家族の中で一人だけマイ傘派、です。
本当だったら気分に合わせて持ち歩けるように何本も持ちたいところですが、そういうわけにはいかないので、買う時にはものすごく悩んで歩き回って決めます。
「失くした~」と思って慌てて買ったら見つかったりして、実際には数本持っていますが。
さんざん悩んで買ったものなので、多少骨が曲がろうが、先っちょのプラスチック部分が割れようが捨てられません。
あとねえ、折畳み傘が意外と増殖する。
けど必要なときに見つからない。
なのに必要がなくなるとちゃんと見つかる。
これ、どうにかなりませんかねえ。
本日の読書:安吾史譚 坂口安吾
カバー裏より
『敗戦直後、名著「堕落論」「白痴」を発表し、新生日本文学の旗手として不滅の光芒を放ちながら、時代を駆け抜けた巨星・安吾は、日本史研究でも先駆的な業績を残している。『安吾新日本地理』『安吾新日本風土記』と並ぶ本書は、安吾の三大歴史傑作の一つ。古代から幕末まで、著者の最も愛した七名の英雄・異端児などを描きながら、画期的な史観を展開する、痛快大胆な歴史読物』
目次
・天草四郎
・道鏡童子
・柿本人麿
・直江山城守
・勝夢酔
・小西行長
・源頼朝
・付録 安吾下田外史
・著者ノート 講談先生
歴史エッセイのようなものかと思って読み始めたのですが、それよりはもっと史実寄り。
通説とは違う、安吾独自の歴史論というか、歴史物語。
人物の生き生きとした描写は、まるで現場で見ていたかのよう。
そのうえ文章のリズムが良い。
これは、講談を聴いているようではないか、と思ったら、本人もそうと意識して書いていたとのこと。
歴史の王道とは少し離れたところにいる人物にスポットを当てているのもまた、安吾らしいと言えるかも。
”その名演技の裏側に多くの黒幕たちの甚だ組織的な準備や宣伝が行き届いており、その後における仕上げとしての名演技であることを考えると、名演技者として抜群の才能はあったかもしれぬが、要するによく訓練された名演技者にすぎなかった。”『天草四郎』
確かに、たった一人の若者の言動で、あれほど大規模な反乱は出来なかっただろうと、言われてみれば腑に落ちる。
だけどなあ、庶民の犠牲の大きさを考えると、罪な存在ではあったなあ。
彼も被害者ではあったのだろうけど。
『道鏡童子』
道鏡の話を始めるのかと思いきや、持統・元明・元正の3名の女性天皇がいかに中央集権制度を固めていったのかということから始まる。
そして中央集権制度の完成した時頂点にいたのが聖武天皇。
彼はその全知全能を使って国家の財政を傾けた。(全国に国分寺・国分尼寺を建てたりした)
それを立て直すべく帝位に就いたのが孝謙天皇というわけだ。
彼女はとても賢かったので、権力を狙って暗躍する藤原一族の中で、一番単純でお人好しな藤原仲麻呂を重用する。
”そこで彼は同族の藤原貴族を一丸として敵に廻すに至ったが、彼が己れの実兄や一族をおとしいれた陰謀といっても、決して手のこんだものではなく、むしろ無策でガムシャラで、ただもう威張りたい一方の頭の良くないお人好しの田舎育ちの大臣の策という泥臭い手段が多いのである。”
ウケる~。
安吾の結論としては、孝謙(当時は称徳)天皇も道鏡も私利私欲は全くなく国家のために尽くし、仲麻呂を追い落とした藤原氏が付け入るスキのない二人に対して、「ふたりは男女の仲だ」と因縁をつけただけだ、ということだそうです。
史料には男女の仲を裏付ける言葉はないのだそうで、藤原氏の流したデマが今も生きているという事なら、それはそれですごいというか、怖ろしいことだと思う。
小西行長がなぜ朝鮮出兵の失敗の後も秀吉に重用されていたのか。
そもそも秀吉はどういうつもりで朝鮮に出兵したのか。
目からうろこでした。
朝鮮及び明国との貿易の再開を目していた、と。
だから突出した外交手腕を持つ行長(商人上がりで戦での活躍はない)が先鋒なのだ、と。
確かに信長のそばにずっといた秀吉なら、西洋の珍しいものを見る機会も多かっただろうし、それなら朝鮮や中国の名品をも日本のものと一緒に西洋に売り込むことができる、と思うのも不思議はないかも。
秀吉のそばには商人上がりの者も多かったし。
で、当時は貿易なんぞ武士のすることではないと思われていたのもあり、本心はひた隠して、「挑戦を制圧するぞ~!」なんて出来もしないことをうそぶいていた、と。
うん、あり得る。
秀吉を見る目が変わった。←単純
坂口安吾が勝海舟を好きなのはわかっていました。
”ところが負けた方の総大将の勝海舟は、幕府のなくなる方が日本全体の改良に役立つことに成算あって確信をもって負けた。否、戦争せずに負けることに努力した。”
愛ある文章。
しかしこの本に取り上げられたのは海舟の父ちゃんの方。
なかなか破天荒なことは存じておりますので、いつか必ず彼についての本を読むつもり。
思ったことの半分も書いていないのに、こんなに長くなってしまった。
歴史ってホント面白いなあ。
