今日もついうっかり気を抜いて電車から降りる帰り道。
すごーく疲れた顔をしていた同期とばったり。
「お、いいところに。飲みに行くぞ」
残念。買い物しちゃったんだよね~。
「そっか。今日のところは勘弁してやる」
やけにあっさり引き下がったけれど、やっぱり疲れてるんじゃないかな。
疲れた背中で歩き去る彼の背中を見送りながら、なんとなく視線は駅前のコンビニへ。
最近棚がスカスカなんですよ。
隙間がスキスキ空いているの。
お弁当とかは補充されていると思うんだけど、ドリンク類やカップめんやスナック菓子の棚がスカスカスキスキ空いています。
店じまいするのかな~と思って気にしてみているんだけど、それらしい貼り紙もなく。
でも明らかに補充されていない棚が、がら~んとしています。
うちの周り100メートルくらいの中に、セブンイレブンが1軒、ローソンが1軒、北海道のローカルコンビニであるセイコーマートが2軒あるので、コンビニの1軒や2軒無くなっても生活に支障はないのですが。
あと100メートル距離を延ばすとさらにローソン2軒とサンクス1軒、もしかするとセブンイレブンも入るかしら?
コンビニ激戦区。
私が希望するのは、ミニストップです。
北海道の1号店、うちの近所にできないかなあ?
夏に向かってハロハロへの期待が高まる今日この頃です。←だから閉店の貼り紙はないんだってば。
本日の読書:八日目の蝉 角田光代
カバー裏より
『逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか……。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。第二回中央公論文芸賞受賞作。』
0章、1章、2章からなる。
0章は、不倫相手の家に忍び込み、生まれたばかりの赤ん坊の顔を見に行く希和子。
顔を見るだけでよかったのに、その笑顔を見てしまったとき、つい抱きかかえて家を飛び出してしまう。
ほんの数ページの0章。
1章は希和子の逃避行。
薫と名付けられた少女の0歳から4歳までの出来事。
世間から隠れたまま子どもを育てることは、本当はほぼできない。戸籍がない。保険証がない。
社会的に全く認知されていない子ども。
追っ手の気配に脅え、それでも薫を何とか子どもらしく、笑顔で過ごさせてやりたいと願う希和子。
だとしたら、本当に薫のことを考えるのならば、当然親元に帰すのが筋である。
しかし、不倫相手との子どもをおろすことを余儀なくされ、そのうえ相手の妻から嫌がらせの電話を受け続け、身も心もボロボロに疲れ果てていた希和子にとって、ただひとつ守りたいものが薫との生活だった。
不倫相手の家庭を壊してやりたいと思ってした行動ではない。もちろん金銭目当てでもない。
それでも誘拐は誘拐。犯罪なのである。
許されるべきものではない。
なのに読者として希和子の心に添ってこの作品を読めるのは、彼女が愛情深く薫を育てているから。
ある程度裕福な家で育ち、生活の苦労をしたこともなかったであろう希和子が、父の遺産4000万円を投げ捨てて新興宗教の施設に身を隠す。
または日給4000円でホテルの清掃を住み込みで行う。働いている間薫の面倒をみてくれる近所の娘に1日1000円払っているから、実質3000円だ。
薫に洋服やおもちゃを買ってやりたい、お菓子のひとつも買ってやりたいと思いながらも買えない切なさ。
周囲に人々の親切が、希和子たち母子の生活を支えていた。
世間から身を隠し孤独なはずの逃亡生活を、寂しいと感じずに薫は育つ。
突然訪れた希和子との別れの日まで。
2章は19歳になった恵里菜《薫》の物語。
ある日母と引き離されたかと思うと、本当の家族という人たちと暮らすことになった恵里菜。
拭えない違和感。
自分のいるべき場所は、海と空の広がる、希和子と過ごしたあの場所であるはずなのに。
裁判で明らかになる父の不倫。母の不倫。形だけ整った、中身のない家族の姿。
穏やかで優しくて家族に無関心な父。
自分の感情を持て余し、家に居場所がないと夜な夜な外出する母。
家族に気を遣い明るく振舞うが、心の中の一線を越えてまでは決して近づいてこない妹。
こんな家族になってしまったのは、私を誘拐したあの女のせいだ。
いつしか希和子を憎むことで家族の中に居場所を作ろうとする恵里菜。希和子を憎むことで、家族となじめない自分の心と折り合いをつける。
大学入学を機に家を出て、一人暮らしをする恵里菜。
不倫相手の子供を妊娠してしまい呆然とする。血も繋がっていないのに、あの女と同じことをしてしまう自分。
読んでいていて引き込まれるのは1章だ。
逃げ切れるのか?
逃げ切れたとして、学校は?その先の幸せは?
考えれば考えるほど、危うい綱渡りの日々。足を滑らせるのは簡単だ。
希和子に寄り添って読んでいると、いけないことだとわかっていても、何とか逃げ切って幸せになってほしいと思う。
間一髪で追っ手をかわし、潜伏先から逃げる希和子を応援してしまう自分がいる。
けれど、希和子の行為によって恵里菜はのちに心に大きく傷を負ってしまうのだ。
幸せだった子ども時代。その先の人生で恵里菜は、自分のせいで歪んでしまった家庭を、バラバラな家族を、常に感じながら生きなければならなかった。
そのため、友だちを作ることすらできなかった。
子ども時代をともに新興宗教の施設で暮らした千草との再会で、恵里菜の心が動き出す。
憎むべきあの女との穏やかな暮らし。
無責任で優柔不断な男に惹かれてしまう気持ち。
空っぽの家族。空っぽの自分。
千草と旅をしながら、小さく硬く固まってしまった自分の心を正面から見直す。
そして、のびやかに健やかに生きていた、幼い頃の自分を思い出す。
“憎みたくなんか、なかったんだ。私は今初めてそう思う。本当に、私は、何をも憎みたくなんかなかったんだ。あの女も、父も母も、自分自身の過去も。憎むことは私を楽にはしたが、狭く窮屈な場所に閉じ込めた。憎めば憎むほど、その場所はどんどん私を圧迫した。”
みんなと一緒ならば、七日しか生きられなくても蝉は不幸ではない。
でも、一人だけ八日も生きてしまったら。
八日目の蝉に見える景色はどんなにかなしいものだろうと言う恵里菜に千草は言う。
“八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られるんだから。見たくないって思うかもしれないけど、でも、ぎゅっと目を閉じていなくちゃならないほどにひどいものばかりでもないと、私は思うよ”
最後まで読んで、スケールは違うが「レ・ミゼラブル」を思い出す。
成り行きとはいえ罪を犯してしまった希和子。
他人の子を自分の子として育てる希和子。
何よりも娘の幸せを考える希和子。
希和子が死ぬときは、4歳のころの薫が、屈託のない笑顔で枕元に迎えにくるのではないかと、そんなことを考えた。
すごーく疲れた顔をしていた同期とばったり。
「お、いいところに。飲みに行くぞ」
残念。買い物しちゃったんだよね~。
「そっか。今日のところは勘弁してやる」
やけにあっさり引き下がったけれど、やっぱり疲れてるんじゃないかな。
疲れた背中で歩き去る彼の背中を見送りながら、なんとなく視線は駅前のコンビニへ。
最近棚がスカスカなんですよ。
隙間がスキスキ空いているの。
お弁当とかは補充されていると思うんだけど、ドリンク類やカップめんやスナック菓子の棚がスカスカスキスキ空いています。
店じまいするのかな~と思って気にしてみているんだけど、それらしい貼り紙もなく。
でも明らかに補充されていない棚が、がら~んとしています。
うちの周り100メートルくらいの中に、セブンイレブンが1軒、ローソンが1軒、北海道のローカルコンビニであるセイコーマートが2軒あるので、コンビニの1軒や2軒無くなっても生活に支障はないのですが。
あと100メートル距離を延ばすとさらにローソン2軒とサンクス1軒、もしかするとセブンイレブンも入るかしら?
コンビニ激戦区。
私が希望するのは、ミニストップです。
北海道の1号店、うちの近所にできないかなあ?
夏に向かってハロハロへの期待が高まる今日この頃です。←だから閉店の貼り紙はないんだってば。
本日の読書:八日目の蝉 角田光代
カバー裏より
『逃げて、逃げて、逃げのびたら、私はあなたの母になれるだろうか……。東京から名古屋へ、女たちにかくまわれながら、小豆島へ。偽りの母子の先が見えない逃亡生活、そしてその後のふたりに光はきざすのか。心ゆさぶるラストまで息もつがせぬ傑作長編。第二回中央公論文芸賞受賞作。』
0章、1章、2章からなる。
0章は、不倫相手の家に忍び込み、生まれたばかりの赤ん坊の顔を見に行く希和子。
顔を見るだけでよかったのに、その笑顔を見てしまったとき、つい抱きかかえて家を飛び出してしまう。
ほんの数ページの0章。
1章は希和子の逃避行。
薫と名付けられた少女の0歳から4歳までの出来事。
世間から隠れたまま子どもを育てることは、本当はほぼできない。戸籍がない。保険証がない。
社会的に全く認知されていない子ども。
追っ手の気配に脅え、それでも薫を何とか子どもらしく、笑顔で過ごさせてやりたいと願う希和子。
だとしたら、本当に薫のことを考えるのならば、当然親元に帰すのが筋である。
しかし、不倫相手との子どもをおろすことを余儀なくされ、そのうえ相手の妻から嫌がらせの電話を受け続け、身も心もボロボロに疲れ果てていた希和子にとって、ただひとつ守りたいものが薫との生活だった。
不倫相手の家庭を壊してやりたいと思ってした行動ではない。もちろん金銭目当てでもない。
それでも誘拐は誘拐。犯罪なのである。
許されるべきものではない。
なのに読者として希和子の心に添ってこの作品を読めるのは、彼女が愛情深く薫を育てているから。
ある程度裕福な家で育ち、生活の苦労をしたこともなかったであろう希和子が、父の遺産4000万円を投げ捨てて新興宗教の施設に身を隠す。
または日給4000円でホテルの清掃を住み込みで行う。働いている間薫の面倒をみてくれる近所の娘に1日1000円払っているから、実質3000円だ。
薫に洋服やおもちゃを買ってやりたい、お菓子のひとつも買ってやりたいと思いながらも買えない切なさ。
周囲に人々の親切が、希和子たち母子の生活を支えていた。
世間から身を隠し孤独なはずの逃亡生活を、寂しいと感じずに薫は育つ。
突然訪れた希和子との別れの日まで。
2章は19歳になった恵里菜《薫》の物語。
ある日母と引き離されたかと思うと、本当の家族という人たちと暮らすことになった恵里菜。
拭えない違和感。
自分のいるべき場所は、海と空の広がる、希和子と過ごしたあの場所であるはずなのに。
裁判で明らかになる父の不倫。母の不倫。形だけ整った、中身のない家族の姿。
穏やかで優しくて家族に無関心な父。
自分の感情を持て余し、家に居場所がないと夜な夜な外出する母。
家族に気を遣い明るく振舞うが、心の中の一線を越えてまでは決して近づいてこない妹。
こんな家族になってしまったのは、私を誘拐したあの女のせいだ。
いつしか希和子を憎むことで家族の中に居場所を作ろうとする恵里菜。希和子を憎むことで、家族となじめない自分の心と折り合いをつける。
大学入学を機に家を出て、一人暮らしをする恵里菜。
不倫相手の子供を妊娠してしまい呆然とする。血も繋がっていないのに、あの女と同じことをしてしまう自分。
読んでいていて引き込まれるのは1章だ。
逃げ切れるのか?
逃げ切れたとして、学校は?その先の幸せは?
考えれば考えるほど、危うい綱渡りの日々。足を滑らせるのは簡単だ。
希和子に寄り添って読んでいると、いけないことだとわかっていても、何とか逃げ切って幸せになってほしいと思う。
間一髪で追っ手をかわし、潜伏先から逃げる希和子を応援してしまう自分がいる。
けれど、希和子の行為によって恵里菜はのちに心に大きく傷を負ってしまうのだ。
幸せだった子ども時代。その先の人生で恵里菜は、自分のせいで歪んでしまった家庭を、バラバラな家族を、常に感じながら生きなければならなかった。
そのため、友だちを作ることすらできなかった。
子ども時代をともに新興宗教の施設で暮らした千草との再会で、恵里菜の心が動き出す。
憎むべきあの女との穏やかな暮らし。
無責任で優柔不断な男に惹かれてしまう気持ち。
空っぽの家族。空っぽの自分。
千草と旅をしながら、小さく硬く固まってしまった自分の心を正面から見直す。
そして、のびやかに健やかに生きていた、幼い頃の自分を思い出す。
“憎みたくなんか、なかったんだ。私は今初めてそう思う。本当に、私は、何をも憎みたくなんかなかったんだ。あの女も、父も母も、自分自身の過去も。憎むことは私を楽にはしたが、狭く窮屈な場所に閉じ込めた。憎めば憎むほど、その場所はどんどん私を圧迫した。”
みんなと一緒ならば、七日しか生きられなくても蝉は不幸ではない。
でも、一人だけ八日も生きてしまったら。
八日目の蝉に見える景色はどんなにかなしいものだろうと言う恵里菜に千草は言う。
“八日目の蝉は、ほかの蝉には見られなかったものを見られるんだから。見たくないって思うかもしれないけど、でも、ぎゅっと目を閉じていなくちゃならないほどにひどいものばかりでもないと、私は思うよ”
最後まで読んで、スケールは違うが「レ・ミゼラブル」を思い出す。
成り行きとはいえ罪を犯してしまった希和子。
他人の子を自分の子として育てる希和子。
何よりも娘の幸せを考える希和子。
希和子が死ぬときは、4歳のころの薫が、屈託のない笑顔で枕元に迎えにくるのではないかと、そんなことを考えた。