全然読めませんでしたなあ。
途中、職場の本社に退職のご挨拶に行った際、体調崩したのが痛かった。
あとは、月末最後の一週間はほとんど本を読めず。
ここ数日1ページも読んでいない。
今月も旅行に出かけるから、本読めないかもしれないなあ。

それでも★5つは3冊。
連続で読めたのは幸福な偶然。

『ぼんぼん』
児童文学ではあるけれど、大人も一度は読んだ方がいいと思う。
ごりごりの反戦文学ではないけれど、何もわからないまま生活が下方修正されていく様子を、子どもの目からきちんと書いている。
子どもだからそれを楽しんでいる時もあるけれど、どれだけ世の中が見えているかで生活レベルが変わってくるという冷徹な事実がなんとなく見えてくる。

『熱源』
最近アイヌの文化などが紹介されることが増えているけれど、日本だって地域によって言葉も風習も違うことがある。
樺太のアイヌという、当時はいまほど少数ではなかった人たちの文化が、あっという間に日本人化で失われ、故郷に暮らすという選択が命を懸けるくらい困難だということ。
それでも、胸の中に樺太のアイヌであるということの熱が、彼らを動かしていく。
ヨーロッパのポーランド人もまたしかり。

『グレイラビットの殺人』
シリーズ途中から読んじゃったけど、とても面白かった。
シリーズキャラクターの今後を見届けたいと思わせたなら、シリーズとしては大成功でしょう。
最初の作品を探して読むことは決定した。

3月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:5298
ナイス数:643


イン・ザ・ミソスープ (幻冬舎文庫 む 1-9)イン・ザ・ミソスープ (幻冬舎文庫 む 1-9)感想
例えば世間の評価に自分をあわせ、自分の価値観、自分の思想、自分の生き様などにみじんも勝ちを見いだそうとしない現在の日本人に何か物申そうとした場合、こういう方向からアプローチしないと通じないものなの?それほどの絶望を自分は感じておりますという、作者の自己憐憫なの?平和ボケで生ぬるい日本はダメだという論調。だけど、平和ボケで真剣に生きなくても生き延びることができる世の中と、常に死と隣り合わせで真剣に生きようと思ったところで簡単に命が失われていく世の中とを比べた場合、圧倒的に後者が正解といえるのだろうか。★★★★☆
読了日:03月01日 著者:村上 龍

不安な童話 (ノン・ポシェット お 13-1)不安な童話 (ノン・ポシェット お 13-1)感想
核になる人物2人の情緒が不安定なもので、深読みしようとするとミスリードされてしまう。にしても、美人でエキセントリックな画家の倫子。画家としての才能には溢れていたかもしれないけど、人としてはサイテー。周囲を振り回し過ぎるし、我が子をすら愛しているようには見えない。これは子どもからするときついな。ただちょっと、論理的に詰め切れていないところがあって、どれが真実なのかが揺らぐ。登場人物のどれもが非常にキャラクターが立っていて、万由子の上司である浦田泰山教授なんて、絶対シリーズキャラ向きだと思うのだけど。★★★★☆

読了日:03月02日 著者:恩田 陸

ぼんぼん (岩波少年文庫)ぼんぼん (岩波少年文庫)感想
大阪の、結構いいとこのぼんぼんであるひろしが過ごした小学校3年生から6年生の日々。戦争と重なって、決して幸せばかりではなかったけれども、その中でも喜びや楽しみを忘れず、懸命に暮らす姿が生き生きと描かれ、児童文学ながらぐっと引き込まれて読みました。この4年ほどの間に、何人もの命が洋のまわりから失われますが、それでも洋の日常は彩りに溢れています。それは、そういう生活を守ろうとする大人がいたからであり、声高に反戦を叫ばない多くの人が生きていた、ということでもあるのだと思いました。★★★★★
読了日:03月06日 著者:今江 祥智

熱源 (文春文庫 か 80-2)熱源 (文春文庫 か 80-2)感想
樺太に住んでいたアイヌ人が宗谷に強制的に連れてこられたあげく、対雁に住まされたということを史実としては知っていたので、興味深く読むことができました。優れた人種、劣った人種というのはない。ただ人であるだけだ。日本人に呑み込まれようとしているアイヌ人と、ロシアによって消されようとしているポーランド。生まれたというだけで、生きていていい。土地を、言葉を、文化を奪われずに生きるために戦う。これ、史実をもとにした小説なんですよ。戦いというのは武器を持って暴力で…だけではないことがわかり、胸が熱くなりました。★★★★★
読了日:03月07日 著者:川越 宗一

グレイラットの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMク 23-4)グレイラットの殺人 (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMク 23-4)感想
司書さんから個人的にお借りした本ですが、またしてもシリーズ物の途中から、でした。「ワシントン・ポー」シリーズ、聞いたことはありましたが、第一作までさかのぼって読むのはやめようと思いました。が、面白いじゃん、これ!700ページ以上もあったのですが、読み進むにつれどんどん読むスピードが速まっていきます。だって続きが気になるんですもの。数ページで次々かわる章の、引きが強い最後の一文。そして、最後の章の最後の一文は、続きを読むことを確定させてしまいました。読めども読めども読みたい本が減りません。嬉しい。★★★★★
読了日:03月09日 著者:M・W・クレイヴン

ひよどりごえ (源平絵巻物語 第5巻)ひよどりごえ (源平絵巻物語 第5巻)感想
ひよどりごえのエピソードは知っていたが、その前後も書いてくれているので、理解が深まった。鹿しか通らぬひよどりごえを馬で駆け降りる源氏の武士たち。その中にひとり、馬を背負って坂を下る男。「俺はこの馬にどれほど助けられてきたかしれぬ。今度はわしが、こいつを助けてやる番じゃ」と言った畠山重忠。『鎌倉殿』を思い出して、つい笑顔に。平敦盛の散りざま。知盛と愛馬の絆。今回は平氏の方にドラマがあった。★★★★☆

読了日:03月11日 著者:今西 祐行

詩集『青猫』より (立東舎 乙女の本棚)詩集『青猫』より (立東舎 乙女の本棚)感想
「乙女の本棚」という、乙女受けするイラスト付きの詩集や短編などを収録しているシリーズ。正直、詩にイラストがつくと、詩に対するセンスの持ち合わせのない私は、イラストにずいぶん引っ張られてしまうので、イラストは不要だ。しかもこのイラスト、詩を表現しているというよりも、詩と並行してそこにあるという感じ。ピンとこない。なので、好きなのはイラストが庭だけの「夢に見る空家の庭の秘密」です。肝心の「詩」は、私たち世代の中高生女子が好きそうなやつだなーという感想。なんとなく、頭で作りあげた絶望に陶酔しているようで。★★★★☆
読了日:03月12日 著者:萩原 朔太郎,しきみ

今江祥智の本〈第6巻〉兄貴 (1981年)今江祥智の本〈第6巻〉兄貴 (1981年)感想
『ぼんぼん』の続編。『ぼんぼん』は戦争がはじまりそうな時期から大阪大空襲の辺りまでだったのに対し、今作は大阪大空襲を経て一家が母の田舎に疎開したところから昭和22年の8月まで。タイトルの『兄貴』は、大人びてきた洋次郎を見て、「いつまでもにいちゃんと呼んでいてはいけないな」と洋が思っていたころ、洋次郎が母方の伯父のことを「伯父貴」と呼んでいたのを見てこれからは「兄貴」と呼ぼうと思うところから。『ぼんぼん』と比べれば感動は薄い。佐脇さんのような強烈なキャラクターがいないことも、その一因なのかもしれない。★★★★☆
読了日:03月17日 著者:今江 祥智

阿弥陀堂だより (文春文庫 な 26-7)阿弥陀堂だより (文春文庫 な 26-7)感想
売れない作家の孝夫は、心の病に罹った妻の美智子と故郷の信州に戻った。山の上にある小さな阿弥陀堂に住み、村人の霊を祀るおうめ婆さん。役場の若い事務員、小百合がおうめ婆さんに取材しまとめた連載が、村の広報誌の中のコラム『阿弥陀堂だより』だ。病気の再発で再び死と向かい合う小百合。小百合の治療をすることで、医師としての自信と責任を取り戻す美智子。抱えているものはそれぞれに重いのだが、おうめ婆さんの飄々とした語り口がそれを軽やかにしてくれる。こういう年の取り方をしたいと思う。もう少し物欲を捨てて。★★★★☆
読了日:03月18日 著者:南木 佳士

medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)medium 霊媒探偵城塚翡翠 (講談社文庫)感想
ドラマ化もされていたみたいなので、人気があることは知っていました。確かに特殊な設定なのに、混乱することなく読み進められるくらい文章が読みやすい。でも、素直に感動はできませんでした。といううのも、ちょいちょい不自然さを感じてしまったから。人の感情に鈍感なの?と、ちょっとイラっとしながら読んでいたのですが。最後の事件でもやもやは解消されました。目からうろこの大どんでん返しではありませんでした。でも本人が思う真実と、他者から見える真実の乖離が無情。面白かったです。★★★★☆
読了日:03月19日 著者:相沢 沙呼

NO.6♯1 (講談社文庫)NO.6♯1 (講談社文庫)感想
小説世界と登場人物の紹介の巻という感じで、まだほんの序章。主人公の紫苑は、12歳の誕生日の夜、怪我を負った少年を助ける。応急手当をし、食事を与えただけであったが、「ネズミ」と名乗る少年は凶悪犯罪者の烙印を押され、護送中に脱走したのだった。4年後、公園管理の仕事をしながら進学のためのお金を貯めている紫苑のまわりで、不審な死体が頻発する。当局はそれをすべて紫苑の仕業であるとでっち上げ、紫苑を逮捕しようとするのだが、間一髪で「ネズミ」が紫苑を連れ去り逃亡することになる。というところまで。★★★★☆
読了日:03月20日 著者:あさの あつこ

悲しみよ こんにちは (新潮文庫)悲しみよ こんにちは (新潮文庫)感想
17歳のセシルは、父と父の彼女と3人で海辺の別荘で夏を過ごす。母の昔からの友人であるアンヌが合流したことで、彼らの中のバランスが崩れる。セシルと父のレイモンは刹那的で退廃的で享楽的。ところがアンヌは知的で現実的で、冷笑的。レイモンとアンヌが婚約したことから、セシルは二人の間を裂こうと画策する。その結果…。あまりに有名な作品だから、今さらネタバレというのもないだろうけれど。今読んだら、なぜ当時あんなに熱狂的にみんながサガンを読んでいたのか。時代の流れだったのだろうか。やっぱりフランス文学はわからないなあ。★★★★☆
読了日:03月21日 著者:フランソワーズ サガン

創竜伝3逆襲の四兄弟創竜伝3逆襲の四兄弟感想
四男、次男と続いて三男も竜化。世界を裏で操っていると言われるアメリカの巨大企業の共同体・フォーシスターズが一応の敵なのだが、3巻にして力不足が否めない。一応マリガン国際財団が先頭に立っているけれど、竜堂家4兄弟の誰一人として傷つけることはできていないのだから、この件に関しては無能であるのは自明。なのにテレビアニメのように、同じ人物が敵として立ちはだかるあり得なさ。早く次のステージに進んで欲しいのだが。始が竜化するまではこのパターンで進むんだったっけ?★★★★☆
読了日:03月22日 著者:田中芳樹

屋島のたたかい (源平絵巻物語 第6巻)屋島のたたかい (源平絵巻物語 第6巻)感想
屋島のたたかいは有名なので、もちろん聞いたことはある。那須与一が矢で平家の扇を射抜いたことも。だけど、義経がどのようなルートを通って四国に入り、どのような軍を経て屋島まで来たのか。そもそも屋島ってどこなのか。そういうぼんやりとしか知らなかったことを、はっきり知ることができてよかった。とにかく平氏は数を頼んでいたのか、思考停止なのかわからないけど、「来るわけない」と高をくくっていた時に、義経にやられている。そこの総括をできる大将が平氏にいれば、歴史は違ったのかもしれない。★★★★☆
読了日:03月23日 著者:今西 祐行

これから泳ぎにいきませんか (河出文庫 ほ 6-6)これから泳ぎにいきませんか (河出文庫 ほ 6-6)感想
穂村弘の書評集は、他の書評集より読むのに時間がかかります。作品を論理的に読み解き、分析し、解説してくれるような書評は、私には読みやすいのですが、穂村弘は感覚の人なのです。まず感性が受け止めたものを、感覚を通して言語化して論理化する。その感性の部分が私には圧倒的に足りていないと、いつも痛感させられます。彼によると、詩(俳句や短歌も)の特徴として、再読性があることが挙げられています。ということは、再読を是とする絵本から感性を鍛え直すとよいのではないか、と言う気になってきました。よし、頑張ろう。★★★★☆
読了日:03月24日 著者:穂村 弘

NO.6 〔ナンバーシックス〕 ♯2 (講談社文庫)NO.6 〔ナンバーシックス〕 ♯2 (講談社文庫)感想
エリート時代の紫苑の友人・沙布(さふ)が治安局に強制連行される。特権階級の座を捨てて、紫苑のもとへ行こうとした矢先に。これはもしかして、エリート教育という名目で洗脳するとともに、洗脳しきれない有能な人材を監視しているということなのかもしれない。だから紫苑がネズミを助けたこともすぐに当局にばれたし、沙布の思惑もバレたのでは。紫苑は西ブロックでの世界のありようを学び、居場所を作りつつあるけれど、謎はまだまだてんこ盛り。まだ、物語が動き出したとは言えない。★★★★☆
読了日:03月25日 著者:あさの あつこ

サヨナライツカ (幻冬舎文庫)サヨナライツカ (幻冬舎文庫)感想
会社の創業者の未亡人からの紹介で光子と結婚することを日本人仲間に報告した夜、豊は謎の美女・沓子と出会う。強引な沓子からのアプローチに負け、豊は沓子と結婚までの数ヵ月、激しく愛し合うのだった。自分から沓子に別れを切り出すことができず、だからといって光子と別れることもできないので、嘘に嘘を重ねて両方にいい顔をする豊は、私からしたらどこをどう切り取っても好青年ではない。そもそも「好青年」とか「良妻賢母」とか「謎の美女」とか、すべて地の文または台詞によって示されているのが、小説として薄っぺらいと思った。★★★☆☆
読了日:03月28日 著者:辻 仁成


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