あらすじ

海辺の小さな町にやって来たタエコ(小林聡美)は、素朴で小さな宿・ハマダに到着。宿の主人・ユージ(光石研)とその愛犬、さらには不敵なほほ笑みをたたえた女性・サクラ(もたいまさこ)らに出会う。何日かを過ごしたタエコは、マイペースに明け暮れるハマダでの毎日に違和感を覚え、別の宿へ移る決心をするが……。

シネマトゥデイ


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偶然ですが、春の映画でした。

特に目的もなく南の島に来たタエコ。
分かりにくい地図を見ながら辿り着いたのは、看板も表札サイズの宿・ハマダ。
日がな一日することもなくボーっとしていることにも、宿にいる人たちとつるむのもなんか嫌。
そんなタエコが少しずつ心を解放して、楽になっていく話。

毎年どこからともなく春になると現われるサクラ。
宿泊客ではないのに毎日ご飯を食べにくるハルナ。
タエコを追って来た謎の青年ヨモギ。

あれ?みんな春の名前。

海を見ながらヨモギ君が「春の海 ひねもすのたりのたりかな」と言った後
「先生、ひねもすってどういう意味か知っていますか?」って聞くシーンがあります。
タエコの職業がわからない中で、先生って呼びかけはヒントになるのですが、結局何の先生なのかわからなかった。
期間を定めずボーっと過ごす時間を作れる先生。
学校の先生でも医者でも政治家でもなさそうなんだけど、そこが気になりました。
作家が一番ありそうかなと思っていたのに、「ひねもす(一日中)」の意味を知らない。

この島の外でどのように暮らしているか、互いに何も知らないまま島での日々を過ぎていく。
彼らはそれぞれ自分で帰るべき時を判断し、帰っていくのがいい。
ぬるま湯の中にいるとき、自分からそこを出ていくのはなかなか勇気がいるけれど、さらっと日常に戻っていく潔さ。

最後は次の年の春。
ハマダにまた人が集まる。

ゆったりとした時間の流れ。
美味しそうな食べ物。
物々交換のような流通。

春は穏やかに過ぎていくイメージがあるけれど、実は一年で一番忙しいのよ、私には。
だからこそ、この映画の春に憧れます。
いつかはひねもすのたりのたりしたいと思いつつ、今はせわしない毎日を送るのです。


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