今朝の早朝ワイドショーで、「あなたの脳内ミュージックはなんですか?」って特集をやっていました。
結構多くの人がお気に入りの脳内ミュージックを持っているようで、ちょっと驚きました。

私にも脳内ミュージックがあります。
シチュエーションごとに流れる音楽は変わりますし、その時その時のお気に入りもあります。
でも、仕事がテンパってきたときに流れる音楽は決まっているのです。

テレビを見ていると、皆さん前向きな曲を好まれるんですね。
前向きに、現状の打開を図る。

私は、ネガティブなんですな。

延々と同じ作業が続くとき
SPEEDの「White Love」
♪果~て~し~な~く~

もう少し追い詰められたら
爆風スランプの「Runner」
♪走る~走る~俺~た~ち~

最高潮にテンパっているとき
尾崎豊の「15の夜」
♪盗んだバイクで走りだす~

徹底的に現実逃避です。
明日は昼休みも潰してお仕事です。
どうか、爆風スランプ程度ですみますように。
 
でも、脳内ミュージックが流れるということは、脳が活性化してるんですって。
そして、脳内ミュージックの流れる人は、感情豊かな傾向にあるらしいですよ。

よっし!
o(^▽^)o


本日の読書:私の男 桜庭一樹

カバー裏より
『落ちぶれた貴族のように、惨めでどこか優雅な男・淳悟は、腐野花の養父。孤児となった十歳の花を、若い淳悟が引き取り、親子となった。そして、物語は、アルバムを逆から捲るように、花の結婚から二人の過去へと遡る。内なる空虚を抱え、愛に飢えた親子が超えた禁忌を圧倒的な筆力で描く第138回直木賞受賞作。』

これはとてつもなくすごい本だった。
でも、人に勧められるかといえば、ちょっと躊躇してしまう。
好き嫌いがはっきり分かれる本だから。

100ページくらいまで、読むのがつらかった。主人公たちに対する、どうしようもない嫌悪感を抱えながら読むのは、つらい。
甘いような酸っぱいような、すえた匂いがページの間から立ち昇る。

何か、腐っている。
これは文体が喚起するものなのか。だとしたらすごい筆力だ。
それとも主人公の名字、腐野(くさりの)という文字に引っ張られているのか。可能性は大きい。

腐野花が結婚する前の晩から話は始まる。
待ち合わせ場所に現れる若い父、淳悟。
淳悟にあまり好い感情を抱いていないらしい婚約者の尾崎善朗。
誰一人、幸せそうではない顔合わせ。

結婚前の最後の夜。
家で交わされる父娘の会話は、父娘の会話ではない。男と女の会話だ。
なんだこれは。
この人たち、腐ってる。

しかし、乾いているのだ。彼は。彼らは。
カサカサと音がするほど。

おかしいではないか。
腐るということは、細胞が壊れて中の水分がしみ出してきて、体内の微生物が栄養たっぷりの体液を分解し、発酵または腐敗させるということで、カサカサ乾いたりしてはいないはずじゃないのか。

次の章は花と善郎の出会い。
その次の章は捨ててきた故郷から来た客。
章がすすむにつれて明らかになる二人の過去。

これは腐った父娘の物語というだけではなかった。

求めても求めても得られなかった親の愛情。
絶対的に親に従わなければならない呪い。
愛されることと支配されること。
腐りながら乾いていく彼ら。

花と出会う前、善郎が美術館で見た絵画。
絡み合う二本の木。チェインギャング。
鎖につながれた囚人どうし、という意味だ。互いにつながれているために、どちらも相手から逃げられないのだ。

人は皆、自分自身であるはずなのに、自分をわからないまま、互いの親となり、子となり、男となり、女となって、どこへも行けなくなってしまった二人。
二人でいるために、全てを捨ててしまった二人。
二人で生きるために、生きることをやめていたのかもしれない。

全くこれは間違っている。
でもどうしようもなかった。
互いを殺し、自分を殺しながら生きるふたりの想いの強さの前に、誰が、何を言えるだろう。

全くこれは間違っている。
桜庭一樹はそれを承知でこれを書いたのだ。

これを読み終わったとき、私の中からも何かがどろりと出てきた気がする。
どろりと出てきて、カサカサと消えた。
ふう、と、ようやく息ができた。