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本日の読書:サロメの乳母の話 塩野七生
カバー裏より
『ホメロスが謳うオデュッセウスの漂流譚はでっち上げだ!と糾弾する妻ペネロペ。不器用で世渡りが下手な夫を嘆くダンテの妻。サロメの乳母、キリストの弟、聖フランチェスコの母、ブルータスの師、カリグラ帝の馬……歴史上の有名人の身近にいた無名の人々が、通説とはまったく違った視点から語る英雄・偉人たちの裏側。「ローマ人の物語」の作者が想像力豊かに描く短編小説集。』
目次より
・貞女の言い分
・サロメの乳母の話
・ダンテの妻の嘆き
・聖フランチェスコの母
・ユダの母親
・カリグラ帝の馬
・大王の奴隷の話
・師から見たブルータス
・キリストの弟
・ネロ皇帝の双子の兄
・饗宴・地獄篇 第一夜
・饗宴・地獄篇 第二夜
歴史上の有名人を、違った視点から掘り下げる。
なんとなく功績を知ってはいるけれど、詳しくは知らない。そんな人物の選定がすばらしい。
なかでも「サロメの乳母の話」が白眉。
素晴らしい踊りを披露したご褒美に、若く有名な預言者ヨハネの首を所望したサロメ。
それは、恋い慕う彼女の気持ちをヨハネが受けとめようとしなかったから…というのは、オスカー・ワイルドの戯曲の話。
多くの画家がサロメを題材にした絵を描いているけれど、衝撃的なそのシーンは実に冷静な政治的判断のものに行われたものであるというのが、塩野七生の解釈。
「善意に満ちていて、しかも行いの清らかな人が、過激な世改めを考え説くほど危険なことはないと思うけれど、乳母はどう思う?」
サロメの行動がいちいちクールでロックなの。格好いいわ。
「饗宴・地獄篇」は、地獄に落ちた女ども(クレオパトラ、ビザンチン帝国の皇后テオドラ、トロイのヘレン、ソクラテス夫人のクサンチッペ、マリー・アントワネット)が、繰り広げる女子会トーク。
第一夜は毛沢東婦人・江青をゲストに招いての夜会。
第二夜はゲストを日本から呼ぼうと思ったけれど、意外と悪女がいないのね…と結論付けようとした時、地上の方から推薦人の声が…!
地獄がまた楽しそうなのです。実際楽しいらしいです。
地獄の恐ろしげな描写は、天国サイドの陰謀らしいですよ。
“また、地獄に送られてきた顔ぶれが面白かった。だから、女たちにしてみれば、交き合う男たちにも恵まれていて、天国の住人のように、立派かもしれないが面白くもおかしくもない、まじめ人間の集団ではない。それに、天国は、住む人間だけが退屈なのではなく、一年中気候温暖でも四季の区別がないから、その点でも、一週間もいれば、頭がボケてしまいそうな思いになるのだった。”
天国、すごい言われようです。
地獄にはいい人たちもたくさんいます。
“女王に仕える奴隷たちの中には、天国に送られる資格充分な者が多かったが、天国と地獄を分けたのはキリスト教だから、それが普及する以前に現世で生を送った者は皆地獄行きなので、これら古代世界の善男善女たちも、地獄まで女王に従いてきたというわけである。だが、想像した以上に過ごしやすいので、誰一人、煉獄での試練を経た後に許される、天国行きを希望した者はいない。”
塩野さん、こんなに書いちゃっていいのでしょうか?
地獄に落とされちゃうんじゃないかしら?
あ、望むところなのか。

