
フォアグラはある。
キャビアもある。
トリュフもある…はずなんだけど、印象に残ってない。
そもそも珍味って言ったって、肝と魚卵とキノコでしょ?
イワツバメの巣(かぐや姫が欲しがったやつ)とか、カモノハシ(哺乳類)の卵とか、そういう珍しいものを珍味というならわかるけど。
美味しい美味しくないは個人の好みの問題だからなあ。
フォアグラもキャビアも庶民価格のものしか食べたことないから大きなことは言えないけれど、それほど美味しいとは思わなかったです。
昔、母が近所のお友だちから作り方を習ったと言って、いくらのしょうゆ漬けを作ってくれた時は、本当に美味しいと思ったなあ。
今は当たり前のように食べているけれど。
というか、いくらが当たり前すぎて、今は普通のすじこの方が美味しく感じられる。
塩分取り過ぎちゃうと困るから、あまり食べませんが。
北海道の岩内町で食べたたらこ丼は、今まで食べたどのいくら丼より美味しかった。
美味しいものって値段じゃないし、評判でもない。
自分の好みと食べた時のタイミングだと思うわ。
本日の読書:フラワー・ベイビー アン・ファイン
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フラワー・ベイビー (児童図書館・文学の部屋)
1,728円
Amazon |
Amazonより
『フラワー・ベイビー(小麦粉ぶくろの赤ちゃん)を育てるだって!三週間めんどうをみて、毎日、育児日記をつける…。こんな、とんでもない「理科」のプロジェクトを押しつけられた落ちこぼれの「四‐C」クラスは、ブーイングの嵐。けれど、サイモンはちがった。サイモンは、フラワー・ベイビーの世話をしながら、父親のことを考える。自分が生まれてたったの六週間で家を出ていってしまった父親のことを。カーネギー賞受賞作。』
『フラワー・ベイビー』というタイトルを見て、花のように愛らしい赤ちゃんの話かと思ったら、違った。
フラワーはフラワーでも、小麦粉の方だった。
3キロの小麦粉の袋を赤ちゃんに見立てて、3週間面倒を見なければならない。
1.フラワー・ベイビーはいつも清潔にしておき、これを濡らしてはならない
2.フラワーベイビーの体重を週二回測定すること
3.フラワー・ベイビーは、昼夜に関わらず、いつ、いかなる時でも一人にしておいてはいけない
4.毎日育児日記をつける
5.フラワー・ベイビーがよく世話をされているか(周囲の人たちに)監視されることになる
三週間世話されたフラワー・ベイビーと育児日記は、主人公・サイモンのクラス(落ちこぼれクラス)の、サイエンス・フェアの出し物になるのだ。
他のクラスは化学や物理の実験をして、その結果を華々しく披露するけれど、集中力も忍耐力もなく、読み書きもおぼつかないサイモンのクラスは、誰でもできそうな簡単な出し物が用意されていた。
それがフラワー・ベイビー。
赤ちゃんを世話するように小麦粉の袋を世話しろって言われても、「なにそれ?」「意味わかんない」とばかり、文句タラタラなクラスメート。
けれどやってみるとこれが大変に面倒だ。
ミルクはいらない、おむつを替えなくてもいい、夜泣きもしない。
そんなフラワー・ベイビーの面倒を見ることの何がたいへんなのか、と読みながら育児経験者は思う。
しかし、自分のことすら満足にできない10歳の子どもたちが、自分の好きなことしかしたくない子どもたちが、自分じゃないものの面倒を見るというのは、精神的に結構重荷になるのだね。
3キロの袋を抱えて毎日通学するのも大変。
ほったらかしにしているのがばれても大変。
普通にしているだけで袋は汚れる、破れる(!)、ガムやキャンデーがくっつく、自由が阻害される!
それを乗り越えて、親が自分たちを育ててくれた苦労を思い感謝する…なんて話には全然ならなくて、金をもらってベビーシッターをする子が出てくるかと思えば、預けっぱなしの無責任な子どももいる。
無事最終日を迎えた暁には大喜びで自由を謳歌し、子どもなんて金輪際ほしくないと思う子どもたち。
おやおやおや。
ま、10歳の男の子なんてそんなもんか。
そんな中、サイモンは考え続けた。
生後6週間の自分と母を捨てて家を出ていった父親のことを。
子どもを育てるってことは、どれだけ自分の時間を犠牲にしなければならないのか。
気持ち晴れ晴れと出ていったかもしれない父。
それは要領のいい生き方なのかもしれない。
けれどサイモンは理解した。
今は子どもなんて育てたいと思わない。
でもいつか、自分に子どもができた時は、器用に子育てはできないかもしれないけれど、気長に子どもを育てることはできるんじゃないか。
父親にはできなかったそれを、自分はできると思う。
サイモンはようやく父親に捨てられた自分を憐れむことをやめることができた。
甘々な話ではないです。
成績順のクラス決めは、担任の先生の力関係に関わっていて、サイモンのクラスの先生自体があまり頼りにならない。
親も絶対じゃない。
子どもも先行きが案じられる。
でもしたたかに生きていくんであろう子どもたちの姿が冷徹なまでにシリアスに描かれていて、この辺が実にイギリスなんだろうなあ。

