カバー裏より
『街なかをピンク色をしたぶたのぬいぐるみが歩き、喋り、食事をしている。おまけに仕事は優秀。彼の名前は、山崎ぶたぶた。そう、彼は生きているのです。あるときは家政夫、またある時はフランス料理の料理人、そしてタクシーの運転手の時も。そんな彼と触れ合ったことで、戸惑いながらも、変化する人たちの姿を描く、ハート・ウォーミング・ノベル。大人気《ぶたぶた》シリーズの原点、登場!!』
目次
・初恋
・最高の贈りもの
・しらふの客
・ストレンジ ガーデン
・銀色のプール
・追う者、追われるもの
・殺(や)られ屋
・ただいま
・桜色を探しに
くう~、やっちまった。
最近は謙虚に、シリーズ物だからと言ってぜんぶを読破しなくてもいいぞ、とハードルを下げているにもかかわらず、なかなか途中離脱ができないでいるのに。
これが人気のシリーズ物だということは知っていたさ。
でも、世間で人気でも私には今ひとつというシリーズ物も結構あったわけで、「ふんふん、面白かったけど、これ一冊でいいや」と終るんじゃないかと思いながら手に取ったら、めっちゃいいやん「ぶたぶた」。
シリーズ何冊あるんだろう。
ちょっと調べたら35冊くらい?
手を出すべきか、出さざるべきか、それが問題だ。
まず、主人公の山崎ぶたぶたさんは、ぶたのぬいぐるみである。
着ぐるみではなく、ぬいぐるみ。
サイズはバレーボールくらい。(ちょっと小さすぎないか?)
軽いので風にあおられたり、犬やカラスに連れ去られたりすることもある。
でも、大丈夫。
怪我をしても縫えば直る。
ぬいぐるみだからね。
だけど、喋るし、動くし、飲み食いするし、酔っ払うし、仕事もするし(たいていは優秀)、時には妻子もいる。
だから何が面白いのかと言うと、難しい。
ぶたのぬいぐるみだからこその動きのコミカルさがわかりやすい面白さだけど、それだけならシリーズを続けて読みたいとは思わなかった。
でも読後感がしみじみとよろしい。
特に最後の『桜色を探しに』は、この本のトリとして絶品。
ぶたぶたさんの生真面目で毅然としたところが、見た目の柔らかさと相まって、素直に心に届く。
『最高の贈りもの』の中で美恵のお父さんが言った「パパの職場には、とてもいい友だちがいるんだよ」が、一番しっくりくるかな。
ぶたぶたさんは、とてもいい友だち。
友だちの活躍する話ならば、そりゃあ読まねばなりますまい。
