カバー裏より
『時計の針が深夜零時を指すほんの少し前、都会にあるファミレスで熱心に本を読んでいる女性がいた。フード付きパーカにブルージーンズという姿の彼女のもとに、ひとりの男性が近づいて声をかける。そして、同じ時刻、ある視線が、もう一人の若い女性をとらえる――。新しい小説世界に向かう、村上春樹の長編。』
読み始めてすぐに思ったのは、デビューしたての伊坂幸太郎が「村上春樹のばったもん」と言われていたこと。
少ない登場人物が、短い章ごとに視点人物を入れ替えて物語を語るスタイル。
これが村上春樹のスタンダードなのかわからないけれど、枠組みだけ見たら、確かに似てるよね。
で、伊坂幸太郎はそこからエンタメよりに筆を進め、村上春樹は純文に舵を切ったという感じ。
深夜のファミレスで本を読む若い女性・マリ。
彼女に声をかけ、ちゃっかり相席する男・高橋。
ふたりは二年前にマリの姉エリとその当時の彼の4人で、一度だけホテルのプールでダブルデート(もどき)をした。
深い眠りについているマリの姉のエリ。
ラブホテルで事件を起こしたまま姿を消したサラリーマンの白川。
エリの部分がまず不穏。
寝ている彼女をじっと見つめる男の姿が描写されるが、顔は見えない。
ただ、白川を匂わせるような小道具がそこにはある。
しかし、白川とエリの接点は最後までなかった。
逆に好青年のように現れた高橋が、語れば語るほどにうさん臭く感じられる。
そして、はんぺん。
高橋も白川も、コンビニではんぺんを買うのだ。
それってそれほど当たり前のことなの?
私はコンビニではんぺんを買うなんて考えたこともないのだけれど。
周囲の期待に応えるために過剰に理想の自分をつくりあげていたと思われるエリの痛みはわかる。
いつもエリと比べられ、あげくに家族からも周囲からもぞんざいに扱われるマリの気落ちもわかる。
ふとしたことで地面の下に転落していきかねない危うさをもった、カタカナ名前の女性たち。(カオルとかコオロギとかコムギとか)
高級品を身につけ、食事にこだわりをもち、残業中に筋トレをするくらいのナルシスト白川は、理解はできないが想像はできる。
だが高橋はつかみどころがなくて、却って怖い。
私なら…読書中に話しかけてくるような人は絶対に嫌だ。
本を読んでいるんだよ?
なぜ相席して、強引に会話を仕掛けてくるのか。
全くもって不愉快千万。
