子どもって、気に入ったら何度でも同じ本を読む。
家にある本を、うきうきと図書館から借りてくる。
それが、子どもと本の付き合い方なんだろうなあと思い微笑ましかったあの頃。
懐かしいなあ。
長男が2歳の頃好きだったのは『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』
結構文章が長くて、絵も白黒で地味で、まだ2歳には無理なんじゃないかと思ったその絵本を長男は保育園で気に入って、結局家用に一冊買ったのでした。
保育園の先生が「本人が読んでもらって楽しめればいいんですよ。対象年齢はあくまで目安ですから」と言ってくれたので。
「ちゅうちゅうしゅっしゅ ちゅうちゅうしゅっしゅ ちゅうちゅうしゅっしゅ ちゅうしゅっしゅ」
このリズムが楽しくて、何度も何度も読みました。
娘が好きだったのは、『ちいさなうさこちゃん』のシリーズ。
色のはっきりした絵本が好きな子でしたが、その中でもブルーナの絵本はダントツお気に入り。
表情のないうさこちゃんの絵の中に表情を見つけていたのでしょうか。
いつも持ち歩いて、まるで親友のようでした。
『しろくまちゃんのほっとけーき』も好きでしたね。
少しずつ焼けていくホットケーキの絵がほんとうに美味しそうで。
その割に娘、昔から甘いもの食べなかったけれども。
次男は『おつきさまこんばんは』
保育園から帰る時必ずお月さまを探して、「こんばんは」と深々と頭を下げて挨拶しておりました。
そして私にも強要しました。
「お月さまはどうしてこんなに僕のこと好きなんだろう。いつも後ろをつけてくるよ」と嬉しそうに話したものです。
林明子さんの絵本は私がまず大好きで、今でも時々手に取って眺めてしまいます。
もちろん記念切手もシートで買いました。
大好き。
本日の読書:小説の惑星 ノーザンブルーベリー篇
カバー裏より
『「小説の凄さ」を知りたいけれど、一体何から読めばいいのかわからない。物語は好きだけれども、小説以外に漫画や映画、アニメ、舞台、数多のエンタメ作品はある――。そんな人にこそ届けたい、作家・伊坂幸太郎が究極の短編だけを選んだ二冊のアンソロジー。小説って、超面白い。青色が目印のノーザンブルーベリー篇!編者による書き下ろしまえがき(シリーズ共通)&各作品へのあとがき付き。』
目次
・賭けの天才 眉村卓
・休憩時間 井伏鱒二
・コカコーラ・レッスン 谷川俊太郎
・工夫の減さん 町田康
・煙の殺意 泡坂妻夫
・『Plan Bより』「神々」「侵略」「美女」「仙女」 佐藤哲也
・杜子春 芥川龍之介
・ヘルメット・オブ。アイアン 一條次郎
・先導獣の話 古井由吉
・サボテンの花 宮部みゆき
オーシャンラズベリー篇に続いて。
既読作品は『杜子春』と『サボテンの花』のみ。
中学生の頃、星新一のショートショートにハマった。
出版された作品をあらかた読んだ後、別の作家のショートショートも読んでみたけれど、星新一の乾いた文体とかオチの切れ味が好きだったので、他の作家のものは面白く感じないことが多かった。
偏見だけれど、中学生のわたしにとって60~70年代の男性作家の文章って、黒縁眼鏡のおっさん臭が甚だしくて耐えられなかったのだ。
そんな中、眉村卓はジュブナイルも書いていたので、読みやすかった記憶あり。
でもこの作品も、やっぱりオチが長い。
2行よけいだと思う。
『休憩時間』これはショートショートではないけれど、最後の一文がいいなあと思う。
そして、伊坂幸太郎はこの作品に影響されて『砂漠』を書いたのではないかと思うのだけど、違うかなあ。
『砂漠』というタイトルでオアシスを書いたのが伊坂らしいと言えるけど。
『コカコーラ・レッスン』
詩人だから書ける散文ってのがあるのだな。
このような体験は凡人である私には縁のないことだけれど、文章を読むことで疑似的に体験できるのはありがたいことだ。
だって、本当に私には絶対に縁のない体験なのだもの。
『工夫の減さん』
こういうアンソロジーの場合、作品を読んだ後に作者を確認するのだけど、この作品の場合は読みながら「なんて町田康的なんだろう。これで町田康でなかったら、逆にびっくり」などと思っていた。
イントロを聴くだけでわかるアーティストがいるように、文章を読むだけでわかる作家もいるのである。
『煙の殺意』
さすがに上手い。
並行して書かれる二つの事件。
常識的に考えてこれはどこかで交わるはず、と思いながら読んでいたけど、そう来たか!とそれしかないよね!とが同じくらいの強さで納得させられた。
『Plan B』より~
各々400字くらいのベリーショートショートなんだけど、これめっちゃ面白い。
人類が圧倒的に強大な異星人に侵略される話のはずなんだけど、何でだか大笑い。
真面目にばかばかしくて、すごく好きだわ。
この作家は要チェックにしておこう。
『杜子春』
これは言わずもがなの理不尽小説だよね。
子どもの頃「いったいどうしろっていうんだ!」と憤った記憶はあるが、最後に家をもらったところは記憶から抜けていた。
良かったね、杜子春。
ところで、不慣れな動画撮影中に声をかけてくる夫に「杜子春並みに黙れ!」と心の中で詰っていることは内緒だ。
『ヘルメット・オブ・アイアン』
異次元の杜子春ワールド。
ニヤニヤ笑いながら読んでいたら、最後の武人の正体に顎が落ちそうなくらい驚く。
哀しいな、杜子春。
『先導獣の話』
通勤時にこんな難しいことを考えていたら、気が滅入るなあ。
私としてはニコルソン・ベイカーくらいの日常をぐだぐだ考えている方が気楽だ。
『サボテンの花』
本当に好きです。この作品。
「校長先生にならないでいてくれてどうもありがとう」
何度読んでもこの部分で泣ける。
自分では手に取ることがないだろう作家の本、全然知らなかった作品。
幼い頃からずいぶん本を読んできたはずなのに、まだまだ気づかぬ名作がたくさんある。
読書生活に終わりはない。
