解説

エマ・トンプソンとトム・ハンクスという英米のオスカー俳優が共演を果たし、傑作ミュージカル映画『メリー・ポピンズ』誕生秘話に迫る感動のヒューマンドラマ。ウォルト・ディズニーの映画製作の舞台裏を初めて描き、原作者と映画製作者の激しい攻防を情感豊かに映し出す。ポール・ジアマッティやコリン・ファレルら名優たちも豪華共演。頑固な作家の心の奥深くに秘められた、ある思いを浮き彫りにする展開に心打たれる。

シネマトゥデイ

あらすじ

1961年、パメラ・L・トラヴァース(エマ・トンプソン)は、ウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)が長年熱望する「メリー・ポピンズ」の映画化について話し合うためにロサンゼルスに向かう。傑作児童文学の著者である彼女は気難しい性格で周りを困惑させる。スタッフたちはどうにかしてトラヴァースに映画化の契約書に署名してもらおうと心を砕くが……。

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映画が始まってしばらくは、トラヴァースがすごく嫌な感じに描かれています。
言ってることは筋が通っているんだけれど、周囲に対する思いやりがなくて自分勝手。
自分の言いたいことは言うけれども人の言うことは聞かないっていうのは、私の苦手なタイプ。

打ち合わせ中も否定しかしないトラヴァースにちょっとイライラが募るころ、差し挟まれる子供時代の回想シーン。
子どもの空想に付き合い、誰よりも夢見がちなお父さんは、現実社会では酒びたりの銀行員。
理想と現実の差に誰よりも落胆しているのは、多分お父さん。

映画「メリー・ポピンズ」を観たときに、子どもをとおして変わっていくお父さんを強く感じました。
トラヴァースのお父さんは病に倒れますが、長女のトラヴァースは父に笑顔を取り戻してほしかったのだと思います。
禁止されているお酒を手渡したり、お父さんが食べたいと言った梨を買いに行ったり…。

トラヴァースの人生の中にもメアリー・ポピンズのような人が現われます。
が、私はトラヴァースがメアリー・ポピンズなのではないかと思いました。
頑固で几帳面。
辛辣だけれど子どもの夢を壊すことのないメアリー・ポピンズ。

彼女はメアリー・ポピンズを書き続けることによって、何度も何度も父親を救おうとしたのではないか。
だからバンクス(銀行)家へ訪れたのではないか。
でも、何度かいても父親を救えたとは思えなくて、彼女は自分を赦すことができなかったのではないか。
そんなことを、この映画を観て思いました。

お父さんの笑顔を取り戻したい自分。
けれどもその笑顔は、薄っぺらい笑いではいけない。
地に足のついた生活と、空を飛べる空想の翼。
トラヴァースの描くメアリー・ポピンズは自分自身であり、バンクス家の子どもたちも自分であり、バンクスさんは自分の父親。
だから決して妥協をすることはない。

実は私、トラヴァースって生い立ちを秘密にしていると勘違いしていました。
私生活を秘密にしていたはずなのにこんな映画で暴露していいのかなあって思って、自宅から徒歩5分ほどの場所においてある子ども時代に読んでいた百科辞典で調べてきたら、別に秘密でもなんでもなかったわ。
誰と間違えていたのかなあ。

映画の中で何度もディズニーが「父親はなにがあっても子どもとの約束を守らなければならない」と言いますが、それを聞くたびにトラヴァースは自分を責めていたんじゃないかなあ。
父を救えなかったから、お父さんは約束を破って、自分をおいて行ったんだ、と。

そんなことを考えながら観ていたもんで、もう辛くて辛くて。
最後の涙は、自分を赦すことができた涙だと思いたいのだけど。
真面目な長女って本当辛いよね。


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