夏に超繁忙期に怪我をして一ヶ月入院した同僚が、今になって「ご迷惑をおかけしました会」を開いてくれました。
こういうことはお互いさま、と普通はなるのですが、なにせ彼の場合は2年に一度このような事態を引き起こす。
しかも絶対繁忙期。
 
前回は、冷凍とはいえ蟹でしたが、今回はフグ。
寒波地の刺身の厚さ程度の幅で、写真のとおり薄いので、正直言って味はよくわかりませんでしたが、まあいろいろ気を使ってくれたことはわかります。
他にも肉とか寿司とかいろいろ出ましたし。

 
だけど、年をとればそれだけ怪我の治りは悪くなるし、怪我をしたあとが必ずしも全快するわけでもなくなります。
55歳を過ぎたのだから、もう少し自分の身体を大事にしてくださいと言っておきました。
そして口には出しませんが、周りに迷惑をかけないようにと。
 
若い看護師さんに下の世話をしてもらって喜んでいる場合じゃないよ、全くさあ!
 
 
 
 
本日の読書:ぼんぼん 今江祥智

 

カバー裏より

『洋が小学3年生の年、突然おとうちゃんがたおれた。そして、戦争がはじまった。軍国主義の波にもまれながらも、ほのかな恋心にめざめる少年の成長を、元やくざの佐脇さんが見守る。大阪弁にのせて、人間の真実にせまる作者の代表作。』

大阪の、結構いいとこのぼんぼんであるひろしが過ごした小学校3年生から6年生の日々。
戦争と重なって、決して幸せばかりではなかったけれども、その中でも喜びや楽しみを忘れず、懸命に暮らす姿が生き生きと描かれ、児童文学ながらぐっと引き込まれて読みました。

ある日突然お父さんが亡くなります。
なかなか立ち直れない娘を気遣い、母方のおばあちゃんが同居してくれることになりました。
このおばあちゃんがしっかり者で、先見の明がある。
本や新聞や耳学問で先の見通しを持っているだけではなく、こまめに身体を動かして家族を支えますが、やはり突然亡くなってしまいます。
普通に暮らしていると見逃してしまうような些細な事柄から、この先の日本が戦争に向かっていくのではないかと考えたお父さんやおばあちゃんは、モノ不足になっても困らないように、数年分の必需品を買い置きしていたのには驚きました。

長男は家を出て軍隊に所属していたので、お母さんと中学生の次男、そして小学生の洋だけでは心もとないので、男手としてやってきたのが佐脇さん。
やくざをやめる時に洋のお父さんに恩を受けたということで、60代の佐脇さん、力仕事からご近所づきあい、時に台所仕事もやれば、ぼんぼんたちの成長を促すあれやこれやの目配りと、とにかくスーパーおじいちゃんなのです。

そして、この作品の見どころは、洋の成長だけではなく、戦中の佐脇さんの働きようにあると言えます。
元やくざということもあって、世間の噂に振り回されることなく世の中を見る佐脇さんは、軍や特高の裏をかくようにして洋たちにいろんな経験をさせてくれます。
肝の座り具合が半端ない。

一度特高につかまって、1年半ほど佐脇さんは姿を消しますが、洋たちが一番つらかった時に戻ってきてくれます。
なのに、玉音放送の直後、世の中が見えすぎていた佐脇さんは、命を喪ってしまいます。

この4年ほどの間に、何人もの命が洋のまわりから失われますが、それでもプラネタリウムや宝塚を観たりオーケストラの音楽を聴いたり、魚釣りに川遊び、京都の山に登ったり、和歌山まで出かけたり、洋の日常は彩りに溢れています。
それは、そういう生活を守ろうとする大人がいたからであり、声高に反戦を叫ばない多くの人が生きていた、ということでもあるのだと思いました。

大阪空襲で防空壕への避難命令が出たとき、洋とお兄ちゃんは、隣近所の数少ない男手として防空壕の外でいざという時に備えます。
全てを失った時も、お母さんにショックを与えないように、毅然とふるまいます。
佐脇さんの死をどういうふうに受け止めたのかは書かれていませんが、お母さんを支えながら戦後の時代を生きていく姿が最後に少しだけ書かれ、大きな成長をそこに見ることができました。