思いがけない時期に1週間札幌に帰って来た長男ですが、夕方の飛行機で姫路へ戻っていきました。
千歳は雨も風もない時間でしたが、姫路はどうなのだろう。
まだ連絡がないので、家に着いてはいないのかな。
大学を卒業してから今まで、前の会社でも今の会社でも寮生活を送って来た長男ですが、いよいよ寮を出なければならなくなってきたようで、年末くらいには新しい家の目途をつけたいとのこと。
俄然燃え上がるマドリストの魂。
昨夜は夜っぴて長男の希望沿線の駅ごとの口コミを調べ、住みやすい駅にあたりをつけ、家賃と間取りをチェック。
駅の周囲には大型スーパーとドラッグストアとコンビニと病院がある。
少し歩けば地区センターもあるから、図書室もきっとあるはず。
…はっ、私の家じゃなかった…。
でも、楽しい。
今日はお昼に回転ずしを食べてお別れしようとトリトンへ行ったのですが、想像以上に混んでいたので千歳に直行。
千歳の北々亭で久しぶりの回転ずしを堪能しました。
が、昨日も海鮮だったんだよねー。
これで9連休のうち2日が終了。
早いなあ。
本日の読書:ベルリンは晴れているか 深緑野分
『総統の自死、戦勝国による侵略、敗戦。何もかもが傷ついた街で少女と泥棒は何を見るのか。1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅出つ。しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり―ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。最注目作家が放つ圧倒的スケールの歴史ミステリ。』
1945年7月。
敗戦国ドイツのベルリン郊外にあるポツダムで、イギリス、アメリカ、ソ連の首脳が集まり、ドイツの占領統治などについて話し合ったポツダム会議が行われるそばで、ひとりのドイツ人少女が恩人の死を伝えるために彼の甥を探していた。
1945年7月時点のベルリンの様子が、主人公のアウグステの目を通じて語られるが、そこは弱肉強食の世界。
少し前まで傲岸不遜にふるまっていたナチスたちが今度は迫害され、ソ連の占領地区、アメリカの占領地区に分断されたベルリンでは、日々減少していく配給品の不足を埋めるために、ある者は媚び、ある者は地下に潜り、ある者は怯えながらその日を暮らしていた。
ドイツ人の音楽家が、青酸入りのアメリカ製歯磨きを使い殺されたのはソ連の占領地区でのこと。
彼はアウグステの恩人だった。
アメリカ兵のための食堂で働いていたアウグステは歯磨きを入手することが可能だったことから、殺人の疑いをかけられたが、釈放の条件として彼の甥であるエーリヒを探すことになる。
同行するのは陽気な詐欺師。
概ね日本人ばかりのところへアメリカ人だけが占領軍として滞在した敗戦直後の日本と違い、ドイツ人、ユダヤ人、ドイツが占領した地区から連れてきた外国人、ナチが迫害していたツィゴイナーなどが、それぞれに傷を負いながら生き延びようと足掻く。
アウグステが知り合った人たちの中には、ユダヤ人にしか見えない生粋のアーリア人(そのためユダヤ人からもドイツ人からも忌み嫌われている)や、性的マイノリティのため親に捨てられ矯正施設に入れられたドイツ人、強姦されたショックで麻薬中毒になった少女など想像を絶する若者たちが多くいる。
そんな現在の間に挟み込まれる、生まれてから現在までのアウグスタについて三人称で語られる幕間がある。
第一次大戦の敗戦後、辛く苦しい生活に追われるドイツが、いつしかナチスに傾倒し、さらに息苦しい世の中になっていく様子がここで書かれている。
アウグスタの父はドイツ共産党の支持者だったが、ナチスが力をつけるにつれて、油断すれば命の危険にさらされるようになっていく。
ヒトラーとスターリンが手を組んだ時から、共産党を脱退しても、決してナチに忠誠を誓おうとしない彼は、秘密警察に目を付けられていたと思う。
そんな夫を支え、娘を大切に慈しんで育てた母は、夫が死刑になった後、自殺する。
それが娘を救う道であると信じ。
善きドイツ人であったアウグスタの一家がこのような目に遭ったのは、ポーランド難民の盲目の少女を匿ったことからだ。
優勢思想をその信条に盛り込んでいたナチスが、アウグスタの身近に住んでいたダウン症の女性を、ユダヤ人の幼馴染みをどうしたのかをアウグスタは知っている。
そして彼らを助けるための手を差し出せなかったことが、ずっと彼女の負い目となっていた。
だから、盲目の少女(イーダ)を救いたかった。
そのことが彼女の運命を大きく変えてしまうことを知らずに。
ノンフィクションのように容赦なく書かれる敗戦国ドイツ。
しかしこれ、ミステリだったんだな、と最後まで読んで思い出す。
400ページ辺りの衝撃の発言で、時々チクチクと感じていた違和感の正体を知ることになる。
あのときああしていれば…という岐路は、人生の中に何度もある。
しかしアウグスタの岐路は、なんという人生に導いていったのか。
最後に、幼いころ父に買ってもらった英語版のケストナーの本が彼女の光となる。
ケストナーってところがまた、良かったな。
そしてそれを守り抜いてくれたホルンと名前を騙らないお洒落な女性。
いざという時、わたしは彼らのように行動できるだろうか。
”自由だ。
もうどこにでも行ける。なんでも読める。どんな言語でも――
失ったと思っていた光が、ふいにアウグステの心に差した。そしてその光は、今のアウグステには白く、眩しすぎた。”
Amazomより
『総統の自死、戦勝国による侵略、敗戦。何もかもが傷ついた街で少女と泥棒は何を見るのか。1945年7月。ナチス・ドイツが戦争に敗れ米ソ英仏の4カ国統治下におかれたベルリン。ソ連と西側諸国が対立しつつある状況下で、ドイツ人少女アウグステの恩人にあたる男が、ソ連領域で米国製の歯磨き粉に含まれた毒により不審な死を遂げる。米国の兵員食堂で働くアウグステは疑いの目を向けられつつ、彼の甥に訃報を伝えるべく旅出つ。しかしなぜか陽気な泥棒を道連れにする羽目になり―ふたりはそれぞれの思惑を胸に、荒廃した街を歩きはじめる。最注目作家が放つ圧倒的スケールの歴史ミステリ。』
1945年7月。
敗戦国ドイツのベルリン郊外にあるポツダムで、イギリス、アメリカ、ソ連の首脳が集まり、ドイツの占領統治などについて話し合ったポツダム会議が行われるそばで、ひとりのドイツ人少女が恩人の死を伝えるために彼の甥を探していた。
1945年7月時点のベルリンの様子が、主人公のアウグステの目を通じて語られるが、そこは弱肉強食の世界。
少し前まで傲岸不遜にふるまっていたナチスたちが今度は迫害され、ソ連の占領地区、アメリカの占領地区に分断されたベルリンでは、日々減少していく配給品の不足を埋めるために、ある者は媚び、ある者は地下に潜り、ある者は怯えながらその日を暮らしていた。
ドイツ人の音楽家が、青酸入りのアメリカ製歯磨きを使い殺されたのはソ連の占領地区でのこと。
彼はアウグステの恩人だった。
アメリカ兵のための食堂で働いていたアウグステは歯磨きを入手することが可能だったことから、殺人の疑いをかけられたが、釈放の条件として彼の甥であるエーリヒを探すことになる。
同行するのは陽気な詐欺師。
概ね日本人ばかりのところへアメリカ人だけが占領軍として滞在した敗戦直後の日本と違い、ドイツ人、ユダヤ人、ドイツが占領した地区から連れてきた外国人、ナチが迫害していたツィゴイナーなどが、それぞれに傷を負いながら生き延びようと足掻く。
アウグステが知り合った人たちの中には、ユダヤ人にしか見えない生粋のアーリア人(そのためユダヤ人からもドイツ人からも忌み嫌われている)や、性的マイノリティのため親に捨てられ矯正施設に入れられたドイツ人、強姦されたショックで麻薬中毒になった少女など想像を絶する若者たちが多くいる。
そんな現在の間に挟み込まれる、生まれてから現在までのアウグスタについて三人称で語られる幕間がある。
第一次大戦の敗戦後、辛く苦しい生活に追われるドイツが、いつしかナチスに傾倒し、さらに息苦しい世の中になっていく様子がここで書かれている。
アウグスタの父はドイツ共産党の支持者だったが、ナチスが力をつけるにつれて、油断すれば命の危険にさらされるようになっていく。
ヒトラーとスターリンが手を組んだ時から、共産党を脱退しても、決してナチに忠誠を誓おうとしない彼は、秘密警察に目を付けられていたと思う。
そんな夫を支え、娘を大切に慈しんで育てた母は、夫が死刑になった後、自殺する。
それが娘を救う道であると信じ。
善きドイツ人であったアウグスタの一家がこのような目に遭ったのは、ポーランド難民の盲目の少女を匿ったことからだ。
優勢思想をその信条に盛り込んでいたナチスが、アウグスタの身近に住んでいたダウン症の女性を、ユダヤ人の幼馴染みをどうしたのかをアウグスタは知っている。
そして彼らを助けるための手を差し出せなかったことが、ずっと彼女の負い目となっていた。
だから、盲目の少女(イーダ)を救いたかった。
そのことが彼女の運命を大きく変えてしまうことを知らずに。
ノンフィクションのように容赦なく書かれる敗戦国ドイツ。
しかしこれ、ミステリだったんだな、と最後まで読んで思い出す。
400ページ辺りの衝撃の発言で、時々チクチクと感じていた違和感の正体を知ることになる。
あのときああしていれば…という岐路は、人生の中に何度もある。
しかしアウグスタの岐路は、なんという人生に導いていったのか。
最後に、幼いころ父に買ってもらった英語版のケストナーの本が彼女の光となる。
ケストナーってところがまた、良かったな。
そしてそれを守り抜いてくれたホルンと名前を騙らないお洒落な女性。
いざという時、わたしは彼らのように行動できるだろうか。
”自由だ。
もうどこにでも行ける。なんでも読める。どんな言語でも――
失ったと思っていた光が、ふいにアウグステの心に差した。そしてその光は、今のアウグステには白く、眩しすぎた。”

