東西南北に黒雲が迫ってくるなか、最後に残った青空。
西からは夕日もやって来る。
多分10分後には、もう青空ないな。

 
 
 
 
本日の読書:江戸川乱歩傑作選 江戸川乱歩

 

カバー裏より

『日本における本格探偵小説を擁立したばかりではなく、恐怖小説とでも呼ぶべき芸術小説をも創り出した乱歩の初期を代表する傑作9編を収める。特異な暗号コードによる巧妙なトリックを用いた処女作『二銭銅貨』。苦痛と快楽と惨劇を描いて著者の怪奇趣味の極限を代表する『芋虫』、他に『二廢人』『D坂の殺人事件』『心理試験』『赤い部屋』『屋根裏の散歩者』『人間椅子』『鏡地獄』。』

目次
・二銭銅貨
・二廢人
・D坂の殺人事件
・心理試験
・赤い部屋
・屋根裏の散歩者
・人間椅子
・鏡地獄
・芋虫

小学生の時、学校の図書室にあった「少年探偵団」シリーズは全部読みました。
だからPTA文庫にでもあったのだと思うのですが、文庫の江戸川乱歩を読んで、激しいショックを受けました。
怖い。
気持ち悪い。
トラウマになって、その後江戸川乱歩はほとんど読まなかったと思います。
とは言っても、有名どころは結局読んだんですけどね。

今回この本を読んで、なぜあれほどまで怖かったのか、その理由が分かりました。
光景が目に浮かぶのですよ。
屋根裏から毒薬を垂らすところも、椅子の中に忍んだ人の感触も、闇の中に浮かび上がる芋虫のようなあれも…。

ただ、さすがに私も大人になりましたので、「そうはならんだろう」という部分も見えてきました。
かなりの幸運に恵まれないと成功しないであろう犯罪に成功しながら、ちょっとした齟齬から犯罪が明らかにされるという構造。
何よりも、明智小五郎と出くわしてしまうことが、犯罪者にとっても最大の不運なわけです。

やっぱり乱歩は変態だなあと思いつつ、昔ほど怖くなく、じっくりと楽しむことができました。
特に面白かったのは『心理試験』。
心理試験の裏をかこうと犯人は綿密に想定問を作り、念入りに予習をして試験に挑みます。
メンタルの弱い容疑者は、犯人でもないのにびくびくと犯人らしい結果を出すのですが、明智小五郎がほんの小さな瑕疵をつくと…。

よし、これで今後江戸川乱歩も大丈夫だ。
苦手のままにしないでよかった。