今日はサンジョルディの日。
なかなかメジャーになりませんが、本を贈る記念日です。

本来は男性が女性に赤い薔薇を、女性は男性に本を贈るのだそうですが、日本では男女どちらも本を贈るようです。
昔、本屋さんに貼ってあったポスターにそう書いてありました。

でも、人に本を贈るのって難しいですよね。
相手が好きそうで、なおかつまだ読んでいないもの。
よほど親しく読書話をしていないと、自信をもって本を選ぶことなんてできないですよ。

だから、図書カードはいかがですか?
ポスターにはそうも書いていましたが…。

実際に贈るかどうかは別にして、時々○○さんに本をプレゼントするとしたら…?って考えることはあります。
自分が読んだ本の中で、どの本だったら気に入ってもらえるだろう?
相手の趣味や性格なども考えて、とっかえひっかえ本を選ぶ。

ああ、そうか。
これはおしゃれな人が、着るものをひとにプレゼントするのと同じようなことなんだ。
自分の好きなもので相手を喜ばせる。
難しいことだけど、楽しいですね。

ちなみに私は、数学の参考書以外でしたらたいてい大丈夫です。
楽でしょ?
プレゼントしてくれて、いいのよぅ。^m^


本日の読書:僕らのごはんは明日で待ってる 瀬尾まい子

Amazonより
『体育祭の競技“米袋ジャンプ”をきっかけに付き合うことになった葉山と上村。大学に行っても淡々とした関係の二人だが、一つだけ信じられることがあった。それは、互いが互いを必要としていること。でも人生は、いつも思わぬ方向に進んでいき…。読んだあと、必ず笑顔になれる、著者の魅力がぎゅっと詰まった優しい恋の物語。』

この人の作品はとても読みやすい。
平易な文章でわかりやすい言葉づかいで書かれた作品は、温かいものを心の中に注入してくれる。
でも、この人が書く人物たちは、いつもなんらかの喪失を抱えている。

本当はとても痛いことを、柔かいもののように書く。
これはなかなかできないことなんじゃないかと思う。
もしかして作者自身が、なんらかの喪失を抱えているのかなと思ったりするほど、彼女の作品に出てくる父親はいつも影が薄い。またはいない。
今回もそう。

葉山亮太
あだ名はイエス。何に対しても心が広い。キリストのようなやつだから。でも実際は、人に対して無関心なだけ。趣味はたそがれること。

上村小春
鶏肉は嫌いだけど、ケンタッキーは好き。自分をしっかり持っていて、決めたことは覆さない。だけど、おばあちゃんの言葉は日本国憲法より重い。

人との間に距離をおき、壁を作り、何事にも関わらないように生きていたイエスに、軽々と壁をまたぎ越して外の世界の空気を送り込んでくれた小春。
漫才のように軽妙な二人の会話。
戸惑いながら受け答えするイエスに、失礼なことを平気でいい、突然距離を近づけてきたかと思うと、あっさり引き下がってみたりする小春。
翻弄されつつ、徐々に自分だけの世界から外に出てくるイエス。

天才的に好き嫌いのないイエスが、たそがれてしまうのにはわけがある。
小春はそれを知っている。何も言わないけど。
でもきっと、ずっとイエスのことを見ていたんだと読者にはわかる。
イエスのことをちゃんと知っている小春。

さばさばして、何事にもこだわりのなさそうな小春の方が、実は好き嫌いが多い。
ただ、その好き嫌いを見せる相手がいなかっただけで。
おばあちゃんの言葉を日本国憲法より重く受け止めることにはわけがある。

イエスは基本的に不器用だ。生きることに。
だから時間が忘れさせてくれるようなことを、ずっと忘れないで抱えてしまう。
自分ってなんだ?って考えすぎて、タイに自分探しの旅に出る。
格安欲張りツアー。だって安かったんだもん。
結果、自分のことなんて探していられないくらい、忙しい旅行となる。
不器用っていうか…バカなの?

“悲しみをわかり合える存在が与えてくれるのは安心だけで、一緒にいることで悲しみが薄まるわけではない。そばにいることで、悲しみが色濃くなってしまうことの方が多かった。”
そんなイエスの高校時代。

上村とつきあって、人と接する機会が増えて、全てに受け身だったイエスが少しずつ自分を取り戻していく。
“勝手にわいてくる気持ちが、何にあてはまるのかなんてわからない。ただ上村のことを思ってる。それだけだ。”
“上村はいつも少しひっかかっただけで、面倒くさくなって切り捨ててしまう。ケンタッキーも俺も。でも、たまにはがんばってよ。”

喪失を抱えた二人が、傷をなめ合うのではなく、喪失をも含めた一人として認め合ったとき、日本国憲法よりも重たいおばあちゃんの言葉を越えていくことができる。
これは恋愛小説でもあり、成長の物語でもある。

“会いたい人とか一緒にいて楽しい人って何人かいるけど、でも、いろんなことを平気にしてくれるのはイエスだけだって。”

この先のふたりにも、つらいことは降りかかってくるんだろうけど、それでもきっとふたりは大丈夫。
一見尻に敷かれているように見えるイエスは、結構すごい奴だと思う。