6月1日(土)

ゴールデンウィークがあるし、旅行にも2回も行ったしで、あんまり読めないかと思いきや、結構読んだぜ25冊。
結構軽く読める本が多かったのがその理由と思われるけど、その反面★5つは2冊と低調。
今月はもう少しずっしりした本を読めそうなので、ちょっと期待している。

さて、2冊のうち1冊は絵本です。
『源平絵巻物語』。
一緒に読んでいた10さんは10巻の『衣川のやかた』が良かった(多分弁慶に感情移入していると思われる)と言いますが、私は9巻の『安宅の関』の方が面白かったです。
義経の逃げるルートを計算して、先回りして関所を置いていく頼朝の執念と、追いつめられる義経をそっと見逃すあちこちの地元の人たち。
源氏の世を永らえるためには、頼朝は義経を手放してはいけなかったんだと思いました。
義経が生きていたら、頼朝の死後、頼家を京都のお公家さんたちに合わせて、井の中の蛙にはしなかったんじゃないかなあ。

もう一冊は、『春にして君を離れ』。
これは、後世に残すべく、文学全集に入れるべき作品です。
なんて恐ろしい現実を鼻の先に突き付けてくる作品なのでしょうか。
私はジョーンに振り回された家族だったはずなのに、ジョーンであるのかもしれない。
己を省みることをしない自信家ではないけれど、家族のためという呪いを使わなかったかと問われると、自信はない。

5月の読書メーター
読んだ本の数:26
読んだページ数:6748
ナイス数:789


(愛蔵版)魔法があるなら(愛蔵版)魔法があるなら感想
人気のある作品のようですが、私には無理でした。子どもの頃に読んだら、面白く読めたかな?いや、無理だと思う。だって私は長女だから。主人公のリビーは、しょっちゅう引っ越しをします。住む家が待たなくなった時、ママはデパートに住むことを考えます。この辺りからもう、無理だった。なんで子どもがこんなに不安になっているのに、不安を解消しないのか。ママは努力しないの?子ども向けの作品だから、最後はハッピーエンドで終わるけれど、私には納得できなかった。リビーの心情が切なすぎて健気すぎて、全然楽しめなかったわ。★★★★☆
読了日:05月01日 著者:アレックス・シアラー

もう一度デジャ・ヴ (集英社文庫)もう一度デジャ・ヴ (集英社文庫)感想
相当初期の頃の村山作品なので、今更読んでもおばちゃんは…。設定に既視感あり、ストーリーにも既視感あり。時代小説部分については、リアリティよりもキャラクターの心情に主眼を置いているので、なんだかあさのあつこの作品っぽいと思ってしまった。今読むべき本、ではなかったな。★★★☆☆
読了日:05月02日 著者:村山 由佳

不知火判事の比類なき被告人質問不知火判事の比類なき被告人質問感想
不知火判事の目の付け所は面白く、質問が比類なさ過ぎて、どんでん返しすらない無双状態というのを、法廷で被告人とまたは検察や弁護人とと丁々発止のやり取りを経てからの解決だったら、もっとわくわくできたかなと思います。遺書の文言の不自然さを、捜査陣が誰も気づかなかったのだとするとうかつすぎるし、文章を読んだだけでも登場人物二人の見た目の特徴が同じであることにだれも気付いていないのも違和感。それから、もう少し読みやすい文章になるよう、情報を整理して書いてほしいと思います。でも面白かったので今後に期待。★★★★☆
読了日:05月05日 著者:矢樹 純

ムゲンのi(下) (双葉文庫)ムゲンのi(下) (双葉文庫)感想
読み始めれば、読むのを止められないくらい引き込まれて読んだのだけど、結果から言うと、ほぼ上巻で予想した通りの展開でした。まだ2作しか読んでいないから見当違いかもしれませんが、この人ミステリに向いていないのではないかと思うのです。医療に特化した作品の方が向いているんじゃないのかなあ。医療×ファンタジーでもいいんだけど、私が面白く読んだのは、むしろ医療従事者の心の内なんですよね、今作も前に読んだ作品も。★★★★☆
読了日:05月06日 著者:知念 実希人

江戸絵皿絵解き事典 絵手本でわかる皿絵の世界江戸絵皿絵解き事典 絵手本でわかる皿絵の世界感想
最初この本を本屋さんで見かけたとき、のけ反りました。著者は、私が中学~高校生の頃熱心に聞いていた深夜ラジオのパーソナリティだったからです。で、今回、絵皿の解説ですよ。絵のテーマは日本のことわざというより、中国の故事成語をもとにしたものが多いので、原点からその絵にいたるまでの解釈の流れなどが短い文章ながらわかりやすく書いてあって、最近美術に目覚めた私には大変興味深い本でした。絵手本とか大津絵など、素人が絵の勉強の参考にするような本が、江戸時代には発行されていたというのもすごいと思いました。★★★★☆
読了日:05月07日 著者:河村 通夫

安宅の関 (源平絵巻物語 第9巻)安宅の関 (源平絵巻物語 第9巻)感想
史実としては一番わかっていなかった部分でした。今回めっちゃ勉強になりました。鎌倉に帰りたいのに許されない義経が、平泉に向かう道のりっていうのもあまり考えたことなかったけど、鎌倉及び幕府の勢力圏を通れないのだから、京都から北陸をまわって岩手に向かうしかなかったのか。それはまた、難儀なことでした。北陸って関東よりも京都に近しいから、頼朝より義経に寄り添う気持ちが強かったのだろう、と解説に書いてありました。判官びいきって、京都を平家の横暴から救ってくれてありがとう、という気持ちだったのかもしれないね。★★★★★
読了日:05月08日 著者:今西 祐行

NO.6〔ナンバーシックス〕#5 (講談社文庫)NO.6〔ナンバーシックス〕#5 (講談社文庫)感想
折返しまで来ましたが、全然話が進んだ気がしません。相変わらずNO.6は謎だらけですし、人の命を大切にしません。NO.6という都市、というか組織への作者の精度が粗い気がします。どういう運営をしているのか、全く見えてきません。おかしいなあ。紫苑とネズミは着々と計画を実行しているはずなのに。沙布についても、どういう状況なのかがわかりません。紫苑の母の火藍(からん)にしても、自分の目で見て耳で聞いたものを判断材料にしているのはいいけれど、危機意識が薄すぎます。あまりにも正面から正論を吐きすぎる。今後が不安です。★★★★☆
読了日:05月09日 著者:あさの あつこ

新装版 花の降る午後(下) (講談社文庫)新装版 花の降る午後(下) (講談社文庫)感想
宮本輝が巧いので、話が面白いので、読み始めてしばらく気づかなかったけど、乗っ取りを企む悪人たちに対抗する手段を取ったところで上巻が終わったはずなのに、この下巻ではほぼ恋愛パートに終始している。地元のボスと言える人たちに窮状を話して、これから反撃だ!ってところから進まない。最終的には、守りを固めて相手を引っかける罠を作って、相手がそれに引っかかって、自滅。マジ?仕事か恋愛かという二者択一の考え方に、時代の古さを感じた。と、いろいろ書いたけれど、結局のところ一気にぺろりと読んでしまったのだ。宮本輝には勝てん。★★★★☆
読了日:05月10日 著者:宮本 輝

食卓のこころ食卓のこころ感想
手作業ができる人に憧れる。繕い物、できん。手間暇かけた料理、作れん。何よりも、手間を惜しまないその心根が、ちょいと欠けている。不器用という最前提はあれども。だけど、想像力という名の妄想力に恵まれている私は、彼女の文章を読みながら、自分が実際行っているかのように脳内で再現できる。それというのも彼女の文章が簡潔でありながら明瞭だからだ。おかげで私は苦労もせずに手仕事をした気になって、満足している。★★★★☆
読了日:05月11日 著者:山本 ふみこ

ピュア・ラブ 紅絲篇ピュア・ラブ 紅絲篇感想
主人公の木里子は小学校教師。だから最初のうちは、家庭に問題を抱えた子供たちの話なども書かれていたのですが、彼女が白血病になるところから、俄然「難病もの+恋愛もの」の王道になってきました。私が一番苦手なやつ。まず、木里子は修行中の禅僧である陽春にひとめぼれです。きっと彼女は死ぬんだな。そして彼女の供養をしながら、陽春は修行を続けていくんだな。と思っていたら、もっとピュアな結末でした。そう来たか、という感じ。ってことで、シリーズは続くのですね。★★★★☆
読了日:05月14日 著者:宮内 婦貴子

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。 (双葉文庫)赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。 (双葉文庫)感想
面白いんだけどさ。目の付け所に感心しきりなんだけどさ。一冊通してこういう流れだと、なんかやりきれない思いもないこともない。共通するのは子どもの身勝手。本来はそれを戒めるべき周囲の大人がまず身勝手なので、誰もその加減を子どもに教えることができない。自分だけよければよい。手段は問わない。社会の規範に囚われない子どもは、やすやすと犯罪に、殺人に手を染める。童話の体をなしているけれど、そういう話を立て続けに読むのはやりきれない。いや、面白いんだけどさ。★★★★☆
読了日:05月15日 著者:青柳 碧人

黄泉のツガイ(7) (ガンガンコミックス)黄泉のツガイ(7) (ガンガンコミックス)感想
ユルとアサの両親をイワンが「斬った」と言ったので、で羅さんのお父さんも含めて生きているのではないかと思えてきた。だって「殺した」ではなく「斬った」だからね。「首を刎ねた」とも言っているけど。イワンのバックにいるのが「東村」と敵対する「西ノ村」。影森はどこまで知っているのか。アキオはなぜ裏切ったのか。続きを早く読みたい。
読了日:05月15日 著者:荒川弘

店長がバカすぎて (ハルキ文庫 は 15-1)店長がバカすぎて (ハルキ文庫 は 15-1)感想
多分本屋さん同士が読んで笑って面白い作品なのだと思う。けれどミステリでもない(ミステリ要素がないわけではないけれど)、毒というほどの毒でもない、本屋さんを舞台にしたユーモア小説。本屋さんあるあるのオンパレードになにがしかの風味づけをしたのでしょう。面白くないわけじゃないけど、でもこれ、本屋大賞としてお勧めしたいと、全国の本屋さん本気で思ったの?★★★★☆
読了日:05月16日 著者:早見 和真

モトムラタツヒコの読書の絵日記モトムラタツヒコの読書の絵日記感想
この世にまだこんなに存在も知らない本があったのか、と改めて思った。そもそも小説が少ないし、出版社も大手ではないところのものが多い。つまり彼は、自分の読みたい本に対する嗅覚が鋭いのだろう。プロレスはともかく、旅、冒険、自由。落語、動物、童話、絵本。それぞれへのこだわりと、広がる世界。私的な読書の記録だけれど、オープンにされた彼のこころの風景でもある。★★★★☆
読了日:05月17日 著者:モトムラタツヒコ

この本を盗む者はこの本を盗む者は感想
ファンタジーというのは難しいジャンルなんだな。書き込みが丁寧過ぎて、読者の側の自由度がない。特に視覚情報が細かいから、角川書店発行ということもあって、メディアミックスを念頭に置いた作品だったのかもしれないなどと、メタ読みまでしてしまう。で、「この」本を盗む者の話ではないよね。この「本」を盗む者への呪いの話。本を読まない人が増えた現在、だけど万引きは増えている。そんな現状を、作者は訴えたかったのかもしれない。そして、本の世界って多種さまざまで、どこかに自分に合った本があるかもよっていう話なのかも。★★★★☆
読了日:05月18日 著者:深緑 野分

春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)春にして君を離れ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
家族のためを思って、家族のために結婚後の人生を全て捧げてきたジョーン・スカダモア。末の娘の病気を見舞うためバグダッドに赴いた帰り、大雨で列車が普通となってしまい足止めをくう。何日もすることがなく過ごすうちに、自分自身の半生が自分の思ってもみなかった姿を見せ始める。たいていの妻や母は、言うよ「あなたのためを思って」。誰もが自分のこととして、または自分の親のこととして読むことができる。しかも、絶対によい気分になることはありません。ロマンチック・サスペンス?いやいや、世界文学全集に入るレベルの小説ですよ、これ。★★★★★
読了日:05月19日 著者:アガサ・クリスティー

NO.6〔ナンバーシックス〕#6 (講談社文庫)NO.6〔ナンバーシックス〕#6 (講談社文庫)感想
この巻で進んだこと、なし。この巻でわかったこと、ネズミは《NO.6》に焼き滅ぼされた森の人々の生き残りであったということ。以上。『バッテリー』でも思ったけど、彼女の書く少年たち、うだうだ考えすぎ。今、この状況では、考えるな感じろ、と言いたい。その感じた描写で、読者がうだうだ考えるからさ。”温暖化による新たな感染症の広がり、予測不能な異常気象、そして国家間、民族間の尽きぬ争いと、核の仕様……。”2007年に刊行されたことを考えると、この一文の精度がすごい。★★★★☆
読了日:05月20日 著者:あさの あつこ

衣川のやかた (源平絵巻物語 第10巻)衣川のやかた (源平絵巻物語 第10巻)感想
とうとう義経の最期。最後まで義経を守り切ることができなかった、というか裏切った泰衡に対するいら立ちはさておき、頼朝よ。自分の意を越えた行動を繰り返す弟を征伐する、という形を取りながら、要所要所に関所を作り、自分の目を盗んで義経を助けようとする人たちをもついでに掃討して、とうとう鎌倉幕府を成立させてしまった頼朝。”日本のさむらいによる政治は、こうしてはじまりました。”という一文で終わるこの作品。だけど、義経の最期とともに頼朝のラッキーも終わってしまった、終わりの始まりのような終わり。★★★★☆
読了日:05月21日 著者:今西 祐行

1品持ちより―「おいしいね」っていわれたい! (ハイパーレブシリーズ―料理ムックおいしいシリーズ) (ハイパーレブ 料理ムックおいしいシリーズ 9)1品持ちより―「おいしいね」っていわれたい! (ハイパーレブシリーズ―料理ムックおいしいシリーズ) (ハイパーレブ 料理ムックおいしいシリーズ 9)感想
子どもたちが小さい頃はさておき、今となっては一品持ちよりの集まりなんてものは無縁の生活です。でもこの本は、「時間がたっても味がおちない」→作り置きに最適と思ったので、借りてみました。最近野菜は丸ごと買うようにしているのです。だから、一度に食べきれなくても、作り置きのおかずにして少しでも長持ちさせようという企み。改めて知る料理、というよりも、いつものおかずのテイストをちょっと変えて…的なもの(例えば、鶏のささ身にふりかけをまぶして揚げる、とか)が結構多くて参考になりました。料理苦手だが、頑張ろ。★★★★☆
読了日:05月22日 著者:牧 弘美

ピュア・ラブ〈2〉恋情篇ピュア・ラブ〈2〉恋情篇感想
確かにピュアではありますが、やはり主人公の精神年齢が幼い気がします。何なら教え子たちの方がよほど大人。子供たちの成長著しく、悪ガキトリオは人を思いやること、自分の頭で考えることなどを覚え、ルナも、自分が辛くても周りのために行動できる子になりました。裕太は元々良い子でしたが、裕太の母は裕太を引き取るどころか、妹まで忍に押しつけて男と失踪。どうもルナの母親といい、自己中でダメな母ばかりですね。父親たちも、今一つだけど。というわけで、病気と純愛はどうあれ、子どもたちが頑張ったで賞です。★★★★☆
読了日:05月23日 著者:宮内 婦貴子

幻世の祈り―家族狩り 第一部―(新潮文庫)幻世の祈り―家族狩り 第一部―(新潮文庫)感想
覚悟して読み始めたのですが、やはり天童荒太、重たいです。主要人物の3人もそれぞれ屈託を抱えていますが、さらに周囲にいる家族に問題を抱えた人たちに振り回されています。多分それぞれのエピソードがひとつの物語にまとまっていくのでしょうが、全五部のうちの第一部なので、まだ人物紹介程度なんだろう。作者は、家族が壊れたことで生じた問題が多々あるのに、解決もしないまま、ともかく家族に帰ろうとすると、結局は家族内の弱いものに我慢を強いることになる、ことに子どもにしわ寄せがゆくのは明らかと思い、この作品を執筆したそうだ。★★★★☆
読了日:05月24日 著者:天童荒太

むかしむかしあるところに、死体がありました。 (双葉文庫)むかしむかしあるところに、死体がありました。 (双葉文庫)感想
先に赤ずきんちゃんのシリーズを読んでしまったけれど、こちらの方が先に話題になったはず。読んでみると、確かにこちらの方がミステリとしては簡単。違和を感じるべきところがわりかしはっきり書かれているので、「と、いうことは…」と推理しやすくなっている。題材も相俟って、読書初心者のために書かれたミステリ入門書のようなものかと思ったけれど、いろんな賞にランクインしているのね。最後まで花咲か爺さんがいい人でよかった、とだけは言っておく。★★★★☆
読了日:05月25日 著者:青柳 碧人

娘は娘 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)娘は娘 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)感想
これはまた、『春にして君を離れ』とは違う意味で痛い本でした。何事もなければ胸を張って言えるのですよ、「自分のことより子どもが大事」。だが、アンが娘のために再婚を諦めた途端、娘のことがかわいいけれども憎い存在になったっていうのはわかる。セアラはセアラで、なぜ母が自分を憎んでいるかのように接するのかが理解できない。拗れるにいだけ拗れた母と娘の仲だけど、一度腹を割ってぶつかったらあら不思議。憎しみはどこへやら。だって何があっても、娘は娘だもの。でも、今どきは親子の間とはいえ、一方的に仕えるのは無理筋だと思う。★★★★☆
読了日:05月28日 著者:アガサ・クリスティー

犬棒日記 (双葉文庫)犬棒日記 (双葉文庫)感想
「×月×日」から始まる、一篇3ページ程度のストーリー。最初これは日記の体をしたエッセイなのかと思った。さすが作家というのは、普段の生活からストーリーを引き出すのが巧いものだ。何気ない日常の隣でどんな会話がなされているのか、人ごみの中にどんな異彩を放つ存在があるのか、その耳は、目は、逃さないのだな。日ごろの観察眼のたまものということか。けれど、こんなにこんなにドラマって落ちているもの?これは、日記の体をした、日常系ショートショートですね。なんとなくパターンが透けて見えて、後半はちょっと読むのに飽きた。★★★★☆
読了日:05月29日 著者:乃南 アサ

湖畔荘 上 (創元推理文庫 M モ 8-5)湖畔荘 上 (創元推理文庫 M モ 8-5)感想
現代パートの主人公は、ネグレクト事件でのミスで有休消化という名の謹慎処分中の刑事、セイディ。彼女が見つけた廃屋で、70年前未解決の誘拐事件があったらしい。過去パートの主人公は、誘拐事件のときにその屋敷に住んでいた、作家志望の少女・アリス。彼女は現代パートでは有名なミステリ作家として名をはせています。最初、あまりの不穏な書き出しに、アリスが事件の被害者で、死んでしまうのではないかと心配でしたが、いけ好かない婆さま作家として長生きしていたことがわかり、安心して事件について考えることができました。★★★★☆
読了日:05月30日 著者:ケイト・モートン

竜の涙 ばんざい屋の夜 (祥伝社文庫)竜の涙 ばんざい屋の夜 (祥伝社文庫)感想
丸の内にあるビルの一階で細々営業している「ばんざい屋」。ゆるくつながる連作短篇。単発の話だけど『氷雨と大根』が好き。同じ文化で生きてこなかった者同士が分かり合えることって、できるのだろうか。アメリカで暮らす娘とその彼氏について悩む初老の男性。ばんざい屋からの帰りに強盗に襲われ、重傷を負う。ばんざい屋で女将から料理の説明を受けながら、旺盛な食慾を見せる彼の娘とその彼氏を見て、分かり合えるかどうかよりも、まず一歩を踏み出すことだ、と思う女将。相手を知りたいと思う心、大切にしたい想い、これがあれば大丈夫と思う。★★★★☆
読了日:05月31日 著者:柴田 よしき


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