11月18日(月)
解説
山田風太郎の小説「八犬伝」を役所広司主演で映画化。里見家の呪いを解くため運命に引き寄せられた8人の剣士たちの戦いをダイナミックに活写する“虚構”パートと、その作者である江戸時代の作家・滝沢馬琴の創作の真髄に迫る“実話”パートを交錯させて描く。
人気作家の滝沢馬琴は、友人である絵師・葛飾北斎に、構想中の新作小説について語り始める。それは、8つの珠を持つ「八犬士」が運命に導かれるように集結し、里見家にかけられた呪いと戦う物語だった。その内容に引き込まれた北斎は続きを聴くためにたびたび馬琴のもとを訪れるようになり、2人の奇妙な関係が始まる。連載は馬琴のライフワークとなるが、28年の時を経てついにクライマックスを迎えようとしたとき、馬琴の視力は失われつつあった。絶望的な状況に陥りながらも物語を完成させることに執念を燃やす馬琴のもとに、息子の妻・お路から意外な申し出が入る。
滝沢馬琴を役所広司、葛飾北斎を内野聖陽、八犬士の運命を握る伏姫を土屋太鳳、馬琴の息子・宗伯を磯村勇斗、宗伯の妻・お路を黒木華、馬琴の妻・お百を寺島しのぶが演じる。監督は「ピンポン」「鋼の錬金術師」の曽利文彦。(映画.com)
**********************************************
制作発表を聞いた時からものすごく楽しみにしていました。
『南総里見八犬伝』も葛飾北斎も大好きなので。
でも、公開されてからはぐずぐずと観るのをためらっておりました。
『南総里見八犬伝』も葛飾北斎も大好きだから。
蛙化現象が怖かった…。
今更嫌いになりたくなんかない。
結果、蛙にはなりませんでした。
思ったより『南総里見八犬伝』部分が壊されてなくて、それなのに滝沢馬琴(今、学校では曲亭馬琴と教えているようですね)部分も上手いことハマっていて、面白かったです。
同居するほど親密だった時期もあれば、大喧嘩して絶交していた時もある馬琴と北斎の関係を、つかず離れずという感じでうまく表現していたと思いました。
私の好きな北斎の娘・応為(おうい)も少しだけ出てきましたが、絵を描く時の姿勢が実にらしいなあと思って感心しました。
鶴屋南北とのやり取りは、ちょっとせりふ回しが難しいのでは?
「善因善果」「悪因悪果」という言葉、耳で聞いただけですぐにわかった!とはいかず、「勧善懲悪」の話になって、ようやく漢字変換できたのでした。
でもこの「勧善懲悪」を書くことは馬琴の信念なので、本人の耳にも勧善懲悪は単純でつまらんという声が届いていたようです。
「『水滸伝は後半が面白くないから、後半は作者が別で続水滸伝ってことなんじゃね?』っていう者がいるが、悪が滅んでこその勧善懲悪だから」と馬琴本人が反論しています。
で、「勧善懲悪」物語を全うしたから、最後に『フランダースの犬』のようなエンディングになったのでしょうか。
そういえば、日本では悲劇扱いされる『フランダースの犬』ですが、欧米では天使が迎えに来てくれる時点で最高のハッピーエンドという解釈なのだそうですよ。
でも、だとしたら志半ばで亡くなった馬琴の息子は…?
『南総里見八犬伝』パートでは、信乃と源八が屋根の上で戦うシーン、私の脳内ではせいぜい3階建てくらいのイメージだったのですが、あんな高いところで戦ってたんだ…という感慨。
よく生きてられたよね。
浜路姫も。
あと船虫…もっと妖艶な悪女のイメージでした。
ちょっと妖艶度が足りなかったかも。
玉梓はよかったね。
原作は仲間を集める旅の部分が面白かったけれど、後半は突っ込みどころ満載で、特に最終巻については文章がのっぺりしてる、なんて感想を以前自分で書いてました。
特にひどいのが戦いの後のシーンで、里見家の8人の姫(!)と八犬士がそれぞれ結婚するのですが、お相手はくじ引きなんですよ!ひどくないですか?
あからさまに浜路姫と信乃は両想いなのに、くじ引き。
でも、安心してください、くじ引きの結果、ふたりは結婚します。
善因善果。
秋葉原
清澄白河
南総里見八犬伝の碑
上から見たところ



