4月21日(月)

 

数年前から、家の鍵の状態があまりよくなかった。

開け閉めするとき、錠の中で鍵が右にも左にも回せなくなるのだ。

 

働いていたころは、まだそれほどでもなかったような気がする。

ちょっと引っかかるなあ、くらい。

ところが退職してから、だんだん錠の中で鍵が動かないことが多くなってきた。

何度も鍵穴に差しなおして、何度も鍵を回転させようと試みる。

 

さすがにこれではストレスがたまるので、家計を預かる10さんに「鍵屋さんに見てもらいましょう」と言う。

しかし10さんの返事は「たまにはすんなりいくから、いいよ」というものだった。

え?つまり100%鍵が動かないことにならないと見てもらわないってこと?

どちらか一人が家にいて、中から鍵を開けたり閉めたりできる時はいいけれど、二人そろって締め出されたらどうするの?

 

昭和の男である10さんは、我慢強いというか、面倒くさがりというか、事こういう場面でめちゃくちゃ腰が重い。

しかし現役で令和に生きる私は、毎度ストレスを感じながら鍵の開け閉めするくらいなら、さっさと修理に出そうよ、と思ってしまうのだ。

「お金は私が出します。鍵の交換が必要になるかもしれないので、二人が家にいる時に鍵屋さんを呼びたいのですが」とまで言ったのに、返事は「うーん…」

私が東京に行っている間に締め出し喰ったらどうするんだろうと心配しながら、さっさと東京に向かったのですが。

 

東京から帰ってきたら、ちょっと鍵の状態がよくなっていた。

マンションの管理人さんに相談したら、鍵専用の潤滑油を貸してくれたらしい。

「やればできるじゃん」とは言ったものの、実はまだ引っかかる感じは残っておったのだが。

 

ある日私が部屋で勉強をしていると、10さんが「これから鍵屋さんに見てもらうから、ちょっとうるさくなるかもしれない」と言いに来る。

多少錠の内部がすり減っているものの(2人でガシガシ力を込めて鍵を回していたからね)、ちょちょっと錠のなかを掃除したら簡単に直った。

 

というか…抵抗がなさ過ぎて、今までの勢いで鍵を回すと、反動で反対側まで鍵が回ってしまう。

つまり鍵をかけた後、勢い余って鍵を開けてしまうわけなのだ。

もうちょっと普通の抵抗にならんものかのう。

とはいえストレスがないのはいいことだ。

寿命が30分くらいは伸びたかもしれない。

 

 

 

 

本日の読書:QED 竹取伝説 高田崇史

 

カバー裏より
『「鷹群(たかむら)山の笹姫様は……滑って転んで裏庭の、竹の林で右目をついて、橋のたもとに捨てられた」。不吉な手毬唄が伝わる奥多摩の織部村で、まるで唄をなぞったような猟奇殺人事件が発生。ご存じ桑原崇が事件の謎を解きつつ、「かぐや姫」の正体と『竹取物語』に隠された真実に迫る。大好評シリーズ第6弾!』

奥多摩のさらに山奥にある2つの集落をつなぐ鵲(かささぎ)橋。
その周辺では、昔から不審な事故死が多発していたのだった。

このシリーズの主人公…ではないよな、語り手…でもない、ヒロイン…とも違う、しいて言うならこのシリーズの聞き手である棚旗奈々の上司が、腹に竹槍を突きさされた死体を発見したことから、彼らはこの事件にかかわりを持つことになる。
今どきなぜ竹槍?

しかし本文の大半はこの事件ではなく、『竹取物語』は呪の物語、騙りであるということを桑原崇が延々と棚旗奈々に話すことに費やされている。
まあこれも、シリーズの常套展開なのだけど。

かぐや姫に求婚する5人の貴族たちは、実在のモデルがいる、というのは聞いたことがあった。
その元となった人たちの名が明かされたとき、『竹取物語』を書いた人の名前が私にもわかったけれど、それはあくまで物語上の事実であって、作者未詳というのが実際のところなのだけど、ではなぜ作者を未詳のままにしてあるのかというと…と考え始めると、歴史を疑う目はとどまるところを知らなくなる。

桑原崇によると、かぐや姫は衣通(そとおり)姫であり、小野小町であるという。
つまり貴族以外は人間にあらずと言った平安時代に、機織り女は、遊び女扱いもされる存在であったのだという。
たかが遊び女のかぐや姫に対して、高価な秘宝を惜しげもなく捧げようというのだから、貴族の男は酔狂である、ということなのだろうか。

このシリーズのもうひとつの常套は、タイトルとは別の謎を追うことによって、タイトルの謎に収斂していくという構造だ。
今回のそれは「七夕」における呪。
鵲橋を挟んだ村の男女が婚約する、結婚する、という流れは、さすがの私でも「七夕」やん、と思った。

しかしこのシリーズの聞き手である棚旗(たなはた)奈々。
この名前に隠された秘密はないのかい?
だれも、桑原崇ですら、散々七夕のウンチクを語りながら、彼女の名前について触れることはなかったのが気になるのだが。
「たなはた」で「なな」なんだよ。
誰か突っ込めよ。