6月15日(土)
今日は、弟と一緒に父を病院に連れて行きました。
前回は内科の主治医による治療方針の説明。
そして今回は外科の先生による説明。
癌なので、治療方法はいくつかある。
しかし90歳を超えた父に、放射線治療や抗がん剤治療は現実的ではない。
却って体力を失ってしまうだけだろう。
内科の先生は、開腹手術で行こうと思う、とおっしゃった。
内視鏡手術じゃないんだ…と思ったけれど、基本医療従事者の勧めに従うことを信条としているので、外科の先生からはそこら辺の詳しい話をされるのだと思った。
ら、父が「切るのは嫌だ」と言い出した。
父は大変ビビりなので、痛いと考えるだけで気持ちがなえるのはわかる。
しかし先生からの説明によると、胃や膵臓など、何度か開腹手術をしているので、切ったりぬったりした部分が複雑になっていて、内視鏡の方が多分時間がかかるだろう、と。
一番体に負担がかからず効果が期待できるのが、開腹手術。
ここまで言われても「考えさせて」という父。
というわけで、一応手術室と入院する部屋の予約だけしてもらい、実家で緊急の家族会議。
母が施設に入って不在なのに、自分も入院して2~3週間も家を空けるわけには…「私が1日おきくらいに換気に来ます」
3階の住民が家に勝手に入ってくるので、留守だとわかると何をされるかわからん…「3階の人には、これ以上勝手なことをすると警察に相談しますよ」と言っておいたから大丈夫。(嘘)
多分、不安なのだ。
それはわかるけど、何もしないという選択肢はない。
脳梗塞の治療薬のため血液サラサラになる薬を飲んでいる父は、癌のせいでの出血がひどく、貧血で最近何回か体調を崩しているし、このまま放置していれば一年以内に腸閉塞を発症すると言われている。
それでも、手術は嫌なのだ。
結論としては手術をするしかないのだけれど、本人が納得しないかぎりは話が進まない。
弟も、「今手術しなくても、一年後に緊急手術をするくらいなら、いま準備をしっかりして万全な体制で手術をした方がいいと思う」と言ってくれた。(促さないと意見を言わないが)
「お医者さんがお父さんには判断能力がないから、家族の人が判断してくださいって言ったなら、私は手術をしてくださいって言うよ。でも、お医者さんはお父さんに判断能力があると認めて、家族と相談してくださいっておっしゃったんだから、何よりもお父さんの気持ちが第一なんだよ。どうしても手術が嫌ならしょうがない。その後の展開も覚悟の上でお父さんが判断したなら、従うしかないよ。無理に手術を受けさせることは私にも弟にもできないんだから」
…手術するしかないんだよね…と父。
自分は徹底的に拒否しても、誰かに無理やり手術を受けさせられる、というシナリオを思い描いていたのだと思う。
そうしたら、「俺は嫌だと言ったんだ」と責任転嫁できるから。
それが今までの父のやり口だったので、意見はいうが絶対無理強いはするまいと決めていた。
自分で覚悟を決めて手術を受けるのでないと、術後の辛いリハビリで、延々「お前が手術しろって言ったから」と責められるのはわかっているから。
優しくない娘だな、と思う。
弟には、入院時のつき添い、必要なら手術時のつき添い、洗濯等などの日常的なあれこれは私が面倒を見るので、とにかくケアマネージャーに相談してくれと頼んだけど、やつもはっきりしないんだよなあ。
そのうち事情が好転する問題ではないことは、わかってるはずなのに。
その他今日やったこと。
・パソコンを買う
なんだかんだで結局大きな出費だよ。
初期設定等お願いして、火曜日に受け取りに行くことにする
・押し入れすのこを買って、和室の押し入れの整理
不要な客用寝具は処分した後、洗面所の棚に溢れかえっていたタオル類をサイズごとに分類して押し入れで管理
大量にあるタオルハンカチなども、惜しげなく布巾として使おうと決める
・住民税の確認
月曜日に一年分を支払いに行くことにする
パソコンにつづいて大きな出費
無職無収入の身には痛すぎる
本日の読書:バールの正しい使い方 青本雪平
帯より
『転校を繰り返す小学生の礼恩が、行く先々で出会うクラスメイトは噓つきばかりだった。なぜ彼らは噓をつくのか。友達に嫌われてもかまわないと少女がつく噓。海辺の町で一緒にタイムマシンを作った友達の噓。五人のクラスメイトが集まってついた噓。お母さんのことが大好きな少年がつかれた噓。主人公になりたくない女の子がついた噓。さらにはどの学校でもバールについての噂が出回っているのはなぜなのか。やがて礼恩は、バールを手にとる――。』
目次
・プロローグ
・狼とカメレオン
・タイムマシンとカメレオン
・五人とカメレオン
・靴の中のカメレオン
・ブルーバックとカメレオン
・ライオンとカメレオン
・エピローグ
何の予備知識もないまま、タイトルに惹かれて読んだ。
ずっと気になっていたのだ。
ニュースで言われる「バールのようなもの」って何?
「バール」ではないらしいが、そもそもニュースをご覧の皆さん、「バール」をご存じなのか?
私は存じ上げなかったので、調べてみた。
「釘抜き」との違いがいまだに分からない。
でも、「釘抜き」のようなものじゃダメなんですか?
だって所詮「のようなもの」なんでしょ?
その謎が、ついに解き明かされるかと思って読んでみたのだけれど、作中の子どもたちはみんな「のようなもの」に反応して、「バール」については周知のことのようだった。
つまり、長くて振り下ろせば凶器にも武器にもなりうるもの、それがバールのようなもの。
だから「杖」も(え?ちょっと違くない?)「バット」も(うーん、いかがなものか)「定規」も(さすがに違うやろ)バールの「ようなもの」であるという結論。
それでいいのか?と考えて考えて礼恩(れおん)が辿り着いたのが、正しい使い方、だ。
ほんの数カ月足らずで転校を繰り返す要目礼恩(かなめれおん)。
これはその彼の、小学校4年生から6年生にかけて経験した、嘘をめぐる話だ。
しかも、どの話も子どもと死との距離がごく近い。
切ないのは、自分を殺すための嘘をつくことを選択した話と、嘘をつくことすら考えないがために殺されたのかもしれない話だ。
それは、親と子の話でもある。
礼恩がなぜ短期間で転校しなければならないのかというと、父親がすぐ仕事を辞めてしまうから。
だから礼恩は親友を作らない。
誰かの心に残る存在であることなど、最初からあきらめている。
これは、辛い。
これだけでも父親の身勝手さに腹が立つというのに、一応仕事優先なのだ。
ちょくちょく引っ越しを重ねるわりに、礼恩の父はモテるらしい。
だから女友達が食事を作ってくれたり、洗濯もしてくれたりする。
それを読んで私は、礼恩の父は彼女に何を与えているのか?と思う。
時間ではない、仕事優先だから。
お金ではない、引越しや転職ばかりでそれほどの大金を持っているとは思えない(貯金はあったらしいけど)
そもそも小学生の子ども一人残して、いつデートの時間を作っていたのか?
大変仕様ならない大人として私の心に深く刻まれた礼恩の父なので、痛い目を見たときは溜飲が下がりました。
子どもは世間を知らないけど、だからこそ誰かを守ると決めたら全力で守ろうとする。
その小さな力で大人を守ろうとすることすらある。
だから私は自分の幸せのために子どもに己を殺せと言えるような花名の母や、自分の幸せのために子どもを切り捨てたのかもしれない浦上くんの母や、自分の都合で礼恩を振り回す彼の父が大人として情けない。
礼恩の父は、彼が転校先の世界でなじめるように、カメレオンのように擬態をしていることを知らないだろう。
良くも悪くも目立たないように、その他大勢と同じになるように擬態する。
それは自分の個性を殺すことだ、と、花名と話して気づく礼恩。
生きるために、バールを使う。
生きてきたことを遺すために、バールを使う。
予備知識なかったけど、いい本にあたった。
で、バールって何?
