お弁当を買うとソースなどがついてくることがあります。

お寿司の醤油とか、インスタント麺のスープとか。

 

「この辺のどこからでも切れます」と書いた、マジックカットというのが最近の主流なのでしょうか。

あれが苦手です。

どこからも切れないのです。

 

一気に切ろうと思っても、切れない。

そっと少しずつ力を込めて切ろうと思っても、切れない。

 

端っこがいいのか、いや真ん中の方が切りやすいのか?

ローラー作戦を試してみても、切れない。

しょうがないので、ハサミで切る。

こんなことならマジックでないカットの方が良かったよ。

ちゃんと切込みがあったもの。

 

仮にもマジックカットを名乗るなら、ちゃんとマジックカットであれ、と思う。

頼むよ。

 

 

 

 

本日の読書:望月のあと 覚書源氏物語『若菜』 森谷明子

 

カバー裏より
『平安の都は盗賊や付け火が横行し、乱れはじめていた。紫式部は『源氏物語』の人気に困惑気味の日々。そんななか訪れたお屋敷で、栄華を極める藤原道長が、瑠璃という姫をひそかに住まわせているのを知る。式部はこの瑠璃姫と道長になぞらえて物語を書きはじめるが……。瑠璃姫は何者なのか?式部が道長に仕掛けた雅な意趣返しとは?平安王朝推理絵巻その三。』

序・破・急の間に玉鬘十帖と若菜 下が入って5章立て。
『序』を読んだとき、今までのシリーズを通して、一番好きだと思った。

というのも、どろどろした権力闘争や、それに否応なく巻き込まれて辛く淋しい思いをする女性や子どもが出てこないから。

道長が庇護している瑠璃姫は、ほとんど人前に出ることもなく、道長すら顔を見ることもできないくらい内気で体が弱い。
高貴な生まれの瑠璃姫を大切に大切に扱う道長だが、彼の言動にはちょいちょい女子どもや身分の低いものを見下したものが垣間見えるのがイラっとするのだけど、本人は気づいていない。

「女はのんきでいいよなー」なんて世の中の苦労をひとりで背負って立っている気でいる道長だけど、実は裏で女たちが連携していいように道長を翻弄している。
なんだかちょっと可愛らしくも思えてくるほど、きれいに振り回される道長。

有名な「この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば」という歌は、学校で習ったようなおごり高ぶったものではなく、すべての者たちに気を配り、よきに働いているわたくしは、誰から恨まれることもないので、神罰などは与えずにくださいませという、神仏へのアピールなのだ、という解釈。
なるほどありかもねーと思ったのだけど。

第二章からは徐々にきな臭くなっていく。
自分の孫を早く天皇にするためには、それ以外の皇族は邪魔でしょうがない。
あからさまに冷たく接し、何なら仕事をサボタージュすることによって、道長の意を汲んだものが狼藉をはたらく。

定子を愛し、彰子をも大切にした一条天皇の急死から状況は一変。
この帝位をめぐる攻防から派生する、京の都で頻発する付け火や強盗。
式部の実家や、友人たちの家にも波及していく世の乱れ。

今回初めて、きらびやかな貴族の社会だけではなく、底辺の、食べていくだけで精いっぱいの人たちの暮らしにも目を向けることになる。
そして瑠璃姫だけではなく、和泉式部や阿手木など、式部の周辺の人たちも都から離れ、平安という時代をより広く知ることができるようになっている。

それにしても彰子。
26歳で皇太后だもの。
でもって、それに見合った貫禄もあり。
それに引き換え、儚く亡くなった定子や彼女の産んだ子供たちの幸の薄さよ。

荻原規子の解説がとてもいい。
『源氏物語』だけではなく、『枕草子』も読みこんだうえでの解説は、とてもわかりやすくて面白かった。