今日も大荒れの北海道でしたが、娘は無事帰って行きました。
というわけで、今日は今年初のノンアルコールデーです。
早寝、節酒、読書に励んで、たまに運動って感じでしばらく過ごすことにします。

さて、こっそりぼちぼち進めていた「本屋大賞の本を読もう」企画ですが、とりあえず2006年本屋大賞ノミネート作を読み終わりましたので、まとめの感想です。

2006年本屋大賞
1位 東京タワー オカンとぼくと、ときどき、オトン リリー・フランキー
2位 サウスバウンド 奥田英朗
3位 死神の精度 伊坂幸太郎
4位 容疑者Xの献身 東野圭吾
5位 その日のまえに 重松清
6位 ナラタージュ 島本理生
7位 告白 町田康
8位 ベルカ、吠えないのか? 古川日出男
9位 県庁の星 桂望実
10位 さくら 西加奈子
11位 魔王 伊坂幸太郎

私のなかでの1位はもう圧倒的に「告白」です。
これは昨年末からさんざん書いてきたので、あまりくどくど書くのはよそうと思いますが、あかん奴のあかん人生がどうにも私の心を捉えて離さないのでございます。
なんかダメンズに振りまわされる女心がわかったような気さえいたします。
あかん。

2位は、「その日のまえに」で決まりです。
もう、絶対に泣かせにくるのはわかっているのに、やっぱり泣きましたね。
死を踏み石に感動を書くな!と、いつもは怒るのですが、やっぱり感動しましたね。
ときどきあざといと思うこともありますが、重松清は上手いです。
「死」をテーマにした短編集。

先立つのも残されるのも、いやです。
特に幼い子どもを残して死ぬなんて、死ぬほどいやです。死んでもいやです。
だから「その日のまえに」「その日」「その日のあとに」の3部作では、涙腺が決壊。
泣きすぎて鼻が痛くなった思い出があります。

3位は「サウスバウンド」「死神の精度」「容疑者Xの献身」「ナラタージュ」が同率で。
その時の気分でどれかが上だったり下だったりするとは思いますが。

「サウスバウンド」はどこまでも破天荒な、元過激派の父ちゃんがステキ。
言動がいちいちツボでした。

「死神の精度」は死神の造形に尽きる。
ミュージックを愛し、現れる時はいつも雨。ビジネスライクに人の生死の可否を判定しているのに冷たさを感じさせず、少しトンチンカンな受け答えに思わず笑顔まで浮かんでしまう。
私も死ぬときは千葉くんに判定してもらいたいです。

「容疑者Xの献身」は、湯川先生の人としての矜持、容疑者Xの人としての矜持が真っ向からぶつかって、ただの天才対天才というだけではないドラマがあったと思います。
互いを尊敬しあってる友情。真逆の立ち位置。

「ナラタージュ」は、なんと言ったらいいのだろう。
泉と私は全然違うタイプの人間なのに、「ああ、わかる、それ。」と思わせる説得力。作者の文章のうまさや構成の巧みさを、読者の私が好きだと思えること。
いろんなあれこれをひっくるめて、読後に大きく「うん」とうなづいた作品。

どれが3位でもいいわ。
それ以外の本も、割と好きな作品が多かったです。
あ~、楽しかった。(。-人-。)


本日の読書:ベルカ、吠えないのか? 古川日出男

カバー裏より
『キスカ島に残された四頭の軍用犬北・正勇・勝・エクスプロージョン。彼らを始祖として交配と混血を繰りかえし繁殖した無数のイヌが国境も海峡も思想も越境し、“戦争の世紀=20世紀”を駆けぬける。炸裂する言葉のスピードと熱が衝撃的な、エンタテイメントと純文学の幸福なハイブリッド。文庫版あとがきとイヌ系図を新たに収録。』

アリューシャン列島にあるキスカ島に残された四頭の軍用犬から物語は始まるが、もちろんそれ以前にも犬というのは世界中にいたのだし、どこから物語が始まろうとイヌには関係ない話だ。

第二次世界大戦末期から20世紀末の約50年間。
人間だとせいぜい孫くらいまでしか世代は変わらない。3人子どもをつくり、その子どもたちが3人ずつ子どもをつくったところで、9人だ。
でも犬は短い犬生の中で、一度にたくさん子供を産む。何度も埋める。自然にしている分には一夫一婦にこだわらない。なので、あっという間に最初の四頭からの血筋が拡がっていくのである。
それは、躍動感すら感じる物語のスピードに乗って。

ある犬は血統を守るために純血種とだけまじわり、ある犬はより強い力を得るために雑種婚を繰り返す。
ある犬は軍用犬に。ある犬はそりを引き、ある犬はドッグ・ショウの常連になり、ある犬は麻薬犬に、ある犬は警察犬に、ある犬はボディ・ガードに。ある犬は母になり、ある犬は神になり、ある犬は殺人兵器になる。

でも、犬はイヌ。
イヌは走る。イヌは喰らう。イヌは従う。イヌは生きる!

短くて切れの良い文章を多用することによって、読んでいる私までもが全力疾走しているような、犬とともに風を切っているような気がしていた。
物語に捕まった。そんな気がした。

そんな気持ち、最近味わった。
そう、町田康の「告白」を読んだとき。
まさかこんなにすぐに、心を捉えるような小説に出会えるとは。
何十年に一度の逸材、菊池雄星選手を卒業させた後すぐに大谷翔平選手が入部してきたときの、花巻東高校の佐々木監督のように「え?もう!?」ってなくらいに、すぐに。

でもね、ちょっと違った。
時々おいていかれるんだ。

イヌはいい。イヌは自分に正直だから、生き方にブレがないんだけれど、人間がからんでくると時々わからなくなる。
老人?将軍?大主教?
死んだのは誰?狂うのは誰?

ベトナム戦争とアフガン紛争とソ連とロシアの内紛の辺りが、何度も読み返さないと混乱してしまう。
それは作者の書き方というよりも、私の現代世界史の知識が足りないことに問題があるのだろうか。

犬は人間の隣にいてくれる動物だから、犬の物語は結局人間の歴史でもあるのだ。
ボリス・エリツィンにささげられたこの本は、結構わかりやすい現代史のテキストとなった。
わかりにくい現代史50年分を、走って走って駆けぬけた犬たち。
そして。

これからの世界に宣戦布告をするために、今ベルカ達は北の海が見える島でイヌだけの楽園を築いているはず。
ベルカ、吠えないの?
うぉん。