谷崎潤一郎の同名小説を名匠・市川崑監督が映画化したドラマ。ある旧家の4姉妹それぞれの一年間の物語を、三女の縁談話を中心に、四季折々の風物を織り交ぜて描く。昭和13年の春。京都嵯峨の料亭。旧家・蒔岡の4姉妹が花見の宴で一同に会する。長女・鶴子と次女・幸子はいまだ未婚の三女・雪子と末娘・妙子の結婚を気にかける毎日。おとなしい雪子は親類の勧めで次々と見合いをするが本人の気が進まず一向にまとまらない。一方、奔放な妙子も恋人が急逝し酒浸りになる……。

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お正月に見るにふさわしい、華やかであでやかな映画でした。
桜が、紅葉が、そして降る雪がとても美しい。

四姉妹もとても綺麗で、原作の年齢設定より出演者の皆さんの年齢がかなり上ですが、昭和初期の年齢を今に換算すると、このくらい落ち着きのある年齢に直さないと逆に世界が壊れてしまう気がします。
特に長女鶴子を演じた岸恵子は、うっとりするほど顔だちも所作も美しくて、原作の、良家の本家の娘でありながら夫の稼ぎだけで暮らす生活、しかも子だくさんということで、結構所帯やつれしていそうなところを、全く感じさせないあでやかさ。眼福眼福。

次女の夫貞之介を演じた石坂浩二が、ちょっと私のイメージとは違いました。
もう少し押し出しの強い感じだと思っていたのですが、石坂浩二ではスマートすぎる。
しかし原作とは違う映画のエンディングを見て、なるほどそうきたか、と。
どちらかというと田山花袋の「布団」っぽいけど。

原作にあった三女雪子の口癖「ふん」
吉永小百合がとてもうまく「ふん」というのです。
文字にするとちょっときついような投げやりなような「ふん」ですが、声が小さくて無口な雪子が言いそうな「ふん」に、納得しました。
原作には特に書いていないのですが、ほかの人たちが「ふうん」というような言い方をするのに、雪子だけが小さな声で「うん」とも「ううん」ともつかないような「ふん」
原作を読んで気になっていた部分だったので、すっきりしました。

原作と違って三女と四女がいい感じにまとまって終わりますが、それはどうだろう?
これからの日本からは消えていくであろう上流社会。
その儚い存在感をタイトルの「細雪」が表しているのだとしたら、この結末は違うでしょう。
原作の雪子の衝撃的な最後のシーンに対して、ほくそ笑むかのような映画の雪子の表情。
どこが「細雪」やねん!

とにかく京都の四季と(舞台は大阪ですが)、和服の雅を楽しむ映画と思いました。
あ、楽しみにしていた「蛍狩り」のシーンはなかったな。
美しい映像を堪能して、大変満足いたしました。




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