5月8日(木)

 

解説・あらすじ

第95回アカデミー賞で国際長編映画賞ほか4部門を受賞した「西部戦線異状なし」のエドワード・ベルガー監督が、ローマ教皇選挙の舞台裏と内幕に迫ったミステリー。

全世界14億人以上の信徒を誇るキリスト教最大の教派・カトリック教会。その最高指導者で、バチカン市国の元首であるローマ教皇が亡くなった。新教皇を決める教皇選挙「コンクラーベ」に世界中から100人を超える候補者たちが集まり、システィーナ礼拝堂の閉ざされた扉の向こうで極秘の投票がスタートする。票が割れる中、水面下でさまざまな陰謀、差別、スキャンダルがうごめいていく。選挙を執り仕切ることとなったローレンス枢機卿は、バチカンを震撼させるある秘密を知ることとなる。

ローレンス枢機卿を「シンドラーのリスト」「イングリッシュ・ペイシェント」の名優レイフ・ファインズが演じるほか、「プラダを着た悪魔」のスタンリー・トゥッチ、「スキャンダル」のジョン・リスゴー、「ブルーベルベット」のイザベラ・ロッセリーニらが脇を固める。第97回アカデミー賞で作品、主演男優、助演女優、脚色など計8部門でノミネートされ、脚色賞を受賞した。(映画.com)

 

 

 

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『ベン・ハー』をちゃんと観ることができたら、これも観ようと思っていました。

あまりにタイムリー過ぎて恥ずかしいのですが、観てよかったです。

 

数多いる候補者のなかから、誰が新しい教皇となるのか。

ある意味これは、ミステリと言えます。

今まさに、実際にコンクラーベが行われているので、ついうっかりノンフィクションかと思ってしまいますが、もちろんこれはフィクションなわけです。

だからネタバレはできません。

 

一応映画を観ながら、彼が教皇になるといいな、というか、多分なるんじゃないかなあ、なんて思っているわけです。

候補者それぞれの主張があって、それらを聞きながら、カトリック信者でもないくせに、この人には任せたくない、なんて思ったりもしました。

 

すごく不思議なのは、派閥があったり根回しがあったりするのに、立候補者というのが明確にあるわけではないことです。

教皇になりたい人というのはもちろんいますが、たいていの人は自分がなってほしいと思っている人に投票します。多分。買収されてなければ。

でも、立候補者の演説がないのに、どうやって各々の主張が明確になるのだろう?不思議。

そして、演説もないのに、投票するたびに票の行方が変わること。

皆さんそんなに気分屋さんなの?

 

ちょっとした違和感が結構ありました。

タバコを吸う枢機卿たち(しかも吸い殻が大量に捨ててある)、スマホをいじる枢機卿等、あまりに現代人。

枢機卿の食事やらなにやらをお世話するのは、大勢のシスターたち。

だけど、枢機卿たちはお世話してもらって当たり前すぎるのか、そこに感謝の言葉などがないことも、「あれ?」って思ったところ。

カトリックなので、女性が聖職者になれないという前提で、シスターたちは一段下に見られているようでした。

 

主人公のローレンス枢機卿は、差別や敵対などはカトリックの教えとは相いれないと言います。

大切なのは寛容であること。確信を持たないこと。

確信を持つことで、聞く耳を持たなくなり、寛容ではなくなる。多様性を持つことが大事、と。

 

この映画を通じて、制作者サイドが言いたかったのは、このことなのだと思います。

『わたしたちは理想を掲げるものであり、私たち自身が理想なのではない」といって、現実と妥協しようとする人もいましたが、ローレンス枢機卿は「わたしは教皇庁に仕えているのではない。神に仕えているのだ」と、安易な現実路線を非難します。

 

教皇選挙の最中にイスラム教徒のテロにより、建物が一部損壊し、選挙が中断します。

その時にカトリックの原理主義者なのでしょうか、強硬派の人が叫びます。

「今こそ、反撃の時だ。いつまでカトリックはやられ続けなければならないんだ。戦争をする準備はできている!」

 

そこに、アフガニスタンのカブールから来た枢機卿が言います。

「ここにいる誰が、本当に戦争を知っていますか?あなたたちは自分の味方のことしか見えていない。万人に(神の)言葉を届ける努力をしていない」

 

今、コンクラーベの真っ最中だから、というのではなく、今、世界中が混迷して、差別や分断が横行し、強者が自分たちの仲間の利益しか考えない時だからこそ、観るべき映画だと思いました。

んでもってこの映画は、さらにその先の問題までも…。

 

今読んでいる本の、あまりにうっすい絶望に比べたら、なんて骨太の理想であり希望なんだろうと思いました。