サイレントからトーキーへと移り変わるころのハリウッドを舞台に、スター俳優の葛藤(かっとう)と愛を美しいモノクロ映像でつづるサイレント映画。フランスのミシェル・アザナヴィシウス監督がメガホンを取り、ヨーロッパのみならずアメリカの映画賞をも席巻。芸術家(アーティスト)であることに誇りをもち、時代の変化の波に乗れずに凋落(ちょうらく)してしまうスターを演じるのは、『OSS 117 私を愛したカフェオーレ』のジャン・デュジャルダン。ほかに、ジョン・グッドマンなどのハリウッドの名脇役が出演。サイレントの傑作の数々へのオマージュが映画ファンの心をくすぐり、シンプルでロマンチックなラブストーリーも感動を誘う。

1927年のハリウッドで、サイレント映画のスターとして君臨していたジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、新作の舞台あいさつで新人女優ペピー(ベレニス・ベジョ)と出会う。その後オーディションを経て、ジョージの何げないアドバイスをきっかけにヒロインを務めるほどになったペピーは、トーキー映画のスターへと駆け上がる。一方ジョージは、かたくなにサイレントにこだわっていたが、自身の監督・主演作がヒットせず……。

シネマトゥデイ (外部リンク)


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2011年と最近の作品であるのに、全編白黒の映画。
そして、ほぼ無声映画。
なのに、これがとても面白かったです。

無声映画って多分初めて観ましたが、全てのセリフに字幕が出るわけじゃないんですね。
大事なセリフにしか字幕がでない。
もちろんモノローグもありません。
だから、役者の表情やしぐさで気持ちを慮らなければならない。
効果音がない分、オーケストラの音楽が場を盛り上げます。
この映画は無音映画ではないので、音楽がとても効果的に使われています。

サイレント映画のスター、ヴァレンティンに結構強引に近づいてくるペピーの気持ちが最初よくわかりませんでした。
一緒に写っている写真が(多分)芸能新聞の一面に載ると、周りの人に見せびらかす。
彼が不在の時に楽屋にこっそり忍び込む。
憧れなのか、売名行為なのか。
ちょっと不快ですらありました。

けれどスターは鷹揚にこう言うのです。
「特徴のない顔だから、付けぼくろをするといいよ」

そして、付けぼくろのせいか、ペピーはとんとん拍子に売れっ子になっていきます。
エキストラから脇役へ、脇役から主役へ。
時代はサイレントからトーキーへ。
わざとらしく誇張した演技ではなく、自然な、リアリティのある演技へ。

ヴァレンティンにももちろんトーキー映画へのオファーが来ますが、彼は安っぽいドキュメンタリー風の映画より、芸術性の高いサイレント映画の方が価値が高いと、トーキー映画に背を向けたまま。
映画会社との契約も解除になり、事務所の階段を下りていくヴァレンティン。
そこに意気揚々と階段を駆け上ってくるペピー。
「ようやくあなたと同じところまで登って来られたわ」

階段で交差した二人は、その後もひとりは登り続け、ひとりは下り続けます。
ヴァレンティンを慕ってついてくるのは、お抱え運転手と愛犬だけ。
その運転手すら車ごとくびにしなければならないヴァレンティン。

この先にもドラマは続きますが、サイレント、面白いです。
台詞がない分、自分で補って観なければならない部分が多い。そこが面白い。
どんな気持ちでこんなことをしたのか。
この目つきの意味は何か。

最初は不快に思って見ていたペピーの行動の一つ一つが徐々に可愛らしく愛おしくなってきて、最後は泣き笑いで観ていたような気がします。

私、多分1920年代のアメリカが結構好きなんだと思います。
街並みも、ファッションも、音楽もとても好き。
ダンスのシーンなんか、目がハートになるくらい好き。
ああ、これ、「デート~恋とはどんなものかしら」の世界なんだわ、と思ったことよ、巧くん。

そして、犬!
最優秀演技賞をさしあげたいくらい、けなげでお茶目でキュート。

全く知らなかった映画。
はっきり言ってジャケ借りでしたが、大正解でした。



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