今年も本屋大賞が発表されましたね。
ノミネート作品を一冊も読んでいませんが、大賞は辻村深月作品だと思っていました。
なんというか…耳のする感想のどれもが、結構熱いものだったので。
得点もダブルスコア以上でしたから、これはもう圧倒的と言っていいですね。
読むの楽しみ。

私も本屋大賞にノミネートされた本を数年前から追いかけて、今、2013年(第10回)の作品を読んでいます。
大分追いついてきたとはいえ、翻訳部門ができたり発掘部門ができたりと、選ばれる作品数も増えてきているのでなかなか大変です。

元々は本屋でバイトしていた次男から「いつも本屋にお世話になっているんだから、本屋大賞くらい読みなさいよ」と言われて、「流行り物はなあ…」なんて思いながら読み始めたのですが、自分の評価と必ずしも一致しない世間の評価がなかなかに興味深い。
自分じゃ選ばないような本が、読んでみたら面白かったりするのが楽しい。

あまり商業主義に傾かず、これからも毎年素晴らしい本を紹介してほしいと思います。


本日の読書:ソロモンの偽証 第Ⅱ部 決意 宮部みゆき



Amazonより
『騒動の渦中にいるくせに僕たちは何も知ろうといなかった。けど、彼女は起ちあがった。校舎を覆う悪意を拭い去ろう。裁判でしか真実は見えてこない!彼女の覚悟は僕たちを揺さぶり、学校側の壁が崩れ始めた…気がつけば、走り出していた。不安と圧力の中、教師を敵に回して―他校から名乗りを上げた弁護人。その手捌きに僕たちは戦慄した。彼は史上最強の中学生か、それともダビデの使徒か―。開廷の迫る中で浮上した第三の影、そしてまたしても犠牲者が…僕たちはこの裁判を守れるのか!?』

700ページをほぼ一日で読んでしまった。
そのくらい、この世界にどっぷりとつかってしまった。

第Ⅰ部では、事件周辺の人たちを一歩外から眺めているような感じだった。
今回は違う。
学校で、自分たちの力で裁判をするという中学生の中に、私はいた。

大人に任せて、大人に守られて、そして傷つけられた城東第三中学校の生徒たち。
自分たちの手で真実を知りたい。
検事と弁護人、判事と陪審員を決め、本物の裁判のように証人を探し証拠をかため論理を組み立てていく彼ら。
その中で、各々がゲド戦記風に言うと自分を追いかけてくる影と向き合うことになる。

弁護人の助手をすることになった野田健一は、親に絡め取られるような生活から逃げ出すために親を殺そうと考えてしまったことによって、影と向き合い、その影は自分自身であったことを知った少年だ。
自殺した柏木卓也は、影を最後まで認めない子だったのではないだろうか。
被告人の大出俊次と告発状を出した三宅樹里は、ようやく影と向き合い始めたところ。

では、他校の生徒なのに突然現れて弁護人を引き受けた神原和彦はどうか?
私には、彼は影を飲みこんで体内に抱えたまま苦しんでいるように見えた。
けっして誰にも気づかれてはならない自分の影。
だけど、見る目のある子は気付く。
神原和彦が時折見せるゆらぎを。不穏な気配を。

作者がそれを隠していないのだから、多分この作品は意外な犯人だったり卓越したトリックなどではなく、傷つき傷つけられながら愚直に真実に、そして自分に向かっていく少年少女の成長の話になるのかな?
最初から絶対的に弱点のないヒロインである検事役の藤野涼子が、成長の幅が狭い分魅力が薄いよね。
その他の中学生は、そして彼らの親は、長所も短所も含めてまるっと人間だ。
けっしてキャラクターなどではない。
だから、彼らの側に生きる人として、私はその時その世界に確かにいたのだ。


ペタしてね
BGMはSimon&Garfunkel『A Hazy Shade Of Winter』でした。