1月は思ったほど読めませんでした。
まあ、仕事が忙しくて昼休みがつぶれる、なんてこともありましたが、毎晩早く寝て、朝4時からJRの運行状況のチェックに時間を撮られた一週間も大きな敗因と言えるでしょう。
だって毎日眠くて読書どころじゃなかったもの。

でも、それ以外の理由として、今月買った3冊のマンガが良すぎた、という事情もあります。
どれも、読み終わった直後からなんども読み返すくらい面白くてお気に入り。

とまあ、かようなわけで、何年振りかの20冊未満。
今月は短いけど、マンガを買う予定はないから、大丈夫かな?

それでも★5つは3作品。

『クララとお日さま』
ディストピアと言えばディストピアだけど、こんなに哀切で温かいディストピア小説があるだろうか。
クララがかわいそうという感想も読んだけど、わたしはクララは幸せだったと思う。
だからこその哀切であり、味わいなんだと。

『猫の客』
仔猫と語り手夫婦との交流にほのぼのと癒された後の、断ち切られた思い。
人と猫がわかり合えるのに、人と人はどうしてこう、捻じれてしまうのだろう。

『さらば、愛しき鉤爪』
これ、本当にお薦めのハードボイルドなんだけど、お薦めする相手が身近にいないのが残念無念でならない。
だけど、昨年9月に★5つだった『ドラゴンがいっぱい』といい、もしかすると私には人間のような振る舞いをする爬虫類に対する偏愛があるのやもしれぬ。

逆に★3つは『東京貧困女子。』
テーマはいいと思うんだけど、どうも紹介されているケースが極端なのが気になって。
なんか、あんたもこうなるぞと脅されているような感じ。
いや、誰にでも起こりうるというのはわかる。
だからこそ、極端なケースばかりが紹介されていることに、裏があるのかと思ったりして、余計な深読みを強いられた気がしたのだった。

1月の読書メーター
読んだ本の数:22
読んだページ数:7037
ナイス数:828


卒業生には向かない真実 (創元推理文庫)卒業生には向かない真実 (創元推理文庫)感想
シリーズの最初から主人公のピップは、過剰な正義感を持ち、大人の忠告を聞かずに突っ走っていくところがあり、そこが気になってはいました。今回最初からピップの情緒は不安定です。まずその辺りから、違和感。本人は必至で隠しているにしても、どうして誰も気づかないのか。そして、悪意のあるストーカー(?)の存在。なぜ一人で対応しようとするの?そして最後の展開。ハッピーエンドのようになっていますが、ピップとラヴィは今後の人生で自分たちの行ったことの重さに苦しむことはないのでしょうか。行き過ぎた正義感のもたらす犯罪。★★★★☆
読了日:01月02日 著者:ホリー・ジャクソン
哀惜 (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMク 25-1)
哀惜 (ハヤカワ・ミステリ文庫 HMク 25-1)感想
捜査責任者のマシューの生い立ちや、部下たちの生い立ちも交えて描かれるこの作品は、ともすればまだるっこしく感じられるかもしれない。しかし、親や夫の言葉や肉体への暴力にされされてきた捜査員たちは、被害者がボランティアとして働いていた複合施設で接していた、学習障害のある人々(社会的弱者)が被る偏見や、彼らの持つ優しさ・素直さなどから、徐々に事件の本質に迫っていく。多分これ、シリーズ物になると思うんだよなあ。マシューの部下のジェンやロスの成長や家族問題、今回出て来たルーシーなど、もっと読みたいと思った。★★★★☆
読了日:01月03日 著者:アン・クリーヴス

むぎばたけ (日本傑作絵本シリーズ)むぎばたけ (日本傑作絵本シリーズ)感想
あたたかい、かぐわしい夏のゆうべ。ハリネズミが、途中で出会ったのうさぎのジャックじいさんやカワネズミと一緒に、ムギがのびるところを見に行く、というだけの話です。目の前一杯にひろがるむぎばたけ。おびただしいムギの穂の、さやさやという美しい音楽。これだけを堪能して、3匹はまたそれぞれの家に帰っていきます。これってかなり大人の時間のような気がします。カワネズミだけは、自分の小川の土手に腰掛け、水の音に耳を傾けながら、ムギのささやきを思い出します。なので、この3匹の中では、カワネズミが好きかな。★★★★☆
読了日:01月06日 著者:アリスン・アトリー

100万回の言い訳 (新潮文庫)100万回の言い訳 (新潮文庫)感想
夫婦の話でありながら、恋愛小説でもある作品。主人公の結子は士郎と結婚して7年。仲のいい夫婦なんだと思うのだけど、やむを得ない事情で別居した途端にそれぞれが別の異性と深い関係になるっていうのが、安直だなあ、と。それなら世の単身赴任家庭は、みんなそうだというわけ?私が知らないだけ?…かもな。どんな選択をしたとしても、選ばなかった方の人生に多少の未練はつきものだ。それに対して100万回もの言い訳をしながら、自分を納得させることで人は前に進んでいくのだ。自由という拘束の中で。★★★★☆
読了日:01月07日 著者:唯川 恵

東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか東京貧困女子。: 彼女たちはなぜ躓いたのか感想
ごく普通の生活をしていた人たちが、離婚で、家族の介護で、過重労働の結果体を壊して、簡単に貧困に転落していく。しかし、どうにもこの著者にはいろいろ偏見があるように感じられる。高齢者=金持ち。金持ちで先の短い高齢者のために、貧乏で将来があるはずの若者が食いつぶされているという構図が多すぎる。そして介護職に対する偏見がすごい。貧困へのセーフティーガードの第一は、人とのつながり。孤立したら、情報は入ってこないし、手助けも見込めない。ひとりで悩んだあげくに負のスパイラルというケースが多いように思いました。★★★☆☆
読了日:01月08日 著者:中村 淳彦

誰よりもつよく抱きしめて (カッパノベルス)誰よりもつよく抱きしめて (カッパノベルス)感想
結婚8年目の月菜と良城。しかし深刻な不潔潔癖症と不完全潔癖症を患う良城のため、ふたりは7年間セックスレスだった。月菜は夫の病気が治り、直接触れ合えるようになる日を待っているが、良城はそんな彼女に負い目を感じている。互いを思いやるがゆえのすれ違い。二人はいったいどうなるの?っていうのが読みどころだと思うので、ネタバレせずに内容に振れなければなりませんが、それはとても難しい。ただ、私は優柔不断な月菜と良城の前に現れた、克麻という青年が「都合のいい男」に見えてしょうがなかった。★★★★☆
読了日:01月09日 著者:新堂 冬樹

家が好きな人 (リュエルコミックス)家が好きな人 (リュエルコミックス)感想
この本を読んでいる間、私の周りの時間はゆっくりと流れていた。好きなものがあって、好きに使える時間があって、何か少し美味しいものがあったら、もうそれは極上の人と木ではないですか。ずっと家にいて退屈しない?いえ、全然。今度娘の家に行くとき、やっぱり自分の家大好きな娘にこの本を持って行こうと思う。
読了日:01月09日 著者:井田 千秋

四つの嘘 (幻冬舎文庫)四つの嘘 (幻冬舎文庫)感想
美人で真面目でリーダーシップのある満希子。自分に自信がないため、満希子の機嫌を損ねないように気を遣う美波。協調性がなく、生きることに意味を見いだせない刹那的な詩文。有名私大の医学部に入るために、学校生活を犠牲にして勉強に励むネリ。彼女たち4人の高校生活と、41歳になった姿を描く。4人のうちの誰にも共感はできない。なぜ、共感できないのかというと、彼女たちは誰も現実を生きていないからだと思う。思いがけない事故で、美波が亡くなったことで、澱んでいた彼女たちの人生が動き出す。★★★★☆
読了日:01月14日 著者:大石 静

女系家族〈上〉 (新潮文庫)女系家族〈上〉 (新潮文庫)感想
大阪の老舗木綿問屋の、四代目当主が亡くなったことで繰り広げられる相続争いの話。代々女系の家系で、総領娘が養子婿をとって事業を継続していたので、当主と言えども家庭内では影の薄い存在であった。面白そうなプロットではある。でも、読んでいてもちっとも楽しくなかったのは、出てくる人出てくる人がみんな欲の塊だったから。山崎豊子の作品なのだから、単純なハッピーエンドや勧善懲悪ってことはないだろうと思うけれど、誰が得をしても嫌な気持ちになるだろうし、誰が損をしても自業自得だと思うだろうから、なかなか興が乗らない。★★★★☆
読了日:01月15日 著者:山崎 豊子

黄泉のツガイ(6) (ガンガンコミックス)黄泉のツガイ(6) (ガンガンコミックス)感想
敵かと思ったら味方だったり、味方だと思って信じていたら敵だったり。前巻と同じ一日の続きで時間はそれほど流れていないけど、人間関係は大きく変わった。総力戦に近いくらいの戦いと並行して描かれる宇宙人ツガイ(と、その主)と座敷童にほっこりして癒される。6巻を読んでからまた最初から再読すると、今まで気づかなかった伏線に気づくことができて、新たな発見に再読が止まらない。
読了日:01月15日 著者:荒川弘

クララとお日さまクララとお日さま感想
クララは人工知能を搭載したロボットで、AF(人口親友)という用途を持っている。学習機能があり、周囲の様子からいろいろなことを学んでいく。子どもが知識を吸収するように。そして、ジョジーと出会う。最初から、ジョジーの命は長くないように感じられる。クララは太陽からの光がジョジーに特別の力を与えると信じている。それはもう、宗教のように。カズオ・イシグロの話は切なくて苦い。今作もそうだった。でも、それは想像していた切なさ、苦さではなかった。見返りを求めない愛。そして成長した子どもは、それを忘れて前へ進んでいく。★★★★★
読了日:01月16日 著者:カズオ・イシグロ

猫の客 (河出文庫 ひ 7-1)猫の客 (河出文庫 ひ 7-1)感想
動物好きの妻のもとに一日なんども顔を見せに来る仔猫は、隣家の飼猫だった。大家の事情で引越しを迫られる語り手夫婦だが、猫と別れがたく、近所で家を探すことにする。そんな時の猫との突然の別れ。しかしこの作品はそんなストーリーを追うものではない。繊細な描写の妙。光景が、心情が、所作が、目に浮かぶように立ち上ってくるうえに、音読するとそのリズムの心地よさを味わうことができる。これはかなりの事実を含んだ小説なのであろうが、それにしても、猫との別れの後の、もうひとつの拒絶。これが哀しい。なんでそんなことになるかなあ。★★★★★
読了日:01月17日 著者:平出 隆

魂手形 三島屋変調百物語七之続魂手形 三島屋変調百物語七之続感想
聞き手が富次郎になってから、あまりおどろおどろしい感じの話がなくて読みやすいのだけど、少し物足りない。なんて思っていたら、最後の最後に不穏な予言(?)おちか、富次郎、どちらにも幸せな生涯を送ってほしいのだけど…。今回のテーマは家族愛でしょうか。とりあえず最初の『火焔太鼓』に泣かされる。そして、今収録作を読んで感じたのは、人間と妖って結構距離の近さ。人は簡単に妖の方へ踏み出してしまうのかもしれない。喰らって、念じて、そして呑み込まれて。徐々に百物語ではなく、それに関わっている人たちの物語になってきたようだ。★★★★☆
読了日:01月18日 著者:宮部 みゆき

流浪の月 (創元文芸文庫 LA な 1-1)流浪の月 (創元文芸文庫 LA な 1-1)感想
誘拐された少女・家内更紗の視点で語られる家族の姿は、まるで江國香織の小説のようだと思った。かろうじて常識的に世の中とつながっていた父が亡くなってから、更紗の生活は一変する。文(ふみ)は、最終的に自分を破滅させることになるだろうとわかって、更紗を受け入れた。破滅することで、真実が明らかになることで、自由になれるのではと思った。善意の人たちがするべきことは、素早く正解を教えてあげることではなく、彼女の言葉に耳を傾けることだ。正解や正論では救われない人がいることを、善意の人々は忘れてはいけない。★★★★☆
読了日:01月19日 著者:凪良 ゆう

牛若丸 (源平絵巻物語 第1巻)牛若丸 (源平絵巻物語 第1巻)感想
この絵本はいい。絵本だけど文章が簡単すぎず、難しすぎない。絵も引きで描かれているから、動きがわかる。で、平家に追われる生活、母と別れて寺で暮らすさびしさなどが丁寧に描かれた後に、自分の父親の最期を知り、打倒平家に燃えるようになる姿が描かれる。カラス天狗相手に剣の稽古をしているのが和尚にばれ、仏門に入るよう言われたとき、〈金売りの吉次〉の手引きで奥州の藤原氏のもとに行くことにするが、その時、吉次を狙った盗賊を退治したという話は知らなかった。知っていることも知らないことも、赤羽末吉の丁寧な絵でよくわかる。★★★★☆
読了日:01月20日 著者:今西 祐行

女系家族〈下〉 (新潮文庫)女系家族〈下〉 (新潮文庫)感想
女系家族であろうと、男系家族であろうと、それが問題なのではない。お家のために個々が消費されていくシステムが醜悪なのだ。さて、嘉蔵はどういうつもりでかような遺言を残したのか。女系家族に対する恨みつらみは当然あるとしても、自分に対して酷薄だった娘たちのことをも憎んでいたのかしら。それとも、自分の力で生きていくよう促した父の愛情なのかしら。生きているうちに腹を割って話せなかった親子関係が、なんにしても残念でならない。★★★★☆
読了日:01月21日 著者:山崎 豊子

さらば、愛しき鉤爪 (ヴィレッジブックス)さらば、愛しき鉤爪 (ヴィレッジブックス)感想
忙しくて、毎日少しずつしか読めなかったのが残念過ぎる。失踪感あふれるハードボイルド。ハードボイルド?うん、多分ハードボイルド。主人公は人間ではなく、恐竜なの。というか、結構な数の恐竜が人間にまぎれて暮らしているという世界。でまあ、普通のハードボイルドのように、単身調査に乗りだし、不可解な点を追求しようとするたびに、情報を持つ人たち(恐竜)が殺されていく。いやもう、残り100ページくらいからはピンチに次ぐピンチ。どんでん返しに次ぐどんでん返し。なのに最後は切ない余韻まであってさ。いやー、面白かったわ。★★★★★
読了日:01月26日 著者:エリック ガルシア

きれぎれ (文春文庫)きれぎれ (文春文庫)感想
主人公(語り手)の脳内だだ洩れの一人称小説は好きだ。好きなんだが、好きなはずなんだが。これには苦戦しました。SFもファンタジーも好きだけど、マジックリアリズムが苦手。輪郭のくっきりはっきりした世界の中で突拍子もないことが起こるのは好きだけど、世界の輪郭ごととろとろ掴みどころがなく嘘か真か妄想かわからないまま話が進むのが苦手。文章のリズムが良いところは好きだ。けれどそれは、あくまでも黙読している時の話で、音読しようものならつっかえつっかえ、リズムぶち壊しながらしか読めない。読解力なさ過ぎてすまぬ。★★★★☆
読了日:01月28日 著者:町田 康

40 翼ふたたび (講談社文庫)40 翼ふたたび (講談社文庫)感想
主人公・吉松喜一は40歳で、大手広告代理店を辞め、先輩が経営する広告制作会社を辞め、フリーのプロデューサーとしてなんとか生活をしている。IWGPのマコトのようにフットワークが軽いわけでも、仲間に恵まれているわけでも、巨悪に立ち向かうわけでもない。人生のいいほうの半分が終わってしまったという屈託。それでも生きていかなくてはならない。読んでいて「そんなうまくいくわけないよ」って思うような展開もあるけれど、作者がしっかりと日本の現実を捕らえているから「うまくいったっていいかもな、小説だもの」っていう気にもなる。★★★★☆
読了日:01月29日 著者:石田 衣良

バーナード嬢曰く。 (7) (REXコミックス)バーナード嬢曰く。 (7) (REXコミックス)感想
手に取って裏表紙を見たとき、神林の背後にびっしり書かれた文字に戦く。抑えきれない語りたい欲。うん、わかる。私の周りにはド嬢も遠藤君も長谷川さんもいないので、読メに記録する。『ご冗談でしょう、ファインマンさん』、わたしは普通に面白く読んだけど、確かにユリ・ゲラー何がしたかったのだろう。そして、やっぱり『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は読んだ方がいいのですね。
読了日:01月29日 著者:施川 ユウキ

三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)三島由紀夫レター教室 (ちくま文庫)感想
三島由紀夫がこんな小説を書いているとは知りませんでした。40代の男女2人、20代の男女3人を登場人物として、喜怒哀楽を交えたいろいろな人間関係が手紙だけで語られます。まあ、実際こんなに筆まめな人たちって、今はいないだろうなあと思ったのですが、逆ですね。今ならメール(またはLINE)でのやり取りで、文章の質は違えども、気を使わなければならないところは一緒でしょう。手紙を書くとき、人はなぜか自意識過剰になるようで、それを抑えることは大切なことのようです。勉強になったし、面白かった。★★★★☆
読了日:01月30日 著者:三島 由紀夫

ライオンのおやつ (ポプラ文庫 お 5-5)ライオンのおやつ (ポプラ文庫 お 5-5)感想
瀬戸内にあるホスピスで、まだ若い主人公が残りわずかな日々を穏やかに過ごし、許しと感動を与える話。事前に聞きかじった情報で想像したとおりの作品でした。それ以上でもそれ以下でもなし。思わず涙があふれてくるところもあったけれど、やっぱり私には納得できない。ここまで手厚いホスピスを、いくら金持ちとはいえたった一人の出資とボランティアで賄うことはほぼ不可能でしょう。こういう場所があったらいいね、という程度の、経済観念ががばがばな作品からは、上っ面の感動しか覚えない。上手な人だとは思いますが。★★★★☆
読了日:01月31日 著者:小川 糸


読書メーター