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『東日本大震災を経て、東京五輪へ。少しずつ変貌していく「東京」―。その東京を舞台にした戯曲「エピタフ東京」を書きあぐねている“筆者”は、ある日、自らを吸血鬼だと名乗る謎の人物・吉屋と出会う。吉屋は、筆者に「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが…。将門の首塚、天皇陵…東京の死者の痕跡をたどる筆者の日常が描かれる「piece」。徐々に完成に向かう戯曲の内容が明かされる作中作「エピタフ東京」。吉屋の視点から語られる「drawing」。三つの物語がたどり着く、その先にあるものとは―。これは、ファンタジーか?ドキュメンタリーか?「過去」「現在」「未来」…一体、いつの物語なのか。ジャンルを越境していく、恩田ワールドの真骨頂!!』
筆者・Kは、小説を書くかたわら、今、戯曲を構想中である。
作者・恩田陸を思わせる筆者は、行きつけのバーで、吉屋と名乗る男と出会う。
彼は自らを吸血鬼だというが、現代の吸血鬼は血を吸わず、人のもつ情報を吸うのだという。
都内のあちこちを舞台に筆者が書くエッセイのような文章がメインで、他に吉屋を語り手とした話と、筆者の書く戯曲から抜粋された「エピタフ東京」、3つの話が織りなすこの作品は、ファンタジーのようなSFのような、民俗学のようでもあり、日記でもあるという複雑な造り。
よく考えれば東京に限らず大都市は多くの死者を抱えている。
死者にまつわる話は多いはずだ。
けれどそれを東京という都市に無理なく落とし込んだところに恩田陸の上手さがある。
さらに、東京を描いておきながらその背後には地下鉄サリン事件や、阪神淡路大震災、東日本大震災の存在がしっかりと根付いている。
事程左様に一筋縄ではいかない作品なのだけど、面白かったのはやっぱり筆者視点のエッセイのような部分。
うんうんなるほど、そうだよね、と頷きながら読んでいた。
”実際に事務仕事をしてくれ、セールスマンの留守を守ってくれるのはどんな会社でも女性である。彼女たちが喜んでくれるのは、簡単に配れて、フォークだの皿だのの心配をしなくていいもので、なおかつ話題性のあるものである。”
過去、21人が在席していた課に、メロン1個をお土産に持って来た人のことは30年経っても忘れない。
苦労して22等分に切ったあげくに「足りねえよ」と文句を言われたのは私だ。
また、10数人在席していた課に、讃岐うどん一袋をお土産に買ってきた課長。
「お昼にみんなで食べて」
スーパーで3袋ほど買い足して、お昼前からうどんを茹でる準備をして、つけ汁をつくったのは私だ。
職場へのお土産は、手間のかからないものを所望します。



