モンティ・パイソンか…。じゃあ、実写でもいいね。実写の中にアニメ(またはCG)で、でも。★★★★☆
読了日:09月28日 著者:ピアズ アンソニイ
くるまの娘の感想傍から見ればかんこの家族は壊れている。些細なことですぐかッとし暴力をふるう父、脳梗塞で倒れて以来自分の感情を持て余すかのように時々爆発する母。家を出て自分の力で生きている兄と、遠くの高校へ通うために家を出ている弟。家族それぞれが傷つけあい、血を流しながらも愛している。かんこは、両親の子どもでありながら、両親を守る存在でもある。親も完全な人間ではない。でもやっぱり、泣きながら子どもにすがってしまうのは違う。だって、親を愛している子どもは、親を守ろうと歯を食いしばってしまうもの。宇佐見りん、天才だな。★★★★★
読了日:09月29日 著者:宇佐見りん
神さまの貨物の感想子ども向けの本のように小型で薄くて文章も少ないが、書いている内容はとても重い。ナチスのユダヤ人狩りで、妻と双子の赤ん坊とともにどこへとも知れぬ場所へ向かう列車に乗せられた男。貧しい木こりの妻は子どもが欲しかった。だから神に祈った。子どもを授けてくれますように、と。戦争中、ナチスにとってユダヤ人は人ではなかった。人ではないから、心もないのだろうと思われていた。これは昔話ではない。この時に「人ではない」と言われたユダヤ人が、今は他国の人たちを「人ではない」と断じて虐殺する。ねえ、どういう気持ちで?★★★★☆
読了日:09月30日 著者:ジャン=クロード・グランベール
3月のライオン 18 (ヤングアニマルコミックス)の感想次巻で最終巻になるらしい。物語的にはこの間で終わってもよかったと思う。将棋以外何も持たなかった桐山零が、気づいたから。「あんなに欲しかった わかり合える人(ともだち)は いたじゃんか 最初から ぼくの となりに」でも、気づいたあとも将棋は、勝負は続くのだ。そして島田さん。どんくさいほどお人好しでいい人で、ストイックで、厳しくて淋しくて暖かい人。この人は一生、このスタイルの将棋を指していくんだろうなあ。たった一人で将棋に向き合っていくんだろうなあ。次の扉を開けたいという渇望に身を焦がしながら。
読了日:09月30日 著者:羽海野 チカ
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